5 / 68
オメガだからって甘く見てるから溺愛する羽目になるんだよっ!
突然の嫁入り当日
しおりを挟む
「オレ、嫁に行くんだってさ。それも今日」
兄たちに報告をすると、次兄は赤茶の目を真ん丸にして驚いた。
当主である長兄は事前に承知していたようで茶色の瞳に沈痛な色を浮かべてオレを見た。
「ミカエルが……嫁入り⁉」
「王命だから逃れられない」
次兄は驚きの声を上げたが、長兄は冷静さの奥に沈痛な想いを込めて端的に説明した。
「いいよ。兄さまたち。オレが嫁げば済む話だ」
オレはへにょりと眉を下げて、諦めを声に滲ませた。
王命は絶対だ。家長を務めるのが長兄であっても、オレの嫁入りを止めることは出来ない。
オレの嫁入りが決まって義母のタニアは上機嫌だ。
「ホントにおめでたいわねぇ。嫁入り先は侯爵家でしょ? これ以上の喜びはないわ。国王さまからの素敵なプレゼントね」
邪魔な義理の息子が一人消えることと、相手が侯爵家であることが理由だろう。
「ああ、ホントに。お前のことなどを国王さまがご存知とは意外だったが、素晴らしい縁だ。お前が役に立つのは結婚くらいだからな。二度と戻ってくるなよ」
父にしても、目障りなオメガの息子がいなくなることが嬉しいようだ。
一応、血のつながりのある実父であるはずだが。
亡き実母の手際のよいオレへの配慮が、実父に関しては仇になっているようだ。
「お前のせいで自分の好きに出来ない、と、思い込んでいるようだからね。父さまは」
「ただの勘違いだけどな。元々、母さまは父さまの好きにさせる気など無かっただろうし」
長兄と次兄は慰めてくれるけれど、肝心な所はそこじゃない。
「実の父親だからって、無償の愛を貰えるとは思ってないけどさ……」
一応、魔法道具で稼いでいるから貢献しているハズだけどね。
何したってオメガじゃダメってコトかな? と、グレたくもなる。
「父さまの態度なんて気にするな。嫁に行ったからって、僕たちが他人になるわけじゃない」
ありがとう、ノイエル兄さま。
「辛かったら、言うんだよ? いつでも迎えにいくからね」
ありがとう、ジョエル兄さま。
両側からギュッと抱きしめられて、オレはふにゃりと笑った。
ふっ……ホコリが目に入ったのかな……涙が……。
「心配だけどな」
「あぁ、嫁に出す気などなかったから。貴族らしい立ち居振る舞いは身についてないからね」
ジョエル兄さまの言葉に、ノイエル兄さまが気遣わしげな視線をこちらに向けてきた。
あ、気になるのソコ?
「ミカエルはずっと家に居る予定だったし。嫁に行ったとしても屋敷内に居ることになるから。礼儀については、いささか心配かな」
ノイエル兄さまが目配せをすれば、大きくうなずくジョエル兄さま。
解せぬ。
「ノイエルはミカエルに甘いからな。まぁ、僕もだけど。でも、侯爵家となると、なぁ?」
ジョエル兄さまにも甘いよ。だっていつも呼び捨てしても、ノイエル兄さまは怒らないでしょ。
「ああ、そうだね。屋敷内にいるといっても、ある程度の礼儀作法は必要だったかも」
むしろノイエル兄さま、オレに厳しくない?
「普通の婚姻なら事前に了解を得ればいいだけだけど」
「王命で今日からとなると、準備期間ゼロだからね。心配だよ」
ん。確かに。王命なのは向こうも一緒だから、不満がある可能性はある。
そもそも。オレはオメガらしくないオメガだから。不満を持たれる可能性のほうが高い。
ヤバくね?
