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異変

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 ケーキを受け取ってセリナと別れた後、王宮内の廊下を歩いていると前方から金褐色の髪と瞳が印象的な男性が歩いてきた。そしてそれは第二王子ライガ殿下だと気づき、私は動揺した。

「これは、ライガ殿下……! 先ほどは大変、失礼いたしました!」

 ついさっき国王陛下の寝室では第二王子ライガ殿下と宰相、侍医の前でかなり取り乱し、涙まで流してしまったことを思い出して私は思わず頭を下げた。

「寵妃ローザよ。頭を上げて下さい」

「はい……」

「あなたの兄上を想う気持ち、実に尊い物だと思います。あなたの気持ちを無視して、強引に降嫁の話を進めるべきではないと兄上に伝えておきました」

「え?」

 王弟殿下から思いがけない言葉をかけられて戸惑っていると、ライガ王子は金褐色の瞳を細めて笑みを浮かべた。

「個人的にはレオン兄上が国王の座にいる限り、あなたを降嫁させるつもりは無いです。国王代理として断言しますのでご安心ください」

「ライガ殿下! ありがとうございます!」

 私の意思と関係なく降嫁の話が進められると思っていたのに、少なくともレオン陛下が存命の間は降嫁させられることは無いと分かり安堵すると同時に、第二王子に対して心から感謝した。

「いえ、あなたのように献身的に尽くしてくれる方が兄上のお側にいる方が、兄上も心安らかに過ごせるでしょう」

「及ばずながら、レオン陛下によくお仕えしたいと思います」

「あなたのような素晴らしい寵妃にそこまで想ってもらえて我が兄は実に幸せ者だ……。どうかレオン兄上のこと、頼みます」

「はい!」

 第二王子がオレンジ色のマントを翻してその場を去った。私が胸をなで下ろしていると廊下の奥から、茶髪の侍女ジョアンナが慌てたやって来た。

「ローザ!」

「ジョアンナ。どうしたの? そんなに息を切らせて」

「そんなにって……! てっきりレオン陛下の所にいるんだと思ってたら、ミランダ様にローザが泣きながら廊下を歩いてたって聞いて、どれだけ驚いたか! 一体なにがあったの!?」

「ああ、ごめんなさい。心配かけちゃったわね……。でも、もう大丈夫よ」

「そうなの?」

 私が泣いていたと聞いたジョアンナは、もっと憔悴していると思っていたのだろう。しかし、降嫁の件は第二王子によってひとまず止められ、セリナと話してやるべきことが見えた私は、もはや泣いている場合ではない。

「ええ。それより、ちょうど良かったわ。厨房に行くから付き合って」

「へ? 厨房に? いいけど……」
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