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渡りに船の学校設立計画
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「バッカス村に学校が出来るかもしれない」
村まつり翌朝。
朗報は朝食の席で子供たちに伝えられた。
「えっ? ホントなの? 父さま」
「ああ、そうだよ、モアノ」
「コッチに学校ができたら、エレノアとも離れなくて済むね?」
「そうね。家から通うことが出来るわ」
「社交もあるから王都での勉強も必要になるだろうが。向こうの寄宿舎に入って学ぶ期間は短くなるだろう」
「いいなぁ、それ。早く学校できないかなぁ?」
「ふふふ。モアノの入学には間に合わないかもしれないわ。途中からでもコチラに居られる時間が長くなればいいわね」
「あー、残念っ!」
「ふふ、ガッカリするなよ。作るとなったら少しでも早く出来るよう、父さまも頑張るからね」
「はい。よろしくお願いします、父さま」
「おぉーう。ボクの入学には、間に合うのかな?」
「アフタンの入学には、間に合うようにしないとな」
「どして?」
「大人の都合だ」
「ばぶぅ~」
(王子さまが、アフタン兄さまと同じ年だからね。私には関係ないけど。兄さまの入学に間に合うように学校ができれば、私の時には余裕だわ。家を離れなくて済むなら嬉しいわ)
エレノアに故郷と言えるような、離れがたい場所が出来たのは初めてのこと。
(前世では……ココよりはマシ、という場所はあったけれど。愛着のある土地なんてなかったもの)
初めて持つことが出来た愛すべき故郷。
離れなくて済むのなら、その方がいい。
「それに、コチラの方が治安が良いから。その点でも安心だわ」
「ん。でも、治安の悪さにも何処かで慣れておく必要がある」
「難しい問題ね?」
「そうだね、奥さん」
「大人になるって大変だなぁ」
「ねぇ、兄さま。ボク、ずぅっっっと、子供でいいや」
「そうだね。ボクも子供がいい」
「ぶはっ。それじゃ、父さまたちが困ってしまうよ」
「ふふ。そうね。大人になってしまうのは寂しいけれど、ずっと子供は困るわね」
「ばぶっ」
「ふふ。アナタは、ゆっくり大人になっていいのよ? エレノア」
「そうだね。なるべく、ゆっくりがいいね。いずれは嫁に行ってしまうのだから」
「ふふ。お嫁になんてやりたくない、っておっしゃるかと思ってましたわ」
「まぁ、やりたくないのは確かだけれど。エレノアが幸せになることが一番だからね」
(私の幸せが一番、なんて言ってもらった事……前世であったかしら?)
エレノアは、なんだかとっても暖かくて心地よい気分になって。
それでいて、少しでも近くに自らが愛している存在も感じたくて。
「ばぶぅ~っ!」
ひとりで座っていたベビー用椅子の上で、ひと際大きな声上げて。
気付いた時には、両親に向かって右手と左手それぞれを力いっぱい伸ばしていた。
村まつり翌朝。
朗報は朝食の席で子供たちに伝えられた。
「えっ? ホントなの? 父さま」
「ああ、そうだよ、モアノ」
「コッチに学校ができたら、エレノアとも離れなくて済むね?」
「そうね。家から通うことが出来るわ」
「社交もあるから王都での勉強も必要になるだろうが。向こうの寄宿舎に入って学ぶ期間は短くなるだろう」
「いいなぁ、それ。早く学校できないかなぁ?」
「ふふふ。モアノの入学には間に合わないかもしれないわ。途中からでもコチラに居られる時間が長くなればいいわね」
「あー、残念っ!」
「ふふ、ガッカリするなよ。作るとなったら少しでも早く出来るよう、父さまも頑張るからね」
「はい。よろしくお願いします、父さま」
「おぉーう。ボクの入学には、間に合うのかな?」
「アフタンの入学には、間に合うようにしないとな」
「どして?」
「大人の都合だ」
「ばぶぅ~」
(王子さまが、アフタン兄さまと同じ年だからね。私には関係ないけど。兄さまの入学に間に合うように学校ができれば、私の時には余裕だわ。家を離れなくて済むなら嬉しいわ)
エレノアに故郷と言えるような、離れがたい場所が出来たのは初めてのこと。
(前世では……ココよりはマシ、という場所はあったけれど。愛着のある土地なんてなかったもの)
初めて持つことが出来た愛すべき故郷。
離れなくて済むのなら、その方がいい。
「それに、コチラの方が治安が良いから。その点でも安心だわ」
「ん。でも、治安の悪さにも何処かで慣れておく必要がある」
「難しい問題ね?」
「そうだね、奥さん」
「大人になるって大変だなぁ」
「ねぇ、兄さま。ボク、ずぅっっっと、子供でいいや」
「そうだね。ボクも子供がいい」
「ぶはっ。それじゃ、父さまたちが困ってしまうよ」
「ふふ。そうね。大人になってしまうのは寂しいけれど、ずっと子供は困るわね」
「ばぶっ」
「ふふ。アナタは、ゆっくり大人になっていいのよ? エレノア」
「そうだね。なるべく、ゆっくりがいいね。いずれは嫁に行ってしまうのだから」
「ふふ。お嫁になんてやりたくない、っておっしゃるかと思ってましたわ」
「まぁ、やりたくないのは確かだけれど。エレノアが幸せになることが一番だからね」
(私の幸せが一番、なんて言ってもらった事……前世であったかしら?)
エレノアは、なんだかとっても暖かくて心地よい気分になって。
それでいて、少しでも近くに自らが愛している存在も感じたくて。
「ばぶぅ~っ!」
ひとりで座っていたベビー用椅子の上で、ひと際大きな声上げて。
気付いた時には、両親に向かって右手と左手それぞれを力いっぱい伸ばしていた。
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