誰も要らないなら僕が貰いますが、よろしいでしょうか?

伊東 丘多

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油断も隙も、あった!! Ⅺ

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 しばらく、微量の風魔法を操りつつ煙を飛ばし、気配を探る。
 完全に消している魔力は、何か動揺をさせて揺らがせないと、見つからない。

「そうだ。この前、旅人から貰った調味料を持って来てたんだ」
 これは、名案かもしれない。

 旅人が宿泊のお礼として置いていった『醤油』というものは、異世界人からレシピを貰ったらしく、とても美味しいと王都で評判らしい。

 この辺境の田舎町には、なかなかお目にかかれない貴重なものではある。
 これを、旅のお祝いにくれた義両親には大感謝だ。

 アイテムバッグから、その醤油を取り出し、すこーしだけ石板の上に垂らす。
 すると香ばしい匂いが空気に、ただよう。
 そこから、強い風魔法で匂いを飛ばす!

「これでどうだ!」

 グランは、思わず自分でつまみ食いしてしまいそうな美味しそうな匂いに耐え、黒い影の気配を追う。

「分かった。そこにいる」

 木の陰に確かに、何か魔力を感じた。
 美味しそうな匂いに動揺したのだろう。
 間違いない。

 手のひらを上に向け、紐状の魔力の束を作り一気にその影を巻き取る。

 成功だ。
 手応えが、ちゃんとある。
 この魔力の紐は、簡単には逃れられないはずだ。

 何か悪さをされたわけではないので、痛くないようにやさしく引っ張ってこちらへ来てもらう。

 目の前にいた人物に背伸びをして、ニッコリとして見つめる。

「こんにちは。あなたの正体は、何ですか?」

 グランの魔力の紐のせいで、魔法を発動させられず、実体化してしまったようだ。

「教えぬ!! ……おまえ! アダマゼイン様に何をするつもりだった!!」

 やはり、誤解をしているようだ。
 素直に謝っておいた方が良いだろう。
 喧嘩でもして、ユーディアに後で怒られても嫌だ。

「申し訳ありません。急に寝てしまわれたので、少し様子を見ようかと思いました。決して、他意はありません」

 グランは、悲しそうな顔をして深く頭を下げる。
 こんなもんで、良いだろうか。

「…………な、なら、別に良い。内緒だが、絶対に内緒だが!! とっても、高貴な尊いお方なのだ。だから、気安く触れるな」

 なぜかそう言い放ち、顔を赤くして下を向く。
 その顔は、ユーディアよりも、見た目だけ! だが、少し年下の年齢だろうか。
 とても可愛い。
「分かりました。以後、気をつけます。…………女性なんですね」
「問題でも? この国では関係ないだろう。性別は変えられる」

「そうですね。すみません」

 うーん。
 高貴と言われても、王族……じゃないな。
 だとしたら、この魔力量で匹敵するのは魔王くらいしかいないが……。

 ……まさかな。


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