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【短編 一万文字はない】巻き込まれ召喚された聖女じゃない方は静かに森で暮らしたい
親友と巻き込まれ召喚
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噂に聞いていたソレは突然、やってきた。
「ちょっ……なに? この光っ」
「あぁぁ、なんかヤバそう。ひっぱられるっ!」
「アリサ⁈」
「ああっ、体が持っていかれるっ! マリモっ、助けてっ!」
ついさっきまで私たちは平常営業だったのに。
高校からの帰り道。
私、森下マリモと江川アリサは幼馴染の仲良しさん。
私たちは、いつも通りキャッキャウフフしながらバスを降りて自宅に向かっていた。
秋の深まる十月の終わり。
少し肌寒い風を受けながら、同じ高校に通う私たちは、お揃いの制服を着て通い慣れた道を歩く。
家から近い事と制服の可愛さで選んだ高校だ。
当然ながら可愛い制服を着た私たちは可愛い。
箱ひだのスカートは茶色にグリーンのチェック柄。
茶色のブレザーには、スカートと同じ生地がポイントとして使われている。
白の長袖シャツには、えんじ色のリボン。
白のハイソックスに濃い茶色のローファー。
それが一体、どうしてこうなった?
足元に光が走って意味の分からない模様が浮かび上がり、ついでとばかりに私たちも浮き上がる。
「ちょっとー! ナニコレッ魔法陣⁈ あぁ、ヤバい!」
「ちょっ、アリサーーーっ⁈」
あきらかにアリサ狙いの魔法陣に、アリサの体がグイグイ持って行かれる。
そんな彼女の体を引き留めようと、その手を掴んだ私の体もグイグイ持って行かれているのだ。
ヤバい。
コレはヤバい。
本格的にヤバい空気しかない。
「コレって、アレ⁈」
「異世界召喚⁈」
「ちょっと、ちょっと、ダメダメつ、ちょい待ちぃ~」
「ああ、ヤバいっ! 私、せっかくコンサートのチケット取ったのにぃ~!」
「私なんて待ちに待ったグッズの受け取りが明日っ!」
「ああっー⁈ マズイ、マズイ、マズイー!」
「キャー! 引き込まれるぅ~!」
などと騒いでいる間に。
哀れ私たちは、真っ白な光のなかに取り込まれてしまったのだった。
目が覚めた時。
私とアリサは抱き合っていた。
そんな私たちを取り囲む人たちは、見慣れない衣装を着ている。
ついでに言えば、場所だって見慣れない。
室内のようだが、やたと白い。
荘厳な感じで広いのに余分なモノが置いていない、スペース使いが贅沢な場所だ。
天井もやたらと高い。
『聖女さまが召喚されましたー!』
『神官たちを集めろー』
『護衛騎士が足りないー』
大声で怒鳴り合う声とバタバタした気配が伝わって来る。
私たちがうずくまっているのは大理石の床のようだ。
ひんやりとしている。
それでも寒いとは思わなかった。
そこそこ気温の高い時期なのか、暖房が入っているのか。
「あの……聖女、さま?」
抱き合いながらキョロキョロしている私たちに声を掛けてきたのは白い服を着た男性だ。
「私は神官のカークと申します」
うん、知ってた。
その白のズルズルした感じの衣装は神官のだよね。
「あ、ども」
「こんにちは」
私とアリサはとりあえず挨拶をした。
カーク神官は、長い青みがかかった銀髪をキラキラさせて言う。
「いきなり召喚してしまって申し訳ありません。突然の事で驚かれたでしょうが、事前にお伺いする手段など無く……かつ、緊急の事態が起こっております。つきましては、私どものお願いを聞いて頂きたく存じますが、よろしいでしょうか?」
「はぁ……」
「……」
よろしくねぇーよっ、バカヤロウ!
