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赤点回避と、満点
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それからの1週間。
何もしていないというのに、燃え尽き症候群になったようだった。
気分に整理をつけようともするが、余分なデータが残ったまま断片化された気持ちを、無理矢理に最適化しているようで、気持ちが悪い。
「苦しいな。」
学校まで通学への道のり。
あんなに軽い足取りで通っていたのに、今では重く、息も切れる。
考えすぎて眠れないのも原因かもしれない。
焦って、焦って、昨日の夜は、ほぼ寝ずに滑舌トレーニングをした。
家族は、心配してたまに様子を見に来てくれていたが、どうしてもやめられなかった。
その行為は、自信の裏付けにしていたものだったが、実際には自信なんて簡単に崩れるものだった。
今日は、簡単なテストの日だ。
何も勉強をしていないが、復習のところなので問題はないはず、と思いつつ教科書を開く。
「おはよ。必修のテスト、頑張んなきゃな。今回は頑張らないとまずい。」
蓮二が、目の下にクマを作ってトボトボと歩いてくる。
その後で、甲介が『必勝』のハチマキを頭に巻き、スキップをしている。
「大丈夫だ!風灯は日頃から勉強をしていて、直前だけ頑張る蓮二とは違う!!」
そう言いながら、蓮二と風灯のまわりを八の字でスキップし続けている。
「……何で、甲介、スキップしてるんだよ。」
あきれた顔で蓮二は、甲介をツッコむ。
すると、甲介はスキップをやめ、その場でジャンプをしだした。
「スキップをして、目線を下を向けられるか?向けないだろう。まず、ビシッと、前を向きながらの全身運動。それにより、全身への血流を流し、テストへ挑む。その結果は?……はい、風灯くん!」
「満点ですか?」
甲介の明るさに助けられる。
そのお礼も兼ねて、付き合ってあげる事にした。
「ブブーーー!不正解!志が高い!」
「………じゃあ、正解は何ですか?コーチ。」
「赤点回避である。その為に、スキップを、して…いる……はぁはぁ……、」
蓮二が、ゆっくりと息が切れた甲介をイスに座らせる。
そして、そのまま机に突っ伏して、眠ってしまった。
「このまま、試験中も寝てたら面白いのにな。」
蓮二が非情な事を、笑って言う。
「今日のイタコは、熱血スポーツマンのコーチだろうね。」
「……っぽい、な。」
「なあ、芸能部の方の宿題は考えてきたか?」
「まぁ。蓮二は?」
風灯は、この1週間、蒼衣の事ばかりを考えているけれど、それをどういう風に説明すれば良いのかわからない。
「俺は、親への反抗。昔は、子役やれって言われてやってたから、それが嫌で辞めた。今度は自分の意志でしたくなった。それだけ。また、飽きたら辞めるだろうし。改めていうと、なんか子供っぽいな。」
「柔軟で強い心だな。うらやましい。」
「あんまり、考え込むなよ?きっかけなんて、みんな、それぞれなんだから。」
俺は、その『きっかけ』が無くなってしまったら、全てを失う気がする。
だから、本当のやりたいことではないのではないか、そんな根本的な事に気がついてしまったんだ。
「うん。ありがとう。元気出た。」
「当たり前じゃん。友達だろ?」
「友達?」
「は?友達だろうよ。じゃなきゃ、何なんだよ。」
そう言いながら、笑って蓮二は、肩に腕をまわしてきた。
ついでに、髪までグシャグシャにしてきて、思わずくすぐったくて笑ってしまう。
こんなに、楽しく笑ったのは久しぶりだ。
「あーあ。もうだめ。今日のテスト。しかも、数学。」
「英語と国語は、なんか、芝居にも関係してそうだけど、数学ってさ、いまいちね。やる気がでない。」
優美と英里紗が、教科書をうちわにしながら、こっちにくる。
「元気ぃー?蓮二に風灯、楽しそうだねぇ。」
「わわ。甲介、寝てるよ。余裕だね。」
「みてみて、優美。この必勝ハチマキ漫画でしか見たこと無いやつ。」
「何処に売ってるのか、あとで聞こ?」
「あー、風灯。頭良いから、教えてよー。どこ出る?」
怒涛のように、トーンが高い声で話しかけられる。
「どこが出るか分かってるから成績が良い訳じゃないよ。予想なら出来るけど。」
「確かに!じゃ、それ、教えて。」
そういいながら、イスをずらして座り教科書を2人で開く。
仲が良いようで女子2人は息ぴったりだ。
そんな様子を見ていたら、寝不足だからだろうか、普段なら絶対に聞かないことを、風灯は聞いてしまう。
「優美と英里紗は、俺の友達?」
2人とも、キョトンとした顔で風灯の額に手を当ててくる。
「え、大丈夫?熱?」
「少しあるかも?蓮二なら告白かと思うけど、風灯はそんな軽くないもんね。」
「……友達だよ。俺も、甲介も、こいつら、も。」
横から、蓮二が教科書をパラパラしながら、代わりに答えてくれた。
ちょっと、こいつら、で、まとめないでよ!という、どなり声は、意外に心地よく安心する。
