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【中編 二万一千文字文字くらい】イケメンと棚ぼた婚~惰性で妥協の婚約をしてましたが相手有責で破棄できた上に幸せな結婚までしちゃった私の話~
仕事に生きるわ 生きるために(切実)9
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「アイリス君。今月も頑張ってくれたね」
「ありがとうございます。サットン子爵さま」
今日は月末。
給料日でございます。
私は頬が緩むのを感じながら小切手を受け取りました。
今月の収入も、まずまずの額です。
「キミは、そのお金を何に使うのかな? ドレスや宝石を買う予算にしているのかい?」
「いえ。夜会などに出る機会も滅多にないので、新しく買う必要ありません。両親に用意して貰ったもので十分ですわ」
「なら、何の為に?」
「領地にある孤児院を支援するためですわ。子供っぽいと言われればそれまでなのですが。私は領地に住む皆に幸せでいて欲しいのです。ですが。貧しい領地のため出来ることは限られます。だから……まずは孤児たちを助けたいのです」
私のしたい事は、私にしか決められない事のはずです。
なのに、セオドア・ウォーカー子爵令息は、あざといだの、鼻につくだの、偽善的だの、色々とグダグダ言ってましたわ。
私は領地の方々が幸せに暮らせるように、少しでもお手伝いがしたいだけなのに。
セオドア・ウォーカー子爵令息の気に入らない事であっても、それが私のしたい事なのですから仕方ありません。
今となっては、気にする必要もない事ですが。
次に婚約することがあるのなら、私のしたい事を受け入れて下さる方がいいですわ。
「……ほう?」
「ビアズリー伯爵家の予算はギリギリですし、アンズリー侯爵家からの援助はありません。したい事があるのなら、自分で予算を作るしかありませんの」
「ほう……ならば、寄付を募る、という方法もあるのではないかな?」
「寄付をお願いする方法もありますが。その場合には、大規模なパーティを開くなどの工夫が必要になります。そのような予算は、我が家にはありませんわ。でしたら、まずは支援を行う方が確かです。少額であっても、当座をしのぐ助けにはなりますもの」
「当座、という事は、将来のビジョンがあるのだね?」
「はい。領内に産業を、と。そのヒントも得たいので、私は働いています」
あら?
以前にも、このようなお話をしたような……。
「ならば、やってみないか?」
「……はい?」
「キミの母君、ロベリアさまの作る紐。アレを本格的に商売として立ち上げてみないか?」
「まぁ!」
紐ビジネス?
「ロベリアさまの作るモノは芸術品の域だから、いきなりは難しいだろうけれども。キミの作っていたシンプルなモノであれば、誰でも簡単に作れるようになるのだろう?」
「はい。おそらく。簡単な指導で作れるようになると思いますわ」
「アレを、我が商会で扱ってもいいと考えているんだ」
「まあ!」
「貴族の世界では見栄えが必要な場面が多々あるからね。庶民にしても、贈り物をする時など特別な場面はある。そんな時に使えるのではないか、と、思っているんだ。それに、キミの母君が作るレベルのモノであれば、ドレスの飾りなど装飾品として使えるのではないかな。装飾品の場合には、高値で売ることができる。すぐには無理でも職人を育てていけば、立派な産業になると考えているよ」
「そうなのですね」
「母君にも手伝って貰うことになってしまうが、ロベリアさまも乗り気だったからね。大丈夫だと思うよ。そちらの領で産業が立ち上がれば、我が商会のルートを使って流通網を作り上げることが可能だ。王都から薬など領内で手に入りにくい物を持って行って、アチラで作った物を持って来るルートを作れば、輸送にかかる費用も抑えることが出来るしね。そちらの領にとって利益の大きな取引にしていくことが可能だ」
「あぁ、それは……嬉しいですわ」
「その窓口として、アイリス君。働いてみないか?」
「えっ?!」
「今までの仕事に加えて、という事になるから。報酬は別に払うよ」
「まぁ!」
「引き受けてくれるのなら。準備もあるだろうからコレでどうだろうか?」
サットン子爵が差し出した小切手には、さっき受け取った今月分の給金よりも一桁大きな額が書かれていました。
「っ?!」
息を飲んだ私は、サットン子爵と小切手を交互に見ながら答えを探します。
