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アズ同盟
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「アズ、そろそろ奨のこと起こしてやれ」
「あ、そうだね」
朔がリビングに入ってくる。
みんな忙しいけど、誰かしら家にいてくれるよう調整してくれているみたいだ。
今日は朔が在宅勤務で、奨くんは昼からの勤務。漣は早朝から撮影だ。
奨くんの部屋に向かう。
コンコン。
返事はない。まだ寝てるのかな?
そっと部屋に入ると、昼前なのに厚い遮光カーテンのせいで暗いままだ。ベッドサイドのルームランプだけがぼんやりと優しい光をほのかに灯している。
電気はつけずにそのままベッドサイドまで行く。
「奨くん、時間だよ? そろそろ起きて……」
「ん……」
「ほら、起きて」
「……お姫様からのキスがないと起きられない」
もう……。
昨日は奨くんと一緒に寝る日だったから、朝まで一緒に居たのに。
顔を近づけると、グッと腕を引かれ奨くんの唇が重なる。
「もう、奨くん! 起きてるじゃない」
「待てなかっただけ、さっきまでは寝てたよ」
そのままもう片方の手が後頭部に添えられる。奨がニッコリ微笑むと、またキスされる。今度は舌が入ってくるが、後頭部を抑えられてるため逃げられない。
「ん、んんっ、んーっ」
軽くげんこつをつくって胸を叩くが効果はなし。
どんどん深くなるキスに昨日の夜を思い出し、体が熱く息も上がってきてしまう。
「おい、そこまでだ」
ガチャリとドアが開いて、パッと電気がつく。
「今日は俺の日だろ」
朔がドアに寄りかかり腕を組んでこちらを、奨くんを睨む。
「ふん」
奨くんは俺の後頭部から手を離した。そのままベッドから出てバスローブを羽織る。
奨くんは寝る時はいつも上半身裸だ。
「お前、絶対確信犯だろ」
「この前のお返しだよ」
「チッ。さっさとセンセイは病院へ行きやがれ」
「はいはい。君だってセンセイだろ? 弁護士センセイ」
くすっと笑いながら奨くんはシャワーに行った。
朔は奨くんが居なくなってから、まだ奨くんのベッドにいた俺のところにきて、奨くんと同じくらいのキスをする。
朔は俺の顎に伝うどちらのか分からない唾液を舐め取ると、
「上書き。今日はこれから俺だけ見て」
と言って先に部屋から出て行った。
俺は奨くんと朔のキスでぼーっとしてしまっていた頭を切り替え、二人にコーヒーを入れるためキッチンへと向かった。
**
アズが結婚を了承してくれたことで、俺たちはまたルールを作った。
一つ、夜寝る時は一対一
一つ、抱く時も一対一
一つ、アズを一人にしない
一つ、何があってもアズを守る
一つ、必ずアズを幸せにする
まぁ、時々俺たちが我慢出来ずアズが許してくれたときに複数プレイになってしまうことはあるけど。基本的にはアズは一対一でしっかり俺らと向き合ってくれるから不満はない。
……うん、カッコつけすぎた。
隙きあらばアズの心も身体も自分色に染めてやろうと狙ってる。やり過ぎはしないけど。それは他の2人も一緒だ。
このルールを守るため、それぞれ適していると思う職に就いた。
漣はモデル。
俺は弁護士。
奨は医者。
普通のサラリーマンと違って時間に融通は多少効くし、それぞれの分野でアズを守ることも出来る。
奨は専門は脳外科だけど、実は皮膚科の研究も進めている。それは取りも直さずアズのケロイドの治療のためだ。本人はアズには言わないし、俺たちにもあまり言わないが、ユズちゃんが教えてくれた。
まあ、もともと医者家系だし、医学部に進んだ時点で分かってはいたけど。既定路線とはいえ、その通りに進むってのには並大抵の努力じゃないのはわかってる。というか、子供の頃からアズのことだけ考えてきたんだなって改めて思わされた。海外からの手術依頼も増えているらしいけど、アズが一番だって日本にベースを置いている。今だって頻繁に海外に行って、疲れた顔して帰ってきて、心配したアズにつきっきりで世話を焼かせたりしている。
……やっぱり2~3年どっかに行ってしまえ。
