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セリナの近況

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「ケヴィン君! ちょっと、ここで待っててね!」

 俯いたまま、微動だにしないケヴィン君にそう言い残し、急いで階段を駆け上がった私はバルコニーに出て、外に出してあった植木鉢を次々と室内に入れた。

「これで、最後の一つだわ!」

 そう思ってバルコニーに残った最後の植木鉢に手を伸ばした時、上空から拳と同等の大きさの氷のかたまりが降って来て植木鉢の側面に直撃し、植木鉢の上部が高い音を立てて破損すると同時に、バルコニー上に砕けた氷が飛び散った。

「ひえっ……!」

 さいわい、ケガは無かったが一歩間違えれば大惨事だった。ゾッとしながら最後の植木鉢を室内へ入れ、木窓を閉めて階段を降りるとケヴィン君はうつむき、私が二階に向かった時と同じ状態でダイニングルームに立ちつくしていた。

「ケヴィン君、あの……」

「許さない……」

「え?」

「ぼくの姉さんを寵妃にした国王を殺してやるっ!」


 金髪碧眼の少年がそう叫んだ瞬間、すぐ近くで大きな音と共に雷が落ちたのを感じ、私は全身が総毛立った。そしてケヴィン君の瞳に怒りと同時に、強い殺意が生まれているのが見え唖然とする。

 よくよく見れば、ケヴィン君の身体から視認できるほど蒼い炎のような魔力がほとばしっているのが見える。これは間違いない。今、起こっている天候の異変も、先ほど一瞬にして噴水が氷漬けになってしまったのも全部、ケヴィン君の仕業だと確信した。

「ケヴィン君、落ち着いて!」

「これが落ち着いていられるもんか! 国王は必ず殺してやる! 氷の矢で心臓を貫いてやるっ!」

 金髪碧眼の少年の怒りに呼応するように、ダイニングルームの床がピキピキと音を立てながら白く凍っていく。このままではこの部屋、いや店全体が氷漬けになり、この地域一帯も上空から降り続けるヒョウによって大打撃を受けてしまう。

 私が魔法で攻撃して無理矢理、抑え込んでケヴィン君を無力化できるだろうか? しかし、魔力が暴走状態で怒り狂っている状態のケヴィン君を無傷で無力化できるとは到底、思えない。

 それにローザの弟を攻撃して傷つけるなんて、絶対ダメだ。どうすれば良いのか……。こんな時、ケヴィン君の姉であるローザなら、どうやって弟をなだめるのか……。必死に考えた時、ローザの言葉を思い出した。

 思考していた間にもダイニングルームの床がほぼ一面、冷気によって白く染まって壁まで下部から凍てつき始めている。私の足元もこのまま行くと氷漬けで動けなくなる。動くなら、もう今しかないと私は覚悟を決めて踏み出した。
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