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異変
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金髪の国王陛下は天蓋付きの寝台の中で上半身を起こして白髭の侍医、銀髪の宰相、ライガ王子を見渡した。
「皆、急に呼び立てて済まぬな」
「いえ」
「急なお呼び出しは、何か大事な用件がおありで?」
侍医が頭を下げ、宰相が窺うように尋ねるとレオン陛下は小さく頷く。
「うむ……。実はそなたらも知っての通り、右手と両脚に出ていた麻痺症状の件だ」
「症状が良くなったのですか!?」
恰幅の良い銀髪の宰相が期待を込めて問いかけたが、レオン陛下は力無く首を横に振った。
「いや。残念ながら、右手と両脚に加えて左手にまで麻痺症状が出るようになった」
「何と!」
「それと、これはまだ誰にも言っていなかったのだが今朝から、どうも呼吸が苦しい……」
「呼吸が!?」
白髭の侍医は分厚いメガネの奥で目を見開いた。シロウトでも呼吸が困難になることが、どれほど恐ろしいかはよく分かる。まして医学の心得がある者ならば尚更だろう。私もショックを受けたが寝室内の方達に悟られないように手で自分の口元をおさえた。
「うむ。そなたは医師としてどう見る」
「それは……」
「余が許す。忌憚なき所見を述べよ」
「……麻痺症状が両手、両足に達しているということは症状が進行していると考えられます。……さらに呼吸が苦しいというのは呼吸器官にも麻痺症状の影響が出始めている可能性があるかと」
国王陛下の言葉を受けて沈痛な面持ちの侍医は、床に視線を落としながら所見を述べた。それを受けてレオン陛下は冷静に頷いた。
「余もそう思う。それで余命はどの程度だと見る?」
「厳密にどの程度かというのは断言できませんが。呼吸障害が本格的になれば、長くは……」
「そうであろうな」
「レオン陛下……」
銀髪の宰相は顔を曇らせ、どう声をかけるべきか思い悩んでいるようだったが金髪の国王陛下は淡々とした様子だった。
「今日、そなたらを呼んだのは近々、呼吸困難により恐らく意思の疎通も難しくなることが考えられる為、そうなる前に余の意志を伝えておくべく皆を呼んだのだ」
「国王陛下のご意思を……」
「うむ。まず、余が崩御した後は王位継承順位からいっても、余の弟である第二王子ライガが王位を継承するのが相応しい」
「兄上……」
名指しされたライガ王子は複雑そうな表情で金髪の国王陛下を見つめているが、何と言ったら良いのか分からないのだろう。言葉が出ない様子で眉根を寄せている。
「宰相はライガをよく補佐してやってくれ」
「はい」
「トーランス。あれを」
「はっ」
「皆、急に呼び立てて済まぬな」
「いえ」
「急なお呼び出しは、何か大事な用件がおありで?」
侍医が頭を下げ、宰相が窺うように尋ねるとレオン陛下は小さく頷く。
「うむ……。実はそなたらも知っての通り、右手と両脚に出ていた麻痺症状の件だ」
「症状が良くなったのですか!?」
恰幅の良い銀髪の宰相が期待を込めて問いかけたが、レオン陛下は力無く首を横に振った。
「いや。残念ながら、右手と両脚に加えて左手にまで麻痺症状が出るようになった」
「何と!」
「それと、これはまだ誰にも言っていなかったのだが今朝から、どうも呼吸が苦しい……」
「呼吸が!?」
白髭の侍医は分厚いメガネの奥で目を見開いた。シロウトでも呼吸が困難になることが、どれほど恐ろしいかはよく分かる。まして医学の心得がある者ならば尚更だろう。私もショックを受けたが寝室内の方達に悟られないように手で自分の口元をおさえた。
「うむ。そなたは医師としてどう見る」
「それは……」
「余が許す。忌憚なき所見を述べよ」
「……麻痺症状が両手、両足に達しているということは症状が進行していると考えられます。……さらに呼吸が苦しいというのは呼吸器官にも麻痺症状の影響が出始めている可能性があるかと」
国王陛下の言葉を受けて沈痛な面持ちの侍医は、床に視線を落としながら所見を述べた。それを受けてレオン陛下は冷静に頷いた。
「余もそう思う。それで余命はどの程度だと見る?」
「厳密にどの程度かというのは断言できませんが。呼吸障害が本格的になれば、長くは……」
「そうであろうな」
「レオン陛下……」
銀髪の宰相は顔を曇らせ、どう声をかけるべきか思い悩んでいるようだったが金髪の国王陛下は淡々とした様子だった。
「今日、そなたらを呼んだのは近々、呼吸困難により恐らく意思の疎通も難しくなることが考えられる為、そうなる前に余の意志を伝えておくべく皆を呼んだのだ」
「国王陛下のご意思を……」
「うむ。まず、余が崩御した後は王位継承順位からいっても、余の弟である第二王子ライガが王位を継承するのが相応しい」
「兄上……」
名指しされたライガ王子は複雑そうな表情で金髪の国王陛下を見つめているが、何と言ったら良いのか分からないのだろう。言葉が出ない様子で眉根を寄せている。
「宰相はライガをよく補佐してやってくれ」
「はい」
「トーランス。あれを」
「はっ」
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