しかし、イエス、以外の答えが見つかろうはずがございません。
こうして私は、サットン商会で働きながら領地で産業を立ち上げるための第一歩を踏み出したのです。
「ありがとうございます。サットン子爵さま」
今日は月末。
給料日でございます。
私は頬が緩むのを感じながら小切手を受け取りました。
今月の収入も、まずまずの額です。
「キミは、そのお金を何に使うのかな? ドレスや宝石を買う予算にしているのかい?」
「いえ。夜会などに出る機会も滅多にないので、新しく買う必要ありません。両親に用意して貰ったもので十分ですわ」
「なら、何の為に?」
「領地にある孤児院を支援するためですわ。子供っぽいと言われればそれまでなのですが。私は領地に住む皆に幸せでいて欲しいのです。ですが。貧しい領地のため出来ることは限られます。だから……まずは孤児たちを助けたいのです」
私のしたい事は、私にしか決められない事のはずです。
なのに、セオドア・ウォーカー子爵令息は、あざといだの、鼻につくだの、偽善的だの、色々とグダグダ言ってましたわ。
私は領地の方々が幸せに暮らせるように、少しでもお手伝いがしたいだけなのに。
セオドア・ウォーカー子爵令息の気に入らない事であっても、それが私のしたい事なのですから仕方ありません。
今となっては、気にする必要もない事ですが。
次に婚約することがあるのなら、私のしたい事を受け入れて下さる方がいいですわ。
「……ほう?」
「ビアズリー伯爵家の予算はギリギリですし、アンズリー侯爵家からの援助はありません。したい事があるのなら、自分で予算を作るしかありませんの」
「ほう……ならば、寄付を募る、という方法もあるのではないかな?」
「寄付をお願いする方法もありますが。その場合には、大規模なパーティを開くなどの工夫が必要になります。そのような予算は、我が家にはありませんわ。でしたら、まずは支援を行う方が確かです。少額であっても、当座をしのぐ助けにはなりますもの」
「当座、という事は、将来のビジョンがあるのだね?」
「はい。領内に産業を、と。そのヒントも得たいので、私は働いています」
あら?
以前にも、このようなお話をしたような……。
「ならば、やってみないか?」
「……はい?」
「キミの母君、ロベリアさまの作る紐。アレを本格的に商売として立ち上げてみないか?」
「まぁ!」
紐ビジネス?
「ロベリアさまの作るモノは芸術品の域だから、いきなりは難しいだろうけれども。キミの作っていたシンプルなモノであれば、誰でも簡単に作れるようになるのだろう?」
「はい。おそらく。簡単な指導で作れるようになると思いますわ」
「アレを、我が商会で扱ってもいいと考えているんだ」
「まあ!」
「貴族の世界では見栄えが必要な場面が多々あるからね。庶民にしても、贈り物をする時など特別な場面はある。そんな時に使えるのではないか、と、思っているんだ。それに、キミの母君が作るレベルのモノであれば、ドレスの飾りなど装飾品として使えるのではないかな。装飾品の場合には、高値で売ることができる。すぐには無理でも職人を育てていけば、立派な産業になると考えているよ」
「そうなのですね」
「母君にも手伝って貰うことになってしまうが、ロベリアさまも乗り気だったからね。大丈夫だと思うよ。そちらの領で産業が立ち上がれば、我が商会のルートを使って流通網を作り上げることが可能だ。王都から薬など領内で手に入りにくい物を持って行って、アチラで作った物を持って来るルートを作れば、輸送にかかる費用も抑えることが出来るしね。そちらの領にとって利益の大きな取引にしていくことが可能だ」
「あぁ、それは……嬉しいですわ」
「その窓口として、アイリス君。働いてみないか?」
「えっ?!」
「今までの仕事に加えて、という事になるから。報酬は別に払うよ」
「まぁ!」
「引き受けてくれるのなら。準備もあるだろうからコレでどうだろうか?」
サットン子爵が差し出した小切手には、さっき受け取った今月分の給金よりも一桁大きな額が書かれていました。
「っ?!」
息を飲んだ私は、サットン子爵と小切手を交互に見ながら答えを探します。
しかし、イエス、以外の答えが見つかろうはずがございません。
こうして私は、サットン商会で働きながら領地で産業を立ち上げるための第一歩を踏み出したのです。
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