362 / 450
セリナ、謁見の間へ
362
しおりを挟む
重臣たちが顔をしかめながら声を潜めてささやき合っているのがフローラにも聞こえたのだろう。赤髪の伯爵令嬢は得意満面な表情を浮かべている。
「人間ならば一夫一妻が当たり前ですから、ローザがレオン陛下に正妃を自分にして、正妃以外の女は陛下のお側にはべらせないようにと申したのかも知れませんが、金獅子国の王たるお方が妃を一人だけにするなど現実的ではございませんわ! 陛下のおっしゃる通り、ハーレムは解散させるにせよ。必ずしも妃を一人だけにする必要があるとは思えません!」
「私も正妃を一人だけにして、他に寵妃を持たぬなど反対です」
「リオネーラ王太后様!」
赤髪の伯爵令嬢の主張を支持したのはレオン国王の母である王太后だった。フローラはこれ以上ない心強い援護の声に瞳を輝かせ、金髪の国王は思わぬ伏兵に眉根を寄せた。
「レオン。あなたは寵妃ローザを正妃にしたいと申しましたが、その娘は確か魔力が非常に低かったですね?」
「それは……」
「つまり、寵妃ローザから御子が産まれたとしても魔力が非常に低い可能性が高いという事です。寵妃の子供ならそれでも構いませんが正妃の御子が皆、魔力が低いなど……。まして、ローザ以外に御子を産ませないなど考えられません!」
「母上……!」
「寵妃ローザよ」
「はい」
「あなたは産まれてくる御子のことまで考えて、正妃になりたいと思っているのですか?」
「私は、正妃になりたいなんて思ったことはございません」
「ローザ……」
王太后からの問いかけにうつむきながらも、はっきりと答えたローザに金髪の国王は愕然とした表情を浮かべた。
「御覧なさい。寵妃ローザは身の程をわきまえていますよ?」
「しかし!」
「ま、まぁ、何もかも今日、決定するというのは早急でございます……。ハーレムの件に関しては国王陛下一人に対して後宮に千人もの娘がいるのは確かに、いささか人数が多いでしょうから、ひとまず縮小という方向にしては如何でしょうか? 妃の件もお世継ぎ問題が関わる大事……。決定には会議が必要な案件かと存じます」
銀髪の宰相が手にしたハンカチで冷や汗を拭いながら妥協案を提示すると、国王は溜息を吐いて頷いた。
「そうだな……。後宮にいる千人もの娘が突然、外に放り出されても行くあてが無い者もいるだろう……。実家に帰ることが可能な者は出来るだけ早く帰るように通達を出してくれ。後宮を出て外で働きたいという者には可能な限り再就職先の斡旋を……。行くあてが無い側女は後宮の召使いとして雇用を続ける方向になるだろう。ただし、後宮にとどまっても国王の寵妃として王子を産む機会は無いと思ってもらおう」
「人間ならば一夫一妻が当たり前ですから、ローザがレオン陛下に正妃を自分にして、正妃以外の女は陛下のお側にはべらせないようにと申したのかも知れませんが、金獅子国の王たるお方が妃を一人だけにするなど現実的ではございませんわ! 陛下のおっしゃる通り、ハーレムは解散させるにせよ。必ずしも妃を一人だけにする必要があるとは思えません!」
「私も正妃を一人だけにして、他に寵妃を持たぬなど反対です」
「リオネーラ王太后様!」
赤髪の伯爵令嬢の主張を支持したのはレオン国王の母である王太后だった。フローラはこれ以上ない心強い援護の声に瞳を輝かせ、金髪の国王は思わぬ伏兵に眉根を寄せた。
「レオン。あなたは寵妃ローザを正妃にしたいと申しましたが、その娘は確か魔力が非常に低かったですね?」
「それは……」
「つまり、寵妃ローザから御子が産まれたとしても魔力が非常に低い可能性が高いという事です。寵妃の子供ならそれでも構いませんが正妃の御子が皆、魔力が低いなど……。まして、ローザ以外に御子を産ませないなど考えられません!」
「母上……!」
「寵妃ローザよ」
「はい」
「あなたは産まれてくる御子のことまで考えて、正妃になりたいと思っているのですか?」
「私は、正妃になりたいなんて思ったことはございません」
「ローザ……」
王太后からの問いかけにうつむきながらも、はっきりと答えたローザに金髪の国王は愕然とした表情を浮かべた。
「御覧なさい。寵妃ローザは身の程をわきまえていますよ?」
「しかし!」
「ま、まぁ、何もかも今日、決定するというのは早急でございます……。ハーレムの件に関しては国王陛下一人に対して後宮に千人もの娘がいるのは確かに、いささか人数が多いでしょうから、ひとまず縮小という方向にしては如何でしょうか? 妃の件もお世継ぎ問題が関わる大事……。決定には会議が必要な案件かと存じます」
銀髪の宰相が手にしたハンカチで冷や汗を拭いながら妥協案を提示すると、国王は溜息を吐いて頷いた。
「そうだな……。後宮にいる千人もの娘が突然、外に放り出されても行くあてが無い者もいるだろう……。実家に帰ることが可能な者は出来るだけ早く帰るように通達を出してくれ。後宮を出て外で働きたいという者には可能な限り再就職先の斡旋を……。行くあてが無い側女は後宮の召使いとして雇用を続ける方向になるだろう。ただし、後宮にとどまっても国王の寵妃として王子を産む機会は無いと思ってもらおう」
1
お気に入りに追加
4,832
あなたにおすすめの小説
転移したらダンジョンの下層だった
Gai
ファンタジー
交通事故で死んでしまった坂崎総助は本来なら自分が生きていた世界とは別世界の一般家庭に転生できるはずだったが神側の都合により異世界にあるダンジョンの下層に飛ばされることになった。
もちろん総助を転生させる転生神は出来る限りの援助をした。
そして総助は援助を受け取るとダンジョンの下層に転移してそこからとりあえずダンジョンを冒険して地上を目指すといった物語です。
不憫な推しキャラを救おうとしただけなのに【魔法学園編 突入☆】
はぴねこ
BL
美幼児&美幼児(ブロマンス期)からの美青年×美青年(BL期)への成長を辿る長編BLです。
前世で52歳で亡くなった主人公はその自我を保ったまま、生前にプレイしていた『星鏡のレイラ』という乙女ゲームの世界に攻略対象のリヒトとして転生した。
ゲームでは攻略が難しくバッドエンドで凌辱監禁BL展開になってしまう推しのカルロを守るべくリヒトは動き出す。
まずは味方を作るために、ゲームでもリヒトの護衛をしていたグレデン卿に剣の指南役になってもらった。
