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【中編 一万八千文字くらい + 2,199文字】「君を愛することはない」「ハイ、喜んで!」から始まる女流作家の侯爵夫人生活

ストレスレス侯爵夫人生活

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 結婚式も無事終わり。

 私はマリー・フォットセット伯爵令嬢からマリー・ニコルソン侯爵夫人となりました。

 ストレスレスな侯爵夫人生活の始まりです。

 ……まぁ。色んなものがレスなんですけどね。白い結婚なので。

 約束通りですし、楽なので良いのですけど。

「……」

 なんでしょうか、この脱力感は。

 どこからともなく湧いてくる奇妙な罪悪感は。

 なんなんですかねぇ?

 そつなく上品な義両親は、やるべきことをさっさと済ませて領地に引っ越していかれました。

 結婚を機に爵位を息子に譲ることは事前に決めてあったそうですが。

 良かったのでしょうか?

 元ニコルソン侯爵?

 息子さんは偽装結婚するような輩ですよ?

 そんなに信用してもよろしくて?

 他人様のことながら心配になってしまいます。

 ……あ、書類上は姻戚関係でしたわ。だからかしら?

 老後は領地で悠々自適とニコニコしながら出発された元ニコルソン侯爵ご夫妻に悪い印象などございませんので、なんだかこう……胸の奥にもやぁ~としたものが湧きましたけれども。

 いいのかしらね……。

「……」

 あの大男。約束だけは守ってますからね。私はなぁ~んもしなくても生活、回っております。

 さすがお金持ちの侯爵家。ニコルソン侯爵家ともなると、ホントに何もしないでも生きていけるんですよ。

 侍女とか、メイドとか、家令とか、執事とか、なんたらかんたら……。

 使用人の顔と名前を覚えるのは大変そうですけどね。

 いまの所、その辺についても鋭意奮闘中という名の、ほぼ放置おさぼり状態ですわ。

 だって、呼ぶ必要もないのですもの。

 私は流れに任せていれば、勝手に物事が片付いていきます。

『○○でよろしいでしょうか、奥さま?』
『ええ。よろしくね』

 まぁ、そんな感じで大体のことは片付きます。

 ロザリーには、メイベルという名の侍女が付きましたから、そちらにお任せです。

 侍女のようなコンパニオンのような、まぁ相棒的な方ですわ。

 勤労女性を目指す伯爵令嬢だそうです。

 伯爵家の次女が侍女。立場がそう変わらないのに使用人扱いするのも気が引けます。

 長女の方が婿をとって家を継ぐため、早く自立したいらしいのです。

 次女なので自立を目指して手に職をつけ、自力で稼いでいきたいらしいですわ。
 
 ロザリーは似た立場なので意気投合してとても仲良し。お姉さま、少し嫉妬を感じています。

 今日もロザリーは婚活のため、メイベルと一緒にお茶会へ行きましたわ。

 だから私は、この豪華な奥さま部屋にひとり……だらんだらんしています。

 ダランダランです。

 これからは書きたい小説だけを書き放題のウハウハ生活!

 と、まぁ、結婚式の時には張り切ったわけですが。

 なんだかねぇ。実家の心配も、ロザリーの心配も必要ない。締め切りも無い。と、なったらねぇ。気が抜けてしまいましたわ……。

 やっぱり、締め切りは必要だったかしら?
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