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オメガだからって甘く見てるから溺愛する羽目になるんだよっ!
シェリング侯爵家の朝
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爽やかな朝。オレは食堂に居た。
ルノワール・シェリング侯爵(バカ)は、デカいテーブルの向こう側で、優雅にコーヒーを飲んでいる。
ベーコンに目玉焼き、ふかふかのパンにサラダ、温かなスープ。朝食は美味かった。
オメガとして引きこもるように生活していたから環境が変わって慣れるまでには時間がかかるだろうな、と、思っていたのだが朝からしっかり味わって食べることができたので驚いている。
オレって意外と図太いタイプだったようだ。
まぁ、兄たちに鍛えられていたから、繊細なオメガちゃんたちに比べたらメンタル丈夫なタイプな自覚はある。
でも、さすがに侯爵家なんて格上のトコに突然くることになったから。
こう、もっと。精神的にキちゃうかと思っていたが違った。
なんか秒で慣れたという感覚の方が近い。
オレは人との接触を最低限に抑えて生きてきたから他人に囲まれる生活というのが想像つかなかったけど。
気疲れしちゃうかな、とか、思っていたけど。
早くもシェリング侯爵家に馴染んでいるような気がする。
ルノワール・シェリング侯爵(バカ)がバカなことをしてくれたおかげか?
セルジュとマーサが温かな眼差しをこちらに向けているけれど。
なんも無かったからね? 分かってるよね? ちょっとしたセクハラと、ちょっとした暴力があっただけだからね?
新鮮な朝のルノワール・シェリング侯爵はキラキラと輝いていて、いかにもアルファって感じだ。
昨夜のルノワール・シェリング侯爵(バカ)とは別人のように見える。
でもコイツが(バカ)である事実を知っているオレにとっては、ドキドキワクワク緊張しちゃうタイプの美形アルファ侯爵さまには見えない。
だからオレは朝一番からリラックスモード全開だ。
長い足を優雅に組んだルノワールが、ゆったりとした口調で言う。
「今日は王宮へ行く」
「そうなんだ」
コイツ、声までイイんだぜ。少し低めで澄んだ感じの声なんだ。
(バカ)だけど。落ち着いたイイ声なんだ。(バカ)だけど。
「王命について国王さまに説明して貰わねば。なぜ急に私とキミを結婚させたのか。意味が分からない」
「そうなんだ」
オレの声は中途半端に高いだけで綺麗でも可愛くもない。男らしさも女らしさもない中途半端な声だ。
オメガという足枷つけるなら、もうちょっと特典つけてくれたら良かったのに。
「ん? 他人事みたいだな。キミも行くんだよ?」
「えっ、オレも?」
「ああ。だって当事者だろ? 当然じゃないか」
「えー……」
オレ、当事者になっても自力で物事を動かしたことないからな。
当然じゃなかったことが突然に当然となったら戸惑うって。
「露骨に面倒そうな顔だな?」
「だって。面倒だもん」
ん、面倒。自分の事だから自分も参加できて嬉しいとかないな。
兄さまたちが優秀だったから、へーへーってうなずいていれば、まぁまぁうまくいってたからな。
自分のことだから意見言っていいよ、っていわれても面倒って気持ちが先にくる。
これからは慣れてかなきゃいけないかなぁ、とは思うけど。面倒は面倒だ。
「理由を知りたくないのか?」
「知ったところで意味あるの? 何も変わらないでしょ?」
顔をしかめるオレを見て、ルノワールは目を真ん丸にして驚いている。
なんでだろ?
