サンタからの贈り物

未瑠

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 日毎に寒さが増してくるころ、毎日同じ時間だというのにもうすでにすっかり日が落ちた中を保育園へお迎えに行った帰り道、なにやらご機嫌ななめなご様子。
 どうしたのかな? と思っていると、繋いだ手をギュッとされ、
「ほんとはサンタっていないんだって! パパとママなんでしょ?! 嘘つき!」
 と言った。
  あぁ、そんなこと言い出す年になったんだな。成長したね。
それだけでママは嬉しいよ。

 真っ赤な顔でプクッと頬をふくらませる我が子に、つい笑ってしまいそうになるが、ここは真剣な顔をしておかないと……。
「え? ママ嘘つきなの? 唯人はサンタさん居ないっていうの? どうして?」
「だって、ソウちゃんが言ってた! サンタさんは居なくて、本当はパパとママなんだって。」
「そうかな?」
「……違うの?」
 大きな目に涙を溜めながら探るように見つめてくる。
「だってさ、唯人、サンタさんに会ったことあるでしょ?」
「え?」
「ほら、3年前くらいだったかな? 駅前のショッピングモールで。大きなクリスマスツリーの前で一緒に写真も撮ったでしょ?」
「うーん……」
 すぐには思い出せない様子。それはそうか、だってまだ3歳だったもんね。
「ほら、見て?」
 スマホに保存してある写真を見せる。


 わざわざフィンランドから来たというサンタは長く真っ白な付けヒゲと、ながい眉毛の下の青い瞳が優しく、見事に大きなお腹をしていた。赤と白の定番のサンタ服にサンタ帽を被ったサンタの膝の上で緊張した顔で笑顔もない小さな子が写っている。3歳の唯人ゆいとだ。
「ほんとだ!」
「でしょ? だからちゃーんとサンタはいるんだよ」
「うん、良かったぁ……。じゃあ今年も来てくれるかな?」
「いい子にしてたら来てくれるよ。」
「ほんと?! あ、お手紙書かないとね!」
 今年は何をお願いしようかなぁとウキウキしている小さな手を握って、イルミネーションに彩られた道を歩く。



 みんなさ、サンタは本当は居ないって一回はがっかりするんだよね。
 信じてたサンタがパパとママだったって。
  自分にも覚えがある。
 ガッカリしたけど、でもそれってサンタが本当にいないことの証明にはならないんだよね。
 いる証明よりいない証明の方が難しい、とか言ったらどんな反応するのかな? まだこの子に言ってもナゾナゾを出しているような感じかな?
 いつまた「サンタはいないんでしょ」って言い出すのかな?
 今度は写真見せても納得しないかな?
 ようやく寝付いた唯人のぷにぷにのほっぺをそっとつついてみた。

 帰ってから大はしゃぎで折り紙にクレヨンでサンタの絵とあれが欲しい、これが欲しいと何枚も書いていた。寝る直前に帰ってきたパパに「やっぱりサンタさん居るんだって!!」と言って抱きついていた。パパは帰っていきなり主語のない報告をされやや驚いた顔はしたものの、「そうか、良かったな」とすぐに微笑み、唯人の頭を撫でていた。うん、あなたと結婚して良かった。


  なんでだろうね?
大人になればなるほど、サンタが本当にいるって思うのは。
 目に見えないプレゼントが一番のプレゼントって分かってくるからなのかな?

 君の成長がパパとママにはプレゼントなんだ。
 それにね、本当にサンタはいるんだよ。
 ママはそう信じている。
 だってクリスマスの日、キラキラの君の顔が見られるもの。それってサンタからのママとパパへのプレゼントでしょ? サンタが居ないと見られない顔だもの。


 いつか君にも心からそう思える素敵な時間が訪れますように。
 誰かを想う心を持てますように。

 サンタは願いを叶えてくれる魔法使いじゃないけれど、サンタを、妖精を信じたいこの季節に願わずにはいられない。

「ママの靴下借りるね」と自分より大きな靴下を選んで枕元に置いてあるけど、その靴下にも入りきれないんだな、プレゼント。だから靴下の中にはお菓子だけ。
 がっかりするかな? 怒るかな?
 大丈夫、リビングのクリスマスツリーの下に置いてあるから。

