魔法使いの恋人は政治すら愛を伝える道具にする美人宰相さま

天田れおぽん

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ベッドの中のふたり ※

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「オレの中って、そんなにイイのか」
「あぁ……キミの中は最高だ……」
「それは良かった」
 ノドの奥がくすぐったくなるような幸福感に、カイゼルは、ふふふ、と、笑う。

 白い天蓋が下がる大きなベッドの上では、褐色の肌を持つ逞しいカイゼルの体が、引き締まったレイモンドの白い体に組み敷かれていた。カイゼルの黒い瞳が見上げれば、欲情に染まるレイモンドの青い瞳が映る。

 今夜もレイモンドは美しい。

 艶やかなアイスシルバーの髪。作り物のように美しく整った顔。男とは思えないほどの美貌を裏切る、引き締まった筋肉をまとった恵まれた体。侯爵にして剣と魔法の王国シャキアの宰相でもあるレイモンド。美貌にも才能にも地位にも恵まれた男が、白く滑らかな肌を惜しみなくさらしてカイゼルの上で甘く喘いでいる。

 愛しい恋人。

(美貌にも地位にも恵まれた男なのに。平民の魔法使いであるオレなんか抱いて、そんな満足そうな顔をしやって。とんでもなくお得でオメデタイ体質だな)

 自分の上で気持ち良くなってる地位にも美貌にも恵まれた男を、哀れに思ったりする時もある。だが、手放す気なんてサラサラない。なんだかんだで二十年経ってしまった。

 オレの中なんぞでよければ存分に堪能してくれ。

「好きなだけ声、だせよ……いつもみたいに……静寂の結界、んっ、張ってあるからさ」
 カイゼルが煽れば、レイモンドの声も欲もデカくなる。
「あぁ……イイ……」
 嬌声を上げるレイモンドの腰が揺れ、ベッドがギシギシ音を立てた。

 開け放たれた窓の向こうには淡い黄色に光る満月。白いレースのカーテンが風に揺れる。熱くなる一方の体に、少し湿り気を帯びた涼しい夜風が心地よい。青みがかったアイスシルバーの長髪が月の光を浴びて輝く。指にひと房絡ませて口づければ、カイゼルの額にレイモンドの唇が降ってくる。

 自分を攻めながら女のようにとろけていくレイモンドが愛しい。

 カイゼルが節くれだった手をレイモンドの頬に伸ばせば、冷たくすら見える整った美しい顔が愛しい者を見る柔らかな笑みに染まる。
「もっと気持ち良くなって?」
 カイゼルは右足をレイモンドの背中に回して足先でそっと撫でる。上から下へ。そして下から上へ。そのたびに反応して上がる声。

「あぁ……キミも……」
 続く言葉は淫靡な溜息の中に溶けた。

 春から夏に向かって進む季節は、華やかで過ごしやすい季節だ。愛を育むにも良い季節ではあるが、いま、政局は大事な局面を迎えている。

「法案は……通りそう?」
「あっ……ぁあ……」
「反対派のオッサンたちは、どうだ?」
「んん……怪しい動き、んっ、はあるけど……ハッ……なんと、か……あぁ」

 レイモンドにとっては政治すら愛を伝える道具なのだそうで、「私は幸せだ。幸せだからこそ、より良い未来を創る仕組み作りをしたい」、などとのたまい、革新的な法案を通そうとしている。

 現在、この国では同性での婚姻は認められていない。それを改正し、同性でも結婚できるように仕組みを変えようとしているのだ。併せて現在は男子にしか認められていない爵位や領地の継承についても変えていく。女性でも爵位や領地を引き継ぐことができれば、今よりも安定した継続が期待できるだろう、と、レイモンドは言う。悲劇を減らすための法案を彼は通そうと努力している。反対の動きは顕著で、命の危険もあり心配ではあるけれど。

 カイゼルは、そんな彼を守りたいと思った。

「そっか……法案……通ると、いいな……」
 腹筋を使って体を起こし、レイモンドの頭を掴んでキス、キス、キス。頬に額にキスの雨を降らせてから息を奪うような深い口づけ。
「……っ、ぁあ……」
 唇の端から切なげな声が漏れ、カイゼルの中に収められた彼の欲望が膨らむ。

 唇が離れた瞬間。

「あぁ……カイ……カイ……」

 切羽詰まった声と共に抱き込まれる褐色の体。
 縋りつくように抱きつく白い体。
 より熱くなる互いの体。

 ―――― キモチイイ ――――

 白い天蓋のなか、月光を浴びながら揺すぶられるカイゼルは、心地よいレイモンドの嬌声を聞きながら多幸感に満たされていた。

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