漣は色んな事務所にスカウトされて「アズを振った業界にリベンジしてやる」とか変な動機だったけど、しっかり稼いでくるし、ユズちゃんと連携してアズに変なスカウトや虫がつかないようにしている。
ちょっと売れすぎて忙しすぎることが盲点だったみたいだが……、売れすぎってとこはムカつくけど、忙しすぎてアズシフト以外ほとんど家にもいられねーってのはざまぁって思う。それでもアズシフトの時は何が何でもスケジュール空けてくるし、守ってるのは、まぁ認めてやってもいい。
モデルなんて一生の仕事にできねーぞってに言ったら「知ってる。搾り取れるだけ搾り取ったら引退する」って言ってたし、商学部選んだのも将来は自分でブランドを興すつもりらしい。今も雑誌やショーでアイツが身につけたってだけで在庫が一斉になくなるらしい。
アイツセンスだけは昔からあるしな……。
俺は弁護士になった。
もともと興味はあったし、法律を知ることでアズを守れるならって。
ちなみに俺だってスカウトはされた。漣と一緒に。でもそれに何だかんだで世の中パワーゲームだ。肩書でもなんでもパワーがある方が強い。これは親父とか見ていても感じていたこと。同じ成果をあげても肩書がある方が凄いと言われ、同じミスをしても肩書があればもみ消せる。割りと大きな会社を経営している親は相当後ろ暗いこともしてんだろうなと思ったことも一度や二度ではない。高校でアズに会うまで割りとやさぐれていたのはそのせい。けれど、それについて淡々とスマートに対処していく顧問弁護士(これも一人二人じゃない)とか見ていて憧れもあった。
それにこれだけ気をつけていても、アズをなるべく外に出さないようにしてもストーカーやらなんやら湧いてしまうことがある。そういう時に表からもしっかり手を回せるようにしたかった。弁護士だって言えばたいてい交渉もスムーズだ。検察や裁判官にもツテづくりは欠かさない。先輩後輩、同期。アズとの時間が潰れるのを我慢して付き合ってやったり恩を売りまくったおかげで、俺が声を掛ければだいたいの情報が集まるし、動かせる。今は警察の使えるやつをピックアップ中。
もちろん裏からなら俺ら3人ならツテはさらに色々ある。
なんだかんだで、結局今も『アズ同盟』は続いている。
「あ、そうだね」
朔がリビングに入ってくる。
みんな忙しいけど、誰かしら家にいてくれるよう調整してくれているみたいだ。
今日は朔が在宅勤務で、奨くんは昼からの勤務。漣は早朝から撮影だ。
奨くんの部屋に向かう。
コンコン。
返事はない。まだ寝てるのかな?
そっと部屋に入ると、昼前なのに厚い遮光カーテンのせいで暗いままだ。ベッドサイドのルームランプだけがぼんやりと優しい光をほのかに灯している。
電気はつけずにそのままベッドサイドまで行く。
「奨くん、時間だよ? そろそろ起きて……」
「ん……」
「ほら、起きて」
「……お姫様からのキスがないと起きられない」
もう……。
昨日は奨くんと一緒に寝る日だったから、朝まで一緒に居たのに。
顔を近づけると、グッと腕を引かれ奨くんの唇が重なる。
「もう、奨くん! 起きてるじゃない」
「待てなかっただけ、さっきまでは寝てたよ」
そのままもう片方の手が後頭部に添えられる。奨がニッコリ微笑むと、またキスされる。今度は舌が入ってくるが、後頭部を抑えられてるため逃げられない。
「ん、んんっ、んーっ」
軽くげんこつをつくって胸を叩くが効果はなし。
どんどん深くなるキスに昨日の夜を思い出し、体が熱く息も上がってきてしまう。
「おい、そこまでだ」
ガチャリとドアが開いて、パッと電気がつく。
「今日は俺の日だろ」
朔がドアに寄りかかり腕を組んでこちらを、奨くんを睨む。
「ふん」
奨くんは俺の後頭部から手を離した。そのままベッドから出てバスローブを羽織る。
奨くんは寝る時はいつも上半身裸だ。
「お前、絶対確信犯だろ」
「この前のお返しだよ」
「チッ。さっさとセンセイは病院へ行きやがれ」
「はいはい。君だってセンセイだろ? 弁護士センセイ」
くすっと笑いながら奨くんはシャワーに行った。
朔は奨くんが居なくなってから、まだ奨くんのベッドにいた俺のところにきて、奨くんと同じくらいのキスをする。
朔は俺の顎に伝うどちらのか分からない唾液を舐め取ると、
