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王国の危機!
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「ボニータはどうなった⁈ いまはどこにいるのだ⁈」
「あっ……はっ……」
アーサーは宰相に向かって聞いた。
怒鳴りつけていると言ってもいいほどの口調だったが、それに関して何か言う者は誰もいない。
窓の外で青く晴れた空が不気味に揺れているのを、隣国の王太子セシリオとその婚約者ミシェルは青い顔をして茫然と眺めていた。
「異変に気付いた宮廷魔法士が、森の魔女の様子を見に行き……屋敷のなかで倒れている所を発見し……」
「それでっ⁈ 今はどこに⁈」
「王宮で医師たちによる手当てを受けています」
ボニータを保護するという程度の対処はできたようだ。
アーサーは少しホッとした。
「で、容態のほうはどうなんだ?」
「それが……いまだ意識を取り戻す様子もなく……王宮の医師たちや宮廷魔法士たちもお手上げのようで……」
「なんだって⁈」
王宮の医師でさえ手に負えないとなると、それは深刻な事態だ。
アーサーは唇を噛んだ。
「このままでは結界が……」
「事ここに至っても、まず自分たちの心配かっ!」
吐き捨てるように言うアーサーの勢いに、宰相は固まったように沈黙する。
その沈黙さえ、アーサーの神経を逆なでした。
そこに報告を携えた衛兵たちが転がるように駆け込んできた。
「川の水を飲んだ国民が次から次へと倒れている報告が入りました!」
「大変ですっ! 家畜が暴れています!」
「収穫間近の作物が枯れてきています!」
国を覆っていた防護壁が崩れ始め、瘴気の汚染が始まったようだ。
「なぜ報告が私の所に? 父は……国王は、どうした⁈」
「国王陛下も倒れてしまい、寝込んでしまわれて……」
宰相が申し訳なさそうに伝えてくるのを聞いて、アーサーは自分の形相が更に変わっていくのを感じた。
(ボニータを大事にせず、散々な扱いをしたくせにっ! 真っ先に倒れるってどういうことだ⁈)
アーサーにも自分が相当恐い顔になっている自覚はある。
だからといって、自分を止められない。
「我々はどうしたら……」
宰相も困っているようだ。
「自分で考えろっ!」
アーサーの頭はボニータのことでいっぱいだ。
(いったい何が起きたんだボニータ)
魔女が滅多なことではダメージを負わないことはアーサーも知っていた。
だから、彼女が倒れたというのなら、それなりの陰謀に巻き込まれたということだ。
(彼女の無事を確保しておけば防護壁も保たれるというのにっ。その程度のことが、なぜできない⁈)
森の屋敷に帰すべきではなかったのだ。
彼女は自由を愛している。
そこは尊重してあげたいけれど。
それは安全が保たれたうえで尊重したらよいことで。
(こんなことなら強引にでも森から連れ帰るべきだったか?)
それが出来たかどうかは別にして、アーサーの心は後悔でいっぱいになっていく。
そんな時だった。
聞きたくもない声が響いたのは。
「兄上。私なら、お力になれますよ」
声のした方へアーサーが視線をやれば、そこにはピンク髪の男爵令嬢を従えた不肖の弟、クラウスの姿があった。
「あっ……はっ……」
アーサーは宰相に向かって聞いた。
怒鳴りつけていると言ってもいいほどの口調だったが、それに関して何か言う者は誰もいない。
窓の外で青く晴れた空が不気味に揺れているのを、隣国の王太子セシリオとその婚約者ミシェルは青い顔をして茫然と眺めていた。
「異変に気付いた宮廷魔法士が、森の魔女の様子を見に行き……屋敷のなかで倒れている所を発見し……」
「それでっ⁈ 今はどこに⁈」
「王宮で医師たちによる手当てを受けています」
ボニータを保護するという程度の対処はできたようだ。
アーサーは少しホッとした。
「で、容態のほうはどうなんだ?」
「それが……いまだ意識を取り戻す様子もなく……王宮の医師たちや宮廷魔法士たちもお手上げのようで……」
「なんだって⁈」
王宮の医師でさえ手に負えないとなると、それは深刻な事態だ。
アーサーは唇を噛んだ。
「このままでは結界が……」
「事ここに至っても、まず自分たちの心配かっ!」
吐き捨てるように言うアーサーの勢いに、宰相は固まったように沈黙する。
その沈黙さえ、アーサーの神経を逆なでした。
そこに報告を携えた衛兵たちが転がるように駆け込んできた。
「川の水を飲んだ国民が次から次へと倒れている報告が入りました!」
「大変ですっ! 家畜が暴れています!」
「収穫間近の作物が枯れてきています!」
国を覆っていた防護壁が崩れ始め、瘴気の汚染が始まったようだ。
「なぜ報告が私の所に? 父は……国王は、どうした⁈」
「国王陛下も倒れてしまい、寝込んでしまわれて……」
宰相が申し訳なさそうに伝えてくるのを聞いて、アーサーは自分の形相が更に変わっていくのを感じた。
(ボニータを大事にせず、散々な扱いをしたくせにっ! 真っ先に倒れるってどういうことだ⁈)
アーサーにも自分が相当恐い顔になっている自覚はある。
だからといって、自分を止められない。
「我々はどうしたら……」
宰相も困っているようだ。
「自分で考えろっ!」
アーサーの頭はボニータのことでいっぱいだ。
(いったい何が起きたんだボニータ)
魔女が滅多なことではダメージを負わないことはアーサーも知っていた。
だから、彼女が倒れたというのなら、それなりの陰謀に巻き込まれたということだ。
(彼女の無事を確保しておけば防護壁も保たれるというのにっ。その程度のことが、なぜできない⁈)
森の屋敷に帰すべきではなかったのだ。
彼女は自由を愛している。
そこは尊重してあげたいけれど。
それは安全が保たれたうえで尊重したらよいことで。
(こんなことなら強引にでも森から連れ帰るべきだったか?)
それが出来たかどうかは別にして、アーサーの心は後悔でいっぱいになっていく。
そんな時だった。
聞きたくもない声が響いたのは。
「兄上。私なら、お力になれますよ」
声のした方へアーサーが視線をやれば、そこにはピンク髪の男爵令嬢を従えた不肖の弟、クラウスの姿があった。
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