「理由次第かもしれない。国王さまの思考は意味分からん方向に飛んでいく時がある。事情を説明して貰えば、違う形で対応できることも考えられるよ」
「そうなのか? でも、国王さまはオレたちの初夜が未遂に終わったことなんて知らないだろ?」
「……ん?」
「王命で結婚させるより、処女(?)を失ったオメガの婚姻を無かったことにするほうが問題あるよね?」
「……そうか」
ルノワールがウンウンとうなずいている。頭動くたびに銀髪キラキラすんのムカつく。
「そこは納得するのかよ」
「まぁ、な」
「オレたちは未遂だから婚姻解消して貰ってもいいけどな」
「えっ?」
驚いてこちらを見る整った顔。侯爵でアルファでキラキラしてるくせに表情豊かだな、コイツ。
「えっ?」
驚かれたことに驚いてオレはルノワールを見た。
「そこは、そのままでもいいのでは?」
とか言うアルファにオレは顔をしかめた。
「はぁ?」
意味わからん。なのに。
「ん?」
とか言って、甘い笑みを浮かべオレを見るアルファさま。
なんだコイツ。昨日、あんな対応しといて結婚についてはノリノリだったとか言うなよ? 言われても信じねーからな。
「でもオレさー。国王さまに会うには難があるんだよなぁ。一応、貴族だけども。キチンとした礼儀作法とか学んでないわけよ。オメガだから」
「……ん?」
意味わかんねぇ、って顔をしてオレを見るルノワール。そりゃ、そうだよな。
オレだって一応は伯爵子息だから、普通は礼儀くらい学んでると思うよなぁ。
「だから、オメガは学ぶのも大変なんだって。学校行けないし。家庭教師選びも大変だし。個人での依頼になるから金かかるし」
「そうか」
とか言ってるけど、ホントに分かってんのかなコイツ。
「国王さまとの謁見なんて作法の塊だろ? 失敗して、不敬だぁー、って言われて、処刑されたりすんのヤだ、オレ」
「大丈夫でしょ」
そりゃ、お前は侯爵だから慣れてるんだろうけどさぁ。
「いや、マジでダメなんだって。ほぼ身内にしか会わない生活だったからさ。礼儀作法なんて必要なかったし。オレってば自分に必要だと思わないことは学ばない合理主義でもあるからさー。所作なんてマジメに学んでないんだよ。そんなオレに、王宮なんて無理ー。王宮なんて行けなーい」
「んー。たしかに緊張はするかもしれないけれど。私も一緒に行くわけだし、相手は国王さまなわけだから。問題ないと思うよ」
「……いや、国王さまだから問題あるでしょうよ……」
ナニを言ってるんだ、この侯爵は。国民全員からツッコミが入りそうなことを言うなよ。
「正面から行けば、色々と煩いけれど。裏から行くから。お忍びで会える方のルートを使うから大丈夫だよ」
「正面とか裏とか、あるんだ」
「ああ。王族だって親戚付き合いもあれば友人関係もあるからね。しかもあの方々は忙しいから。正式な挨拶を飛ばして時間を有効活用しないと間に合わない」
「だから裏ルートなのか……」
「私も友人枠で、そっちを使うことがあるから。今回は、そっちルートで行く」
「それって国王さまが選ぶんじゃないの? こっちで勝手に決めていいものなの?」
「まぁ、国王さまだから。大丈夫でしょ」
「……その感覚がワカラナイ……」
よく分からないが、オレは国王さまに会うことに決まった。
ルノワール・シェリング侯爵(バカ)は、デカいテーブルの向こう側で、優雅にコーヒーを飲んでいる。
ベーコンに目玉焼き、ふかふかのパンにサラダ、温かなスープ。朝食は美味かった。
オメガとして引きこもるように生活していたから環境が変わって慣れるまでには時間がかかるだろうな、と、思っていたのだが朝からしっかり味わって食べることができたので驚いている。
オレって意外と図太いタイプだったようだ。
まぁ、兄たちに鍛えられていたから、繊細なオメガちゃんたちに比べたらメンタル丈夫なタイプな自覚はある。
でも、さすがに侯爵家なんて格上のトコに突然くることになったから。
こう、もっと。精神的にキちゃうかと思っていたが違った。
なんか秒で慣れたという感覚の方が近い。
オレは人との接触を最低限に抑えて生きてきたから他人に囲まれる生活というのが想像つかなかったけど。
気疲れしちゃうかな、とか、思っていたけど。
早くもシェリング侯爵家に馴染んでいるような気がする。
ルノワール・シェリング侯爵(バカ)がバカなことをしてくれたおかげか?
セルジュとマーサが温かな眼差しをこちらに向けているけれど。
なんも無かったからね? 分かってるよね? ちょっとしたセクハラと、ちょっとした暴力があっただけだからね?