 0時を回った。

――メリークリスマス。

 朝にはきっと、あなたのとびきりの笑顔に会える。




**



「やっぱりそうだよねー」

 今しがた出張中の彼から送られてきたメールを確認してベッドに倒れ込む。

――その日も出張の予定

 うん、知ってた。
 いや、知らなかったから、もしかしてって思ってメールしてみたけど……、案の定の回答。
 彼はやり手のビジネスマンで、仕事第一。
 そんな彼だから惹かれたし、好きになった。

「あーあ、新しいセーター買ったのになぁ……」
 勝手に張り切って買い物に行き、店員が褒めてくれた服を眺める。

――わかりました。お仕事頑張って。

 悩み抜いて、それだけ返信した。







「でもさー、イブに出張しなくても良くない?!」

 どよーんとしていた次の日、見兼ねた同期が飲みに誘ってくれた。
 愛は社会人として初めての友達で、今はもう大親友といって差し支えない。

「まーねー。でもクリスマスイブがイベントなんて、リア充だけだし、仕事には関係ないしねぇ」
「去年のイブにディズミーのレストランでプロポーズされた人にだけには言われたくないね」
「あっはっは。ごめん、ごめん」
「……で? 新婚様の今年のイブのご予定は?」
「再びディズミーに行く予定♡」
「あー、聞かなきゃ良かった!」

 目の前のスクリュードライバーをゴクンと飲み干して、次は何にしようかとメニューを探す。

「せっかく唯人の長年の片思いが実ったのにね……」
「……うん、まぁ長年とは言わないかもだけど……」
「3年も片思いしてたら長年って言うよ。しかも20代の前半なんて貴重だよっ。唯人、可愛いし、いっぱい告白もされたじゃん。もし冴木さんと上手く行かなくてもまたすぐ次が出来るって!」
「冴木さんがいいの! ダメになる前提で言わないでよ」
「……ごめん。でも、あの人の何がいいわけ? 確かに仕事は出来るから最年少部長だし。顔もいいのは認めるけど……こう、何て言うの? 人間味がないっていうか、温度感じないっていうか……。しかも彼女もとっかえひっかえだったしさ。それに、唯人、あの人に最初酷いことされたじゃん」

 愛は俺が男である冴木さんが好きだと言ったときも、男を好きだと悩んでいたときも相談に乗ってくれた。「好きに男も女もないよ、唯人が好きなんだからそれでいいじゃん」とカラッと言われたことでだいぶ楽になったし、その後も冴木さんと同じエレベーターに乗ったとか今日は3回もすれ違った、なんて話しにも付き合ってくれた。

「酷いことされてないよ! あれはそういう風に勘違いさせた俺が悪いんだし。そうやって怒ることだって感情がある証拠じゃん。結局俺のことだって助けてくれたし、時々すごく優しく笑うんだ。うん、それ以外については……うん、彼女の話とかは知ってる……。でも、でも……顔がいいんだよ」
「本音でたー。ってかさ、あれは唯人のミスって訳じゃ……。ま、恋に理由なんてないか」
「いいんだ、あのことで冴木さんのこともっと知れたし、もっと仕事頑張ろうって思えたし……。それにさ。付き合うことになった時に言われたんだ。今は仕事が優先だって。だからなかなか時間も取れないけどって。それでもいいって言ったのは俺だもん。だから理解してるつもり。今までの彼女みたく、構って構ってでダメになりたくない」
ほんとはどうして別れることになったかなんて知らないけど、噂には色々聞いてる……。
「唯人、偉いよね。冴木さんに釣り合いたいからって仕事もすごい頑張って、冴木さんと同じプロジェクトに抜擢されたもんねー。あのプロジェクトも成功したからまた忙しくなったような気もするけど」
「うん。でも、成功したからあの場があった訳だし。そうじゃなかったらたぶん今でも言ってないよ。また一緒に仕事できたら嬉しいな」

