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開幕は結婚式と共に

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 フェリシア・バラム伯爵令嬢は20歳の初々しい肉体に真っ白なウエディングドレスを纏い、部屋の真ん中に立っていた。

 高く結い上げた黒髪は解け散らばり広がって、綺麗に化粧を施された顔を縁取る。

 美しく整った顔に収まる黒い瞳は焦点が合っておらず、表情は消えていた。

 バラム伯爵家の豪奢で歴史ある屋敷は、無残に荒らされて。

『ギャー』
『ウァァァァァァァァ』
『キャー』

 そこに響くのは悲鳴。

「アハ、アハ、アハハハハッ」

 真っ白なウエディングドレスは血に染まり。

「始まった。始まったわ!」

 赤い染みが滲みながら広がっていく。

「アハハ! ギャハハ! アハハハハハハハッ……」

 歪むように笑う赤い唇の横を、赤い血が滴り落ちて行った。
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