14 / 58
はじまり
清掃作業
しおりを挟む
今日の放課後は、全員清掃という学校行事により、各自バラバラに動いている。
部活動は清掃が終わってからになるので、実質30分程度しか活動が出来ない。
それなのに、海灯はみんなに直接伝えたい事があると言って、今日も芸能部へ来ていた。
「風灯、大丈夫か?顔色が悪い」
腕まくりをして窓枠を雑巾がけをしている海灯が、心配そうに聞いてきた。
磨いている窓に顔をうつし、顔色を確認するが反射して良くわからない。
「そうかな?大丈夫だよ。店長代理として頑張らなきゃ。昨日さ、試作品ののクレープ食べすぎたから、お腹痛いだけだと思う」
わざと明るく声を出してみたが、自分の演技力じゃ海灯をだませないだろう。
何か言われるのがこわくて、続けて言う
「生クリームじゃなくて、惣菜クレープも販売するらしいよ。やっぱりおすすめは有名な灯台カレークレープか、潮風マグロクレープかな……、」
「一週間前の事だけど。蒼衣も、悪意があるわけじゃなくて、色々あるんだ。詳しくは勝手に言えないけど」
はぐらかしは許されなかった。
この前の話を、しっかりと聞いていたようだ。
「なんの関係性も築けなかったのはショックだったけど。よく考えると当たり前だよ。向こうは人気俳優だし。今までのように、これからもファンのままでいる」
「そういう、意味じゃない」
気まずさで、ペラペラと言わなくても良いことを話してしまっていたら、海灯がそれを止めた。
「どういう意味でも良いよ。それしかないし」
全体清掃終了のアナウンスがなる。その音に、反抗するようにバケツに雑巾を投げ入れた。
「難しいな。俺が出しゃばるのも良くないか」
「そうだよ。ほらほら、時間だよ。手を洗って。オーナーでしょ?成功させるように頑張ろう」
海灯の肩を叩いて、元気だと安心させるように笑った。
「絶対に、成功させよう。ビックプロジェクトなんだろ?俺は大丈夫」
「……そうか」
海灯はホッとした様子で、笑う。
兄はまだ小さい子供のままだと思っているかも知れないが、俺だって少しは成長しているはず。
想像していた未来と違ったとしても、うまく補強してして渡ってみせる。
「蝶子先生、長めのネイルしてても、そんなに上手に雑巾絞れるんですね」
「コツがあるのよ」
楽しそうに、離している声が聞こえた。
優美と英里紗ペアは相変わらず蝶子先生にベッタリだ。
海灯がその輪に近づくと、3人があわあわしだした。この様子なら、すぐに部活を始めても問題無さそうだろう。
顧問の蝶子先生はホテルのパフォーマンス仕事があるらしく、あまり来られないらしい。
その分、海灯がくるそうだ。
本来の仕事が気になるが、基本的には各自に仕事のスケジュールは任されているらしい。
「平日は通常の喫茶店営業があるし、練習はどうなる?」
風灯は、土日しか練習をしないのかと思って、不安になって聞くと、想定内の質問だったらしく、すぐさま返事が返ってくる。
「通常営業の時に、稽古を兼ねる。奥に使っていないフロアもあるし、少しくらいのぞかれたほうが緊張感も高まって良いだろう。では、来週から夏休み中、過酷になるだろうがよろしく頼む」
短い時間、それだけ言うために来たのだろうか。
さっさと帰って行ってしまった。
「………で、宿題は?」
と、誰もが忘れかけていた演技のきっかけのお題を出された宿題の存在を、真面目に考えてきた蓮二が小さな声で問いかける。
きっと、これは、各自で宿題合わせをしておけ、という部類のものだ。
結局、海灯から出た宿題は全部、曖昧なものだった。
部活動は清掃が終わってからになるので、実質30分程度しか活動が出来ない。
それなのに、海灯はみんなに直接伝えたい事があると言って、今日も芸能部へ来ていた。
「風灯、大丈夫か?顔色が悪い」
腕まくりをして窓枠を雑巾がけをしている海灯が、心配そうに聞いてきた。
磨いている窓に顔をうつし、顔色を確認するが反射して良くわからない。
「そうかな?大丈夫だよ。店長代理として頑張らなきゃ。昨日さ、試作品ののクレープ食べすぎたから、お腹痛いだけだと思う」
わざと明るく声を出してみたが、自分の演技力じゃ海灯をだませないだろう。
何か言われるのがこわくて、続けて言う
「生クリームじゃなくて、惣菜クレープも販売するらしいよ。やっぱりおすすめは有名な灯台カレークレープか、潮風マグロクレープかな……、」
「一週間前の事だけど。蒼衣も、悪意があるわけじゃなくて、色々あるんだ。詳しくは勝手に言えないけど」
はぐらかしは許されなかった。
この前の話を、しっかりと聞いていたようだ。
「なんの関係性も築けなかったのはショックだったけど。よく考えると当たり前だよ。向こうは人気俳優だし。今までのように、これからもファンのままでいる」
「そういう、意味じゃない」
気まずさで、ペラペラと言わなくても良いことを話してしまっていたら、海灯がそれを止めた。
「どういう意味でも良いよ。それしかないし」
全体清掃終了のアナウンスがなる。その音に、反抗するようにバケツに雑巾を投げ入れた。
「難しいな。俺が出しゃばるのも良くないか」
「そうだよ。ほらほら、時間だよ。手を洗って。オーナーでしょ?成功させるように頑張ろう」
海灯の肩を叩いて、元気だと安心させるように笑った。
「絶対に、成功させよう。ビックプロジェクトなんだろ?俺は大丈夫」
「……そうか」
海灯はホッとした様子で、笑う。
兄はまだ小さい子供のままだと思っているかも知れないが、俺だって少しは成長しているはず。
想像していた未来と違ったとしても、うまく補強してして渡ってみせる。
「蝶子先生、長めのネイルしてても、そんなに上手に雑巾絞れるんですね」
「コツがあるのよ」
楽しそうに、離している声が聞こえた。
優美と英里紗ペアは相変わらず蝶子先生にベッタリだ。
海灯がその輪に近づくと、3人があわあわしだした。この様子なら、すぐに部活を始めても問題無さそうだろう。
顧問の蝶子先生はホテルのパフォーマンス仕事があるらしく、あまり来られないらしい。
その分、海灯がくるそうだ。
本来の仕事が気になるが、基本的には各自に仕事のスケジュールは任されているらしい。
「平日は通常の喫茶店営業があるし、練習はどうなる?」
風灯は、土日しか練習をしないのかと思って、不安になって聞くと、想定内の質問だったらしく、すぐさま返事が返ってくる。
「通常営業の時に、稽古を兼ねる。奥に使っていないフロアもあるし、少しくらいのぞかれたほうが緊張感も高まって良いだろう。では、来週から夏休み中、過酷になるだろうがよろしく頼む」
短い時間、それだけ言うために来たのだろうか。
さっさと帰って行ってしまった。
「………で、宿題は?」
と、誰もが忘れかけていた演技のきっかけのお題を出された宿題の存在を、真面目に考えてきた蓮二が小さな声で問いかける。
きっと、これは、各自で宿題合わせをしておけ、という部類のものだ。
結局、海灯から出た宿題は全部、曖昧なものだった。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説

兄弟カフェ 〜僕達の関係は誰にも邪魔できない〜
紅夜チャンプル
BL
ある街にイケメン兄弟が経営するお洒落なカフェ「セプタンブル」がある。真面目で優しい兄の碧人(あおと)、明るく爽やかな弟の健人(けんと)。2人は今日も多くの女性客に素敵なひとときを提供する。
ただし‥‥家に帰った2人の本当の姿はお互いを愛し、甘い時間を過ごす兄弟であった。お店では「兄貴」「健人」と呼び合うのに対し、家では「あお兄」「ケン」と呼んでぎゅっと抱き合って眠りにつく。
そんな2人の前に現れたのは、大学生の幸成(ゆきなり)。純粋そうな彼との出会いにより兄弟の関係は‥‥?
早く惚れてよ、怖がりナツ
ぱんなこった。
BL
幼少期のトラウマのせいで男性が怖くて苦手な男子高校生1年の那月(なつ)16歳。女友達はいるものの、男子と上手く話す事すらできず、ずっと周りに煙たがられていた。
このままではダメだと、高校でこそ克服しようと思いつつも何度も玉砕してしまう。
そしてある日、そんな那月をからかってきた同級生達に襲われそうになった時、偶然3年生の彩世(いろせ)がやってくる。
一見、真面目で大人しそうな彩世は、那月を助けてくれて…
那月は初めて、男子…それも先輩とまともに言葉を交わす。
ツンデレ溺愛先輩×男が怖い年下後輩
《表紙はフリーイラスト@oekakimikasuke様のものをお借りしました》