「身一つでこい、は、いいけどさ。護衛もなしでオメガを嫁がせるとかナイわー。ソレは、ナイわー」
ジョエル兄さまが不満を口にすれば、ノイエル兄さまもウンウンとうなずいている。
「そうだね。お迎えくらいは、あちらの家から欲しいところだね」
「でもさー。オレが安心していられるような護衛を急に手配できないよね?」
「それもそうだ」
「うんうん。こういう時に、普段からお付き合いのある護衛がいないのは痛いね」
ランバート伯爵家にも護衛はいる。しかし、オメガであるオレを扱ったことがある人物はいない。
話し合いの結果、オレは次兄に転移魔法を使って送られることになった。
兄たちに報告をすると、次兄は赤茶の目を真ん丸にして驚いた。
当主である長兄は事前に承知していたようで茶色の瞳に沈痛な色を浮かべてオレを見た。
「ミカエルが……嫁入り⁉」
「王命だから逃れられない」
次兄は驚きの声を上げたが、長兄は冷静さの奥に沈痛な想いを込めて端的に説明した。
「いいよ。兄さまたち。オレが嫁げば済む話だ」
オレはへにょりと眉を下げて、諦めを声に滲ませた。
王命は絶対だ。家長を務めるのが長兄であっても、オレの嫁入りを止めることは出来ない。
オレの嫁入りが決まって義母のタニアは上機嫌だ。
「ホントにおめでたいわねぇ。嫁入り先は侯爵家でしょ? これ以上の喜びはないわ。国王さまからの素敵なプレゼントね」
邪魔な義理の息子が一人消えることと、相手が侯爵家であることが理由だろう。
「ああ、ホントに。お前のことなどを国王さまがご存知とは意外だったが、素晴らしい縁だ。お前が役に立つのは結婚くらいだからな。二度と戻ってくるなよ」
父にしても、目障りなオメガの息子がいなくなることが嬉しいようだ。
一応、血のつながりのある実父であるはずだが。
亡き実母の手際のよいオレへの配慮が、実父に関しては仇になっているようだ。
「お前のせいで自分の好きに出来ない、と、思い込んでいるようだからね。父さまは」
「ただの勘違いだけどな。元々、母さまは父さまの好きにさせる気など無かっただろうし」
長兄と次兄は慰めてくれるけれど、肝心な所はそこじゃない。
「実の父親だからって、無償の愛を貰えるとは思ってないけどさ……」
一応、魔法道具で稼いでいるから貢献しているハズだけどね。
何したってオメガじゃダメってコトかな? と、グレたくもなる。
「父さまの態度なんて気にするな。嫁に行ったからって、僕たちが他人になるわけじゃない」
ありがとう、ノイエル兄さま。
「辛かったら、言うんだよ? いつでも迎えにいくからね」
ありがとう、ジョエル兄さま。
両側からギュッと抱きしめられて、オレはふにゃりと笑った。
ふっ……ホコリが目に入ったのかな……涙が……。
「心配だけどな」
「あぁ、嫁に出す気などなかったから。貴族らしい立ち居振る舞いは身についてないからね」
ジョエル兄さまの言葉に、ノイエル兄さまが気遣わしげな視線をこちらに向けてきた。
あ、気になるのソコ?
「ミカエルはずっと家に居る予定だったし。嫁に行ったとしても屋敷内に居ることになるから。礼儀については、いささか心配かな」
ノイエル兄さまが目配せをすれば、大きくうなずくジョエル兄さま。
解せぬ。
「ノイエルはミカエルに甘いからな。まぁ、僕もだけど。でも、侯爵家となると、なぁ?」
ジョエル兄さまにも甘いよ。だっていつも呼び捨てしても、ノイエル兄さまは怒らないでしょ。
「ああ、そうだね。屋敷内にいるといっても、ある程度の礼儀作法は必要だったかも」
むしろノイエル兄さま、オレに厳しくない?
「普通の婚姻なら事前に了解を得ればいいだけだけど」
「王命で今日からとなると、準備期間ゼロだからね。心配だよ」
ん。確かに。王命なのは向こうも一緒だから、不満がある可能性はある。
そもそも。オレはオメガらしくないオメガだから。不満を持たれる可能性のほうが高い。
ヤバくね?