 これも本音。

「でもさー、やっぱり初めてのイブに会えないってはっきり言われると落ち込むし、愚痴りたくなるんだよー」
「うんうん。今日は付き合うよ」
「ありがと」
愛はいつもこうやって付き合ってくれる。男女の仲では友情は成立しないっていうヤツもいるけど、愛と俺に限ってはそれは当てはまらないと思っている。本当に有り難い親友だ。
「愛ってホントいい女だよな。名前からして愛される資格有りだよね」
「なぁに言ってんの、酔っぱらいが。唯人だっていい男でしょ、だって私の親友だし」
「あいーっ」

 唯人のことを狙ってたいた奴が多いことを唯人は知らない。告白されたことはあるのは知っているけど、なんで自分なのか理解していないようだったし、それだって一部だ。自分に自信のある女子や先輩だけ。そう、この黒目がちな瞳に色白で華奢な唯人は、うっかり隣にいると女の自信を無くすほどの美人なのに、それを全然分かってない。同期での飲み会で酔っ払って頬を染めた唯人のことをどうにか持ち帰ろうとしている野郎どもが何人いたことか。危なっかしくって、つい一緒にいるようになった。どんどん懐いてくるのが嬉しくて、コイツは私がずっと見守っていくと決めている。

「はいはい、そろそろ終わりね。あんたがちゃんと帰ってくれなくなると困る。冴木部長に睨まれたくないしね」
「別に睨まないよ、別に今日だって飲んでること知らないし」
実はたまたま社内で会った時に言っちゃったんだよね……、で、飲ませすぎないようにって言われたんだけど、と愛は口には出さずにペロっと舌を出す。


**

 それからもなかなか会社でも会えない日が続き、もっぱらメールと電話のみ。
 でもメールは業務連絡みたいな素っ気ないものだし、電話はつい俺ばかり話してしまう。

「分かってたけど、辛いな……」

 自分ばっかり好きみたい。冴木さんの気持ちが見えない。

 クリスマスプレゼントのカフスボタンの入った箱を眺める。あのセーターと同じ日に買ったものだった。
 イブもクリスマス当日も主張で会えないから、渡せる機会があればと、毎日会社へ持っていっているものの、そのチャンスさえない。
 恋人になったからって重たいって思われたくなくて、電話でもいつ時間があるのかなかなか聞くことが出来ない。

 だけど、このままじゃ本当にいつまでたっても渡せないままだ!
 今日は、今日こそは……。

 メールで今日も残業だということは知っていた。いつもは残業の冴木さんをあまり待つことはしない。

 付き合ってすぐの頃、冴木さんが終わるのを待っていたら終電を逃してしまった。
 その日は梅雨時期には珍しく晴れ渡り、寒くもなく暑くもなく、たまに吹く風が心地よく、月が綺麗に見える夜だった。ふわふわと浮かれモードに輪をかけ、不思議な空気に酔いしれて、会社近くのカフェで冴木さんを待っていた。
 約束はしていない。
 ただ、待っていたかった。





 ずっとずっと好きだった。
 自分がまさか男を好きになるなんて考えてもみなかった。
 だから自分の気持ちを伝えるつもりはなかったし、まさか付き合うことになったなんて未だに信じられない。
 あの日から幸せでふわふわした気分のままだ。
 嬉しい。
 今も冴木さんを待っているこの時間さえ楽しい。


 カフェも閉店となってしまったので、近くのコンビニで買ったラテを飲みながら会社の入り口が見える場所でぼんやりと月を見上げながら待っていたら、出てきた冴木さんにひどく驚かれ、同時に怒られてしまったのだ。

