415 / 450
市場にて
415
しおりを挟む「それより、セリナちゃん。知ってるかい?」
「何をですか?」
「さっき聞いたんだけど、国王陛下が婚約者の伯爵令嬢フローラ様との婚約を破棄したそうだよ」
「婚約破棄……」
私自身は昨日、王宮で伯爵令嬢フローラと国王陛下のやり取りを目の当たりにしていたから、レオン陛下が「伯爵令嬢フローラの魔力ドーピングが確定すれば婚約破棄する」と発言していたのを知っている。
つまり今日、フローラが魔力ドーピングしていたということが確定したのだろう。こういう事態になることに関しては予想がついていた。しかし、想像以上に城下へも噂が広まるのが早くて驚く。
私が言葉を失っているのを見て、完全に初耳だと思ったらしいエマさんは声を何度も首を縦に振って、大げさなリアクションを見せながら顔をしかめた。
「伯爵令嬢フローラ様は悪女だと名高い寵姫ローザに濡れ衣をかけられて、陥れられたんじゃないかってウワサになってるよ。本当だったら恐ろしい話だねぇ」
「……エマさん。それは違います」
「え?」
「私、ローザとは学園時代に一緒だったから、よく知ってるんです。ローザは人に濡れ衣をかけて陥れるような子じゃあないです」
「でも城下じゃあ、寵妃ローザはとんでもない悪女で国王陛下に取り入って、女王の部屋に居座って我が物顔で振る舞ってるって評判だよ?」
「それも誤解なんです……。ローザが女王の部屋で過ごしているのは国王陛下のご意向です。ローザの意思ではないんです。むしろ、ローザは女王の部屋なんて恐れ多いから他の部屋に移りたいんです」
「そうなのかい?」
「はい。でも色々と事情があって……。少なくともローザの意思で女王の部屋に居座ってるなんて事実は無いです。状況的に第三者が誤解するのも分かりますけど……。それに寵姫という身分になったことはローザ自身、まったく予想してなかったことなんです。ローザは元々、家族のためにお金を稼ぐため侍女として王宮で働き始めたんです」
「何だか、私が聞いてた寵姫ローザのウワサとは随分とイメージが違うようだねぇ?」
眉間にシワを寄せ困惑顔で首を傾げるエマさんに、私は今こそ真実を伝えるべきだと目に力を入れて前を向いた。
「世間で言われてる寵姫ローザは悪女なんて話は嘘っぱちです。あんな根も葉もないウワサ、真に受けないで下さい……! ローザは病に倒れていた病床の国王陛下につきっきりで看病したり陛下が回復できるように、手を尽くしていた子なんです。悪女なんてとんでもない! 真逆ですよ」
「それは本当かい?」
「はい!」
自信を持って断言すればエマさんは軽く目を見開いた。
「セリナちゃんがそこまで言うなら、世間で言われてる寵姫ローザは悪女って話は国王陛下の寵愛をやっかんで捏造された物なのかもしれないねぇ……」
まだ半信半疑といった表情ながら、エマさんはひとまずローザについての悪評を頭から信じることはやめてくれたようで、私はホッと胸をなでおろした。
「何をですか?」
「さっき聞いたんだけど、国王陛下が婚約者の伯爵令嬢フローラ様との婚約を破棄したそうだよ」
「婚約破棄……」
私自身は昨日、王宮で伯爵令嬢フローラと国王陛下のやり取りを目の当たりにしていたから、レオン陛下が「伯爵令嬢フローラの魔力ドーピングが確定すれば婚約破棄する」と発言していたのを知っている。
つまり今日、フローラが魔力ドーピングしていたということが確定したのだろう。こういう事態になることに関しては予想がついていた。しかし、想像以上に城下へも噂が広まるのが早くて驚く。
私が言葉を失っているのを見て、完全に初耳だと思ったらしいエマさんは声を何度も首を縦に振って、大げさなリアクションを見せながら顔をしかめた。
「伯爵令嬢フローラ様は悪女だと名高い寵姫ローザに濡れ衣をかけられて、陥れられたんじゃないかってウワサになってるよ。本当だったら恐ろしい話だねぇ」
「……エマさん。それは違います」
「え?」
「私、ローザとは学園時代に一緒だったから、よく知ってるんです。ローザは人に濡れ衣をかけて陥れるような子じゃあないです」
「でも城下じゃあ、寵妃ローザはとんでもない悪女で国王陛下に取り入って、女王の部屋に居座って我が物顔で振る舞ってるって評判だよ?」