「うん。ありがとう。」
そろそろ、時間だから甲介を起こしてあげよう。
何もしていないというのに、燃え尽き症候群になったようだった。
気分に整理をつけようともするが、余分なデータが残ったまま断片化された気持ちを、無理矢理に最適化しているようで、気持ちが悪い。
「苦しいな。」
学校まで通学への道のり。
あんなに軽い足取りで通っていたのに、今では重く、息も切れる。
考えすぎて眠れないのも原因かもしれない。
焦って、焦って、昨日の夜は、ほぼ寝ずに滑舌トレーニングをした。
家族は、心配してたまに様子を見に来てくれていたが、どうしてもやめられなかった。
その行為は、自信の裏付けにしていたものだったが、実際には自信なんて簡単に崩れるものだった。
今日は、簡単なテストの日だ。
何も勉強をしていないが、復習のところなので問題はないはず、と思いつつ教科書を開く。
「おはよ。必修のテスト、頑張んなきゃな。今回は頑張らないとまずい。」
蓮二が、目の下にクマを作ってトボトボと歩いてくる。
その後で、甲介が『必勝』のハチマキを頭に巻き、スキップをしている。
「大丈夫だ!風灯は日頃から勉強をしていて、直前だけ頑張る蓮二とは違う!!」
そう言いながら、蓮二と風灯のまわりを八の字でスキップし続けている。
「……何で、甲介、スキップしてるんだよ。」
あきれた顔で蓮二は、甲介をツッコむ。
すると、甲介はスキップをやめ、その場でジャンプをしだした。
「スキップをして、目線を下を向けられるか?向けないだろう。まず、ビシッと、前を向きながらの全身運動。それにより、全身への血流を流し、テストへ挑む。その結果は?……はい、風灯くん!」
「満点ですか?」
甲介の明るさに助けられる。
そのお礼も兼ねて、付き合ってあげる事にした。
「ブブーーー!不正解!志が高い!」
「………じゃあ、正解は何ですか?コーチ。」
「赤点回避である。その為に、スキップを、して…いる……はぁはぁ……、」
蓮二が、ゆっくりと息が切れた甲介をイスに座らせる。
そして、そのまま机に突っ伏して、眠ってしまった。
「このまま、試験中も寝てたら面白いのにな。」
蓮二が非情な事を、笑って言う。
「今日のイタコは、熱血スポーツマンのコーチだろうね。」
「……っぽい、な。」
「なあ、芸能部の方の宿題は考えてきたか?」
「まぁ。蓮二は?」
風灯は、この1週間、蒼衣の事ばかりを考えているけれど、それをどういう風に説明すれば良いのかわからない。
「俺は、親への反抗。昔は、子役やれって言われてやってたから、それが嫌で辞めた。今度は自分の意志でしたくなった。それだけ。また、飽きたら辞めるだろうし。改めていうと、なんか子供っぽいな。」
「柔軟で強い心だな。うらやましい。」
「あんまり、考え込むなよ?きっかけなんて、みんな、それぞれなんだから。」
俺は、その『きっかけ』が無くなってしまったら、全てを失う気がする。
だから、本当のやりたいことではないのではないか、そんな根本的な事に気がついてしまったんだ。
「うん。ありがとう。元気出た。」
「当たり前じゃん。友達だろ?」
「友達?」
「は?友達だろうよ。じゃなきゃ、何なんだよ。」
そう言いながら、笑って蓮二は、肩に腕をまわしてきた。
ついでに、髪までグシャグシャにしてきて、思わずくすぐったくて笑ってしまう。
こんなに、楽しく笑ったのは久しぶりだ。
「あーあ。もうだめ。今日のテスト。しかも、数学。」
「英語と国語は、なんか、芝居にも関係してそうだけど、数学ってさ、いまいちね。やる気がでない。」
優美と英里紗が、教科書をうちわにしながら、こっちにくる。
「元気ぃー?蓮二に風灯、楽しそうだねぇ。」
「わわ。甲介、寝てるよ。余裕だね。」
「みてみて、優美。この必勝ハチマキ漫画でしか見たこと無いやつ。」
「何処に売ってるのか、あとで聞こ?」
「あー、風灯。頭良いから、教えてよー。どこ出る?」
怒涛のように、トーンが高い声で話しかけられる。
「どこが出るか分かってるから成績が良い訳じゃないよ。予想なら出来るけど。」
「確かに!じゃ、それ、教えて。」
そういいながら、イスをずらして座り教科書を2人で開く。
仲が良いようで女子2人は息ぴったりだ。
そんな様子を見ていたら、寝不足だからだろうか、普段なら絶対に聞かないことを、風灯は聞いてしまう。
「優美と英里紗は、俺の友達?」
2人とも、キョトンとした顔で風灯の額に手を当ててくる。
「え、大丈夫?熱?」
「少しあるかも?蓮二なら告白かと思うけど、風灯はそんな軽くないもんね。」
「……友達だよ。俺も、甲介も、こいつら、も。」
横から、蓮二が教科書をパラパラしながら、代わりに答えてくれた。
ちょっと、こいつら、で、まとめないでよ!という、どなり声は、意外に心地よく安心する。
「うん。ありがとう。」
そろそろ、時間だから甲介を起こしてあげよう。
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