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空想話なので ⑦
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グランは、フォンシルを抱きかかえるようにして、暴走している魔力を抑える。
力で負けようとも、コントロール力は小さな頃から鍛錬をしてきた。
繊細な調節をして、フォンシルを傷つけないように内側へ向けて魔力を戻す。
優しく、術式を精錬させ、元にあるべき所へ。
「……もう、大丈夫だ」
先程まで微塵もなかった弱々しい声が腕の中から聞こえてくる。
「殿下、すみません! 鑑定させて下さい!」
すべてグランの能力は分かられているようなので、自分の魔力を最大限に活かし、フォンシルの体に不具合があるか探す。
「……すまない。何か見つかったか?」
「そうですね。とりあえず、臓器は問題ないようです」
「そうか。……変えたと言っても性別に関係ある細胞と生殖器官だけだ」
確かに、ザッとフォンシルの体を確認するが、変わった所はない。
まだ12才ということもあり、第二次性徴期前という事に関係しているのだろう。
「気分は悪くないですか?」
「まぁ、今のところは。徐々に、体の変化や月経が始まるかもしれないが、不都合な所は魔法で対処する」
そう言って、流れる汗をわずらわしそうに拭う。
「これ、どうぞ。殿下」
そばにあった、タオルと水を渡す。
「……ありがとう。ピーターも大丈夫か?」
魔力のエネルギーに耐えかねて、壁に座って寄りかかっていたピーターも、ようやく動けるようになったようだ。
「……は、はい。殿下。申し訳ありません。お役に立てなくて」
そして、ピーターは驚いた顔でグランを見る。
「グラン。何でそんな能力を?」
「何となく。生まれ持ってただけです」
「そんな訳あるか。それじゃ、まるで……」
まるで、何だというのか。
「そうだ。グランは王族の血筋だ。地位やどの系統かは不明だが」
「まさか。隠し子を村に託したのでしょうか」
それは、とても困る。
グランは、ジャスキル石を集めてのんきに一生を終える気でいたのに。
義両親に詳しく聞いておけば良かったと後悔する。
「僕が王族じゃないという可能性はないですか?」
「性転換魔法を理解できただろう? それが証拠だ。」
「……はい」
理解できてしまった。
しかも、しっかりと。
「もう一つの証拠として、私がグランを見つけられた事にある」
そう言えば、王族同士は繋がっていて大体の位置は分かると言っていたな。
「でも、けっこう前ですよ? フォンシル殿下の名を、石に名付けたのは」
それから、何年かは経っているだろう。
とてもめずらしい石のため、あれから同じ石を見つける事は出来ていない。
だから、それきりだが探されている感じはしなかった。
「私は石の加護を受け、すぐに誰が名付けたのか秘密裏に調べた。簡単にグランの事は分かったが、どこにいるかはいくら探しても見つからなかった」
「殿下の察知能力でもですか? 何故だろう……」
「あの村にグランだけを隠す結界が張られていたのではないかと思う」
そんな結界を誰にも知られずにはるなんて、誰にも負けない魔力を持っているのかもしれない。
「なんのために?」
「王族だと誰にも知られたくなかったのだろう。現に、グランが森を出た途端にわかったからな。もちろん、国王や他の数人いる王族も察知できたようだ」
と、なると。
今頃、グランが村を出ている事に、慌てている人物がいるということか?
