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三十:部屋
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「場所は?」
「ここからすぐ近くだな。場所は、海沿いをそのまま端まで行けば、すぐに分かる」
「……はい」
緊張したおもむきで、陽尊は建速に詳しい情報を聞いている。
一緒に、とは言ったものの経験値がゼロで、レベルが低い自分には何も出来ない。
話し合いが終わるやいなや、建速たちは何処かの繁華街に繰り出すつもりなのか、陽尊から金を奪い取って玄関から出ていった。
挨拶もそこそこに軽く手を軽く振って、バイバイをする。
あいかわらず、自由気まま過ぎる。
「……おまたせ」
「なんか、部屋が急に静かになった。……で、話合いは、どうだった?」
「うん。流れは把握した。すぐ近くだし、明日にでも行こうと思う」
「確かに早いほうが良いよな」
「そんなに難しい依頼じゃないみたいだし。でも、奏採は無茶をしないで」
「分かってる。陽尊もだから」
そうと決まれば、一度、家に帰って準備してこないと。
気になっていた冷蔵庫の中身や元栓などを閉めて、大家さんに挨拶も忘れない。
建速が風で散らかした部屋を片付けながら、今夜の事を考える。
……そっか。泊まりか。
家族以外と同じ部屋で誰かと眠るなんて、学校行事でしかないからちょっと緊張する。
しかも、二人きりなんて。
「……考え事?」
「あっ、ごめん。片付けの手が止まってた。一度、荷物をまとめてこっちに持ってこようかなって思って」
「本当に、一緒に住んでくれるんだ」
「……だから、俺だって助かるって」
窓の外を見ると、駅前のショッピングモールに明かりがついている。
海が見えたところは、異空間のように真っ黒で光と闇の対比がきれいで、ふらふらと窓辺に近づく。
「夜景、見るために来てくれただけでも嬉しいよ」
「夜景だけじゃないし」
「そう?」
「そ。じゃ、行ってくる。連絡はスマホで……って、部屋のテーブルの上に置きっぱなしだった」
「一人で行くつもりだった? ついて行くよ。荷物入れるために車を出すから」
「…………車、もってんの?」
「もちろん、兄との共同だからね」
家族に甘やかされてるのを嫌がるように、訂正されたが、もう遅い気がする。
一応、高校卒業時に免許は取ったが車を運転していない俺にしたら、その車を自由に使える環境がうらやましい。
やたらと座りごごちが良い車の助手席に座り、快適なドライブを楽しみながら部屋に戻ると、当たり前のように今朝と何も変わっていなかった。
もともと、物を増やさないようにしていたので、まとめる荷物は少ない。
大家さんにもらった段ボールに服や本をしまって、車の中につめこんだ。
調理器具や消耗品は、隣の部屋の友達に押し付ける。
……住み慣れた所に離れてもさみしくないな、と、静かに発進をする車の振動を感じながら物思いにふけった。
それは、きっと、隣に陽尊がいてくれるからだろう。
海沿いは灯りもなく、暗くて吸い込まれそうになるけど、陽尊ならすくい上げてくれるだろう。
だから、安心して真っ暗な海をじっと見つめて、沈み込むような感覚を楽しんだ。
「ここからすぐ近くだな。場所は、海沿いをそのまま端まで行けば、すぐに分かる」
「……はい」
緊張したおもむきで、陽尊は建速に詳しい情報を聞いている。
一緒に、とは言ったものの経験値がゼロで、レベルが低い自分には何も出来ない。
話し合いが終わるやいなや、建速たちは何処かの繁華街に繰り出すつもりなのか、陽尊から金を奪い取って玄関から出ていった。
挨拶もそこそこに軽く手を軽く振って、バイバイをする。
あいかわらず、自由気まま過ぎる。
「……おまたせ」
「なんか、部屋が急に静かになった。……で、話合いは、どうだった?」
「うん。流れは把握した。すぐ近くだし、明日にでも行こうと思う」
「確かに早いほうが良いよな」
「そんなに難しい依頼じゃないみたいだし。でも、奏採は無茶をしないで」
「分かってる。陽尊もだから」
そうと決まれば、一度、家に帰って準備してこないと。
気になっていた冷蔵庫の中身や元栓などを閉めて、大家さんに挨拶も忘れない。
建速が風で散らかした部屋を片付けながら、今夜の事を考える。
……そっか。泊まりか。
家族以外と同じ部屋で誰かと眠るなんて、学校行事でしかないからちょっと緊張する。
しかも、二人きりなんて。
「……考え事?」
「あっ、ごめん。片付けの手が止まってた。一度、荷物をまとめてこっちに持ってこようかなって思って」
「本当に、一緒に住んでくれるんだ」
「……だから、俺だって助かるって」
窓の外を見ると、駅前のショッピングモールに明かりがついている。
海が見えたところは、異空間のように真っ黒で光と闇の対比がきれいで、ふらふらと窓辺に近づく。
「夜景、見るために来てくれただけでも嬉しいよ」
「夜景だけじゃないし」
「そう?」
「そ。じゃ、行ってくる。連絡はスマホで……って、部屋のテーブルの上に置きっぱなしだった」
「一人で行くつもりだった? ついて行くよ。荷物入れるために車を出すから」
「…………車、もってんの?」
「もちろん、兄との共同だからね」
家族に甘やかされてるのを嫌がるように、訂正されたが、もう遅い気がする。
一応、高校卒業時に免許は取ったが車を運転していない俺にしたら、その車を自由に使える環境がうらやましい。
やたらと座りごごちが良い車の助手席に座り、快適なドライブを楽しみながら部屋に戻ると、当たり前のように今朝と何も変わっていなかった。
もともと、物を増やさないようにしていたので、まとめる荷物は少ない。
大家さんにもらった段ボールに服や本をしまって、車の中につめこんだ。
調理器具や消耗品は、隣の部屋の友達に押し付ける。
……住み慣れた所に離れてもさみしくないな、と、静かに発進をする車の振動を感じながら物思いにふけった。
それは、きっと、隣に陽尊がいてくれるからだろう。
海沿いは灯りもなく、暗くて吸い込まれそうになるけど、陽尊ならすくい上げてくれるだろう。
だから、安心して真っ暗な海をじっと見つめて、沈み込むような感覚を楽しんだ。
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