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寵姫ローザ
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私が食べる様子を見ながら金髪の国王陛下は、満足そうに琥珀色の瞳を細めた。しかし、私だけがケーキを食べるのは、あまりにも申し訳ない気持ちになる。
「あの……。陛下もお一つ、いかがですか?」
「いや、この後、すぐに他国の大使と謁見の予定が入っているので、すぐ戻らねばならぬ」
「そうなのですか……」
「ああ。思っていたより、そなたが元気そうで良かった」
「レオン陛下。お気遣いありがとうございます」
笑みをこぼした国王陛下に、私も笑顔で感謝の言葉を伝えると何故かレオン陛下の視線が泳いだ。
「うむ……。そうだ。女官長」
「はい。何でございましょう?」
「ローザが気に入っているなら、またこのケーキを買いに行ってやってくれ」
「……はい」
国王陛下の言葉に、黒髪の女官長ミランダ様が頭を下げて同意したが、私は内心ギョッとする。
「ちょっと、お待ちください!」
「なんだ? ローザ」
「女官長ミランダ様はお忙しい方ですので、私のために城下まで行って頂くのは申し訳ないです!」
そう。今は寵妃になってしまったとはいえ、ミランダ様は元々、私の上司だった方。そして侍女見習いとして働いていた私は、女官や女官長の仕事が忙しいのを知っている。
それなのに私が食べるケーキを用意する為、多忙な女官長を一度ならず二度までも城下まで行かせるなんて心苦しい事、この上ない。私が懸命に訴えると金髪の国王陛下は、自分の顎を触りながら思案する。
「そうか……。それでは、そのケーキ店の者に持って来させれば良い」
「えっ」
「ローザも、そのケーキ店の者が友人なら話がしたいだろう?」
「そ、それは……。はい」
確かに、出来る事なら親友であるセリナと話がしたい。しかし、後宮に入れられた以上、無理だと半ば諦めていたのに……。突然の提案に呆然としていると国王陛下は頷いた。
「ふむ。ではケーキ店の者が来た際にはローザも直接、会って話をすると良い」
「よろしいのですか!?」
「そのケーキを作ったローザの友人は、女なのだろう?」
「はい」
「ならば、ローザが会うのも問題無かろう。余が許可する。女官長、話を通しておいてくれ」
「かしこまりました」
黒髪の女官長や、茶髪の侍女が頭を垂れる中、この後も公務があるというレオン陛下は後宮を後にした。思いがけない展開に驚きながらも、久しぶりにセリナと話が出来るかもしれないと思うと、頬が緩む。しかし、一方でセリナの方はどうなのだろうかと考え不安になる。
「あの……。陛下もお一つ、いかがですか?」
「いや、この後、すぐに他国の大使と謁見の予定が入っているので、すぐ戻らねばならぬ」
「そうなのですか……」
「ああ。思っていたより、そなたが元気そうで良かった」
「レオン陛下。お気遣いありがとうございます」
笑みをこぼした国王陛下に、私も笑顔で感謝の言葉を伝えると何故かレオン陛下の視線が泳いだ。
「うむ……。そうだ。女官長」
「はい。何でございましょう?」
「ローザが気に入っているなら、またこのケーキを買いに行ってやってくれ」
「……はい」
国王陛下の言葉に、黒髪の女官長ミランダ様が頭を下げて同意したが、私は内心ギョッとする。
「ちょっと、お待ちください!」
「なんだ? ローザ」
「女官長ミランダ様はお忙しい方ですので、私のために城下まで行って頂くのは申し訳ないです!」
そう。今は寵妃になってしまったとはいえ、ミランダ様は元々、私の上司だった方。そして侍女見習いとして働いていた私は、女官や女官長の仕事が忙しいのを知っている。
それなのに私が食べるケーキを用意する為、多忙な女官長を一度ならず二度までも城下まで行かせるなんて心苦しい事、この上ない。私が懸命に訴えると金髪の国王陛下は、自分の顎を触りながら思案する。
「そうか……。それでは、そのケーキ店の者に持って来させれば良い」
「えっ」
「ローザも、そのケーキ店の者が友人なら話がしたいだろう?」
「そ、それは……。はい」
確かに、出来る事なら親友であるセリナと話がしたい。しかし、後宮に入れられた以上、無理だと半ば諦めていたのに……。突然の提案に呆然としていると国王陛下は頷いた。
「ふむ。ではケーキ店の者が来た際にはローザも直接、会って話をすると良い」
「よろしいのですか!?」
「そのケーキを作ったローザの友人は、女なのだろう?」
「はい」
「ならば、ローザが会うのも問題無かろう。余が許可する。女官長、話を通しておいてくれ」
「かしこまりました」
黒髪の女官長や、茶髪の侍女が頭を垂れる中、この後も公務があるというレオン陛下は後宮を後にした。思いがけない展開に驚きながらも、久しぶりにセリナと話が出来るかもしれないと思うと、頬が緩む。しかし、一方でセリナの方はどうなのだろうかと考え不安になる。
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