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セリナの憂鬱と決断
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天井からクリスタルのシャンデリアが吊るされた部屋の中に天蓋付きの寝台があった。青いカーテンがかけられた窓の外から光が差し込む中、寝台の中で臥せって苦しそうな呼吸をしている金髪の男性を見つめながら、そっと男性が額に浮かべた汗を濡れた布でぬぐっているプラチナブロンドの女性はローザだった。
水色のドレスを着たローザはアクアマリン色の瞳に涙を浮かべながら、寝台の中にいる男性の手を握ってひとすじの涙を流した。目を閉じている男性の横顔は長いまつ毛と豊かな金髪が印象的だったが、ローザがその金髪をなでた瞬間、耳に何か丸い物が見えた。ローザの影でよく見えない。あれは何だろう?
そう思った瞬間、窓の外から差し込む朝の陽光を浴びながら私はパティスリーの二階にある自室で目を覚ました。
「夢か……。変な夢だったわね。夢にローザが出て来るなんて、何であんな……。いや、あんな夢を見る心当たりはあるか」
寵妃となったローザから国王陛下が原因不明の麻痺症状になったことを告げられ、陛下に経口補水液を試したいと懇願されてレシピを教えたことが気になってるからだろう。
「国王陛下の麻痺症状が呪いのようだと思って、ついヴォルフさんが呪いにかかっていたって言ってたことを思い出して話してしまったけど、ヴォルフさんが完治した原因もよく分からないのに……。経口補水液に望みを持たせてしまうような話の流れになっちゃったもんなぁ」
正直なところ、ハチミツ、レモン、塩、水で作る経口補水液で医者でさえも治療困難な麻痺症状を根治できるとは思えない。そしてあの後、臥せっていた国王陛下の病状が回復したという話も聞こえてこない。
もし、経口補水液で国王陛下が治るようなことがあれば、すぐ知らせてくれた筈だ。それが無いということは、つまりそういう事なんだろう。
「私が余計な話をしてしまった為に、経口補水液をためしたローザが余計に悲しい思いをしているんじゃないかしら……」
そんな憂鬱な思いを胸に抱きながら、鏡台の前で白いペチコートを身につけてから服を着て身支度を整え階段を降り、店頭のショーケースに設置している保冷装置を起動させた後に調理場で今日、販売するケーキを作っていく。
いつも通り、銅製ボウルに大量の卵を割り入れて風魔法でメレンゲ状になるまでかき混ぜ、砂糖や溶かしバター、牛乳、小麦粉を加えて生地を作り、金属製のケーキ型に生地を流し込んだら火魔法で熱した窯に生地を流し込んだケーキ型を投入して火加減を調整しながら表面がキツネ色になるまで焼き上げる。
水色のドレスを着たローザはアクアマリン色の瞳に涙を浮かべながら、寝台の中にいる男性の手を握ってひとすじの涙を流した。目を閉じている男性の横顔は長いまつ毛と豊かな金髪が印象的だったが、ローザがその金髪をなでた瞬間、耳に何か丸い物が見えた。ローザの影でよく見えない。あれは何だろう?
そう思った瞬間、窓の外から差し込む朝の陽光を浴びながら私はパティスリーの二階にある自室で目を覚ました。
「夢か……。変な夢だったわね。夢にローザが出て来るなんて、何であんな……。いや、あんな夢を見る心当たりはあるか」
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「国王陛下の麻痺症状が呪いのようだと思って、ついヴォルフさんが呪いにかかっていたって言ってたことを思い出して話してしまったけど、ヴォルフさんが完治した原因もよく分からないのに……。経口補水液に望みを持たせてしまうような話の流れになっちゃったもんなぁ」
正直なところ、ハチミツ、レモン、塩、水で作る経口補水液で医者でさえも治療困難な麻痺症状を根治できるとは思えない。そしてあの後、臥せっていた国王陛下の病状が回復したという話も聞こえてこない。
もし、経口補水液で国王陛下が治るようなことがあれば、すぐ知らせてくれた筈だ。それが無いということは、つまりそういう事なんだろう。
「私が余計な話をしてしまった為に、経口補水液をためしたローザが余計に悲しい思いをしているんじゃないかしら……」
そんな憂鬱な思いを胸に抱きながら、鏡台の前で白いペチコートを身につけてから服を着て身支度を整え階段を降り、店頭のショーケースに設置している保冷装置を起動させた後に調理場で今日、販売するケーキを作っていく。
いつも通り、銅製ボウルに大量の卵を割り入れて風魔法でメレンゲ状になるまでかき混ぜ、砂糖や溶かしバター、牛乳、小麦粉を加えて生地を作り、金属製のケーキ型に生地を流し込んだら火魔法で熱した窯に生地を流し込んだケーキ型を投入して火加減を調整しながら表面がキツネ色になるまで焼き上げる。
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