今まで興味がなかったが、両親が誰かが気になってくるな。
「ピーターも隠してすまない。内乱にもなりかねない事案だった」
「正直、驚きました。……それと、グラン様。先程は無礼を働きまして申し訳ありませんでした」
牢屋にしょっぴかれた事だろうか。
そこまで手荒な事はされていないので、気にしないでほしい。
魔法で身分を偽ることは、よくある事だ。
グランが王族だとは、フォンシルも不確定だったのだろう。
「いや、そもそもの元凶は僕が勝手に名付けた事になるので……」
それさえしなければ、今までの事は何も起こらなかったはずだ。
力で負けようとも、コントロール力は小さな頃から鍛錬をしてきた。
繊細な調節をして、フォンシルを傷つけないように内側へ向けて魔力を戻す。
優しく、術式を精錬させ、元にあるべき所へ。
「……もう、大丈夫だ」
先程まで微塵もなかった弱々しい声が腕の中から聞こえてくる。
「殿下、すみません! 鑑定させて下さい!」
すべてグランの能力は分かられているようなので、自分の魔力を最大限に活かし、フォンシルの体に不具合があるか探す。
「……すまない。何か見つかったか?」
「そうですね。とりあえず、臓器は問題ないようです」
「そうか。……変えたと言っても性別に関係ある細胞と生殖器官だけだ」
確かに、ザッとフォンシルの体を確認するが、変わった所はない。
まだ12才ということもあり、第二次性徴期前という事に関係しているのだろう。
「気分は悪くないですか?」
「まぁ、今のところは。徐々に、体の変化や月経が始まるかもしれないが、不都合な所は魔法で対処する」
そう言って、流れる汗をわずらわしそうに拭う。
「これ、どうぞ。殿下」
そばにあった、タオルと水を渡す。
「……ありがとう。ピーターも大丈夫か?」
魔力のエネルギーに耐えかねて、壁に座って寄りかかっていたピーターも、ようやく動けるようになったようだ。
「……は、はい。殿下。申し訳ありません。お役に立てなくて」
そして、ピーターは驚いた顔でグランを見る。
「グラン。何でそんな能力を?」
「何となく。生まれ持ってただけです」
「そんな訳あるか。それじゃ、まるで……」
まるで、何だというのか。
「そうだ。グランは王族の血筋だ。地位やどの系統かは不明だが」
「まさか。隠し子を村に託したのでしょうか」
それは、とても困る。
グランは、ジャスキル石を集めてのんきに一生を終える気でいたのに。
義両親に詳しく聞いておけば良かったと後悔する。
「僕が王族じゃないという可能性はないですか?」
「性転換魔法を理解できただろう? それが証拠だ。」
「……はい」
理解できてしまった。
しかも、しっかりと。
「もう一つの証拠として、私がグランを見つけられた事にある」
そう言えば、王族同士は繋がっていて大体の位置は分かると言っていたな。
「でも、けっこう前ですよ? フォンシル殿下の名を、石に名付けたのは」
それから、何年かは経っているだろう。
とてもめずらしい石のため、あれから同じ石を見つける事は出来ていない。
だから、それきりだが探されている感じはしなかった。
「私は石の加護を受け、すぐに誰が名付けたのか秘密裏に調べた。簡単にグランの事は分かったが、どこにいるかはいくら探しても見つからなかった」
「殿下の察知能力でもですか? 何故だろう……」
「あの村にグランだけを隠す結界が張られていたのではないかと思う」
そんな結界を誰にも知られずにはるなんて、誰にも負けない魔力を持っているのかもしれない。
「なんのために?」
「王族だと誰にも知られたくなかったのだろう。現に、グランが森を出た途端にわかったからな。もちろん、国王や他の数人いる王族も察知できたようだ」
と、なると。
今頃、グランが村を出ている事に、慌てている人物がいるということか?
今まで興味がなかったが、両親が誰かが気になってくるな。
「ピーターも隠してすまない。内乱にもなりかねない事案だった」
「正直、驚きました。……それと、グラン様。先程は無礼を働きまして申し訳ありませんでした」
牢屋にしょっぴかれた事だろうか。
そこまで手荒な事はされていないので、気にしないでほしい。
魔法で身分を偽ることは、よくある事だ。
グランが王族だとは、フォンシルも不確定だったのだろう。
「いや、そもそもの元凶は僕が勝手に名付けた事になるので……」
それさえしなければ、今までの事は何も起こらなかったはずだ。
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