【完結】I adore you
ひつじのめい
BL
幼馴染みの蒼はルックスはモテる要素しかないのに、性格まで良くて羨ましく思いながらも夏樹は蒼の事を1番の友達だと思っていた。
そんな時、夏樹に彼女が出来た事が引き金となり2人の関係に変化が訪れる。
※小説家になろうさんでも公開しているものを修正しています。
Take On Me
マン太
BL
親父の借金を返済するため、ヤクザの若頭、岳(たける)の元でハウスキーパーとして働く事になった大和(やまと)。
初めは乗り気でなかったが、持ち前の前向きな性格により、次第に力を発揮していく。
岳とも次第に打ち解ける様になり…。
軽いノリのお話しを目指しています。
※BLに分類していますが軽めです。
※他サイトへも掲載しています。

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。

家事代行サービスにdomの溺愛は必要ありません!
灯璃
BL
家事代行サービスで働く鏑木(かぶらぎ) 慧(けい)はある日、高級マンションの一室に仕事に向かった。だが、住人の男性は入る事すら拒否し、何故かなかなか中に入れてくれない。
何度かの押し問答の後、なんとか慧は中に入れてもらえる事になった。だが、男性からは冷たくオレの部屋には入るなと言われてしまう。
仕方ないと気にせず仕事をし、気が重いまま次の日も訪れると、昨日とは打って変わって男性、秋水(しゅうすい) 龍士郎(りゅうしろう)は慧の料理を褒めた。
思ったより悪い人ではないのかもと慧が思った時、彼がdom、支配する側の人間だという事に気づいてしまう。subである慧は彼と一定の距離を置こうとするがーー。
みたいな、ゆるいdom/subユニバース。ふんわり過ぎてdom/subユニバースにする必要あったのかとか疑問に思ってはいけない。
※完結しました!ありがとうございました!
コワモテαの秘密
たがわリウ
BL
コワモテ俳優α×兎獣人Ω
俳優の恵庭トキオは撮影の疲れを癒やすために、獣人の添い寝店に通っていた。
その店では兎の獣人、結月を毎回指名し癒やしてもらっていたトキオ。しだいに結月に合うこと自体が楽しみになっていく。
しかし強面俳優という世間のイメージを崩さないよう、獣人の添い寝店に通っていることはバレてはいけない秘密だった。
ある日、結月が何かを隠していることに気づく。
変な触り方をしてくる客がいると打ち明けられたのをきっかけに、二人の関係は変化し──。
登場人物
・恵庭トキオ(攻め/24歳)
メディアでは強面イケメン俳優と紹介されることが多い。裏社会を扱う作品に多く出演している。
・結月(受け/19歳)
兎の獣人で、ミルクティー色の耳が髪の間から垂れている。獣人の添い寝店に勤めている。

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる