46 / 450
新しい生活
46
しおりを挟む
思い返せば幼少期、自宅にある書庫の魔導書を読んで独学で中級魔法までマスターした私だったが、彼女たちは今まで専門的な魔導書を読む機会も無かったのだろう。
さっそく翌日、双子に魔法を教えるべく学園時代に使っていた初心者向けの本を渡し、魔法の使い方について説明する。
「精神を集中させて使いたい魔法をイメージしながら、手や指先に魔力を集めるの」
「手や指先に……」
「う、う~ん……」
双子は見よう見マネで必死に手に魔力を集めようとするが、魔力が集まる気配が全く感じられない。
「こう、手に魔力が集まる感覚ない?」
「分からないです……」
「やっぱり魔法、使えないんでしょうか……」
魔法が使えそうな手ごたえが全く感じられず、猫耳をしょぼんとたれさせて落ち込む双子の様子を見ていてどうにかならない物かと思うが幼少期、魔導書を読みながら特に苦もなく魔法を覚えた身としては、このような時にどうすれば良いのか、さっぱり見当がつかない。
「学園の先生が、確か『ほとんどの者は簡単な魔法が使える』みたいなことを話していたから、ルルとララも大丈夫だと思うんだけど……」
「それは貴族の子息や令嬢が通う、王立学園だからかもしれません」
「え?」
「平民より、貴族の方が魔法が使える率が高いんです」
「そうなの?」
「はい。貴族の方が魔力も高いと言われていますし……」
「そんな……」
伯爵令嬢フローラや侯爵家子息のクラレンス様が魔力の低い者を下に見ていた一因はこれかと思いながら思わず、スカートのすそをにぎりしめる。
「いいえ。コツさえつかめば、ルルとララもきっと魔法が使えるはずよ。そうだ、二人とも手を出して」
「手ですか?」
「これでよろしいですか。セリナお嬢様?」
「ええ。そのまま、じっとしていてね」
とにかく、きっかけだ。自分で魔力を集めるイメージがわかないというなら、他者が補助的にきっかけを与えれば良いんじゃないかと私は考えたのだ。私は二人が差し出した手のひらの上から、手をかざして魔力を送り込む。
「これは……!」
「温かい……!」
「今、二人に送り込んでるのが魔力よ。そのまま精神を集中させて魔法を使ってみて」
双子は初めて明確に感じる魔力に戸惑いながらも、精神を集中した。すると指先から小さな赤い炎が現れゆらめいた。
「できた……」
「信じられない……」
「やったわね! 平民でも関係ないわ! 二人とも、ちゃんと魔法が使えるのよ!」
「うっ。うれしいですっ!」
「ぐすっ。ありがとうございます。セリナお嬢様っ……!」
二人ともよほど嬉しかったのだろう。大きな瞳からぽろぽろと涙をこぼして、初めて魔法が使えたことを泣きながら喜んだ。
さっそく翌日、双子に魔法を教えるべく学園時代に使っていた初心者向けの本を渡し、魔法の使い方について説明する。
「精神を集中させて使いたい魔法をイメージしながら、手や指先に魔力を集めるの」
「手や指先に……」
「う、う~ん……」
双子は見よう見マネで必死に手に魔力を集めようとするが、魔力が集まる気配が全く感じられない。
「こう、手に魔力が集まる感覚ない?」
「分からないです……」
「やっぱり魔法、使えないんでしょうか……」
魔法が使えそうな手ごたえが全く感じられず、猫耳をしょぼんとたれさせて落ち込む双子の様子を見ていてどうにかならない物かと思うが幼少期、魔導書を読みながら特に苦もなく魔法を覚えた身としては、このような時にどうすれば良いのか、さっぱり見当がつかない。
「学園の先生が、確か『ほとんどの者は簡単な魔法が使える』みたいなことを話していたから、ルルとララも大丈夫だと思うんだけど……」
「それは貴族の子息や令嬢が通う、王立学園だからかもしれません」
「え?」
「平民より、貴族の方が魔法が使える率が高いんです」
「そうなの?」
「はい。貴族の方が魔力も高いと言われていますし……」
「そんな……」
伯爵令嬢フローラや侯爵家子息のクラレンス様が魔力の低い者を下に見ていた一因はこれかと思いながら思わず、スカートのすそをにぎりしめる。
「いいえ。コツさえつかめば、ルルとララもきっと魔法が使えるはずよ。そうだ、二人とも手を出して」
「手ですか?」
「これでよろしいですか。セリナお嬢様?」
「ええ。そのまま、じっとしていてね」
とにかく、きっかけだ。自分で魔力を集めるイメージがわかないというなら、他者が補助的にきっかけを与えれば良いんじゃないかと私は考えたのだ。私は二人が差し出した手のひらの上から、手をかざして魔力を送り込む。
「これは……!」
「温かい……!」
「今、二人に送り込んでるのが魔力よ。そのまま精神を集中させて魔法を使ってみて」
双子は初めて明確に感じる魔力に戸惑いながらも、精神を集中した。すると指先から小さな赤い炎が現れゆらめいた。
「できた……」
「信じられない……」
「やったわね! 平民でも関係ないわ! 二人とも、ちゃんと魔法が使えるのよ!」
「うっ。うれしいですっ!」
「ぐすっ。ありがとうございます。セリナお嬢様っ……!」
二人ともよほど嬉しかったのだろう。大きな瞳からぽろぽろと涙をこぼして、初めて魔法が使えたことを泣きながら喜んだ。
10
お気に入りに追加
4,836
あなたにおすすめの小説
転生少女と聖魔剣の物語
じゅんとく
ファンタジー
あらすじ
中世ヨーロッパによく似た国、エルテンシア国…
