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侍女見習いローザ
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学園時代のクラスメイトと言えば第四王子であるダーク王子も王宮にいる。しかし、何度が廊下や回廊ですれ違っているがダーク王子の方は、私に気付いていないようで声をかけられたことは無い。今朝の王太子妃候補の件を思い返しながら、私は大きな息を吐いた。
「ダーク王子はともかく、問題はフローラよね……」
王立学園に入学した時、オブシディア侯爵家の子息クラレンス様とセリナが婚約者同士だったことが理由で当初、フローラがセリナにケンカ腰だったのをよく覚えている。
その後は柔和になったのかと思っていたけど卒業式の日、伯爵令嬢フローラが婚約破棄の件でセリナに告げた言葉はかなり酷い物だった。
「私自身がフローラから直接、嫌がらせをされた訳じゃないけど……。フローラが王太子妃候補になって。しかも、私が王太子妃付き侍女になるかもしれないなんて……」
回廊を抜けると王宮の正門に最も近い『第一の庭』と呼ばれるで場所に出る。広い庭園内は一面、緑色の芝生と共に青色が鮮やかなクロッカスの花、フリルのような花びらが特徴的な大輪の紫キキョウ。そして、白色やピンク色の美しいバラが咲き誇っている。
王宮内で住み込んで働く侍女、召使いたちが月に一回、家族と面会が許される場所がこの『第一の庭』で雨天の場合、第一の庭に面した長い通路に置かれた長椅子であったり、身分が高い女官などは近くの個室で家族水入らずの対面ができる。
下級貴族出身で王宮で侍女見習いをしている私は当然、個室の利用は出来ない。とは言え、王宮で働く庭師たちがしっかりと整備した美しい庭園で家族と会えるなら、十分すぎるほどの心遣いだと感じる。
私が庭園内を見渡すと、温かな陽光が降り注ぐ庭園の一角にある白い石造りの東屋前で、金髪碧眼の少年が手を振ってるのが遠目から見えた。
「姉さん!」
「ケヴィン!」
走りながら笑顔で私の胸に飛び込んできた弟を抱きしめ、久しぶりに姉弟が再会できた喜びを噛みしめる。幼い弟の柔らかな金色の髪をなでると、弟の深い蒼玉色の瞳が嬉しそうに細められた。
「会いたかったよ、姉さん」
「私も会いたかったわ。ケヴィン……」
お互いにしっかりと顔を見つめ合い、変わりがないか確かめる。幸い、弟の顔色は良い。叔母の家に弟を一人残して王宮で働くのを悩んだこともあったが、優しい叔母が幼い弟に心を砕いてくれているのだろう。
「姉さん……。少し、痩せたんじゃない?」
「そうかしら? きちんと食べてるつもりだけど」
王宮の料理人が作ってくれる召使い用の食事は王族や重臣が口にする物よりは、もちろんグレードが下がるが、じゅうぶんな量が出る。
慣れない仕事で少し気疲れしてる部分はあるから、疲れが顔に出てしまったのだろうかと心配性な弟の前で苦笑していると、ケヴィンは何かを思いついたようで蒼玉色の瞳を輝かせてながら私の手を握った。
「ダーク王子はともかく、問題はフローラよね……」
王立学園に入学した時、オブシディア侯爵家の子息クラレンス様とセリナが婚約者同士だったことが理由で当初、フローラがセリナにケンカ腰だったのをよく覚えている。
その後は柔和になったのかと思っていたけど卒業式の日、伯爵令嬢フローラが婚約破棄の件でセリナに告げた言葉はかなり酷い物だった。
「私自身がフローラから直接、嫌がらせをされた訳じゃないけど……。フローラが王太子妃候補になって。しかも、私が王太子妃付き侍女になるかもしれないなんて……」
回廊を抜けると王宮の正門に最も近い『第一の庭』と呼ばれるで場所に出る。広い庭園内は一面、緑色の芝生と共に青色が鮮やかなクロッカスの花、フリルのような花びらが特徴的な大輪の紫キキョウ。そして、白色やピンク色の美しいバラが咲き誇っている。
王宮内で住み込んで働く侍女、召使いたちが月に一回、家族と面会が許される場所がこの『第一の庭』で雨天の場合、第一の庭に面した長い通路に置かれた長椅子であったり、身分が高い女官などは近くの個室で家族水入らずの対面ができる。
下級貴族出身で王宮で侍女見習いをしている私は当然、個室の利用は出来ない。とは言え、王宮で働く庭師たちがしっかりと整備した美しい庭園で家族と会えるなら、十分すぎるほどの心遣いだと感じる。
私が庭園内を見渡すと、温かな陽光が降り注ぐ庭園の一角にある白い石造りの東屋前で、金髪碧眼の少年が手を振ってるのが遠目から見えた。
「姉さん!」
「ケヴィン!」
走りながら笑顔で私の胸に飛び込んできた弟を抱きしめ、久しぶりに姉弟が再会できた喜びを噛みしめる。幼い弟の柔らかな金色の髪をなでると、弟の深い蒼玉色の瞳が嬉しそうに細められた。
「会いたかったよ、姉さん」
「私も会いたかったわ。ケヴィン……」
お互いにしっかりと顔を見つめ合い、変わりがないか確かめる。幸い、弟の顔色は良い。叔母の家に弟を一人残して王宮で働くのを悩んだこともあったが、優しい叔母が幼い弟に心を砕いてくれているのだろう。
「姉さん……。少し、痩せたんじゃない?」
「そうかしら? きちんと食べてるつもりだけど」
王宮の料理人が作ってくれる召使い用の食事は王族や重臣が口にする物よりは、もちろんグレードが下がるが、じゅうぶんな量が出る。
慣れない仕事で少し気疲れしてる部分はあるから、疲れが顔に出てしまったのだろうかと心配性な弟の前で苦笑していると、ケヴィンは何かを思いついたようで蒼玉色の瞳を輝かせてながら私の手を握った。
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