「こんな外に一人きりで居ていい時間じゃない」
 静かに、それでいて強い声だった。あんな顔と声は会社で怒られた時でも聞いたことがなかった。
「ご、ごめんなさい。俺、ちょっとでもいいから冴木さんに会いたくて……」
「こんな遅い時間まで待たせるつもりはない。待っているなら連絡くらい出来るはずだ」
「あ……申し訳ございません」
 すぐに上司と部下に戻ってしまう。
「タクシーで送る」
「いえ、そんなつもりでは……」
「いいから」
 あっという間にアプリで配車を完了させ、あっという間に来たタクシーに乗り、あっという間に俺の家の前に着いてしまった。その間冴木さんはずっと黙って窓を見ていて、俺は俺で恐縮してしまい、会話らしい会話も出来なかった。
「じゃあ、気をつけて」
「あ、はい。ありがとうございました……」
 もうマンションの前だから、気をつけるも何もないんだけどな。
 しかもこれじゃ完全に仕事終わりと同じじゃん。
 スゥーと発車するタクシーの冴木さんの後頭部だけをそのまま見つめていた。

 翌日は気まずくなったらどうしようと思っていたけど、冴木さんはいつもと同じに接してくれたし、ちゃんと「遅くまで一人で待たせるのは心配する」と言ってくれたので、嬉しくなった。だけど、それからはあまり忙しそうにしている時には待たないで帰る方が多くなった。


 そんなこともあって、連絡もしないで待つことには若干のトラウマがある。
 それに、連絡したってあまり長い間外で待っていると冴木さんが良く思わないので帰宅するんだけど、明日は休みだし、ちょっとくらいいいよね……。

 残業終わりを待っているとどんなに遅くても、必ず家まで送ってくれるためさらに疲れさせてしまうのではと遠慮してしまうから、あんまり仕事の後に会うことはない。だから付き合ったのに、全然一緒に居られる時間がないんだよね。もちろん付き合う前なんてさらに会うこともなかったけど……。

 今日も連絡はしていない。
 かまってちゃんと思われるのも、噂に聞く歴代の彼女と同じって思われるのも嫌という自分勝手な理由だ。だから待つのは22時まで。この時間だったら許してくれそうな気がする……。俺だって男なんだしさ。強そうには見えないかもだけど。
 しばらく考えて、俺も残業だったことにしようと決めた。
 どうか、どうかこの時間までに出てきて! 冴木さん!



 俺の必死の祈りが通じたのか、21時すぎに冴木さんが出てくる。良かった、実は寒くて外にいるのは割りと限界だった。
 会社のエントランスホールに入り、偶然を装って声を掛ける。

「冴木さん、お疲れ様です」
「!? 橘? お疲れ様。今帰りか? 遅いな」
「そうですか? でも、ちょうど冴木さんと一緒で嬉しいです」

 会えた! という高揚感からかいつもは言えない言葉がスルッと口から滑り出る。

「あ。あぁ、良かったな」

 あまり表情を変えない冴木さんだが、どこか他人事の言い方とは裏腹に、ちょっと顔が赤い。
ん? お疲れで風邪なのかな? 最近また急に寒いしなぁ……。

「あ、それで、駅までご一緒しても良いですか?」
「あぁ、それはいいが……」
「良かった」

 エントランスから出ると、冷たい風が一気に吹き付ける。思わず首をすくめると、「寒いのか?」とマフラーを貸してくれた。もう自分のマフラーもしてるのに、さらに上からぐるぐる巻かれる。恥ずかしくてどんどん顔が熱くなるのがわかる。本当は早歩きの冴木さんが、俺と歩くときはいつも歩調を合わせて少しゆっくり歩いてくれる。その少しの気遣いが嬉しい。

 クリスマスプレゼントは無事渡せた。
 ちょっと驚いていたけど、ありがとうと言ってもらえたし、家まで送ってくれたからいつもより長く冴木さんといられたから良しとする。やっぱり俺ばっかり話しちゃったけど……。


 こうして今年の俺のクリスマスは、クリスマス前に終了した。


**



 イブの日。
 俺は残業もせず、さりとてどこにも寄らずにまっすぐ家に帰り、ダラダラとクリスマスとは関係のない映画を見ていた。
 クリスマスを意識しないようにと選んだはずだった映画だったが、内容が頭に入ってこない。