数年前にいなくなってしまった弟を探すグレデン卿に協力する中で、 リヒトは自国の悍ましい慣習を知ることになった。
リヒトが王子として生まれたエトワール王国では、権力や金銭を得るために子供たちを上位貴族や王族に貢ぐ悍ましい慣習があった。
リヒトはグレデン卿の弟のゲーツを探し出してグレデン卿とゲーツを味方にした。
ゲームでカルロの不幸が始まるのはカルロの両親が亡くなってからのため、カルロの両親を守って亡くなる運命を変えたのだが、未来が変わり、カルロの両親は離婚することになってしまった。
そして、そもそもカルロの両親はカルロのことを育児放棄し、領地経営もまとも行なっていなかったことが判明した。
カルロのためにどうしたらいいのかとリヒトが悩んでいると、乳母のヴィント侯爵がカルロを養子に迎えてくれ、カルロはリヒトの従者になることになった。
リヒトはこの先もカルロを守り、幸せにすると心に誓った。
リヒト… エトワール王国の第一王子。カルロへの父性が暴走気味。
カルロ… リヒトの従者。リヒトは神様で唯一の居場所。リヒトへの想いが暴走気味。
魔塔主… 一人で国を滅ぼせるほどの魔法が使える自由人。ある意味厄災。リヒトを研究対象としている。
オーロ皇帝… 大帝国の皇帝。エトワールの悍ましい慣習を嫌っていたが、リヒトの利発さに興味を持つ。
ナタリア… 乙女ゲーム『星鏡のレイラ』のヒロイン。オーロ皇帝の孫娘。カルロとは恋のライバル。
異世界に転生した社畜は調合師としてのんびりと生きていく。~ただの生産職だと思っていたら、結構ヤバい職でした~
夢宮
ファンタジー
台風が接近していて避難勧告が出されているにも関わらず出勤させられていた社畜──渡部与一《わたべよいち》。
雨で視界が悪いなか、信号無視をした車との接触事故で命を落としてしまう。
女神に即断即決で異世界転生を決められ、パパっと送り出されてしまうのだが、幸いなことに女神の気遣いによって職業とスキルを手に入れる──生産職の『調合師』という職業とそのスキルを。
異世界に転生してからふたりの少女に助けられ、港町へと向かい、物語は動き始める。
調合師としての立場を知り、それを利用しようとする者に悩まされながらも生きていく。
そんな与一ののんびりしたくてものんびりできない異世界生活が今、始まる。
※2話から登場人物の描写に入りますので、のんびりと読んでいただけたらなと思います。
※サブタイトル追加しました。
美しい姉と痩せこけた妹
サイコちゃん
ファンタジー
若き公爵は虐待を受けた姉妹を引き取ることにした。やがて訪れたのは美しい姉と痩せこけた妹だった。姉が夢中でケーキを食べる中、妹はそれがケーキだと分からない。姉がドレスのプレゼントに喜ぶ中、妹はそれがドレスだと分からない。公爵はあまりに差のある姉妹に疑念を抱いた――
龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜
クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。
生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。
母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。
そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。
それから〜18年後
約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。
アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。
いざ〜龍国へ出発した。
あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね??
確か双子だったよね?
もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜!
物語に登場する人物達の視点です。
お前じゃないと、追い出されたが最強に成りました。ざまぁ~見ろ(笑)
いくみ
ファンタジー
お前じゃないと、追い出されたので楽しく復讐させて貰いますね。実は転生者で今世紀では貴族出身、前世の記憶が在る、今まで能力を隠して居たがもう我慢しなくて良いな、開き直った男が楽しくパーティーメンバーに復讐していく物語。
---------
掲載は不定期になります。
追記
「ざまぁ」までがかなり時間が掛かります。
お知らせ
カクヨム様でも掲載中です。
婚約を破棄された令嬢は舞い降りる❁
もきち
ファンタジー
「君とは婚約を破棄する」
結婚式を一か月後に控えた婚約者から呼び出され向かった屋敷で言われた言葉
「破棄…」
わざわざ呼び出して私に言うのか…親に言ってくれ
親と親とで交わした婚約だ。
突然の婚約破棄から始まる異世界ファンタジーです。
HOTランキング、ファンタジーランキング、1位頂きました㊗
人気ランキング最高7位頂きました㊗
誠にありがとうございますm(__)m
愛されない皇妃~最強の母になります!~
椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』
やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。
夫も子どもも――そして、皇妃の地位。
最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。
けれど、そこからが問題だ。
皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。
そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど……
皇帝一家を倒した大魔女。
大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!?
※表紙は作成者様からお借りしてます。
※他サイト様に掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる