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幕間ショートショート~卒業祝でのポジション取り~
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「添い寝は大賛成だけど、アズの隣はどうすんだよ」
朔が奨に聞く。
珍しく今日は奨の部屋に、朔と漣が来ている。
「そんなの俺に決まってるでしょ」
「はぁ?」
「やっぱり……」
澄ました顔で当然というように言い放つ奨に、漣は不満げな声をあげ、朔は頭を抱える。
「だってさ、俺の卒業祝なんだよ、当然だろ?大体卒業祝の案に乗ってきたのはそっちだし、アズの隣じゃなかったら俺にはなんの意味もないし、祝われてない」
「そう言うと思った」
朔がため息とともに言った。
「なに? 話あるって言うから時間取ったけど、このこと? アズのことで大事な要件っていうから何かと思っただろ」
「大事に決まってんじゃん」
漣がいつになく強めの語気で言う。
「大体さ、アズがその卒業祝を了承するのか?」
「別に強制じゃないし、嫌なら辞退してくれて構わない。もともと俺だけのアズだ。卒業するのも俺だけだし、俺だけの卒業祝で大いに結構」
「お前さぁ……」
アズと付き合うことになってから、初心なアズに無理はさせない、抜け駆けしない、ということを3人の中で約束した。
ただ、アズの初心さは漣と朔の想像以上のものだった。
今まで何の不自由もなかった2人だ、あくまでも汚れのない天使であったことに安堵しつつも、告白を受け入れてくれた途端、恥ずかしがって目も合わない状況にノイローゼになりそうだったのだ。そんな中でも一人涼しい顔の奨。
「お前さ、どっかおかしいの?」
「どこが?」
「この状況、なんで耐えられるわけ?」
「俺が何年待ったと思ってるんだ? お前らも我慢しろ」
「……鬼」
「無理……」
「全く……まぁ、気持ちは分からなくはないけど。そろそろ次の段階に進みたいとは俺も思っていたところだし」
そう言っていつから計画していたのか、卒業祝と称してアズとの関係を半ば強引にステップアップさせる内容を話して聞かせたのだ。
「そう上手いこといくかなぁ」
「だから別に嫌なら来るなと言っている」
「嫌なんていってねーし……」
「大体お前勉強とか大丈夫なわけ?」
「問題ない」
「心配するだけ無駄ってやつじゃん」
「だって医学部だぜ」
「先日推薦確定した」
「え……」
「すげー」
「どーも」
こうして、アズにしてもらう卒業祝が決まった。
卒業式が近づくにつれ、漣と朔にはハッキリしておきたい気持ちが大きくなった。
今まで気が付かないようにしてきた――いや、まさか自分が漏れるとは思ってもいなかったというのが正解なのだが――問題があることに。
そうして冒頭へ戻る。
「……分かった。でも、でもさ、アズを思う気持ちは一緒なんだからチャンスはくれてもいいんじゃねー?」
「お前らもまとめて恋人候補にしたこと自体チャンスをやっているのと同じだけど」
「ほんと、鬼畜」
「じゃあ漣はなし」
「なんでだよ」
「とにかく、一回ジャンケンさせて!」
「はぁ……」
粘りに粘ったおかげで、どうにかジャンケンに持ち込む。
結果。
グー2人、パー1人。
奨の一人勝ち。
「まじか……」
「お前、後出し……?」
「どう見ても同時だっただろ。それ以上何か言うと本当に追い出すからね」
「……わりぃ」
「な、なんでだよー」
「ジャンケンは最初にグーを出す確率が高いことが統計で出ている」
「え……」
「そういうことは教えとけよ」
「ジャンケンと言い出したのはそっちだろ」
さすがにグウの根も出ない2人。
その後、漣と朔がやはりジャンケンをし――「なぁなぁ、3回勝負にしようぜ」「いいけど」――何度目かの勝負の末――どちらかの旗色が悪くなると「今度カフェテリアで奢る」「いらね」「体育のアズとのストレッチ1回譲る」「それぐらいじゃダメ」など様々な攻防が繰り返された――、結局買ったのは朔だった。
「っしゃあーー!!」
「……」
朔が雄叫びを上げ、漣は自分の出したパーを見つめて黙り込む。
「おい、最初はグーが高いんじゃないのかよ」
「もう何回やってると思ってるの? もう運でしょ。あ、それから間違っても俺の隣には来るなよ。お前寝相悪そうだから」
奨から笑顔でトドメの一撃をもらい、さすがの漣も崩れ落ちた。
こうして、添い寝はアズの隣に奨と朔、朔の隣に漣ということなったのだった。
朔が奨に聞く。
珍しく今日は奨の部屋に、朔と漣が来ている。
「そんなの俺に決まってるでしょ」
「はぁ?」
「やっぱり……」
澄ました顔で当然というように言い放つ奨に、漣は不満げな声をあげ、朔は頭を抱える。
「だってさ、俺の卒業祝なんだよ、当然だろ?大体卒業祝の案に乗ってきたのはそっちだし、アズの隣じゃなかったら俺にはなんの意味もないし、祝われてない」
「そう言うと思った」
朔がため息とともに言った。
「なに? 話あるって言うから時間取ったけど、このこと? アズのことで大事な要件っていうから何かと思っただろ」
「大事に決まってんじゃん」
漣がいつになく強めの語気で言う。
「大体さ、アズがその卒業祝を了承するのか?」
「別に強制じゃないし、嫌なら辞退してくれて構わない。もともと俺だけのアズだ。卒業するのも俺だけだし、俺だけの卒業祝で大いに結構」
「お前さぁ……」
アズと付き合うことになってから、初心なアズに無理はさせない、抜け駆けしない、ということを3人の中で約束した。
ただ、アズの初心さは漣と朔の想像以上のものだった。
今まで何の不自由もなかった2人だ、あくまでも汚れのない天使であったことに安堵しつつも、告白を受け入れてくれた途端、恥ずかしがって目も合わない状況にノイローゼになりそうだったのだ。そんな中でも一人涼しい顔の奨。
「お前さ、どっかおかしいの?」
「どこが?」
「この状況、なんで耐えられるわけ?」
「俺が何年待ったと思ってるんだ? お前らも我慢しろ」
「……鬼」
「無理……」
「全く……まぁ、気持ちは分からなくはないけど。そろそろ次の段階に進みたいとは俺も思っていたところだし」
そう言っていつから計画していたのか、卒業祝と称してアズとの関係を半ば強引にステップアップさせる内容を話して聞かせたのだ。
「そう上手いこといくかなぁ」
「だから別に嫌なら来るなと言っている」
「嫌なんていってねーし……」
「大体お前勉強とか大丈夫なわけ?」
「問題ない」
「心配するだけ無駄ってやつじゃん」
「だって医学部だぜ」
「先日推薦確定した」
「え……」
「すげー」
「どーも」
こうして、アズにしてもらう卒業祝が決まった。
卒業式が近づくにつれ、漣と朔にはハッキリしておきたい気持ちが大きくなった。
今まで気が付かないようにしてきた――いや、まさか自分が漏れるとは思ってもいなかったというのが正解なのだが――問題があることに。
そうして冒頭へ戻る。
「……分かった。でも、でもさ、アズを思う気持ちは一緒なんだからチャンスはくれてもいいんじゃねー?」
「お前らもまとめて恋人候補にしたこと自体チャンスをやっているのと同じだけど」
「ほんと、鬼畜」
「じゃあ漣はなし」
「なんでだよ」
「とにかく、一回ジャンケンさせて!」
「はぁ……」
粘りに粘ったおかげで、どうにかジャンケンに持ち込む。
結果。
グー2人、パー1人。
奨の一人勝ち。
「まじか……」
「お前、後出し……?」
「どう見ても同時だっただろ。それ以上何か言うと本当に追い出すからね」
「……わりぃ」
「な、なんでだよー」
「ジャンケンは最初にグーを出す確率が高いことが統計で出ている」
「え……」
「そういうことは教えとけよ」
「ジャンケンと言い出したのはそっちだろ」
さすがにグウの根も出ない2人。
その後、漣と朔がやはりジャンケンをし――「なぁなぁ、3回勝負にしようぜ」「いいけど」――何度目かの勝負の末――どちらかの旗色が悪くなると「今度カフェテリアで奢る」「いらね」「体育のアズとのストレッチ1回譲る」「それぐらいじゃダメ」など様々な攻防が繰り返された――、結局買ったのは朔だった。
「っしゃあーー!!」
「……」
朔が雄叫びを上げ、漣は自分の出したパーを見つめて黙り込む。
「おい、最初はグーが高いんじゃないのかよ」
「もう何回やってると思ってるの? もう運でしょ。あ、それから間違っても俺の隣には来るなよ。お前寝相悪そうだから」
奨から笑顔でトドメの一撃をもらい、さすがの漣も崩れ落ちた。
こうして、添い寝はアズの隣に奨と朔、朔の隣に漣ということなったのだった。
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