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はじまり Ⅰ
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「今度こそ、出ると良いけれど」
何度目かのハズレに、ため息をつく。
木で作った自作の剣の先をシルバーウルフに向け、狙いを定める。
あえて急所を外して突き刺し、すぐさま剣を引き抜く。
すると、シルバーウルフは唸り声をあげながら倒れ、サラサラと消えていった。
その瞬間、小さくて淡い青色の石が太陽に反射して、光る煌めきが目に入る。
………これだ。
「やった。落としたかな?」
腐った葉っぱは少し湿り気をおびていて、足が沈み、走りにくい。
それでも、なんとか急いでウルフが倒れた場所にいき、埋もれてしまったアイテムを葉を掻き分けて探すが見つからない。
どうやら、下の方へ入り込んでしまったようだ。
泥のついた顔で必死に探している、この少年。
グラン・デディーリエは、王都から遠くにある辺境の地に住む8才になったばかりの冒険者だ。
ギルドには登録していないので、自称ではある。
グランが集めているものはジャストキルをすると魔物が落とすレアアイテムで、そのままジャスキル石と読んでいる。
魔物のHPを確認し、倒せるギリギリまで攻撃力を調節するのは難しい。
だが、グランは小さい頃からコントロール能力を身につけ鍛錬してきた。
そうでなければ、弱いモンスターから強いモンスターまで、状況に応じてジャストキルで倒せない。
そんな難易度が高いレアアイテム。
ただでさえ、手に入れるのを諦めてしまうのに、さらに冒険者が集めない要因がある。
それは、使い道が分からず、持ってても役に立たないということにある。
石自体には、魔力がない。
外部からの特殊な魔力を注入しなくてはならないのだ。
だから、普通の魔法力しかない人間には利用価値がない。
魔法石を扱う店でも二束三文で買い取られてしまう無駄なものという扱いを受けている。
しかも魔物が落とすアイテムは1つだけのため、ジャスキル石を手に入れてようとすると、他のアイテムが手に入らない。
オーバーキルをしないと経験値も少なくなるし、普段必要な良質なアイテムも貰えないとなれば、集める冒険者もいないだろう。
でも、グランはそこに奥深さを感じている。
物心ついてから、ジャスキル石の収集にのめり込んでいた。
それに、何と言っても、他の冒険者が見向きもしない歴史から、名前がついていない場合が多い。
すると、最初に見つけた人は名前をつける事が出来るのだ。
それは、かけがえのない意味のある事だと思う。
だが、それは数は少なく、グランは今までで4つしか見つけていない。
ただ、それでも、この国の歴史を考えたら貴重だろう。
なぜなら、すでに何万年もの時が経ている歴史ある国だからだ。
グランは生まれ持った時から、様々な能力値が高かった。
能力値に関しても、ギルドに行って検査をしている訳ではないから、正しくは分からない。
だが、魔物を楽々と倒せるということは高いのだろう。
この国は何故か人による犯罪は少なく、気性も穏やかな性格の人ばかりだ。
魔物も魔王により管理されているし、危険区域の魔物出現場所にいかなければエンカウントすることも無い。
それはグランには理解しようもない大きな力で管理されている。
ともかく魔法はさほど必要ない世界だから、グランは能力を隠してまで田舎の森でずっと自己流の練習をしているのだ。
それもこれも、自由に育ててくれた義理の父母のおかげでもある。
自分の子供でもないのに、あふれるくらいの愛情をいっぱいくれた。
実の子供以上に。
義母の友人から預けられた、というが、他人の子供を育てるというのは、なかなか出来る事ではない。
どうやら本当の両親は王都に住んでいるらしいが、王都への道のりは徒歩と馬車を乗り継ぎ20日以上、徒歩だけで3か月程かかる。
そのため、辺境の田舎では両輪について調べるすべもない。
でも、さみしくもないし、困ることもない。
少し薄情だろうか。
でも記憶がない人に、何の感情もわかないのは事実である。
