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「でさー、アズはもう俺に決めたんだよな?」
「は? ほんとにお前何いってんの? 俺に決まってんだろ?」
「二人ともアズを困らせないで。アズは俺を選ぶんだから」
「うるさい、とりあえず3人とも黙って食べられないわけ? 私のティータイム邪魔するなら3人とも叩き出すわよ」
「お前、そんなに食べてると太るぞ」
「は? 私がそんなミスするわけないでしょ」
「ユズちゃんこれ大好物だもんね。ほら、俺のもあげるから……」
「アズ、ありがと!じゃあ、あーん」
「はい、あーん」
「! あ、アズ! 俺にもあーんして!」
「は? お前になんてさせねーよ、アズ俺にして」
「え、うん、でももうそんなに残ってないし……」
「じゃあ俺のをあげるよ、ほら、アズ、あーん」
「あーん。ありがと奨くん」
「お前はいつもっ! 抜け駆けすんなっ」
アズの家のダイニングでは恒例のティータイム。
今日はお手伝いさんのタキさんの絶品手作りアップルパイだ。両親が仕事で忙しく、おやつだけでなく食事もほぼ 二人きりだったダイニングだが、今はいつでも騒がしい。
アズが傷跡を見せてくれた日、俺たちは改めてアズに告白をした。
アズは今までになく赤くなり、息も絶え絶えだったが、
「ありがとう」
と、はにかんだ笑顔を見せてくれた。
一番近くにいて、いろんなアズを見てきたけれど、俺の言葉に俺の態度にいちいち赤くなり、目を潤ませるアズは新鮮でさらに可愛らしく、隣とは言え家に帰したくない、このまま自室に囲ってしまおうと何度思ったことか。
でも、恥ずかしがりながらも嬉しそうなアズの笑顔を目の当たりにすると、自分の黒い気持ちより、あたたかな幸せが胸を満たす。
本当の意味で大切な人だということが、アズに伝わったから。
ずっとずっと遠かったアズの心に触れられたから。
ただ、その笑顔をあの二人にも見せていることは問題しかない。
もちろんクリスマスプレゼントは俺からも贈った。……というか、結局アズの家でユズも含めた5人での騒々しいクリスマスとなってしまった。
朔は漣より自分の方が先だといつも言っているが、俺から言わせると二人とも目クソ鼻クソだ。たった数ヶ月でアズに触れるなんて。何とかして二人から引き離そうとするが、こちらの気配を察知して、そういう時だけ二人して共謀するから質が悪い。
アイツラも相当の腹黒だったという訳か。
今はとにかくアズが「恋人」として俺を見てくれていることについてのみ納得するようにしている。いずれは誰かを、いや、俺を選ぶことになるだろうが、アズ自身「好き」という感情をどうやって扱っていいのか戸惑っている部分もあるため、ひとまずは3人ともと付き合ってみるという形になったのだ。
朝は俺がアズを学校まで一緒に送っていき、帰りはあの二人がアズを送って帰る。
ランチはだいたい学内のカフェテリアなのでそこで待ち合わせ3人で食べる。最近は俺たちが行くとすでに良い席が誰かによってキープされているため、席を探すことをしなくても良くなっている。誰が始めたか不明だが、キープした席を譲る際に俺たちと少しでも接することができるためか、キープするためだけに授業を抜け出す生徒も出てきており、近々生徒会でも問題となりそうだ。
「あまり面倒ごとにはしたくないな……」
先生の方から手を回すか、あの二人を使ってこちらに迷惑となることはしないよう釘を刺すか……。
俺にはもちろん劣るが、アイツラもまぁ美形の部類に入るせいか、アズの虫除けにはなかなか重宝している。本当は俺が帰りも付き添いたい所だが、向こうの大学へ通学せず日本に帰国する時の親との条件を満たすため放課後は時間が取れないことも多く、かと言ってアズを一人にするわけにもいかず(どうせあの二人がくっついているだろうけど)二人に帰りは任せることについては譲歩したんだ、そのくらい役に立ってもらうかな。
大体送っていって大人しく自分の家に帰ればいいものの、そのままアズの家に上がっていることが多いから、俺も帰宅後はすぐにアズの家に行くようにしている。もちろん帰宅後もすることは多いが、1秒でも長くアズの近くに居たい。アズを見ていたい。
ただ、どうしても二人に比べてアズといる時間が少ない。それでも夜はどうしたって俺の方が必然的に遅くまでアズの家には居られるため、そこも今のところは目を瞑っている。
それでも3人揃うとやはり時々は誰を選ぶかという話になってしまう。ただ、いつもこの話になるとアズが困った顔をして、動揺するから、あまり深刻にならない程度にしている。
本当は俺だけを見てほしいけど、とりあえず今はこのままでもいい。少しづつ囲い込んでいって、いつか俺だけを見てもらえば……。
奨は漣と朔と言い合いをするユズをなだめるアズを見ながら、静かに紅茶を飲んだ。
「は? ほんとにお前何いってんの? 俺に決まってんだろ?」
「二人ともアズを困らせないで。アズは俺を選ぶんだから」
「うるさい、とりあえず3人とも黙って食べられないわけ? 私のティータイム邪魔するなら3人とも叩き出すわよ」
「お前、そんなに食べてると太るぞ」
「は? 私がそんなミスするわけないでしょ」
「ユズちゃんこれ大好物だもんね。ほら、俺のもあげるから……」
「アズ、ありがと!じゃあ、あーん」
「はい、あーん」
「! あ、アズ! 俺にもあーんして!」
「は? お前になんてさせねーよ、アズ俺にして」
「え、うん、でももうそんなに残ってないし……」
「じゃあ俺のをあげるよ、ほら、アズ、あーん」
「あーん。ありがと奨くん」
「お前はいつもっ! 抜け駆けすんなっ」
アズの家のダイニングでは恒例のティータイム。
今日はお手伝いさんのタキさんの絶品手作りアップルパイだ。両親が仕事で忙しく、おやつだけでなく食事もほぼ 二人きりだったダイニングだが、今はいつでも騒がしい。
アズが傷跡を見せてくれた日、俺たちは改めてアズに告白をした。
アズは今までになく赤くなり、息も絶え絶えだったが、
「ありがとう」
と、はにかんだ笑顔を見せてくれた。
一番近くにいて、いろんなアズを見てきたけれど、俺の言葉に俺の態度にいちいち赤くなり、目を潤ませるアズは新鮮でさらに可愛らしく、隣とは言え家に帰したくない、このまま自室に囲ってしまおうと何度思ったことか。
でも、恥ずかしがりながらも嬉しそうなアズの笑顔を目の当たりにすると、自分の黒い気持ちより、あたたかな幸せが胸を満たす。
本当の意味で大切な人だということが、アズに伝わったから。
ずっとずっと遠かったアズの心に触れられたから。
ただ、その笑顔をあの二人にも見せていることは問題しかない。
もちろんクリスマスプレゼントは俺からも贈った。……というか、結局アズの家でユズも含めた5人での騒々しいクリスマスとなってしまった。
朔は漣より自分の方が先だといつも言っているが、俺から言わせると二人とも目クソ鼻クソだ。たった数ヶ月でアズに触れるなんて。何とかして二人から引き離そうとするが、こちらの気配を察知して、そういう時だけ二人して共謀するから質が悪い。
アイツラも相当の腹黒だったという訳か。
今はとにかくアズが「恋人」として俺を見てくれていることについてのみ納得するようにしている。いずれは誰かを、いや、俺を選ぶことになるだろうが、アズ自身「好き」という感情をどうやって扱っていいのか戸惑っている部分もあるため、ひとまずは3人ともと付き合ってみるという形になったのだ。
朝は俺がアズを学校まで一緒に送っていき、帰りはあの二人がアズを送って帰る。
ランチはだいたい学内のカフェテリアなのでそこで待ち合わせ3人で食べる。最近は俺たちが行くとすでに良い席が誰かによってキープされているため、席を探すことをしなくても良くなっている。誰が始めたか不明だが、キープした席を譲る際に俺たちと少しでも接することができるためか、キープするためだけに授業を抜け出す生徒も出てきており、近々生徒会でも問題となりそうだ。
「あまり面倒ごとにはしたくないな……」
先生の方から手を回すか、あの二人を使ってこちらに迷惑となることはしないよう釘を刺すか……。
俺にはもちろん劣るが、アイツラもまぁ美形の部類に入るせいか、アズの虫除けにはなかなか重宝している。本当は俺が帰りも付き添いたい所だが、向こうの大学へ通学せず日本に帰国する時の親との条件を満たすため放課後は時間が取れないことも多く、かと言ってアズを一人にするわけにもいかず(どうせあの二人がくっついているだろうけど)二人に帰りは任せることについては譲歩したんだ、そのくらい役に立ってもらうかな。
大体送っていって大人しく自分の家に帰ればいいものの、そのままアズの家に上がっていることが多いから、俺も帰宅後はすぐにアズの家に行くようにしている。もちろん帰宅後もすることは多いが、1秒でも長くアズの近くに居たい。アズを見ていたい。
ただ、どうしても二人に比べてアズといる時間が少ない。それでも夜はどうしたって俺の方が必然的に遅くまでアズの家には居られるため、そこも今のところは目を瞑っている。
それでも3人揃うとやはり時々は誰を選ぶかという話になってしまう。ただ、いつもこの話になるとアズが困った顔をして、動揺するから、あまり深刻にならない程度にしている。
本当は俺だけを見てほしいけど、とりあえず今はこのままでもいい。少しづつ囲い込んでいって、いつか俺だけを見てもらえば……。
奨は漣と朔と言い合いをするユズをなだめるアズを見ながら、静かに紅茶を飲んだ。
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