【本編完結】オメガだからって甘く見てるから溺愛する羽目になるんだよっ!

天田れおぽん

文字の大きさ
上 下
9 / 68
オメガだからって甘く見てるから溺愛する羽目になるんだよっ!

ルノワール・シェリング侯爵(バカ)

しおりを挟む
「うがぁぁぁ……ちょっとしたジョークだったのにぃ~。酷いじゃないかぁ~」

 オレの目前ではルノワール・シェリング侯爵(22歳)が股間を押さえてうめいていた。

 天蓋付きのデカいベッドで素っ裸の美形が股間押さえてうめくという図はシュールである。

 ちょっと事件っぽさすらある。

「……とりあえず何か着ろ」

 オレ(ミカエル・ランバート伯爵家三男(18歳))はガウンを裸の男に向かって放り投げた。

 ついさっきまではご機嫌だったのだ。

 気分よく風呂から上がってきたのに、ドア開けた途端に裸の侯爵とのご対面である。

 素っ裸ゆえ侯爵の侯爵ともしっかりご対面を終えた。

 ご対面すべきところが違う。間違っている。オレは箱入りオメガの18歳である。

 ついこの間まで未成年だったのに、成人した途端に変態が解禁されるとは何事だ。

 夢見る乙女ではないけれど現実が過酷すぎるだろう。お兄さまのお兄さまも見たことないのに、ふざけんな。

 いきなり抱き上げてベッドに連れ込むとか、体の下に組み敷くとか、なんなの? 

 サラッサラの銀髪とか、澄んだ青い瞳とか、長い睫毛とか、スッと通った鼻梁とか、薄くもなく厚くもなく形のよい唇とか、バッキバキの腹筋とか、オレを余裕で抱えられる筋力とか、清涼感ある良い匂いとか、手触りのよい肌とか、なんかイロイロと持ってたって許さないんだからな。ぷんぷん。

「ジョークでも『オメガにヤる以外の価値などない』なんて言うバカは股間蹴られても文句言えないだろっ!」

「うぅ~」

 ルノワール・シェリング侯爵(素っ裸)は、うめきながらゴソゴソとガウンを羽織った。

 なんだ、そのみっともない動きはっ!

 みっともなさもなんかカワイイとか思えるアルファ、許すまじ。

「ホントにもう……コッチだって突然のことでアレだっつーのに……もうっ……もうっ……」

 オレの心の底からこぼれ出る愚痴に反応して、ルノワール(バカ)が上目遣いでコッチを見た。

「だからぁ、ゴメンって」

「軽いっ」

 激おこぷんぷん演技モードにしとこうかな、と、思っていたのにコイツ見てるとムカつくんですけど、なんなの。

「もう、堅い~。男同士のジョークじゃないか~。ミカエルちゃん、堅い~」

「そーゆー問題じゃないっ。それにミカエルちゃんってなんだよっ」

「ううっ……男同士のじゃれ合い……学校じゃ、よくあることじゃないかぁ~」

 なんだコイツは。オメガのオレが、そんなこと知るわけないじゃないかっ。

「オレはオメガだからっ。屋敷から出たことすらないんだよっ」

「え?」

「っていうか、ココに来たのが初めての外出なのっ」

「は?」

 ポカンとするアルファさまも可愛げがあってよろしい。

 じゃなくてっ。

「そもそも、学校なんて行ってないしっ」

「んん? でも男……」

 なんで、こんな場面では簡単に男扱いされんの?

「オレはっ、オメガだからっ。普通になんて暮らせないのっ」

 話が通じないっ。世間一般でのオメガの扱いってなんなの? 存在そのものがジョークなの?

 かなりシリアスにオレの人生を狂わせてるのにっ。

 オメガってナニ? 都市伝説なの? オレの苦労は、なんだったの?

「もうっ、もうっ。王命で仕方なく嫁いだ夫が、とんだバカっ」

「ヒドイ」

「どっちが⁉」

 オレはガウンを羽織ってベッドから降りた男を眺めた。

「アンタはどうせアルファなんだろ?」

 身長は兄たちよりも低いけれど、恵まれた体格をしている。適度に付いた引き締まった筋肉。長い手足。容姿にも地位にも経済的にも恵まれた男の人生なら楽勝だろう。

「襲われることを心配して、学校に行くどころか家庭教師を頼むのにも慎重にならざる負えないオメガの生活なんて想像もできないんだろっ」

「確かに私はアルファだけど……女に迫られたり、襲われたりはするよ?」

「襲われる、の、中身がちがぁーうっ」

 あ、やっぱ。アルファとは分かり合える気がしない。兄たちもアルファだけど。

 ルノワール・シェリング侯爵(バカ)とは分かり合える気がしない。

「まぁーまぁー、落ち着いて?」

「落ち着けるかっ」

「国王さまとは幼馴染なので、明日にでも王命の理由を聞きに行こ?」

「……」

 あーくそっ。

 人間関係にまで恵まれているのかよ、このバカは。チクショー。
 
「だから、今日のところは一緒に寝「イヤですっ」」

 オレは食い気味に即答した。

 どういう思考回路してんだよ、このバカは。

「オレはひとりで寝ます。はい、おやすみなさい」

 ルノワール・シェリング侯爵(当主)は、シュンとうなだれ、すごすごと部屋を出て行った。

 奥さま部屋と夫婦の寝室、バカの部屋は内扉で繋がっているらしい。

 廊下に出なくても行き来できるのは便利だけど、簡単に入って来られるのは考えものだ。

 オレはバカが出て行ったあとに内扉の鍵をしっかりとかけた。

 なんか動機息切れが酷いけど、不整脈かな? たぶん気のせいだけどなっ!
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