怒鳴ってやりたかったが、耐えた。
こちとら知らない場所に二人きり。
いきなり連れて来られてしまった弱い立場だ。
いきなりケンカをふっかけて寝床やご飯の心配をしなきゃいけなくなるのは願い下げ。
「カーク神官どの。いきなり話を始めるのは、ちょっと……。まずは落ち着いて話の出来る場所に移動するのが先ではないかな?」
「これはアーサー王太子殿下。そうですね。失礼いたしました。では、お茶の用意でもさせますので。まずは場所を変えましょう」
「はぁ……」
「分かりました。行きましょう、マリモ」
「うん、アリサ」
案内されたのは、またまた広い応接室。
大きなテーブルの上には色とりどりのお菓子が並べられていて、紅茶のよい香りが漂っていた。
「これって全部、焼き菓子みたいね」
「そうね、マリモ。生菓子とかは、なさそうな世界ね」
案内された席に座り、一同を見渡す。
先ほどの神官と、ほかにも数名の白い服を着た人たちが一箇所に集まって座っている。
大きなテーブルの一角が白い。
反対側には黒い騎士服を着た人たちがいた。
その中でもひときわ体の大きい、褐色の肌に黒い短髪、黒い瞳の男臭い騎士が名乗った。
「オレは騎士のスノウ。こちらにいるのは、オレの部下です。アナタたちの護衛を任されました」
「はぁ」
「よろしくお願いします」
護衛が必要な世界なのかぁ。
顔をしかめてアリサを見れば、彼女もしかめっ面をしていた。
治安の良い日本の女子高生だ。
治安が悪い世界は、ちょいビビる。
「私はアーサー。この国の第一王子です。我が国を守るために、アナタたちを召喚させて貰った。いきなりの召喚について、お詫びさせて頂きたい」
青い騎士を着た男が自己紹介した。金色のキラキラ光る髪に整った顔。青い瞳。いかにも王子さま、といった風貌のアーサーがニッコリと笑ってこちらを見ている。
「はぁ」
「そうですか……事情を話していただけますか?」
「それはボクの方から離させて頂こうかな」
そこには、神官たちと同じ衣装の上から赤い布を羽織っている男がいた。
「あぁ、賢者ライさま。いらしていたのですね」
「はい」
ニコニコしているライは、茶髪茶目の優しそうな男だ。
賢者、と、呼ばれている割に若く見える。
細身で小柄なせいかもしれない。
「こちらの人たちは年齢不詳ね」
「そうね。日本人も年齢が分からないっていうけど。この世界の人たちも年齢が分からないわ。しかも、美形揃い」
「うんうん、アリサもそう思った?」
二人でコソコソ話をしていると、ライがゴホンとわざとらしい咳をした。
「では、説明をさせて頂きます、聖女さま。この世界には瘴気というものがあります。瘴気が少なければ自然に分解されて悪影響はないのですが、最近は増えてきて危機を迎えているのです。瘴気が増えると作物は枯れ、獣は魔獣化し、空気も汚染され、しまいには太陽さえも隠れてしまう、と言い伝えられています」
「言い伝えなのね?」
「まだ危機的状況じゃ、ないんだ」
「ええ。まだ大丈夫です。ですが時間の問題なのです。そこで聖女さまに来て頂いたのです。聖女さまが祈ることにより、瘴気は浄化され無害化します。お願いです、聖女さま。ボクたちのために祈りを捧げて下さいませんか?」
「えーと、祈りといいますと?」
「私たち、ただの日本人女子高生だから祈りとか分からないんだけど」
「そうですか。では、私の真似をしてください」
カーク神官はお手本を見せた。
手を合わせて何かモゴモゴと言っている。
「それでいいのね?」
アリサはモゴモゴの部分が聞き取れたのか、すぐに真似をして祈った。
すると、アリサの回りがキラキラと光り出したではないか。
「おお。これぞ異世界っ!」
私が手を叩きながら感動していると、周囲からも拍手が沸き起こった。
『聖女だ』
『聖女さまが来て下さったんだ』
『これで、この国は安泰だ』
ザワザワとした声が聞こえる。
「感動していないで。マリモもやってみて」
「うっ……うん」
私も手を合わせて祈った。
祈ってみた。
モゴモゴに当たる部分もテキトーに何か言ってみた。
「……あら?」
「こちらのお嬢さんは、聖女ではなかったようですね」
「あらら? それじゃ、マリモは……私が巻き込んじゃったわけ?」
「はぅっ」
これは……私は要らない子の流れ?
さっきまで歓迎ムードだった人たちの雰囲気が変わったぞ。
……いぢめる? わたし、召喚されたオマケの子として、いぢめられちゃうのぉ~?