「上書き。今日はこれから俺だけ見て」
と言って先に部屋から出て行った。
俺は奨くんと朔のキスでぼーっとしてしまっていた頭を切り替え、二人にコーヒーを入れるためキッチンへと向かった。
**
アズが結婚を了承してくれたことで、俺たちはまたルールを作った。
一つ、夜寝る時は一対一
一つ、抱く時も一対一
一つ、アズを一人にしない
一つ、何があってもアズを守る
一つ、必ずアズを幸せにする
まぁ、時々俺たちが我慢出来ずアズが許してくれたときに複数プレイになってしまうことはあるけど。基本的にはアズは一対一でしっかり俺らと向き合ってくれるから不満はない。
……うん、カッコつけすぎた。
隙きあらばアズの心も身体も自分色に染めてやろうと狙ってる。やり過ぎはしないけど。それは他の2人も一緒だ。
このルールを守るため、それぞれ適していると思う職に就いた。
漣はモデル。
俺は弁護士。
奨は医者。
普通のサラリーマンと違って時間に融通は多少効くし、それぞれの分野でアズを守ることも出来る。
奨は専門は脳外科だけど、実は皮膚科の研究も進めている。それは取りも直さずアズのケロイドの治療のためだ。本人はアズには言わないし、俺たちにもあまり言わないが、ユズちゃんが教えてくれた。
まあ、もともと医者家系だし、医学部に進んだ時点で分かってはいたけど。既定路線とはいえ、その通りに進むってのには並大抵の努力じゃないのはわかってる。というか、子供の頃からアズのことだけ考えてきたんだなって改めて思わされた。海外からの手術依頼も増えているらしいけど、アズが一番だって日本にベースを置いている。今だって頻繁に海外に行って、疲れた顔して帰ってきて、心配したアズにつきっきりで世話を焼かせたりしている。
……やっぱり2~3年どっかに行ってしまえ。
漣は色んな事務所にスカウトされて「アズを振った業界にリベンジしてやる」とか変な動機だったけど、しっかり稼いでくるし、ユズちゃんと連携してアズに変なスカウトや虫がつかないようにしている。
ちょっと売れすぎて忙しすぎることが盲点だったみたいだが……、売れすぎってとこはムカつくけど、忙しすぎてアズシフト以外ほとんど家にもいられねーってのはざまぁって思う。それでもアズシフトの時は何が何でもスケジュール空けてくるし、守ってるのは、まぁ認めてやってもいい。
モデルなんて一生の仕事にできねーぞってに言ったら「知ってる。搾り取れるだけ搾り取ったら引退する」って言ってたし、商学部選んだのも将来は自分でブランドを興すつもりらしい。今も雑誌やショーでアイツが身につけたってだけで在庫が一斉になくなるらしい。
アイツセンスだけは昔からあるしな……。
俺は弁護士になった。
もともと興味はあったし、法律を知ることでアズを守れるならって。
ちなみに俺だってスカウトはされた。漣と一緒に。でもそれに何だかんだで世の中パワーゲームだ。肩書でもなんでもパワーがある方が強い。これは親父とか見ていても感じていたこと。同じ成果をあげても肩書がある方が凄いと言われ、同じミスをしても肩書があればもみ消せる。割りと大きな会社を経営している親は相当後ろ暗いこともしてんだろうなと思ったことも一度や二度ではない。高校でアズに会うまで割りとやさぐれていたのはそのせい。けれど、それについて淡々とスマートに対処していく顧問弁護士(これも一人二人じゃない)とか見ていて憧れもあった。
それにこれだけ気をつけていても、アズをなるべく外に出さないようにしてもストーカーやらなんやら湧いてしまうことがある。そういう時に表からもしっかり手を回せるようにしたかった。弁護士だって言えばたいてい交渉もスムーズだ。検察や裁判官にもツテづくりは欠かさない。先輩後輩、同期。アズとの時間が潰れるのを我慢して付き合ってやったり恩を売りまくったおかげで、俺が声を掛ければだいたいの情報が集まるし、動かせる。今は警察の使えるやつをピックアップ中。
もちろん裏からなら俺ら3人ならツテはさらに色々ある。
なんだかんだで、結局今も『アズ同盟』は続いている。
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