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オメガだからって甘く見てるから溺愛する羽目になるんだよっ!

突然の嫁入り当日

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「オレ、嫁に行くんだってさ。それも今日」

 兄たちに報告をすると、次兄は赤茶の目を真ん丸にして驚いた。

 当主である長兄は事前に承知していたようで茶色の瞳に沈痛な色を浮かべてオレを見た。

「ミカエルが……嫁入り⁉」

「王命だから逃れられない」

  次兄は驚きの声を上げたが、長兄は冷静さの奥に沈痛な想いを込めて端的に説明した。

「いいよ。兄さまたち。オレが嫁げば済む話だ」

 オレはへにょりと眉を下げて、諦めを声に滲ませた。

 王命は絶対だ。家長を務めるのが長兄であっても、オレの嫁入りを止めることは出来ない。

 オレの嫁入りが決まって義母のタニアは上機嫌だ。

「ホントにおめでたいわねぇ。嫁入り先は侯爵家でしょ? これ以上の喜びはないわ。国王さまからの素敵なプレゼントね」

 邪魔な義理の息子が一人消えることと、相手が侯爵家であることが理由だろう。

「ああ、ホントに。お前のことなどを国王さまがご存知とは意外だったが、素晴らしい縁だ。お前が役に立つのは結婚くらいだからな。二度と戻ってくるなよ」

 父にしても、目障りなオメガの息子がいなくなることが嬉しいようだ。

 一応、血のつながりのある実父であるはずだが。

 亡き実母の手際のよいオレへの配慮が、実父に関しては仇になっているようだ。

「お前のせいで自分の好きに出来ない、と、思い込んでいるようだからね。父さまは」

「ただの勘違いだけどな。元々、母さまは父さまの好きにさせる気など無かっただろうし」

 長兄と次兄は慰めてくれるけれど、肝心な所はそこじゃない。

「実の父親だからって、無償の愛を貰えるとは思ってないけどさ……」
 
 一応、魔法道具で稼いでいるから貢献しているハズだけどね。

 何したってオメガじゃダメってコトかな? と、グレたくもなる。

「父さまの態度なんて気にするな。嫁に行ったからって、僕たちが他人になるわけじゃない」

 ありがとう、ノイエル兄さま。 

「辛かったら、言うんだよ? いつでも迎えにいくからね」

 ありがとう、ジョエル兄さま。

 両側からギュッと抱きしめられて、オレはふにゃりと笑った。

 ふっ……ホコリが目に入ったのかな……涙が……。

「心配だけどな」

「あぁ、嫁に出す気などなかったから。貴族らしい立ち居振る舞いは身についてないからね」

 ジョエル兄さまの言葉に、ノイエル兄さまが気遣わしげな視線をこちらに向けてきた。
 
 あ、気になるのソコ?

「ミカエルはずっと家に居る予定だったし。嫁に行ったとしても屋敷内に居ることになるから。礼儀については、いささか心配かな」

 ノイエル兄さまが目配せをすれば、大きくうなずくジョエル兄さま。

 解せぬ。

「ノイエルはミカエルに甘いからな。まぁ、僕もだけど。でも、侯爵家となると、なぁ?」

 ジョエル兄さまにも甘いよ。だっていつも呼び捨てしても、ノイエル兄さまは怒らないでしょ。

「ああ、そうだね。屋敷内にいるといっても、ある程度の礼儀作法は必要だったかも」

 むしろノイエル兄さま、オレに厳しくない? 

「普通の婚姻なら事前に了解を得ればいいだけだけど」

「王命で今日からとなると、準備期間ゼロだからね。心配だよ」

 ん。確かに。王命なのは向こうも一緒だから、不満がある可能性はある。

 そもそも。オレはオメガらしくないオメガだから。不満を持たれる可能性のほうが高い。

 ヤバくね?

「身一つでこい、は、いいけどさ。護衛もなしでオメガを嫁がせるとかナイわー。ソレは、ナイわー」

 ジョエル兄さまが不満を口にすれば、ノイエル兄さまもウンウンとうなずいている。

「そうだね。お迎えくらいは、あちらの家から欲しいところだね」

「でもさー。オレが安心していられるような護衛を急に手配できないよね?」

「それもそうだ」

「うんうん。こういう時に、普段からお付き合いのある護衛がいないのは痛いね」

 ランバート伯爵家にも護衛はいる。しかし、オメガであるオレを扱ったことがある人物はいない。

 話し合いの結果、オレは次兄に転移魔法を使って送られることになった。
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