 すっごく笑えるって評判のコメディ映画なんだけどなぁ。

 仕事もある。
 家族もいる。
 カッコいい恋人もいる。
 そのはずなのに、イブにたった一人という事実だけが浮かび上がって消えない。

 冴木さんはモテる。
 それはもう、モテまくる。
 それでも誰も妬まないくらいのスペックだ。
 まず、顔がいい、ハーフかと思うくらいに彫りが深く、色素が薄い。凛としていてどんな角度からみても美しい。背は高く、学生時代はモデルのアルバイトをしていたらしい。納得。   
 仕事は早くてミスがない。顧客受けも良く、冴木さんが担当すると取引先も業績が上がると評判だ。最年少で昇進し続け、今は部長。すごいなぁ。実家は会社経営しているらしく、将来は親の会社を引き継ぐために今は修行しているのではとの噂。彼女は途切れたことがなく、常にモデルのような美女や妖精のような可憐な子が近くにいた……らしい。
 だからもう妬みひがむだけ自分が惨めになる、あぁ冴木だからなって諦めモードになるらしい。

 そんな冴木さんに俺も憧れた一人。憧れだけじゃない。実は冴木さんとは今の課に配属になる前、ちょっとだけお世話になったのだ。その時に直に仕事ぶりを見て、その真摯な姿にさらに好きになったし、仕事を頑張ろうと思った。
 そして、きっと冴木さんは覚えてないと思うけど、一度、俺に笑いかけてくれたのだ。それだけで本気の恋になった。
 たった一度だったけど、俺だけに向けられた笑顔が忘れられなかった。
 職場は同じと言っても部署もフロアも違うし、仕事場で会うことなんて滅多にない。だからこそ会えたときはテンションだだ上がりになるし、ニヤニヤが止まらなかった。

 ……んー。俺ってば、なんか「らしい」ばっかりだなぁ。
 冴木さんのこと全然ちゃんと知らないや。

 いやだなぁ、冴木さんと恋人になれただけで嬉しかったのに、なんでこんなに欲張りになったのかなぁ。別れ際にされたキスを思い出し、唇に手を当てる。でも全く違う感触に余計に落ち込む。

 キスだけ、なんだよなぁ。

 そう、まだ冴木さんとはキスしかしていない。付き合ってからもうすぐ半年になると言うのに。いつも別れ際に軽いキスだけ。時々抱きしめてくれるけど。

 やっぱり男とはそういう事出来ないのかな。このままダメになっちゃうのかな……。それは、嫌だな。

 だけど、自分だけが好きで空回っている状況には変わりないように思う。
 こんな風にイジイジ考えている自分も嫌だ。

 はぁ。

 イブにため息かぁ。
 そう言えば、家でよく母には「ため息をつくと幸せが逃げちゃうからほどほどに」ってよく言われてたな。
 でも出てしまうものは仕方ない。
 とりあえず出したため息は吸い込んでおこう。

 そうしてため息をついては吸い込むという、謎の深呼吸を何度か繰り返していると、

――ピンポーン

 玄関のチャイムが鳴った。

「宅急便です」
「はーい」

 なんだろう? 何か頼んでたっけ?

 ドアを開け、荷物を受け取る。包みは2つ。細長いものと平たいもの。

 送り主は……冴木光流…え? 冴木さん?!

 慌ててリビングに行って開封する。

「え?」

 薄めの長方形のものは、絵本だった。


――サンタクロースから唯ちゃんに


 サンタのおじいさんがソリに乗っている表紙だ。
 読み進めていくと、俺の大切な幼馴染や同期の愛の名前も入っている。そしていつも俺が一人で一方的に話していた内容も……。


――家族やみんなに大事にされている唯人ちゃんだけど、これからはもっと近くで唯ちゃんを大切にしたいと思っている人からこのプレゼントを届けて欲しいと頼まれました。
メリークリスマス!


 絵本はそこで終わっていた。

 もう一つの包みを開ける。

 そこには一本のバラが入っていた。
 深紅の咲きかけの美しいものだった。

 メッセージカードには、

『今日は一緒に居られなくて申し訳ない。でも、次もその次もずっと唯人と一緒にクリスマスを過ごしたい』

 彼の美しい字で記してあった。
 俺は声を出して泣いてしまった。



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