「ちょっ……なに? この光っ」
「あぁぁ、なんかヤバそう。ひっぱられるっ!」
「アリサ⁈」
「ああっ、体が持っていかれるっ! マリモっ、助けてっ!」
ついさっきまで私たちは平常営業だったのに。
高校からの帰り道。
私、森下マリモと江川アリサは幼馴染の仲良しさん。
私たちは、いつも通りキャッキャウフフしながらバスを降りて自宅に向かっていた。
秋の深まる十月の終わり。
少し肌寒い風を受けながら、同じ高校に通う私たちは、お揃いの制服を着て通い慣れた道を歩く。
家から近い事と制服の可愛さで選んだ高校だ。
当然ながら可愛い制服を着た私たちは可愛い。
箱ひだのスカートは茶色にグリーンのチェック柄。
茶色のブレザーには、スカートと同じ生地がポイントとして使われている。
白の長袖シャツには、えんじ色のリボン。
白のハイソックスに濃い茶色のローファー。
それが一体、どうしてこうなった?
足元に光が走って意味の分からない模様が浮かび上がり、ついでとばかりに私たちも浮き上がる。
「ちょっとー! ナニコレッ魔法陣⁈ あぁ、ヤバい!」
「ちょっ、アリサーーーっ⁈」
あきらかにアリサ狙いの魔法陣に、アリサの体がグイグイ持って行かれる。
そんな彼女の体を引き留めようと、その手を掴んだ私の体もグイグイ持って行かれているのだ。
ヤバい。
コレはヤバい。
本格的にヤバい空気しかない。
「コレって、アレ⁈」
「異世界召喚⁈」
「ちょっと、ちょっと、ダメダメつ、ちょい待ちぃ~」
「ああ、ヤバいっ! 私、せっかくコンサートのチケット取ったのにぃ~!」
「私なんて待ちに待ったグッズの受け取りが明日っ!」
「ああっー⁈ マズイ、マズイ、マズイー!」
「キャー! 引き込まれるぅ~!」
などと騒いでいる間に。
哀れ私たちは、真っ白な光のなかに取り込まれてしまったのだった。
目が覚めた時。
私とアリサは抱き合っていた。
そんな私たちを取り囲む人たちは、見慣れない衣装を着ている。
ついでに言えば、場所だって見慣れない。
室内のようだが、やたと白い。
荘厳な感じで広いのに余分なモノが置いていない、スペース使いが贅沢な場所だ。
天井もやたらと高い。
『聖女さまが召喚されましたー!』
『神官たちを集めろー』
『護衛騎士が足りないー』
大声で怒鳴り合う声とバタバタした気配が伝わって来る。
私たちがうずくまっているのは大理石の床のようだ。
ひんやりとしている。
それでも寒いとは思わなかった。
そこそこ気温の高い時期なのか、暖房が入っているのか。
「あの……聖女、さま?」
抱き合いながらキョロキョロしている私たちに声を掛けてきたのは白い服を着た男性だ。
「私は神官のカークと申します」
うん、知ってた。
その白のズルズルした感じの衣装は神官のだよね。
「あ、ども」
「こんにちは」
私とアリサはとりあえず挨拶をした。
カーク神官は、長い青みがかかった銀髪をキラキラさせて言う。
「いきなり召喚してしまって申し訳ありません。突然の事で驚かれたでしょうが、事前にお伺いする手段など無く……かつ、緊急の事態が起こっております。つきましては、私どものお願いを聞いて頂きたく存じますが、よろしいでしょうか?」
「はぁ……」
「……」
よろしくねぇーよっ、バカヤロウ!
