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セリナの憂鬱と決断

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 良い香りを漂わせながら焼き上げたスポンジケーキは風魔法を使って冷ましつつ、前日に仕込んでおいたレモン果汁とシナモンに付け込んでおいたカットしたリンゴを使ってアップルパイを作って焼き上げ、スポンジケーキが冷めればクリームとカットフルーツでデコレーションし、フルーツケーキを作った。

 こうして、いつも通りケーキやタルト、パイを作って店頭のショーケースに入れていくが、今日は新しく作ってみたい物があった。

「鍋に砂糖と水飴を入れてっと……」

 銅製鍋に砂糖と水飴を投入した後、火魔法で熱する。別に用意していた大きめの銅製ボウルに氷魔法で複数の氷を作ってそこに水を投入し、氷水が用意できたところで煮込んだ砂糖と水飴を鍋ごと氷水が入ったボウルに投入してある程度、温度を冷ます。

 そして、さらに別の銅製ボウルに常温バターを投入して、バターの色が白っぽく変化するまでよくかき混ぜたら、氷水で温度を下げた砂糖と水飴を混ぜたシロップをバターの入ったボウルに投入してさらによく混ぜる。

「よし! これでバタークリームが出来上がったわ!」

 ためしに少し味をみてみると、風味豊かなバタークリームが口の中でなめらかにとろけるのが感じられた。

「うん。成功ね!」

 砂糖と水飴、バターを材料にして作るバタークリームなら日持ちするので、賞味期限に余裕が持てるのが嬉しい。今日の所はひとまずアプリコットジャムを使ったシンプルな、バタークリームケーキを作った。

 ロシアンノズル口金を駆使して可愛らしい花のクリームをあしらったバタークリームケーキはシンプルながら可愛らしい見た目となり、出来上がったそれをさっそく店頭に並べた。

「バタークリームが好評なようなら作り置きが出来るからイザと言う時に助かるんだけど、どうかしらね?」

 ひとりごちながら店頭のショーケースにケーキを入れ終わり、プレーンやオレンジなど複数種のスコーンも並べ終わった時、猫耳の双子メイドが階段を降りてきた。

「おはようございますセリナ様~」

「あれ? 見慣れないケーキが?」

 ショーケースの中に、いつもある黄金色のアップルパイやチーズケーキ、食欲をそそる真っ赤なクランベリータルト、宝石のように美しいフルーツケーキの他に、ひっそり新作ケーキがお目見えしているのを双子は目ざとく発見した。

「うん。バタークリームケーキを作ってみたの。中にアプリコットジャムが入ってるシンプルなケーキよ」

「バタークリーム!?」

「いったい、どんなお味なんでしょう?」

 二人して小首をかしげる双子に私はにっこりと笑った。

「そう言うと思ってルルとララの分を用意してるから、朝食の後か休憩時間にでも食べてみて」

「やったー!」

「私、さっそく頂きます!」

 双子メイドは猫耳をピンと立てて目を輝かせながら喜んでいる。そんな二人を微笑ましく見つめながら、私は今朝見た夢が正夢じゃあなかったら良いんだけどと思いながら、双子と共にダイニングルームに向かった。
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