新鮮な朝のルノワール・シェリング侯爵はキラキラと輝いていて、いかにもアルファって感じだ。
昨夜のルノワール・シェリング侯爵(バカ)とは別人のように見える。
でもコイツが(バカ)である事実を知っているオレにとっては、ドキドキワクワク緊張しちゃうタイプの美形アルファ侯爵さまには見えない。
だからオレは朝一番からリラックスモード全開だ。
長い足を優雅に組んだルノワールが、ゆったりとした口調で言う。
「今日は王宮へ行く」
「そうなんだ」
コイツ、声までイイんだぜ。少し低めで澄んだ感じの声なんだ。
(バカ)だけど。落ち着いたイイ声なんだ。(バカ)だけど。
「王命について国王さまに説明して貰わねば。なぜ急に私とキミを結婚させたのか。意味が分からない」
「そうなんだ」
オレの声は中途半端に高いだけで綺麗でも可愛くもない。男らしさも女らしさもない中途半端な声だ。
オメガという足枷つけるなら、もうちょっと特典つけてくれたら良かったのに。
「ん? 他人事みたいだな。キミも行くんだよ?」
「えっ、オレも?」
「ああ。だって当事者だろ? 当然じゃないか」
「えー……」
オレ、当事者になっても自力で物事を動かしたことないからな。
当然じゃなかったことが突然に当然となったら戸惑うって。
「露骨に面倒そうな顔だな?」
「だって。面倒だもん」
ん、面倒。自分の事だから自分も参加できて嬉しいとかないな。
兄さまたちが優秀だったから、へーへーってうなずいていれば、まぁまぁうまくいってたからな。
自分のことだから意見言っていいよ、っていわれても面倒って気持ちが先にくる。
これからは慣れてかなきゃいけないかなぁ、とは思うけど。面倒は面倒だ。
「理由を知りたくないのか?」
「知ったところで意味あるの? 何も変わらないでしょ?」
顔をしかめるオレを見て、ルノワールは目を真ん丸にして驚いている。
なんでだろ?
「理由次第かもしれない。国王さまの思考は意味分からん方向に飛んでいく時がある。事情を説明して貰えば、違う形で対応できることも考えられるよ」
「そうなのか? でも、国王さまはオレたちの初夜が未遂に終わったことなんて知らないだろ?」
「……ん?」
「王命で結婚させるより、処女(?)を失ったオメガの婚姻を無かったことにするほうが問題あるよね?」
「……そうか」
ルノワールがウンウンとうなずいている。頭動くたびに銀髪キラキラすんのムカつく。
「そこは納得するのかよ」
「まぁ、な」
「オレたちは未遂だから婚姻解消して貰ってもいいけどな」
「えっ?」
驚いてこちらを見る整った顔。侯爵でアルファでキラキラしてるくせに表情豊かだな、コイツ。
「えっ?」
驚かれたことに驚いてオレはルノワールを見た。
「そこは、そのままでもいいのでは?」
とか言うアルファにオレは顔をしかめた。
「はぁ?」
意味わからん。なのに。
「ん?」
とか言って、甘い笑みを浮かべオレを見るアルファさま。
なんだコイツ。昨日、あんな対応しといて結婚についてはノリノリだったとか言うなよ? 言われても信じねーからな。
「でもオレさー。国王さまに会うには難があるんだよなぁ。一応、貴族だけども。キチンとした礼儀作法とか学んでないわけよ。オメガだから」
「……ん?」
意味わかんねぇ、って顔をしてオレを見るルノワール。そりゃ、そうだよな。
オレだって一応は伯爵子息だから、普通は礼儀くらい学んでると思うよなぁ。
「だから、オメガは学ぶのも大変なんだって。学校行けないし。家庭教師選びも大変だし。個人での依頼になるから金かかるし」
「そうか」
とか言ってるけど、ホントに分かってんのかなコイツ。
「国王さまとの謁見なんて作法の塊だろ? 失敗して、不敬だぁー、って言われて、処刑されたりすんのヤだ、オレ」
「大丈夫でしょ」
そりゃ、お前は侯爵だから慣れてるんだろうけどさぁ。
「いや、マジでダメなんだって。ほぼ身内にしか会わない生活だったからさ。礼儀作法なんて必要なかったし。オレってば自分に必要だと思わないことは学ばない合理主義でもあるからさー。所作なんてマジメに学んでないんだよ。そんなオレに、王宮なんて無理ー。王宮なんて行けなーい」
「んー。たしかに緊張はするかもしれないけれど。私も一緒に行くわけだし、相手は国王さまなわけだから。問題ないと思うよ」
「……いや、国王さまだから問題あるでしょうよ……」
ナニを言ってるんだ、この侯爵は。国民全員からツッコミが入りそうなことを言うなよ。
「正面から行けば、色々と煩いけれど。裏から行くから。お忍びで会える方のルートを使うから大丈夫だよ」
「正面とか裏とか、あるんだ」
「ああ。王族だって親戚付き合いもあれば友人関係もあるからね。しかもあの方々は忙しいから。正式な挨拶を飛ばして時間を有効活用しないと間に合わない」
「だから裏ルートなのか……」
「私も友人枠で、そっちを使うことがあるから。今回は、そっちルートで行く」
「それって国王さまが選ぶんじゃないの? こっちで勝手に決めていいものなの?」
「まぁ、国王さまだから。大丈夫でしょ」
「……その感覚がワカラナイ……」
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