その恵まれた環境と能力で、グランは今日も元気に魔物討伐に来ているのであった。
何度目かのハズレに、ため息をつく。
木で作った自作の剣の先をシルバーウルフに向け、狙いを定める。
あえて急所を外して突き刺し、すぐさま剣を引き抜く。
すると、シルバーウルフは唸り声をあげながら倒れ、サラサラと消えていった。
その瞬間、小さくて淡い青色の石が太陽に反射して、光る煌めきが目に入る。
………これだ。
「やった。落としたかな?」
腐った葉っぱは少し湿り気をおびていて、足が沈み、走りにくい。
それでも、なんとか急いでウルフが倒れた場所にいき、埋もれてしまったアイテムを葉を掻き分けて探すが見つからない。
どうやら、下の方へ入り込んでしまったようだ。
泥のついた顔で必死に探している、この少年。
グラン・デディーリエは、王都から遠くにある辺境の地に住む8才になったばかりの冒険者だ。
ギルドには登録していないので、自称ではある。
グランが集めているものはジャストキルをすると魔物が落とすレアアイテムで、そのままジャスキル石と読んでいる。
魔物のHPを確認し、倒せるギリギリまで攻撃力を調節するのは難しい。
だが、グランは小さい頃からコントロール能力を身につけ鍛錬してきた。
そうでなければ、弱いモンスターから強いモンスターまで、状況に応じてジャストキルで倒せない。
そんな難易度が高いレアアイテム。
ただでさえ、手に入れるのを諦めてしまうのに、さらに冒険者が集めない要因がある。
それは、使い道が分からず、持ってても役に立たないということにある。
石自体には、魔力がない。
外部からの特殊な魔力を注入しなくてはならないのだ。
だから、普通の魔法力しかない人間には利用価値がない。
魔法石を扱う店でも二束三文で買い取られてしまう無駄なものという扱いを受けている。
しかも魔物が落とすアイテムは1つだけのため、ジャスキル石を手に入れてようとすると、他のアイテムが手に入らない。
オーバーキルをしないと経験値も少なくなるし、普段必要な良質なアイテムも貰えないとなれば、集める冒険者もいないだろう。
でも、グランはそこに奥深さを感じている。
物心ついてから、ジャスキル石の収集にのめり込んでいた。
それに、何と言っても、他の冒険者が見向きもしない歴史から、名前がついていない場合が多い。
すると、最初に見つけた人は名前をつける事が出来るのだ。
それは、かけがえのない意味のある事だと思う。
だが、それは数は少なく、グランは今までで4つしか見つけていない。
ただ、それでも、この国の歴史を考えたら貴重だろう。
なぜなら、すでに何万年もの時が経ている歴史ある国だからだ。
グランは生まれ持った時から、様々な能力値が高かった。
能力値に関しても、ギルドに行って検査をしている訳ではないから、正しくは分からない。
だが、魔物を楽々と倒せるということは高いのだろう。
この国は何故か人による犯罪は少なく、気性も穏やかな性格の人ばかりだ。
魔物も魔王により管理されているし、危険区域の魔物出現場所にいかなければエンカウントすることも無い。
それはグランには理解しようもない大きな力で管理されている。
ともかく魔法はさほど必要ない世界だから、グランは能力を隠してまで田舎の森でずっと自己流の練習をしているのだ。
それもこれも、自由に育ててくれた義理の父母のおかげでもある。
自分の子供でもないのに、あふれるくらいの愛情をいっぱいくれた。
実の子供以上に。
義母の友人から預けられた、というが、他人の子供を育てるというのは、なかなか出来る事ではない。
どうやら本当の両親は王都に住んでいるらしいが、王都への道のりは徒歩と馬車を乗り継ぎ20日以上、徒歩だけで3か月程かかる。
そのため、辺境の田舎では両輪について調べるすべもない。
でも、さみしくもないし、困ることもない。
少し薄情だろうか。
でも記憶がない人に、何の感情もわかないのは事実である。
その恵まれた環境と能力で、グランは今日も元気に魔物討伐に来ているのであった。
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