「それも誤解なんです……。ローザが女王の部屋で過ごしているのは国王陛下のご意向です。ローザの意思ではないんです。むしろ、ローザは女王の部屋なんて恐れ多いから他の部屋に移りたいんです」
「そうなのかい?」
「はい。でも色々と事情があって……。少なくともローザの意思で女王の部屋に居座ってるなんて事実は無いです。状況的に第三者が誤解するのも分かりますけど……。それに寵姫という身分になったことはローザ自身、まったく予想してなかったことなんです。ローザは元々、家族のためにお金を稼ぐため侍女として王宮で働き始めたんです」
「何だか、私が聞いてた寵姫ローザのウワサとは随分とイメージが違うようだねぇ?」
眉間にシワを寄せ困惑顔で首を傾げるエマさんに、私は今こそ真実を伝えるべきだと目に力を入れて前を向いた。
「世間で言われてる寵姫ローザは悪女なんて話は嘘っぱちです。あんな根も葉もないウワサ、真に受けないで下さい……! ローザは病に倒れていた病床の国王陛下につきっきりで看病したり陛下が回復できるように、手を尽くしていた子なんです。悪女なんてとんでもない! 真逆ですよ」
「それは本当かい?」
「はい!」
自信を持って断言すればエマさんは軽く目を見開いた。
「セリナちゃんがそこまで言うなら、世間で言われてる寵姫ローザは悪女って話は国王陛下の寵愛をやっかんで捏造された物なのかもしれないねぇ……」
まだ半信半疑といった表情ながら、エマさんはひとまずローザについての悪評を頭から信じることはやめてくれたようで、私はホッと胸をなでおろした。
1
お気に入りに追加
4,837
あなたにおすすめの小説
魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。
私も処刑されたことですし、どうか皆さま地獄へ落ちてくださいね。
火野村志紀
恋愛
あなた方が訪れるその時をお待ちしております。
王宮医官長のエステルは、流行り病の特効薬を第四王子に服用させた。すると王子は高熱で苦しみ出し、エステルを含めた王宮医官たちは罪人として投獄されてしまう。
そしてエステルの婚約者であり大臣の息子のブノワは、エステルを口汚く罵り婚約破棄をすると、王女ナデージュとの婚約を果たす。ブノワにとって、優秀すぎるエステルは以前から邪魔な存在だったのだ。
エステルは貴族や平民からも悪女、魔女と罵られながら処刑された。
それがこの国の終わりの始まりだった。
出来損ない王女(5歳)が、問題児部隊の隊長に就任しました
瑠美るみ子
ファンタジー
魔法至上主義のグラスター王国にて。
レクティタは王族にも関わらず魔力が無かったため、実の父である国王から虐げられていた。
そんな中、彼女は国境の王国魔法軍第七特殊部隊の隊長に任命される。
そこは、実力はあるものの、異教徒や平民の魔法使いばかり集まった部隊で、最近巷で有名になっている集団であった。
王国魔法のみが正当な魔法と信じる国王は、国民から英雄視される第七部隊が目障りだった。そのため、褒美としてレクティタを隊長に就任させ、彼女を生贄に部隊を潰そうとした……のだが。
「隊長~勉強頑張っているか~?」
「ひひひ……差し入れのお菓子です」
「あ、クッキー!!」
「この時間にお菓子をあげると夕飯が入らなくなるからやめなさいといつも言っているでしょう! 隊長もこっそり食べない! せめて一枚だけにしないさい!」
第七部隊の面々は、国王の思惑とは反対に、レクティタと交流していきどんどん仲良くなっていく。
そして、レクティタ自身もまた、変人だが魔法使いのエリートである彼らに囲まれて、英才教育を受けていくうちに己の才能を開花していく。
ほのぼのとコメディ七割、戦闘とシリアス三割ぐらいの、第七部隊の日常物語。
*小説家になろう・カクヨム様にても掲載しています。
悪役令嬢に転生したので、ゲームを無視して自由に生きる。私にしか使えない植物を操る魔法で、食べ物の心配は無いのでスローライフを満喫します。
向原 行人
ファンタジー
死にかけた拍子に前世の記憶が蘇り……どハマりしていた恋愛ゲーム『ときめきメイト』の世界に居ると気付く。
それだけならまだしも、私の名前がルーシーって、思いっきり悪役令嬢じゃない!