怒鳴ってやりたかったが、耐えた。
こちとら知らない場所に二人きり。
いきなり連れて来られてしまった弱い立場だ。
いきなりケンカをふっかけて寝床やご飯の心配をしなきゃいけなくなるのは願い下げ。
「カーク神官どの。いきなり話を始めるのは、ちょっと……。まずは落ち着いて話の出来る場所に移動するのが先ではないかな?」
「これはアーサー王太子殿下。そうですね。失礼いたしました。では、お茶の用意でもさせますので。まずは場所を変えましょう」
「はぁ……」
「分かりました。行きましょう、マリモ」
「うん、アリサ」
案内されたのは、またまた広い応接室。
大きなテーブルの上には色とりどりのお菓子が並べられていて、紅茶のよい香りが漂っていた。
「これって全部、焼き菓子みたいね」
「そうね、マリモ。生菓子とかは、なさそうな世界ね」
案内された席に座り、一同を見渡す。
先ほどの神官と、ほかにも数名の白い服を着た人たちが一箇所に集まって座っている。
大きなテーブルの一角が白い。
反対側には黒い騎士服を着た人たちがいた。
その中でもひときわ体の大きい、褐色の肌に黒い短髪、黒い瞳の男臭い騎士が名乗った。
「オレは騎士のスノウ。こちらにいるのは、オレの部下です。アナタたちの護衛を任されました」
「はぁ」
「よろしくお願いします」
護衛が必要な世界なのかぁ。
顔をしかめてアリサを見れば、彼女もしかめっ面をしていた。
治安の良い日本の女子高生だ。
治安が悪い世界は、ちょいビビる。
「私はアーサー。この国の第一王子です。我が国を守るために、アナタたちを召喚させて貰った。いきなりの召喚について、お詫びさせて頂きたい」
青い騎士を着た男が自己紹介した。金色のキラキラ光る髪に整った顔。青い瞳。いかにも王子さま、といった風貌のアーサーがニッコリと笑ってこちらを見ている。
「はぁ」
「そうですか……事情を話していただけますか?」
「それはボクの方から離させて頂こうかな」
そこには、神官たちと同じ衣装の上から赤い布を羽織っている男がいた。
「あぁ、賢者ライさま。いらしていたのですね」
「はい」
ニコニコしているライは、茶髪茶目の優しそうな男だ。
賢者、と、呼ばれている割に若く見える。
細身で小柄なせいかもしれない。
「こちらの人たちは年齢不詳ね」
「そうね。日本人も年齢が分からないっていうけど。この世界の人たちも年齢が分からないわ。しかも、美形揃い」
「うんうん、アリサもそう思った?」
二人でコソコソ話をしていると、ライがゴホンとわざとらしい咳をした。
「では、説明をさせて頂きます、聖女さま。この世界には瘴気というものがあります。瘴気が少なければ自然に分解されて悪影響はないのですが、最近は増えてきて危機を迎えているのです。瘴気が増えると作物は枯れ、獣は魔獣化し、空気も汚染され、しまいには太陽さえも隠れてしまう、と言い伝えられています」
「言い伝えなのね?」
「まだ危機的状況じゃ、ないんだ」
「ええ。まだ大丈夫です。ですが時間の問題なのです。そこで聖女さまに来て頂いたのです。聖女さまが祈ることにより、瘴気は浄化され無害化します。お願いです、聖女さま。ボクたちのために祈りを捧げて下さいませんか?」
「えーと、祈りといいますと?」
「私たち、ただの日本人女子高生だから祈りとか分からないんだけど」
「そうですか。では、私の真似をしてください」
カーク神官はお手本を見せた。
手を合わせて何かモゴモゴと言っている。
「それでいいのね?」
アリサはモゴモゴの部分が聞き取れたのか、すぐに真似をして祈った。
すると、アリサの回りがキラキラと光り出したではないか。
「おお。これぞ異世界っ!」
私が手を叩きながら感動していると、周囲からも拍手が沸き起こった。
『聖女だ』
『聖女さまが来て下さったんだ』
『これで、この国は安泰だ』
ザワザワとした声が聞こえる。
「感動していないで。マリモもやってみて」
「うっ……うん」
私も手を合わせて祈った。
祈ってみた。
モゴモゴに当たる部分もテキトーに何か言ってみた。
「……あら?」
「こちらのお嬢さんは、聖女ではなかったようですね」
「あらら? それじゃ、マリモは……私が巻き込んじゃったわけ?」
「はぅっ」
これは……私は要らない子の流れ?
さっきまで歓迎ムードだった人たちの雰囲気が変わったぞ。
……いぢめる? わたし、召喚されたオマケの子として、いぢめられちゃうのぉ~?
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「Copyright(C)2022-九頭竜坂まほろん」
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