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双子のしわざ
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「この店は、か弱い女の子だけで切り盛りしているんですから、腕っぷしの強い男が出入りしているだけで心強いじゃないですか!」
ルルとララの熱弁を聞いて、私は腕を組んで少し考えたあと一理あるなと感じ、深くうなずいた。
「たしかに……。市場でも私一人で歩いてたら、ガラの悪い三人組の男に変な因縁をつけられたけど、ベルントさんを見たら血相を変えて逃げていったものね」
「でしょう!」
「いるだけで効果があるんですよ!」
「そうね……。ベルントさんは良い人だし、この店に出入りしてくれれば心強いけど……」
「私、黒熊ベルントの顔、知ってるんで! もし、店の前を通りかかったらセリナ様に知らせます!」
力強く宣言するララに、私は微笑した。
「うん。じゃあ、お願いするわ……。ちょうど、ベルントさんの感想を取り入れて作った、パウンドケーキの新商品を食べてほしいって思ってたし」
「決まりですね!」
ルルが満面の笑みを浮かべたその時、ララの眼光が鋭く光り、視界に何かをとらえた。
「はっ! 噂をすれば!」
「セリナ様! 黒クマさんが店の前を歩いてます!」
「あ、本当だ」
店の窓ガラスの向こうに、ベルントさんらしき黒髪の男性が歩いているのが見えた。
「ささ、セリナ様! 声をかけましょう!」
「そうね」
というわけで、双子にうながされて店の前を通りかかっていたベルントさんに声をかけて、店内に誘導することに成功した。ベルントさんをともなって店に入ると、ルルとララは興味津々といった様子で瞳をキラキラさせて、こちらを見ている。
ベルントさんは有名人らしいので双子も案外、ミーハーな面があるんだなと思いながら奥に入り、ダイニングルームでパウンドケーキの完成品を切り分けて白磁器の皿の乗せ、試食用にお出しする。
「こちらがベルントさんのアドバイスを受けて作った、クルミとレーズンのはちみつケーキです。お茶も淹れましたので、一緒にどうぞ」
「うむ……」
ベルントさんは試食用のパウンドケーキ、一切れをぺろりと平らげて完成品の味に納得してくれた後、なんと帰りがけに新商品である『クルミとレーズンのはちみつケーキ』を丸ごと一本、購入してくれた。私の作ったケーキをベルントさんが気に入ってくれて、とても嬉しかった。
こうして黒熊ベルントさんが店の近くを通りかかった時には、双子が調理場にいる私に声をかけて、外を歩いているベルントさんに私が声をかける。というのが一種のお約束のような状態になっていった。
ベルントさんは以前、ハチミツが好きだと言っていたが本当にかなり好きだったらしく、私が声をかけて入店した際には必ず、ハチミツのパウンドケーキを買ってくれた。
そればかりだと飽きてしまうのではないかと、ほかの新商品や売れすじ商品をすすめることもあったが、そうすると私がすすめた商品と共に、やっぱりハチミツのパウンドケーキも購入した。
これは真剣に新しいハチミツ入り商品の種類を増やすべく、検討する段階にきているのかも知れない。そう思っていた矢先、ルルとララが二人で話し込んだ後、何やらカリカリと紙に文字を書いている。
小首をかしげながら見守っていると『クマさんも大好き! クルミとレーズンのはちみつケーキ』と書き込んだ値札を作ってペタリとケース内に貼りつけた。
ルルとララの熱弁を聞いて、私は腕を組んで少し考えたあと一理あるなと感じ、深くうなずいた。
「たしかに……。市場でも私一人で歩いてたら、ガラの悪い三人組の男に変な因縁をつけられたけど、ベルントさんを見たら血相を変えて逃げていったものね」
「でしょう!」
「いるだけで効果があるんですよ!」
「そうね……。ベルントさんは良い人だし、この店に出入りしてくれれば心強いけど……」
「私、黒熊ベルントの顔、知ってるんで! もし、店の前を通りかかったらセリナ様に知らせます!」
力強く宣言するララに、私は微笑した。
「うん。じゃあ、お願いするわ……。ちょうど、ベルントさんの感想を取り入れて作った、パウンドケーキの新商品を食べてほしいって思ってたし」
「決まりですね!」
ルルが満面の笑みを浮かべたその時、ララの眼光が鋭く光り、視界に何かをとらえた。
「はっ! 噂をすれば!」
「セリナ様! 黒クマさんが店の前を歩いてます!」
「あ、本当だ」
店の窓ガラスの向こうに、ベルントさんらしき黒髪の男性が歩いているのが見えた。
「ささ、セリナ様! 声をかけましょう!」
「そうね」
というわけで、双子にうながされて店の前を通りかかっていたベルントさんに声をかけて、店内に誘導することに成功した。ベルントさんをともなって店に入ると、ルルとララは興味津々といった様子で瞳をキラキラさせて、こちらを見ている。
ベルントさんは有名人らしいので双子も案外、ミーハーな面があるんだなと思いながら奥に入り、ダイニングルームでパウンドケーキの完成品を切り分けて白磁器の皿の乗せ、試食用にお出しする。
「こちらがベルントさんのアドバイスを受けて作った、クルミとレーズンのはちみつケーキです。お茶も淹れましたので、一緒にどうぞ」
「うむ……」
ベルントさんは試食用のパウンドケーキ、一切れをぺろりと平らげて完成品の味に納得してくれた後、なんと帰りがけに新商品である『クルミとレーズンのはちみつケーキ』を丸ごと一本、購入してくれた。私の作ったケーキをベルントさんが気に入ってくれて、とても嬉しかった。
こうして黒熊ベルントさんが店の近くを通りかかった時には、双子が調理場にいる私に声をかけて、外を歩いているベルントさんに私が声をかける。というのが一種のお約束のような状態になっていった。
ベルントさんは以前、ハチミツが好きだと言っていたが本当にかなり好きだったらしく、私が声をかけて入店した際には必ず、ハチミツのパウンドケーキを買ってくれた。
そればかりだと飽きてしまうのではないかと、ほかの新商品や売れすじ商品をすすめることもあったが、そうすると私がすすめた商品と共に、やっぱりハチミツのパウンドケーキも購入した。
これは真剣に新しいハチミツ入り商品の種類を増やすべく、検討する段階にきているのかも知れない。そう思っていた矢先、ルルとララが二人で話し込んだ後、何やらカリカリと紙に文字を書いている。
小首をかしげながら見守っていると『クマさんも大好き! クルミとレーズンのはちみつケーキ』と書き込んだ値札を作ってペタリとケース内に貼りつけた。
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