しかもルーシーは魔法学園卒業後に、誰とも結ばれる事なく、辺境に飛ばされて孤独な上に苦労する事が分かっている。
……あ、だったら、辺境に飛ばされた後、苦労せずに生きていけるスキルを学園に居る内に習得しておけば良いじゃない。
魔法学園で起こる恋愛イベントを全て無視して、生きていく為のスキルを習得して……と思ったら、いきなりゲームに無かった魔法が使えるようになってしまった。
木から木へと瞬間移動出来るようになったので、学園に通いながら、辺境に飛ばされた後のスローライフの練習をしていたんだけど……自由なスローライフが楽し過ぎるっ!
※第○話:主人公視点
挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点
となります。
虐殺者の称号を持つ戦士が元公爵令嬢に雇われました
オオノギ
ファンタジー
【虐殺者《スレイヤー》】の汚名を着せられた王国戦士エリクと、
【才姫《プリンセス》】と帝国内で謳われる公爵令嬢アリア。
互いに理由は違いながらも国から追われた先で出会い、
戦士エリクはアリアの護衛として雇われる事となった。
そして安寧の地を求めて二人で旅を繰り広げる。
暴走気味の前向き美少女アリアに振り回される戦士エリクと、
不器用で愚直なエリクに呆れながらも付き合う元公爵令嬢アリア。
凸凹コンビが織り成し紡ぐ異世界を巡るファンタジー作品です。
【完結】公爵家の末っ子娘は嘲笑う
たくみ
ファンタジー
圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。
アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。
ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?
それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。
自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。
このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。
それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。
※小説家になろうさんで投稿始めました
公爵閣下に嫁いだら、「お前を愛することはない。その代わり好きにしろ」と言われたので好き勝手にさせていただきます
柴野
恋愛
伯爵令嬢エメリィ・フォンストは、親に売られるようにして公爵閣下に嫁いだ。
社交界では悪女と名高かったものの、それは全て妹の仕業で実はいわゆるドアマットヒロインなエメリィ。これでようやく幸せになると思っていたのに、彼女は夫となる人に「お前を愛することはない。代わりに好きにしろ」と言われたので、言われた通り好き勝手にすることにした――。
※本編&後日談ともに完結済み。ハッピーエンドです。
※主人公がめちゃくちゃ腹黒になりますので要注意!
※小説家になろう、カクヨムにも重複投稿しています。
転生幼女の怠惰なため息
(◉ɷ◉ )〈ぬこ〉
ファンタジー
ひとり残業中のアラフォー、清水 紗代(しみず さよ)。異世界の神のゴタゴタに巻き込まれ、アッという間に死亡…( ºωº )チーン…
紗世を幼い頃から見守ってきた座敷わらしズがガチギレ⁉💢
座敷わらしズが異世界の神を脅し…ε=o(´ロ`||)ゴホゴホッ説得して異世界での幼女生活スタートっ!!
もう何番煎じかわからない異世界幼女転生のご都合主義なお話です。
全くの初心者となりますので、よろしくお願いします。
作者は極度のとうふメンタルとなっております…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる