誰も要らないなら僕が貰いますが、よろしいでしょうか?

伊東 丘多

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理由 Ⅴ

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 良いことを思いついたからだ。
 便利だなと思って試行錯誤をして、最近編み出した魔法。

「僕、このジャスキル石を使って王都とこの場所をつなげます!」

 そう、宣言した。

 そもそも、この村には産業が何もない。
 自分たちで生きる分の食物を育て、自然の恵みを得ながら生活をしている。

 流通がないという事は、何が外に向けて生産する気力もなくなる。
 しかも、旅人も寄らないくらいの場所なんて、次第に住民が減っていくのも仕方ないだろう。

 他にも、人が入ってこない理由は2つある。

 ひとつめ。

 大きな川が流れていて、王都にはいけない。
 天気が良ければ、この村の山の上から王城の旗が見えるくらいの距離だ。
 この川は流れが早くて泳げないが、国が渡し舟を作るほど、必要性もないので作ってくれない。
 人の流れがない所に、お金は落ちてこないのだ。

 ふたつめ。

 強い魔物が多く生息している点にある。
 さすが野生の魔物は手強い。
 そのため、冒険者が恐れをなしてこないのだ。
 そしてこないということは、大きな顔をして魔物が居座るということ。
 さらに、入りづらい森となる。
 ランクの高い護衛の冒険者を雇ってまで来る理由はここにはない。

 以上の理由によりこの村には活気がない。
 だが、反対にいえば、伸びしろがあるという事。

 交通手段とユニークな魔物。
 そこさえ、クリアすれば簡単に王都に行ける。
 決してユーディアが優しくて美しいから、一緒にいたいわけではない。

 本来なら、陸地と川。
 安全に移動できる通路をつくりたいが、ただの平民には出来る訳はない。
 だから、他の方法を考えた。

 もう、この村を離れるんだ。
 そろそろ、自分の能力のことがバレたって問題がない。

 同じ種類の色の石を取り出し、2つをそれぞれテーブルの1番離れている端にのせた。

「これ、木の中にいる虫魔物のジャスキル石?」
 エンジュが、驚いてくれる。

「うん。そう。これ、取るの大変なんだ。」
 めったに現れない魔物でもったいないけど、移動速度が早い魔物を使ったほうが能力がアップする。

「これに、瞬間移動の魔力を込めて…………えいっ!」

 ぱぁっと、グランの手から光が2線出て、石に流れていった。
 落ち着くのを待つと、無事に魔法石になったようだ。

「……どういう事なの?」
 この中では、1番ユーディアが魔力値が高いので、この凄さに気づいたようだ

「なんにも力がないからこそ、僕の魔力も跳ね返さずに受け入れてくれる。……見てて下さい」

 グランは、近くにあったパンを、移動能力を持った片方の石のそばに落とす。
 すると、テーブルの上に落ちるのではなく、もう一つの石に現れた。

「魔物で何回も試したから、きっと大丈夫」

 グランは、手始めにはこんなものかな。
 と、小さな頃に見つけた空間移動の魔法を披露した。

「えええーーー!!」

 それは、どうやら、少し家族を驚かせすぎてしまったようだ。




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