「身一つでこい、は、いいけどさ。護衛もなしでオメガを嫁がせるとかナイわー。ソレは、ナイわー」
ジョエル兄さまが不満を口にすれば、ノイエル兄さまもウンウンとうなずいている。
「そうだね。お迎えくらいは、あちらの家から欲しいところだね」
「でもさー。オレが安心していられるような護衛を急に手配できないよね?」
「それもそうだ」
「うんうん。こういう時に、普段からお付き合いのある護衛がいないのは痛いね」
ランバート伯爵家にも護衛はいる。しかし、オメガであるオレを扱ったことがある人物はいない。
話し合いの結果、オレは次兄に転移魔法を使って送られることになった。
0
お気に入りに追加
307
あなたにおすすめの小説
そばにいてほしい。
15
BL
僕の恋人には、幼馴染がいる。
そんな幼馴染が彼はよっぽど大切らしい。
──だけど、今日だけは僕のそばにいて欲しかった。
幼馴染を優先する攻め×口に出せない受け
安心してください、ハピエンです。
婚約者は俺にだけ冷たい
円みやび
BL
藍沢奏多は王子様と噂されるほどのイケメン。
そんなイケメンの婚約者である古川優一は日々の奏多の行動に傷つきながらも文句を言えずにいた。
それでも過去の思い出から奏多との別れを決意できない優一。
しかし、奏多とΩの絡みを見てしまい全てを終わらせることを決める。
ザマァ系を期待している方にはご期待に沿えないかもしれません。
前半は受け君がだいぶ不憫です。
他との絡みが少しだけあります。
あまりキツイ言葉でコメントするのはやめて欲しいです。
ただの素人の小説です。
ご容赦ください。
エリートアルファの旦那様は孤独なオメガを手放さない
小鳥遊ゆう
BL
両親を亡くした楓を施設から救ってくれたのは大企業の御曹司・桔梗だった。
出会った時からいつまでも優しい桔梗の事を好きになってしまった楓だが報われない恋だと諦めている。
「せめて僕がαだったら……Ωだったら……。もう少しあなたに近づけたでしょうか」
「使用人としてでいいからここに居たい……」
楓の十八の誕生日の夜、前から体調の悪かった楓の部屋を桔梗が訪れるとそこには発情(ヒート)を起こした楓の姿が。
「やはり君は、私の運命だ」そう呟く桔梗。
スパダリ御曹司αの桔梗×βからΩに変わってしまった天涯孤独の楓が紡ぐ身分差恋愛です。
花開かぬオメガの花嫁
朏猫(ミカヅキネコ)
BL
帝国には献上されたΩが住むΩ宮という建物がある。その中の蕾宮には、発情を迎えていない若いΩや皇帝のお渡りを受けていないΩが住んでいた。異国から来た金髪緑眼のΩ・キーシュも蕾宮に住む一人だ。三十になり皇帝のお渡りも望めないなか、あるαに下賜されることが決まる。しかしキーシュには密かに思う相手がいて……。※他サイトにも掲載
[高級官吏の息子α × 異国から来た金髪緑眼Ω / BL / R18]
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
傾国の美青年
春山ひろ
BL
僕は、ガブリエル・ローミオ二世・グランフォルド、グランフォルド公爵の嫡男7歳です。オメガの母(元王子)とアルファで公爵の父との政略結婚で生まれました。周りは「運命の番」ではないからと、美貌の父上に姦しくオメガの令嬢令息がうるさいです。僕は両親が大好きなので守って見せます!なんちゃって中世風の異世界です。設定はゆるふわ、本文中にオメガバースの説明はありません。明るい母と美貌だけど感情表現が劣化した父を持つ息子の健気な奮闘記?です。他のサイトにも掲載しています。
職場で性的ないじめを受けていることをなかなか恋人に言えずに病んでしまう話
こじらせた処女
BL
社会人一年目の日野 敦(ひの あつ)。入社後半年が経った頃、同じ会社の先輩3人にレイプまがいのことをされ始めてしまう。同居人であり恋人でもある樹(いつき)にもなかなか言えないまま、その嫌がらせはエスカレートしていき…?
嫌われ者の僕はひっそりと暮らしたい
りまり
BL
僕のいる世界は男性でも妊娠することのできる世界で、僕の婚約者は公爵家の嫡男です。
この世界は魔法の使えるファンタジーのようなところでもちろん魔物もいれば妖精や精霊もいるんだ。
僕の婚約者はそれはそれは見目麗しい青年、それだけじゃなくすごく頭も良いし剣術に魔法になんでもそつなくこなせる凄い人でだからと言って平民を見下すことなくわからないところは教えてあげられる優しさを持っている。
本当に僕にはもったいない人なんだ。
どんなに努力しても成果が伴わない僕に呆れてしまったのか、最近は平民の中でも特に優秀な人と一緒にいる所を見るようになって、周りからもお似合いの夫婦だと言われるようになっていった。その一方で僕の評価はかなり厳しく彼が可哀そうだと言う声が聞こえてくるようにもなった。
彼から言われたわけでもないが、あの二人を見ていれば恋愛関係にあるのぐらいわかる。彼に迷惑をかけたくないので、卒業したら結婚する予定だったけど両親に今の状況を話て婚約を白紙にしてもらえるように頼んだ。
答えは聞かなくてもわかる婚約が解消され、僕は学校を卒業したら辺境伯にいる叔父の元に旅立つことになっている。
後少しだけあなたを……あなたの姿を目に焼き付けて辺境伯領に行きたい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる