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メニューリストと、セットリスト

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開店1時間前の10時に潮風駅に集合する事。

昨日、一斉に生徒たちのスマホへ届いた連絡だ。

基本的には、ずっとこの時間に集まるらしい。
直前すぎやしないかと不安にもなるが、開店準備は喫茶店店長の夏葉家族がしてくれるので、問題ないそうだ。

ちなみに、事前準備のこの時間も給料がちゃんと支払われるとの事で、何て真っ白なバイト先なのだろうと、兄ながら感謝しかない。

「なあ?蒼衣さんの家って、どこなんだ?」
蓮二が駅に来ない蒼衣の家を気にしているらしい。
「たしかに!どのあたりなんだろう。」
4人は、予想をしつつあれやこれや、言い出す。

ファンはこれだから、よくない。
プライベートは詮索するものじゃない。
自分事は棚に上げて心の中で文句を言う。

………もちろん蒼衣の家に行ったのは絶対に内緒だ。

「直接、店に来るんじゃない?」
何か言われたくないので、風灯は無難に流すことにした。

「星野もバイトしてもらう事にしたから、一緒に来るらしいぞ。」
出席管理をしている海灯から、有益な情報をもらう。

「あ。じゃ、もう。仲直りっていうか、元通りになったんだ。」
風灯は、表面上は何ら変わりない完璧な演技をする2人の関係を、察知することはできない。
「……どうだかな。でも、そんな簡単なものじゃないだろ。」

似ている者同士だと、お互いに意識をし過ぎてしまい過剰に反応するのかもしれない。
風灯としてみたら、あんなに性格が違うのだから別に気にすることなく、ぶつかり合えば良いと思うが。

まぁ、自分が言えたものでもないので、考えるのをやめようと、思考を分散させる。

「じゃ、出発するぞ。」
駅から海沿いをまわって、喫茶灯台へ向かった。


「おはようー。」
星野と蒼衣は、すでに到着していて試作品の生わかめクレープを食べていた。
生地にまでわかめが練り込んであって、自信作らしいが、それは売れないという自信だろう。

せめて生クリームを入れるんじゃなくて、惣菜クレープとすれば、まだ良いのに。
口の中で、ぬちゃぬちゃしそうだ。

「ちょっと!店長。変なもの蒼衣さんに食べさせないで下さい。」
「風灯、おはよ。……いや、健康に良さそうで良いよ。磯の香りも良いし。ね、圭?」
「まぁ、まずいけどな。二度とは食べない味だ。」
しかめっ面をしながら、食べ物は無駄にできないと星野は全部完食する。

でも、そこまでハッキリ言うのは店長がかわいそうな気がする。
チラリと見ると、一瞬、悲しそうな顔をしていたが、すぐに元気を取り戻す。
「大丈夫だよー。それ、炎上商法だから。悪口どんどん言って。」
使う意味が間違っている。
つまり、話題性を出し、ゲテモノを食べたいという一定数の客目当てということか。

「まぁ、中に入ろう。新しいメンバーもいるし、再度、営業方法についても説明する。……そうだ。中に胃薬があるので飲んでおいた方が良い。」
蒼衣と星野に対し、心配そうな顔で付け加える。
これは、もしかしたらメニューの全面改変もあり得るかもしれない。
なんて言ったって、海灯はオーナーだ。
客のおなかを守る責任がある。

「……海灯くん。」
店長の悲しそうな声が波の音に消された。


「海灯さん。セットリスト考えてきました。」
「ありがとう、蒼衣。すまないな。昨日、ここの町を変えるためには仲良くしておかなきゃいけない人物に、君たちのコンサート依頼を受けてしまって。」
「いいえ。僕の事を知らないのに、音楽だけで好きになってくれるなんて光栄です。」
「俺は、これから顔を覚えてもらわなきゃいけないんで、頑張りますよ。」

どうやら、2人は趣味で今までしていたというツインギター、ツインボーカルのバンドを正式に組むことにしたらしい。
あえて、難しい事に取り組もうとしている。
ツインという事は、お互いに、音色を、声色を、変えなくては意味がないということ。
リードは星野で、リズムは蒼衣。
それが、どれだけ大変なことか初心者でも分かる。
でも、試行錯誤しながらそれぞれの音を出していくのだろう。

「俺、蒼衣の曲、やっぱ好きだな。」
星野の言葉はやっぱり嘘をついているようには思えない。
俳優では無理だったけど、音楽は仲間としていられるのだろう。
だから、大丈夫だ。

「星野先輩。後で、ギター聞かせて下さいね。」
風灯も、自分がどうしても上手に弾けない授業でならっているあの曲を、必ず弾けるようにして、セッションしてもらうと心に決めた。

そうしたら、もっと、仲良くなれる気がするから。
















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