かつてその国で、我が身を犠牲にしながらも国を救った
王女がいた…。
その後…100年、国は王女復活を信じて待ち続ける。
カクヨム、小説家になろうにも同時掲載してます。
出来損ないと呼ばれた伯爵令嬢は出来損ないを望む
家具屋ふふみに
ファンタジー
この世界には魔法が存在する。
そして生まれ持つ適性がある属性しか使えない。
その属性は主に6つ。
火・水・風・土・雷・そして……無。
クーリアは伯爵令嬢として生まれた。
貴族は生まれながらに魔力、そして属性の適性が多いとされている。
そんな中で、クーリアは無属性の適性しかなかった。
無属性しか扱えない者は『白』と呼ばれる。
その呼び名は貴族にとって屈辱でしかない。
だからクーリアは出来損ないと呼ばれた。
そして彼女はその通りの出来損ない……ではなかった。
これは彼女の本気を引き出したい彼女の周りの人達と、絶対に本気を出したくない彼女との攻防を描いた、そんな物語。
そしてクーリアは、自身に隠された秘密を知る……そんなお話。
設定揺らぎまくりで安定しないかもしれませんが、そういうものだと納得してくださいm(_ _)m
※←このマークがある話は大体一人称。
追放ですか?それは残念です。最後までワインを作りたかったのですが。 ~新たな地でやり直します~
アールグレイ
ファンタジー
ワイン作りの統括責任者として、城内で勤めていたイラリアだったが、突然のクビ宣告を受けた。この恵まれた大地があれば、誰にでも出来る簡単な仕事だと酷評を受けてしまう。城を追われることになった彼女は、寂寞の思いを胸に新たな旅立ちを決意した。そんな彼女の後任は、まさかのクーラ。美貌だけでこの地位まで上り詰めた、ワイン作りの素人だ。
誰にでも出来る簡単な作業だと高を括っていたが、実のところ、イラリアは自らの研究成果を駆使して、とんでもない作業を行っていたのだ。
彼女が居なくなったことで、国は多大なる損害を被ることになりそうだ。
これは、お酒の神様に愛された女性と、彼女を取り巻く人物の群像劇。
元悪役令嬢はオンボロ修道院で余生を過ごす
こうじ
ファンタジー
両親から妹に婚約者を譲れと言われたレスナー・ティアント。彼女は勝手な両親や裏切った婚約者、寝取った妹に嫌気がさし自ら修道院に入る事にした。研修期間を経て彼女は修道院に入る事になったのだが彼女が送られたのは廃墟寸前の修道院でしかも修道女はレスナー一人のみ。しかし、彼女にとっては好都合だった。『誰にも邪魔されずに好きな事が出来る!これって恵まれているんじゃ?』公爵令嬢から修道女になったレスナーののんびり修道院ライフが始まる!
前世の記憶さん。こんにちは。
満月
ファンタジー
断罪中に前世の記憶を思い出し主人公が、ハチャメチャな魔法とスキルを活かして、人生を全力で楽しむ話。
周りはそんな主人公をあたたかく見守り、時には被害を被り···それでも皆主人公が大好きです。
主に前半は冒険をしたり、料理を作ったりと楽しく過ごしています。時折シリアスになりますが、基本的に笑える内容になっています。
恋愛は当分先に入れる予定です。
主人公は今までの時間を取り戻すかのように人生を楽しみます!もちろんこの話はハッピーエンドです!
小説になろう様にも掲載しています。
異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。
善人ぶった姉に奪われ続けてきましたが、逃げた先で溺愛されて私のスキルで領地は豊作です
しろこねこ
ファンタジー
「あなたのためを思って」という一見優しい伯爵家の姉ジュリナに虐げられている妹セリナ。醜いセリナの言うことを家族は誰も聞いてくれない。そんな中、唯一差別しない家庭教師に貴族子女にははしたないとされる魔法を教わるが、親切ぶってセリナを孤立させる姉。植物魔法に目覚めたセリナはペット?のヴィリオをともに家を出て南の辺境を目指す。
出来損ない王女(5歳)が、問題児部隊の隊長に就任しました
瑠美るみ子
ファンタジー
魔法至上主義のグラスター王国にて。
レクティタは王族にも関わらず魔力が無かったため、実の父である国王から虐げられていた。
そんな中、彼女は国境の王国魔法軍第七特殊部隊の隊長に任命される。
そこは、実力はあるものの、異教徒や平民の魔法使いばかり集まった部隊で、最近巷で有名になっている集団であった。
王国魔法のみが正当な魔法と信じる国王は、国民から英雄視される第七部隊が目障りだった。そのため、褒美としてレクティタを隊長に就任させ、彼女を生贄に部隊を潰そうとした……のだが。
「隊長~勉強頑張っているか~?」
「ひひひ……差し入れのお菓子です」
「あ、クッキー!!」
「この時間にお菓子をあげると夕飯が入らなくなるからやめなさいといつも言っているでしょう! 隊長もこっそり食べない! せめて一枚だけにしないさい!」
第七部隊の面々は、国王の思惑とは反対に、レクティタと交流していきどんどん仲良くなっていく。
そして、レクティタ自身もまた、変人だが魔法使いのエリートである彼らに囲まれて、英才教育を受けていくうちに己の才能を開花していく。
ほのぼのとコメディ七割、戦闘とシリアス三割ぐらいの、第七部隊の日常物語。
*小説家になろう・カクヨム様にても掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる