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リチャードの想い
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リチャードとハイドは幼少期からいつも一緒にいた幼馴染みだった。
今と違い、リチャードは泣き虫で髪も肩まで長くて女の子みたいな容姿だった。
男らしくないリチャードを近所に住む子供達はいつもいじめていた。
力も弱くて反撃もせず泣いているだけのリチャードの髪を掴んで「弱虫リチャード」とバカにしていた。
痛くてさらにポロポロと涙を流していた。
そんなリチャードをいつも助けてくれたのハイドだった。
「何やってるんだ、お前ら」
「げっ、ハイド!」
「お前には関係ないだろ!」
「俺の幼馴染みに何してんだって聞いてんだよ」
ハイドは子供なのに、そのオーラは大人でも驚くほど強くて子供が耐えられるわけがなかった。
弱虫といじめていたくせに、自分達が早々と逃げていきハイドはリチャードに手を伸ばした。
尻餅を付いていたから、ズボンが汚れていてリチャードはまた泣き出した。
ハイドはリチャードに付き添い、着替えを取りにリチャードの家に向かった。
リチャードにとって、誰よりも先にハイドは英雄だと思った。
ハイドは剣だけじゃなく、あらゆる武器を持ってもその才能が開花された。
リチャードは剣を持つだけでやっとで、振り回す事なんて出来なかった。
将来ハイドはイズレイン士官学校に入学する。
ハイドなら頭もいいし、実技試験は簡単に通過出来るだろう。
でもリチャードは頭は悪くないが、実技試験は絶対に落ちると分かっていた。
剣もろくに振り回せない奴が入れるほど簡単な学校ではない。
でもハイドが学校に入ったら、きっともう今までのように会えなくなる。
そんなのは嫌だ、ハイドと一緒にいるために血のにじむような努力をして、ギリギリ入学する事が出来た。
もう、誰にも泣き虫や弱虫なんて言わせない…強くなったんだ。
学生時代は楽しかった、ハイド以外にも友達が出来て…皆でバカやったりして…
でも、誰かと一緒にいるより…ハイドと一緒にいる方が一番楽しかった。
ハイドは、学校に入学してから…人が変わったように感じた。
昔もそんなに笑うタイプではないが、ハイドは全く笑わなくなった。
昼休み、屋上で二人で昼飯を食べている時リチャードは聞いてみた。
「どうしたんだ?なんか最近のお前変だぞ」
「別に何も変わってない」
「そういえばこの前の実技テスト、また一位だったな!」
「………」
ハイドは昔から自分の事をベラベラと話すような性格ではない。
親友であるリチャードに対しても一線を引いていて、全く悩みや弱みを見せたりしなかった。
昔はハイドがリチャードを守っていたから、立場が逆転するのが嫌なのかと考えた。
でも、そんな小さなプライドはハイドにはなかった。
リチャードは、話すまでもない相手だって思われたようで悔しかった。
放課後になって、ハイドを探そうとハイドがいるクラスを覗いた。
学校は同じでも、クラスが違うといろいろと不便だ。
いつもなら教室にいる筈のハイドが見当たらなくて周りを見渡すと、リチャードの知っている友人が近付いてきた。
「よっ!またハイドか?」
「……あ、あぁ…まぁな」
「ハイドなら女子部の女の子に呼び出されたんだよ」
イズレイン士官学校には男子部の校舎と女子部の校舎に分かれている。
分かれているとはいえ、あまり距離は離れていないからたまに呼び出しに来たりしているのは知っている。
リチャードも何度か呼び出されて告白された事があったが、授業についていくのがやっとで余裕がないと断っている。
リチャードよりもハイドの方が呼び出し回数が圧倒的に多い。
今日の呼び出しもいつもの事だから、誰も気にしない。
ハイドが誰かに告白されているのは、いい気分ではない……ハイドが断ると分かっていても…
女の子に告白されて羨ましい…そんな感情ではない事は分かってる。
リチャードも同じくらいモテるからだ。
リチャードは、女の子に嫉妬しているんだ…ハイドに告白出来る子達が羨ましいと…
気付いていた、昔からハイドに抱いているこの気持ちは友情なんかじゃないと…
でも、ハイドに伝えるつもりはない…ハイドはリチャードを親友としか思っていない。
それでいい、恋人なんてすぐに別れてしまう…親友の方がずっと一緒に居られる。
親友なら恋人に見せない顔を見せてくれる、結局一番気を許せるのは親友なんだ。
「何やってんだリチャード、帰るぞ」
「あぁ…そういえば呼び出しどうだった?」
「……聞くのか?」
「あーはいはい、モテモテで羨ましいなぁー」
リチャードとハイドは誰にも見えない絆で繋がっている…誰にも二人の間に入れない。
…そう、思い込んでいたんだ。
学校を卒業して、すぐに騎士団からスカウトされて騎士団に入る事になった。
ハイドが入るからリチャードも何となく入った。
ハイドが騎士団長になるからリチャードも副騎士団長になった。
ハイドの右腕になるのは大変だった、士官学校に入る以上の努力をした。
