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顔合わせは血の匂い 1
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結婚から遡ること一年前。
ネロ殿下と顔合わせしたのは、薔薇の花咲き乱れる庭園でした。
王城の庭園は美しい、と、もっぱらの評判だったので私も興味があり、丁度良いと決められた場所。
そう、場所は良かった……。
よく晴れた春の日の午後。
天気もよくて気持ちの良い日。
暑くも寒くもなく、気候には全く問題はなかった……。
そんな日、そんなロケーションの、真っ白なガゼボの中。
紅茶の良い香り漂う中でテーブルを挟み向かい合う男と女。
男性はネロ・フィフス王太子殿下。
青に金コードの騎士服をピシッと着こなしてらっしゃるネロ殿下は25歳。
キラッキラの金髪にギリシャ彫刻のように整った顔。スラっとした均整のとれた体は身長も高いし筋肉もしっかり付いている。滑らかな白い肌に、バッサバサのまつ毛に囲われた大きな目。スッと通った鼻筋に、端がキュッと引き締まった唇厚めの口。
美形だ、美形だ、という噂は聞いてはいたが、噂通りの美男子ぶり。
だからといって、私が会いたいと思ったことは一度もない。私は男性にも、結婚にも、さして興味はなかったからだ。
『愛しい、愛しい、マリアンヌ。無理に、とは言わないけれど、お父さまは、マリアンヌのために王子さまとのお見合いをセッティングしてきたよ。どうだい? お会いしてみるかい?』
私に激甘のお父さまが、いつものように相貌をデロンデロンに溶かした笑顔を浮かべて私に言ってきたから、仕方なく了承しただけだ。
しかし、こちらを見る男の透き通った海のような青い目には、思い切り嫌悪の情が浮かんでいた。
肝心の王子さまが塩対応だったのだ。
「キミを愛することはない」
「……」
後は若い二人で、なんて言いながらお父さまが姿をけして、二人きりになった途端にこれだよ。
さすが地獄の貴公子、ネロ殿下。
やることが、ひと味違うねっ。
……などと言うと思うか、バカヤロウ。
父であるレアン・ゼロス伯爵は銀髪に青い瞳の頭の切れる冷徹な男、と、もっぱらの評判だが、私を溺愛している。私の母であるシモーヌが私を出産した時に死亡したから、とも、子供のなかで唯一の女の子だから、とも、言われているが真実は知らない。とにかく激甘で溺愛を隠さないお父さまなのだ。そのお父さまが言うのだから、と、会うだけならと了承しただけなのに。
それなのに、この仕打ち。
なに?
わがまま娘が『素敵な王子さまとお会いしたいのぉ~、ねぇ~パパァ~、おねがぁ~い』とでも言って、無理矢理お見合いをセッティングさせたとでも思っているのか? コイツ。
こちらとら蝶よ花よこの世の至宝よ、と育てられた令嬢よ。
他人を欲しがって自己肯定感強めなきゃいけないほど、落ちぶれちゃいないんだ。
ピンク色のドレスに身を包んだ私は20歳。若さすら失ってはいないピチピチの令嬢である。
赤い瞳に白い肌。
体は細いが引き締まった筋肉がついている。
自分でいうのもなんだが、流れる白っぽい銀髪は艶やかで顔立ちも整っている方だと思うし、スタイルも良い。
会うなり『キミを愛することはない』などと言われていい存在だとは、これっぽっちも思わない。
私はネロを睨みつけた。
「何? 不満でもあるの? ウサギみたいに赤い目で睨んでも迫力はないよ。不気味ではあるけれど」
「……」
媚びろ、とは言わない。
ですが、怒らせない程度の気遣いはしてくれも良いのではないでしょうか、殿下。
まぁ、どうでもいいですけど。
このお見合いは失敗だ、時間の無駄だ、と、思った私は、私は溜息をひとつ吐くと、ティーカップを口元に運んだ。
ネロ殿下と顔合わせしたのは、薔薇の花咲き乱れる庭園でした。
王城の庭園は美しい、と、もっぱらの評判だったので私も興味があり、丁度良いと決められた場所。
そう、場所は良かった……。
よく晴れた春の日の午後。
天気もよくて気持ちの良い日。
暑くも寒くもなく、気候には全く問題はなかった……。
そんな日、そんなロケーションの、真っ白なガゼボの中。
紅茶の良い香り漂う中でテーブルを挟み向かい合う男と女。
男性はネロ・フィフス王太子殿下。
青に金コードの騎士服をピシッと着こなしてらっしゃるネロ殿下は25歳。
キラッキラの金髪にギリシャ彫刻のように整った顔。スラっとした均整のとれた体は身長も高いし筋肉もしっかり付いている。滑らかな白い肌に、バッサバサのまつ毛に囲われた大きな目。スッと通った鼻筋に、端がキュッと引き締まった唇厚めの口。
美形だ、美形だ、という噂は聞いてはいたが、噂通りの美男子ぶり。
だからといって、私が会いたいと思ったことは一度もない。私は男性にも、結婚にも、さして興味はなかったからだ。
『愛しい、愛しい、マリアンヌ。無理に、とは言わないけれど、お父さまは、マリアンヌのために王子さまとのお見合いをセッティングしてきたよ。どうだい? お会いしてみるかい?』
私に激甘のお父さまが、いつものように相貌をデロンデロンに溶かした笑顔を浮かべて私に言ってきたから、仕方なく了承しただけだ。
しかし、こちらを見る男の透き通った海のような青い目には、思い切り嫌悪の情が浮かんでいた。
肝心の王子さまが塩対応だったのだ。
「キミを愛することはない」
「……」
後は若い二人で、なんて言いながらお父さまが姿をけして、二人きりになった途端にこれだよ。
さすが地獄の貴公子、ネロ殿下。
やることが、ひと味違うねっ。
……などと言うと思うか、バカヤロウ。
父であるレアン・ゼロス伯爵は銀髪に青い瞳の頭の切れる冷徹な男、と、もっぱらの評判だが、私を溺愛している。私の母であるシモーヌが私を出産した時に死亡したから、とも、子供のなかで唯一の女の子だから、とも、言われているが真実は知らない。とにかく激甘で溺愛を隠さないお父さまなのだ。そのお父さまが言うのだから、と、会うだけならと了承しただけなのに。
それなのに、この仕打ち。
なに?
わがまま娘が『素敵な王子さまとお会いしたいのぉ~、ねぇ~パパァ~、おねがぁ~い』とでも言って、無理矢理お見合いをセッティングさせたとでも思っているのか? コイツ。
こちらとら蝶よ花よこの世の至宝よ、と育てられた令嬢よ。
他人を欲しがって自己肯定感強めなきゃいけないほど、落ちぶれちゃいないんだ。
ピンク色のドレスに身を包んだ私は20歳。若さすら失ってはいないピチピチの令嬢である。
赤い瞳に白い肌。
体は細いが引き締まった筋肉がついている。
自分でいうのもなんだが、流れる白っぽい銀髪は艶やかで顔立ちも整っている方だと思うし、スタイルも良い。
会うなり『キミを愛することはない』などと言われていい存在だとは、これっぽっちも思わない。
私はネロを睨みつけた。
「何? 不満でもあるの? ウサギみたいに赤い目で睨んでも迫力はないよ。不気味ではあるけれど」
「……」
媚びろ、とは言わない。
ですが、怒らせない程度の気遣いはしてくれも良いのではないでしょうか、殿下。
まぁ、どうでもいいですけど。
このお見合いは失敗だ、時間の無駄だ、と、思った私は、私は溜息をひとつ吐くと、ティーカップを口元に運んだ。
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