41 / 61
41 検分
しおりを挟む 全く想像していなかった死亡状況に私は唖然とした。
「どういうことですか? ユリの花を口にして急性ユリ中毒で死亡したと言うことですか? 侍女フィオーレの死因は自殺ということですか? それとも……」
「分からないんだ。ただ侍女フィオーレは昨晩、城内の部屋や建物内では全く姿が見えなかった。客室にユリの花を置いた後、城の建物内で目撃証言がないことからも、行方をくらました時には庭園のユリ花壇にいたと考えられる」
「ロゼッタが倒れていたあの時間、雨が降り始めて暗くなってきたから庭園にあるユリ花壇の中までは捜索がされなかった。そして夜になったから建物内から暗い庭園のユリ花壇に倒れている者がいても気付かなかったのか……。城内で捜索がされていた時には、すでに侍女フィオーレは……」
「ああ。残念だが……」
「アルベルトさん。公爵令嬢リリアンヌは? 侍女フィオーレが死亡する前に公爵令嬢と接触した形跡は?」
「公爵令嬢リリアンヌはレナード殿下と離れた後、図書館大広間に向かってそこで夜まで過ごしていた。複数の司書が証言している。公爵令嬢が死亡直前の侍女フィオーレと顔をあわせていたとは思えない」
苦虫を噛みつぶしたような表情で顔をゆがめる銀髪の騎士アルベルトさんの背後から靴音が近づいてきて、長髪の魔術師が現れた。
「つまり、侍女フィオーレは少なくとも公爵令嬢の手によって直接、殺害されたわけではないということになりますね」
「グラウクスさん」
「まったく、朝から遺体を見るなんて気が滅入ってしまいますね」
黒縁眼鏡をクイと上げながら、ため息を吐いた魔術師の言葉に私は思わず目を見開いた。
「侍女フィオーレの遺体を見てきたんですか?」
「ええ。地下の遺体安置室に移されました……。アルベルトから聞いたと思いますが、侍女フィオーレは口いっぱいにユリの花を詰めて死んでいましたよ」
「私にも、侍女フィオーレの遺体を見せて頂けますか?」
「マリナさん……。あなたが医師として遺体を検分したいという気持ちは分かりますが、あなたはこの城において第一王子の客人という立場であって、正式な医師という立場ではありません」
「でしたら、私の『助手見習い』として立ちあうというのは如何でしょうか?」
「医女ルチア」
黒縁眼鏡の魔術師に、横から意見したのは白髪の医女ルチアだった。
「私は昨晩『胃洗浄』について説明を聞きましたが、マリナ先生のような見識を持った医師には会ったことがありません。マリナ先生が遺体を検分したいなら、見て頂くのがよいと考えます」
「そうですね……。どちらにせよ医師に遺体を検分してもらわないといけないですし、女性の遺体なら医女に任せるのは適任でしょう。ただ、今のところマリナさんは生前の侍女フィオーレと会った最後の人物ということになりますので遺体に直接、触れるといらぬ詮索をされかねません。あくまで立ち会いのみ、つまり見るだけでもよろしいですか?」
「はい。それで結構です」
「どういうことですか? ユリの花を口にして急性ユリ中毒で死亡したと言うことですか? 侍女フィオーレの死因は自殺ということですか? それとも……」
「分からないんだ。ただ侍女フィオーレは昨晩、城内の部屋や建物内では全く姿が見えなかった。客室にユリの花を置いた後、城の建物内で目撃証言がないことからも、行方をくらました時には庭園のユリ花壇にいたと考えられる」
「ロゼッタが倒れていたあの時間、雨が降り始めて暗くなってきたから庭園にあるユリ花壇の中までは捜索がされなかった。そして夜になったから建物内から暗い庭園のユリ花壇に倒れている者がいても気付かなかったのか……。城内で捜索がされていた時には、すでに侍女フィオーレは……」
「ああ。残念だが……」
「アルベルトさん。公爵令嬢リリアンヌは? 侍女フィオーレが死亡する前に公爵令嬢と接触した形跡は?」
「公爵令嬢リリアンヌはレナード殿下と離れた後、図書館大広間に向かってそこで夜まで過ごしていた。複数の司書が証言している。公爵令嬢が死亡直前の侍女フィオーレと顔をあわせていたとは思えない」
苦虫を噛みつぶしたような表情で顔をゆがめる銀髪の騎士アルベルトさんの背後から靴音が近づいてきて、長髪の魔術師が現れた。
「つまり、侍女フィオーレは少なくとも公爵令嬢の手によって直接、殺害されたわけではないということになりますね」
「グラウクスさん」
「まったく、朝から遺体を見るなんて気が滅入ってしまいますね」
黒縁眼鏡をクイと上げながら、ため息を吐いた魔術師の言葉に私は思わず目を見開いた。
「侍女フィオーレの遺体を見てきたんですか?」
「ええ。地下の遺体安置室に移されました……。アルベルトから聞いたと思いますが、侍女フィオーレは口いっぱいにユリの花を詰めて死んでいましたよ」
「私にも、侍女フィオーレの遺体を見せて頂けますか?」
「マリナさん……。あなたが医師として遺体を検分したいという気持ちは分かりますが、あなたはこの城において第一王子の客人という立場であって、正式な医師という立場ではありません」
「でしたら、私の『助手見習い』として立ちあうというのは如何でしょうか?」
「医女ルチア」
黒縁眼鏡の魔術師に、横から意見したのは白髪の医女ルチアだった。
「私は昨晩『胃洗浄』について説明を聞きましたが、マリナ先生のような見識を持った医師には会ったことがありません。マリナ先生が遺体を検分したいなら、見て頂くのがよいと考えます」
「そうですね……。どちらにせよ医師に遺体を検分してもらわないといけないですし、女性の遺体なら医女に任せるのは適任でしょう。ただ、今のところマリナさんは生前の侍女フィオーレと会った最後の人物ということになりますので遺体に直接、触れるといらぬ詮索をされかねません。あくまで立ち会いのみ、つまり見るだけでもよろしいですか?」
「はい。それで結構です」
0
お気に入りに追加
2,248
あなたにおすすめの小説
異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。
私が美女??美醜逆転世界に転移した私
鍋
恋愛
私の名前は如月美夕。
27才入浴剤のメーカーの商品開発室に勤める会社員。
私は都内で独り暮らし。
風邪を拗らせ自宅で寝ていたら異世界転移したらしい。
転移した世界は美醜逆転??