そこまでしても、ハイドと一緒にいたかった…ずっと守ってきた親友として…
今と違い、リチャードは泣き虫で髪も肩まで長くて女の子みたいな容姿だった。
男らしくないリチャードを近所に住む子供達はいつもいじめていた。
力も弱くて反撃もせず泣いているだけのリチャードの髪を掴んで「弱虫リチャード」とバカにしていた。
痛くてさらにポロポロと涙を流していた。
そんなリチャードをいつも助けてくれたのハイドだった。
「何やってるんだ、お前ら」
「げっ、ハイド!」
「お前には関係ないだろ!」
「俺の幼馴染みに何してんだって聞いてんだよ」
ハイドは子供なのに、そのオーラは大人でも驚くほど強くて子供が耐えられるわけがなかった。
弱虫といじめていたくせに、自分達が早々と逃げていきハイドはリチャードに手を伸ばした。
尻餅を付いていたから、ズボンが汚れていてリチャードはまた泣き出した。
ハイドはリチャードに付き添い、着替えを取りにリチャードの家に向かった。
リチャードにとって、誰よりも先にハイドは英雄だと思った。
ハイドは剣だけじゃなく、あらゆる武器を持ってもその才能が開花された。
リチャードは剣を持つだけでやっとで、振り回す事なんて出来なかった。
将来ハイドはイズレイン士官学校に入学する。
ハイドなら頭もいいし、実技試験は簡単に通過出来るだろう。
でもリチャードは頭は悪くないが、実技試験は絶対に落ちると分かっていた。
剣もろくに振り回せない奴が入れるほど簡単な学校ではない。
でもハイドが学校に入ったら、きっともう今までのように会えなくなる。
そんなのは嫌だ、ハイドと一緒にいるために血のにじむような努力をして、ギリギリ入学する事が出来た。
もう、誰にも泣き虫や弱虫なんて言わせない…強くなったんだ。
学生時代は楽しかった、ハイド以外にも友達が出来て…皆でバカやったりして…
でも、誰かと一緒にいるより…ハイドと一緒にいる方が一番楽しかった。
ハイドは、学校に入学してから…人が変わったように感じた。
昔もそんなに笑うタイプではないが、ハイドは全く笑わなくなった。
昼休み、屋上で二人で昼飯を食べている時リチャードは聞いてみた。
「どうしたんだ?なんか最近のお前変だぞ」
「別に何も変わってない」
「そういえばこの前の実技テスト、また一位だったな!」
「………」
ハイドは昔から自分の事をベラベラと話すような性格ではない。
親友であるリチャードに対しても一線を引いていて、全く悩みや弱みを見せたりしなかった。
昔はハイドがリチャードを守っていたから、立場が逆転するのが嫌なのかと考えた。
でも、そんな小さなプライドはハイドにはなかった。
リチャードは、話すまでもない相手だって思われたようで悔しかった。
放課後になって、ハイドを探そうとハイドがいるクラスを覗いた。
学校は同じでも、クラスが違うといろいろと不便だ。
いつもなら教室にいる筈のハイドが見当たらなくて周りを見渡すと、リチャードの知っている友人が近付いてきた。
「よっ!またハイドか?」
「……あ、あぁ…まぁな」
「ハイドなら女子部の女の子に呼び出されたんだよ」
イズレイン士官学校には男子部の校舎と女子部の校舎に分かれている。
分かれているとはいえ、あまり距離は離れていないからたまに呼び出しに来たりしているのは知っている。
リチャードも何度か呼び出されて告白された事があったが、授業についていくのがやっとで余裕がないと断っている。
リチャードよりもハイドの方が呼び出し回数が圧倒的に多い。
今日の呼び出しもいつもの事だから、誰も気にしない。
ハイドが誰かに告白されているのは、いい気分ではない……ハイドが断ると分かっていても…
女の子に告白されて羨ましい…そんな感情ではない事は分かってる。
リチャードも同じくらいモテるからだ。
リチャードは、女の子に嫉妬しているんだ…ハイドに告白出来る子達が羨ましいと…
気付いていた、昔からハイドに抱いているこの気持ちは友情なんかじゃないと…
でも、ハイドに伝えるつもりはない…ハイドはリチャードを親友としか思っていない。
それでいい、恋人なんてすぐに別れてしまう…親友の方がずっと一緒に居られる。
親友なら恋人に見せない顔を見せてくれる、結局一番気を許せるのは親友なんだ。
「何やってんだリチャード、帰るぞ」
「あぁ…そういえば呼び出しどうだった?」
「……聞くのか?」
「あーはいはい、モテモテで羨ましいなぁー」
リチャードとハイドは誰にも見えない絆で繋がっている…誰にも二人の間に入れない。
…そう、思い込んでいたんだ。
学校を卒業して、すぐに騎士団からスカウトされて騎士団に入る事になった。
ハイドが入るからリチャードも何となく入った。
ハイドが騎士団長になるからリチャードも副騎士団長になった。
ハイドの右腕になるのは大変だった、士官学校に入る以上の努力をした。
そこまでしても、ハイドと一緒にいたかった…ずっと守ってきた親友として…
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