花言葉を俺は知らない

李林檎

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ハイドの家族

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ハイドは姉にお茶を入れてきてとお願いされて、先に家の中に入っていった。

俺に「大丈夫か?」と心配してくれたが、このくらいなら大丈夫だと言った。
すぐに行くと言ってハイドは奥に向かって行った。

姉には逆らえないのか、知らないハイドの一面を見た。
ハイドと家族を見ると、ハイドの可愛い部分が見れて嬉しかった。
瞬もハイドの家族になりたいが、さすがにまだ早いだろうか。

ハイドに弟がいるのは知っていたが、姉がいるとは知らなかった。
姉との対面まで予想していなくて、瞬は身体を硬直させた。

ハイドにはああ言ったけど、緊張する。

挨拶しないと…と頭では考えていたから、頭を下げた。

「瞬と申しましゅ…よろしくお願いします!」と大事なところで噛んでしまった。
もう一度言い直そうとしたら、瞬の顔は柔らかいもので包まれた。

それがなにか分かると、顔から火が出るほど真っ赤になった。
胸に包まれて、どうしたらいいのか分からず両手を無意味に上げていた。

「まぁ、貴方がハイドの恋人なのね!」

「えっ…あの…」

「ミゼラちゃんとの婚約をなかった事にしたいって言っていたから問い詰めたら恋人がいるって言うからずっと会いたかったのよ!」

姉に伝えていたんだと思い、瞬はとりあえず離れて会話がしたかった。
触るわけにもいかず、どうしたらいいのかと姉を見上げる。

男らしいハイドとは違って美人だけど、面影がある。
見た目からしてハイドより少し年上くらいだろうか。

明るい女性で、瞬を歓迎してくれる雰囲気で嬉しかった。
ハイドの両親に会う前に、元気をもらった。

「あの、お姉さんは…」

「やだぁ、ソワラって呼んで!」

「…ソワラさん?」

「こんなところで何をしているんだ、母さん」

ハイドが戻ってきて、ソワラに向かって呆れたような声を出していた。
瞬はハイドが帰ってきて、ソワラが瞬から離れてホッと胸を撫で下ろした。

そしてさっきの言葉を聞いてソワラを見つめた。
さっきハイドはなんて言っただろうか。

ソワラの事を「母さん」と呼ばなかっただろうか。
ソワラは瞬に向かって微笑んでいた。

「ハイドさんの、お母様?」

「はぁい、いつもハイドがお世話になってます」

「ご、ごめんなさい!俺、失礼な事を言って…」

「気にしなくていいわよ、お姉さんだって勘違いしてくれたんだから!」

ハイドの母であるソワラは嬉しそうにしながら、俺の手を握っていた。
本当に母というより姉の方がしっくり来る。
年齢が気になるけど、女性に年齢を聞くのは失礼を重ねる事になるから黙った。

ハイドとソワラに連れて行かれて、リビングに向かった。
椅子に座って、ハイドが瞬の横に座りソワラが向かい側に座る。

改めて、ソワラに向かって頭を下げる。

「ハイドさんとお付き合いさせてもらっています、瞬と申します」

「ハイドの母のソワラです、よろしくね瞬くん」

勘違いしてしまったが、ソワラが瞬に優しくしてくれて安心した。
この世界が男同士の恋愛に偏見がないとはいえ、不安だった。
元々ミゼラとの婚約を決めたのは両親だと聞いていた。
だからもしかしたら、後継ぎがほしいのではないかと思っていた。

今も優しいけど、本人の前では本当の事を言えるわけがない。

マイナスな事ばかり考えてしまって、ソワラを真っ直ぐと見た。
認めてもらえないとしたら、認めてもらわないと…

ハイドの家族に自分の気持ちを伝えようと思った。

「俺はハイドさんを愛しています」

「まぁ!」

「必ず幸せにしてみせます、見た目は頼りないと思いますが頼りになる男になります!だから、ハイドさんを俺に下さい!」

頭を下げると、ハイドは瞬の名前を呼んだ。
大丈夫、瞬は認めてもらえる男に必ずなると誓った…ハイドを諦める選択はもうない。

ソワラに「頭を上げて」と言われるまで、頭を上げなかった。
頭を恐る恐る上げると、ソワラはさっきよりも優しい顔で俺を見つめていた。

ソワラの顔がハイドと重なって、やっぱり似ていると思った。
親子なんだから当然なんだろうけど、それだけじゃなく…血が繋がっているんだなと感じた。

「ハイドって顔に感情が出るタイプじゃないでしょ?だから、母親の私でも時々何を考えているのか分からないのよ」

「…母さん」

「でもね、貴方の話をする時のハイドはとても幸せそうなの…そんな顔をするほど好きな子がいるなら早く言ってくれたらいいのに、婚約をする前に!」

「それは、あの時は忙しくて…」

「もう!ちゃんと仕事と休みを取らないと、瞬くんが可哀想よ!」

ソワラに言われてハイドは反省したような顔をしていた。
ちゃんとハイドは瞬の事を大切にしてくれたから寂しくはなかった。
瞬はハイドにいっぱい幸せにしてくれた、だから今度は瞬が幸せにしたい。

ソワラにそう言うと「もうハイドは幸せよ、だから今度は二人で幸せになりなさい」と言われた。
瞬とハイドはお互い見つめ合って、微笑んでソワラに幸せを誓った。

今度は離れないように、しっかりと手を握りしめた。

ソワラがテーブルいっぱいに料理を運んでくれた。
お茶はハイドが淹れてくれて、瞬も手伝おうとしたらハイドに止められた。

「今日は瞬が主役なんだからここにいて」

ハイドにそう言われて、テーブルにどんどん料理が並べられる。
まるで誕生日パーティーのような豪華なものに驚いた。
これほどまでに豪華なのは生まれて初めてだった。

ソワラは「張り切っちゃった!」と言って笑っていた。

もう少ししたらハイドの父が帰ってくるらしく、それまでたわいもない話をして過ごした。
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