白銀オメガに草原で愛を

phyr
BL
草原の国ヨラガンのユクガは、攻め落とした城の隠し部屋で美しいオメガの子どもを見つけた。 己の年も、名前も、昼と夜の区別も知らずに生きてきたらしい彼を置いていけず、連れ帰ってともに暮らすことになる。 「私は、ユクガ様のお嫁さんになりたいです」 「ヒートが来るようになったとき、まだお前にその気があったらな」 キアラと名づけた少年と暮らすうちにユクガにも情が芽生えるが、キアラには自分も知らない大きな秘密があって……。 無意識溺愛系アルファ×一途で健気なオメガ ※このお話はムーンライトノベルズ様にも掲載しています

孤独を癒して

星屑
BL
運命の番として出会った2人。 「運命」という言葉がピッタリの出会い方をした、 デロデロに甘やかしたいアルファと、守られるだけじゃないオメガの話。 *不定期更新。 *感想などいただけると励みになります。 *完結は絶対させます!

当たり前の幸せ

ヒイロ
BL
結婚4年目で別れを決意する。長い間愛があると思っていた結婚だったが嫌われてるとは気付かずいたから。すれ違いからのハッピーエンド。オメガバース。よくある話。 初投稿なので色々矛盾などご容赦を。 ゆっくり更新します。 すみません名前変えました。

巣ごもりオメガは後宮にひそむ【続編連載中】

晦リリ
BL
後宮で幼馴染でもあるラナ姫の護衛をしているミシュアルは、つがいがいないのに、すでに契約がすんでいる体であるという判定を受けたオメガ。 発情期はあるものの、つがいが誰なのか、いつつがいの契約がなされたのかは本人もわからない。 そんななか、気になる匂いの落とし物を後宮で拾うようになる。 第9回BL小説大賞にて奨励賞受賞→書籍化しました。ありがとうございます。

オメガ転生。

BL
残業三昧でヘトヘトになりながらの帰宅途中。乗り合わせたバスがまさかのトンネル内の火災事故に遭ってしまう。 そして………… 気がつけば、男児の姿に… 双子の妹は、まさかの悪役令嬢?それって一家破滅フラグだよね! 破滅回避の奮闘劇の幕開けだ!!

【完結】あなたの恋人(Ω)になれますか?〜後天性オメガの僕〜

MEIKO
BL
この世界には3つの性がある。アルファ、ベータ、オメガ。その中でもオメガは希少な存在で。そのオメガで更に希少なのは┉僕、後天性オメガだ。ある瞬間、僕は恋をした!その人はアルファでオメガに対して強い拒否感を抱いている┉そんな人だった。もちろん僕をあなたの恋人(Ω)になんてしてくれませんよね? 前作「あなたの妻(Ω)辞めます!」スピンオフ作品です。こちら単独でも内容的には大丈夫です。でも両方読む方がより楽しんでいただけると思いますので、未読の方はそちらも読んでいただけると嬉しいです! 後天性オメガの平凡受け✕心に傷ありアルファの恋愛 ※独自のオメガバース設定有り

運命の番ってそんなに溺愛するもんなのぉーーー

白井由紀
BL
【BL作品】(20時30分毎日投稿) 金持ち‪社長・溺愛&執着 α‬ × 貧乏・平凡&不細工だと思い込んでいる、美形Ω 幼い頃から運命の番に憧れてきたΩのゆき。自覚はしていないが小柄で美形。 ある日、ゆきは夜の街を歩いていたら、ヤンキーに絡まれてしまう。だが、偶然通りかかった運命の番、怜央が助ける。 発情期中の怜央の優しさと溺愛で恋に落ちてしまうが、自己肯定感の低いゆきには、例え、運命の番でも身分差が大きすぎると離れてしまう 離れたあと、ゆきも怜央もお互いを思う気持ちは止められない……。 すれ違っていく2人は結ばれることができるのか…… 思い込みが激しいΩとΩを自分に依存させたいα‬の溺愛、身分差ストーリー ★ハッピーエンド作品です ※この作品は、BL作品です。苦手な方はそっと回れ右してください🙏 ※これは創作物です、都合がいいように解釈させていただくことがありますのでご了承くださいm(_ _)m ※フィクション作品です ※誤字脱字は見つけ次第訂正しますが、脳内変換、受け流してくれると幸いです

こわがりオメガは溺愛アルファ様と毎日おいかけっこ♡

なお
BL
政略結婚(?)したアルファの旦那様をこわがってるオメガ。 あまり近付かないようにしようと逃げ回っている。発情期も結婚してから来ないし、番になってない。このままじゃ離婚になるかもしれない…。 ♡♡♡ 恐いけど、きっと旦那様のことは好いてるのかな?なオメガ受けちゃん。ちゃんとアルファ旦那攻め様に甘々どろどろに溺愛されて、たまに垣間見えるアルファの執着も楽しめるように書きたいところだけ書くみたいになるかもしれないのでストーリーは面白くないかもです!!!ごめんなさい!!!

処理中です...