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砂漠の地
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ーハイドsideー
太陽が目の前にあるように熱い。
日に焼けないように深くまで白いローブを被っていた。
頬に流れる汗を袖で拭う。
もう水もない、早く行かなくては脱水症状で死んでしまう。
…それも運命かと笑う。
でも、瞬に会えるまで死ぬわけにはいかない。
焼けた砂のような地面を歩き続ける。
愛馬は砂漠の地には行けないから、通り道の村の馬小屋に預けた。
どのくらい歩いたのか分からないが、かなりの距離だろう。
ふと国の入り口らしきものが見えた。
…蜃気楼じゃない事を祈る。
国は確かに存在していた。
ヴァイデル国、此処に霊媒師ミゼラがいる。
しかし不思議な国だ。
一見ただのハリボテのように砂漠の誰もいない街に見えて門を潜るとイズレイン国とそう変わらない城下町となる。
ハーレー国が近いから身を守るために幻術師が外部の人間に幻を見せているのかと思いながらハイドはまっすぐ城を目指した。
砂漠の真ん中だが結界で守られていてこの国はちょうどいい温度で保たれている。
食料の補給などをしたいが、今は瞬に会いたいという思いでいっぱいでそれどころじゃない。
事前に連絡しているからすぐに会えるだろう。
頭の中は瞬でいっぱいになっている。
早く、瞬に会いたい。
……そう簡単に会えるわけがなかった。
「え、ミゼラ様が外出されたのですか?」
「えぇ、申し訳ございませんあの子にはきつく言い聞かせますので」
城の中には入れたが、応接室で待たされ出てきたのはミゼラの母親。
いかにもな厚化粧で身につけるものは高級品、ハイドはキツイ香水のニオイに気分が悪くなった。
つけてる本人は気付かないのか平気な顔をしている。
そしてミゼラがいない事をハイドに詫びていた。
約束をしたのに…と思っていたら「霊媒の方の依頼で使う葉っぱを摘みに行ったんです」と母親が言ってきた。
自分のためかと思い、何もせず待っていられずミゼラの手伝いをすれば早く儀式は出来るとミゼラの居場所を聞いた。
そして驚いた。
……まさか、無駄足だったなんて…
「ミゼラはイズレイン国の隣にある精霊の森の葉を取りに出かけたのです、ハイド様は勿論ご存知ですわよね?」
ハイドは精霊の森の存在は知っていたが入った事がない。
あの森は精霊の許しがない者は入れないよう結界が張られている。
だからハイドは入れないし、用もないから入る事はないと思っていた。
どうすれば精霊に許されるのか分からないから手伝いに行けそうもない。
仕方ないから帰ってくるまで待つしかない。
しかしハイドも騎士の仕事があるから長くはいられない。
「えぇ、存在は知っています…それでいつ頃お戻りになりますか?」
「イズレイン国は少々遠い場所ですからね、今後のために葉を沢山持って帰ると思うのでいつになるか」
「分かりました、それでは今日は帰ります…二週間ほどしたらまた伺います」
「申し訳ございません」
深々と頭を下げる母親にハイドも頭を下げる。
いつ頃帰るか分からないなら長居しても仕方ないし、婚約破棄するために来たのもあるからこれ以上迷惑は掛けられない。
カーニバルに遅れるわけにもいかないと城を後にした。
…まさか精霊の森にいるなんて思わなかった。
城を出ると空がオレンジ色に染まっていて、長居はしたつもりがなかったが時間が経っていた。
このまま街を出ると、砂漠の真ん中で夜になるだろう。
夜の砂漠は方向が分からず昼より危険だと思い、宿に泊まる事にした。
早く瞬に会いたいという気持ちが大きく先走ってしまった。
前の予定通りカーニバルが終わった後に来れば二度手間にはならなかっただろう。
空腹を感じて宿の食堂で夕飯を食べている時にふと耳に入った。
「なぁ、あの噂知ってるか?」
「あぁ…亡霊の話だろ?」
亡霊、ハイドは瞬が死ぬまで幽霊の存在を信じていなかった。
自分の見たもの以外は信じないが、時々瞬は精霊の話をする。
だから精霊は見た事がなくても信じるし、精霊の森の存在も見えないがあるんだと思っていた。
…瞬から聞いたわけじゃないが、きっと精霊の森に入れたんじゃないかと考えている…まるで会った事があるような楽しそうに話すから…
瞬が死んでから霊を信じるなんて、我ながら都合がいいなと自傷気味に静かに笑う。
会話は続いてるようで、聞く気がなくても席が隣のテーブルだから嫌でも聞こえてしまう。
「クラウン国がこの前火の海になって壊滅したらしいぞ」
「恐ろしいな、亡霊だから誰も勝てない」
亡霊が国を火の海に?…本当にそれが亡霊なのか疑わしいと思いながらスープをスプーンで掬い口に入れた。
クラウン国はヴァイデル国と近く、イズレイン帝国とはかなり遠い。
だからかイズレイン帝国にクラウン国が壊滅した情報が遅れているのか知らなかった。
ヴァイデル国とは同盟を結んでいるからクラウン国の情報が早いのかもしれない。
クラウン国はハーレー国とも同盟を結んでいたからイズレイン帝国とは敵対していた。
残虐非道のハーレー国に襲われないために同盟を結ぶ国が多くあるが彼らはきっと知らないのだろう、ハーレー国が他国を捨て駒のように扱い使えなくなったら捨てる事を…