こんな地味な丸顔が絶世の美女。
私の好みど真ん中のイケメンが、醜男らしい。
このお話は転生した女性が優秀な宰相補佐官(醜男/イケメン)に囲い込まれるお話です。
※ゆるゆるな設定です
※ご都合主義
※感想欄はほとんど公開してます。
皆で異世界転移したら、私だけがハブかれてイケメンに囲まれた
愛丸 リナ
恋愛
少女は綺麗過ぎた。
整った顔、透き通るような金髪ロングと薄茶と灰色のオッドアイ……彼女はハーフだった。
最初は「可愛い」「綺麗」って言われてたよ?
でも、それは大きくなるにつれ、言われなくなってきて……いじめの対象になっちゃった。
クラス一斉に異世界へ転移した時、彼女だけは「醜女(しこめ)だから」と国外追放を言い渡されて……
たった一人で途方に暮れていた時、“彼ら”は現れた
それが後々あんな事になるなんて、その時の彼女は何も知らない
______________________________
ATTENTION
自己満小説満載
一話ずつ、出来上がり次第投稿
急亀更新急チーター更新だったり、不定期更新だったりする
文章が変な時があります
恋愛に発展するのはいつになるのかは、まだ未定
以上の事が大丈夫な方のみ、ゆっくりしていってください
神様の手違いで、おまけの転生?!お詫びにチートと無口な騎士団長もらっちゃいました?!
カヨワイさつき
恋愛
最初は、日本人で受験の日に何かにぶつかり死亡。次は、何かの討伐中に、死亡。次に目覚めたら、見知らぬ聖女のそばに、ポツンとおまけの召喚?あまりにも、不細工な為にその場から追い出されてしまった。
前世の記憶はあるものの、どれをとっても短命、不幸な出来事ばかりだった。
全てはドジで少し変なナルシストの神様の手違いだっ。おまけの転生?お詫びにチートと無口で不器用な騎士団長もらっちゃいました。今度こそ、幸せになるかもしれません?!
【本編完結】異世界再建に召喚されたはずなのにいつのまにか溺愛ルートに入りそうです⁉︎
sutera
恋愛
仕事に疲れたボロボロアラサーOLの悠里。
遠くへ行きたい…ふと、現実逃避を口にしてみたら
自分の世界を建て直す人間を探していたという女神に
スカウトされて異世界召喚に応じる。
その結果、なぜか10歳の少女姿にされた上に
第二王子や護衛騎士、魔導士団長など周囲の人達に
かまい倒されながら癒し子任務をする話。
時々ほんのり色っぽい要素が入るのを目指してます。
初投稿、ゆるふわファンタジー設定で気のむくまま更新。
2023年8月、本編完結しました!以降はゆるゆると番外編を更新していきますのでよろしくお願いします。
男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。
カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。
今年のメインイベントは受験、
あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。
だがそんな彼は飛行機が苦手だった。
電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?!
あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな?
急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。
さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?!
変なレアスキルや神具、
八百万(やおよろず)の神の加護。
レアチート盛りだくさん?!
半ばあたりシリアス
後半ざまぁ。
訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前
お腹がすいた時に食べたい食べ物など
思いついた名前とかをもじり、
なんとか、名前決めてます。
***
お名前使用してもいいよ💕っていう
心優しい方、教えて下さい🥺
悪役には使わないようにします、たぶん。
ちょっとオネェだったり、
アレ…だったりする程度です😁
すでに、使用オッケーしてくださった心優しい
皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞
田舎暮らしと思ったら、異世界暮らしだった。
けむし
ファンタジー
突然の異世界転移とともに魔法が使えるようになった青年の、ほぼ手に汗握らない物語。
日本と異世界を行き来する転移魔法、物を複製する魔法。
あらゆる魔法を使えるようになった主人公は異世界で、そして日本でチート能力を発揮・・・するの?
ゆる~くのんびり進む物語です。読者の皆様ものんびりお付き合いください。
感想などお待ちしております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる