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オメガだからって溺愛したわけじゃないんだよっ
第五話
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「と、いう訳で。お前たちにミカエルのことを相談したい」
私はミカエルの部屋にセルジュとマーサを呼んで事の次第を説明した。
普通に相談しているつもりなのだが、ふたりの様子が少々おかしい。
なぜ目を潤ませているのだ、ふたりとも。
「うぅぅ、お坊ちゃま~」
「坊ちゃま言うな。セルジュ? 呼び方が昔に戻ってるよ? そしてなぜ泣く?」
「お坊ちゃまが他人様のことをこんなに気に掛ける日が来るなんて……セルジュは嬉しゅうございますぅ~」
「ちょっ……やめて?」
なぜ泣く、なぜ泣く?
私はそんなに他人様のことを考えずに行動していたか?
「ううっ、私も嬉しいです、坊ちゃま~」
「マーサ? お前もか?」
目の前で泣いている使用人夫婦を前に、右手で頭を掴むようにしてはしばし悩む。
私の行いは、そんなに酷かったか?
……酷かったかも。
いや、酷かったとしても、両親を早くに亡くした若すぎる侯爵なので見逃して欲しい。
「残念アルファと裏で呼ばれていた坊ちゃまがついに大人の階段を……」
「いや、とっくの昔に成人してるがな?」
セルジュ、お前は私が残念アルファと呼ばれていたことを知っていたんだな。
「ついに残念アルファを御卒業ですわね、坊ちゃま……」
マーサ、お前もか。
「まぁ、いい。それでだ。ミカエルに戻って貰うにはどうしたらよいのか考えていて、まずはこの部屋を模様替えしようと思う」
「まぁ、坊ちゃま。それはよいお考えですわ」
笑顔をキラキラさせて弾む声でマーサは言った。
でも呼び方は元に戻していいと思うぞ?
「マーサ、坊ちゃま呼びはよせ」
私の顔を見たマーサが口元を両手で押さえる。
いや、その動作。失言を詫びているというよりも、ニマニマした笑いを隠す役割しか果たしてないから。
顔をしかめる私に気付いていないセルジュが部屋を見回しながら言う。
「ああ、旦那さま。ようやくお気付きに。このお部屋は素敵ではありますが、女性向きですからね。男性が使うにはちょっと……」
「やはり、か」
そう思っていたなら言ってくれよ、セルジュ。
マーサがうなずきながら言う。
「奥さまがお使いになっていた時のままですからね。ミカエラさまにとっては抵抗のあるインテリアですわ。でも、旦那さまにとっては思い出のあるお部屋ですもの。変えたくない気持ちもわかりますわ」
「ん……」
確かに、思い入れはある。
けれど、今使っているのはミカエルだ。
マーサが言う。
「ミカエルさまはお優しい方ですから。旦那さまには言い出せなかったのかもしれませんね。私には、男だから奥さまと呼ぶな、とか、色々とおっしゃってましたけど」
「んっ、そうか」
侯爵の配偶者だから公爵夫人だが。呼び方も考えるべきなのか?
んっ。私には分からん。
そこはアルに相談するか。
「で、この部屋。どうしたらミカエルに気に入って貰えると思う?」
私が質問すると、セルジュは嬉しそうに言う。
「それでしたら、旦那さま。旦那さまの色をふんだんに使った部屋になさったらいかがです?」
「えっ。ミカエルが使うのに?」
「ふふふ。配偶者の色に包まれて暮らすのも素敵なものなのですよ、旦那さま」
「そうなのか? マーサ?」
私には分からんな。
「ミカエルさまの色は茶色ですから。家具の類をミカエルさまの色にして、カーテンなどを旦那さまの色になさったらいかがですか?」
「セルジュ、それは良い考えだな。茶色の家具に青のカーテンなら男性が暮らす部屋でも無理がない」
「銀色の刺繍も素敵ですよね。白のレースに銀刺繍なら上品な華やかさが出ますわ」
「そうだな。ん。私にはよく分からんから、とりあえず二人に任せるよ。予算は用意しておくから、ミカエルが好みそうな感じにしてみてくれ」
「「はい、わかりました」」
私は部屋を見回した。
懐かしい母の部屋。
この部屋を模様替えすることで、私は未来へと進むのだ。
「旦那さま、奥さまのお使いになっていたものは倉庫にしまっておきますね」
「ん、マーサ。そうしてくれ」
こうしてミカエルの部屋は模様替えにより、私の色とミカエルの色に塗り替えられた。
ミカエルの呼び方はアルバスに相談してシェリング侯爵夫人からシェリング侯爵配へと変更した。
オメガ男性を配偶者に迎えても通常は侯爵配とはしないため、まるで私が女性として婿を迎えたような気分になる。
もっとも、ミカエルが感じていた違和感がコレなら私に文句を言う資格はない。
アルから書類を受け取ったその足で私はミカエルを迎えに行った。
ミカエルからしたら他にも色々と気になることはあるだろうが、私が限界だったのだ。
緊張し過ぎて表情が怖かったらしいが、ミカエルは私を受け入れてくれた。
後日。
事の顛末をアルバスに話したら腹を抱えて笑われたけど。
ミカエルが手に入ったから、まぁいい。
この目の前で笑い転げている男のおかげで手に入った幸せだと思うと癪に障るが。
とりあえず感謝しておこう。
私は残念アルファなんかじゃなく、ミカエルが愛するアルファになったのだから。
+。:.゚ஐ♡゚+。:.゚ஐ♡゚+。:.゚ஐ
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よろしかったら投票お願い致します。
私はミカエルの部屋にセルジュとマーサを呼んで事の次第を説明した。
普通に相談しているつもりなのだが、ふたりの様子が少々おかしい。
なぜ目を潤ませているのだ、ふたりとも。
「うぅぅ、お坊ちゃま~」
「坊ちゃま言うな。セルジュ? 呼び方が昔に戻ってるよ? そしてなぜ泣く?」
「お坊ちゃまが他人様のことをこんなに気に掛ける日が来るなんて……セルジュは嬉しゅうございますぅ~」
「ちょっ……やめて?」
なぜ泣く、なぜ泣く?
私はそんなに他人様のことを考えずに行動していたか?
「ううっ、私も嬉しいです、坊ちゃま~」
「マーサ? お前もか?」
目の前で泣いている使用人夫婦を前に、右手で頭を掴むようにしてはしばし悩む。
私の行いは、そんなに酷かったか?
……酷かったかも。
いや、酷かったとしても、両親を早くに亡くした若すぎる侯爵なので見逃して欲しい。
「残念アルファと裏で呼ばれていた坊ちゃまがついに大人の階段を……」
「いや、とっくの昔に成人してるがな?」
セルジュ、お前は私が残念アルファと呼ばれていたことを知っていたんだな。
「ついに残念アルファを御卒業ですわね、坊ちゃま……」
マーサ、お前もか。
「まぁ、いい。それでだ。ミカエルに戻って貰うにはどうしたらよいのか考えていて、まずはこの部屋を模様替えしようと思う」
「まぁ、坊ちゃま。それはよいお考えですわ」
笑顔をキラキラさせて弾む声でマーサは言った。
でも呼び方は元に戻していいと思うぞ?
「マーサ、坊ちゃま呼びはよせ」
私の顔を見たマーサが口元を両手で押さえる。
いや、その動作。失言を詫びているというよりも、ニマニマした笑いを隠す役割しか果たしてないから。
顔をしかめる私に気付いていないセルジュが部屋を見回しながら言う。
「ああ、旦那さま。ようやくお気付きに。このお部屋は素敵ではありますが、女性向きですからね。男性が使うにはちょっと……」
「やはり、か」
そう思っていたなら言ってくれよ、セルジュ。
マーサがうなずきながら言う。
「奥さまがお使いになっていた時のままですからね。ミカエラさまにとっては抵抗のあるインテリアですわ。でも、旦那さまにとっては思い出のあるお部屋ですもの。変えたくない気持ちもわかりますわ」
「ん……」
確かに、思い入れはある。
けれど、今使っているのはミカエルだ。
マーサが言う。
「ミカエルさまはお優しい方ですから。旦那さまには言い出せなかったのかもしれませんね。私には、男だから奥さまと呼ぶな、とか、色々とおっしゃってましたけど」
「んっ、そうか」
侯爵の配偶者だから公爵夫人だが。呼び方も考えるべきなのか?
んっ。私には分からん。
そこはアルに相談するか。
「で、この部屋。どうしたらミカエルに気に入って貰えると思う?」
私が質問すると、セルジュは嬉しそうに言う。
「それでしたら、旦那さま。旦那さまの色をふんだんに使った部屋になさったらいかがです?」
「えっ。ミカエルが使うのに?」
「ふふふ。配偶者の色に包まれて暮らすのも素敵なものなのですよ、旦那さま」
「そうなのか? マーサ?」
私には分からんな。
「ミカエルさまの色は茶色ですから。家具の類をミカエルさまの色にして、カーテンなどを旦那さまの色になさったらいかがですか?」
「セルジュ、それは良い考えだな。茶色の家具に青のカーテンなら男性が暮らす部屋でも無理がない」
「銀色の刺繍も素敵ですよね。白のレースに銀刺繍なら上品な華やかさが出ますわ」
「そうだな。ん。私にはよく分からんから、とりあえず二人に任せるよ。予算は用意しておくから、ミカエルが好みそうな感じにしてみてくれ」
「「はい、わかりました」」
私は部屋を見回した。
懐かしい母の部屋。
この部屋を模様替えすることで、私は未来へと進むのだ。
「旦那さま、奥さまのお使いになっていたものは倉庫にしまっておきますね」
「ん、マーサ。そうしてくれ」
こうしてミカエルの部屋は模様替えにより、私の色とミカエルの色に塗り替えられた。
ミカエルの呼び方はアルバスに相談してシェリング侯爵夫人からシェリング侯爵配へと変更した。
オメガ男性を配偶者に迎えても通常は侯爵配とはしないため、まるで私が女性として婿を迎えたような気分になる。
もっとも、ミカエルが感じていた違和感がコレなら私に文句を言う資格はない。
アルから書類を受け取ったその足で私はミカエルを迎えに行った。
ミカエルからしたら他にも色々と気になることはあるだろうが、私が限界だったのだ。
緊張し過ぎて表情が怖かったらしいが、ミカエルは私を受け入れてくれた。
後日。
事の顛末をアルバスに話したら腹を抱えて笑われたけど。
ミカエルが手に入ったから、まぁいい。
この目の前で笑い転げている男のおかげで手に入った幸せだと思うと癪に障るが。
とりあえず感謝しておこう。
私は残念アルファなんかじゃなく、ミカエルが愛するアルファになったのだから。
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