しかしハーレー国と同盟を結ぶと他の国に襲われる事がなくなるからデメリットばかりではない、まぁ…それで捨てられたら意味がないが…
太陽が目の前にあるように熱い。
日に焼けないように深くまで白いローブを被っていた。
頬に流れる汗を袖で拭う。
もう水もない、早く行かなくては脱水症状で死んでしまう。
…それも運命かと笑う。
でも、瞬に会えるまで死ぬわけにはいかない。
焼けた砂のような地面を歩き続ける。
愛馬は砂漠の地には行けないから、通り道の村の馬小屋に預けた。
どのくらい歩いたのか分からないが、かなりの距離だろう。
ふと国の入り口らしきものが見えた。
…蜃気楼じゃない事を祈る。
国は確かに存在していた。
ヴァイデル国、此処に霊媒師ミゼラがいる。
しかし不思議な国だ。
一見ただのハリボテのように砂漠の誰もいない街に見えて門を潜るとイズレイン国とそう変わらない城下町となる。
ハーレー国が近いから身を守るために幻術師が外部の人間に幻を見せているのかと思いながらハイドはまっすぐ城を目指した。
砂漠の真ん中だが結界で守られていてこの国はちょうどいい温度で保たれている。
食料の補給などをしたいが、今は瞬に会いたいという思いでいっぱいでそれどころじゃない。
事前に連絡しているからすぐに会えるだろう。
頭の中は瞬でいっぱいになっている。
早く、瞬に会いたい。
……そう簡単に会えるわけがなかった。
「え、ミゼラ様が外出されたのですか?」
「えぇ、申し訳ございませんあの子にはきつく言い聞かせますので」
城の中には入れたが、応接室で待たされ出てきたのはミゼラの母親。
いかにもな厚化粧で身につけるものは高級品、ハイドはキツイ香水のニオイに気分が悪くなった。
つけてる本人は気付かないのか平気な顔をしている。
そしてミゼラがいない事をハイドに詫びていた。
約束をしたのに…と思っていたら「霊媒の方の依頼で使う葉っぱを摘みに行ったんです」と母親が言ってきた。
自分のためかと思い、何もせず待っていられずミゼラの手伝いをすれば早く儀式は出来るとミゼラの居場所を聞いた。
そして驚いた。
……まさか、無駄足だったなんて…
「ミゼラはイズレイン国の隣にある精霊の森の葉を取りに出かけたのです、ハイド様は勿論ご存知ですわよね?」
ハイドは精霊の森の存在は知っていたが入った事がない。
あの森は精霊の許しがない者は入れないよう結界が張られている。
だからハイドは入れないし、用もないから入る事はないと思っていた。
どうすれば精霊に許されるのか分からないから手伝いに行けそうもない。
仕方ないから帰ってくるまで待つしかない。
しかしハイドも騎士の仕事があるから長くはいられない。
「えぇ、存在は知っています…それでいつ頃お戻りになりますか?」
「イズレイン国は少々遠い場所ですからね、今後のために葉を沢山持って帰ると思うのでいつになるか」
「分かりました、それでは今日は帰ります…二週間ほどしたらまた伺います」
「申し訳ございません」
深々と頭を下げる母親にハイドも頭を下げる。
いつ頃帰るか分からないなら長居しても仕方ないし、婚約破棄するために来たのもあるからこれ以上迷惑は掛けられない。
カーニバルに遅れるわけにもいかないと城を後にした。
…まさか精霊の森にいるなんて思わなかった。
城を出ると空がオレンジ色に染まっていて、長居はしたつもりがなかったが時間が経っていた。
このまま街を出ると、砂漠の真ん中で夜になるだろう。
夜の砂漠は方向が分からず昼より危険だと思い、宿に泊まる事にした。
早く瞬に会いたいという気持ちが大きく先走ってしまった。
前の予定通りカーニバルが終わった後に来れば二度手間にはならなかっただろう。
空腹を感じて宿の食堂で夕飯を食べている時にふと耳に入った。
「なぁ、あの噂知ってるか?」
「あぁ…亡霊の話だろ?」
亡霊、ハイドは瞬が死ぬまで幽霊の存在を信じていなかった。
自分の見たもの以外は信じないが、時々瞬は精霊の話をする。
だから精霊は見た事がなくても信じるし、精霊の森の存在も見えないがあるんだと思っていた。
…瞬から聞いたわけじゃないが、きっと精霊の森に入れたんじゃないかと考えている…まるで会った事があるような楽しそうに話すから…
瞬が死んでから霊を信じるなんて、我ながら都合がいいなと自傷気味に静かに笑う。
会話は続いてるようで、聞く気がなくても席が隣のテーブルだから嫌でも聞こえてしまう。
「クラウン国がこの前火の海になって壊滅したらしいぞ」
「恐ろしいな、亡霊だから誰も勝てない」
亡霊が国を火の海に?…本当にそれが亡霊なのか疑わしいと思いながらスープをスプーンで掬い口に入れた。
クラウン国はヴァイデル国と近く、イズレイン帝国とはかなり遠い。
だからかイズレイン帝国にクラウン国が壊滅した情報が遅れているのか知らなかった。
ヴァイデル国とは同盟を結んでいるからクラウン国の情報が早いのかもしれない。
クラウン国はハーレー国とも同盟を結んでいたからイズレイン帝国とは敵対していた。
残虐非道のハーレー国に襲われないために同盟を結ぶ国が多くあるが彼らはきっと知らないのだろう、ハーレー国が他国を捨て駒のように扱い使えなくなったら捨てる事を…
しかしハーレー国と同盟を結ぶと他の国に襲われる事がなくなるからデメリットばかりではない、まぁ…それで捨てられたら意味がないが…
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