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「行ってらっしゃい」
夫を見送った後に洗濯物を干して食器を洗う。掃除機をかけていると優菜が泣いているのでオムツを代えた。
『ピンポーン』
決まった時間に母は来る。それだけ娘に会うのを楽しみにしてくれているのだろう。私としてもすごく助かる。
「お母さんありがとうね、じゃあちょっと行ってくる」
「車に気をつけなさいよ」
「うん」
母は胸に抱いた優菜を見ながら娘を心配する素振りを見せた。意識は孫に集中している。それで良い。
キャップを被りマスクをする。背中には四角いバックを背負い自転車にまたがった。飲食店が多い駅前を目指す。
スマートフォンのアプリを起動させて配達の準備に入るとすぐに依頼の通知が鳴った。一件目はマクドナルドだ。
駅前にあるマックに自転車を止めて用意してある注文品を受け取った。傾かないようバックにしまって再び背負う。
配達開始をタップすると配達先が表示される、約一キロ先のマンション。十分くらいだろう。ペダルを漕ぎ出した。
このバイトのメリットはいつでも好きな時間に始められて、好きな時間にやめられる事。優菜に何かあってもすぐに駆けつける事ができた。もっとも母が見ているので今のところ何のトラブルもないが。
さらに普通のママチャリを漕ぐのは有酸素運動になり、みるみる体型は元に戻っていった。意外な副産物だ。
「ウーバーです、お待たせしました」
「はーい」
インターホン越しに女性の声が聞こえてオートロックが開かれた。ほとんどの人は置き配なので顔を合わせることは無い。
一件運ぶと平均で三百円、一日の目標は十五件だから四千五百円。月金でやれば回数ボーナスをいれて三万円くらいになる。月に十二万円。十分だ。
夕方の四時か五時には大抵目標達成する。それからスーパーで買い物をして家に帰る。
「ただいまぁ」
ネギの飛び出た買い物袋をテーブルに置くと、母は優菜の横でうたた寝していた。二人とも幸せそうな寝顔だ。
『飯いらねえ』
震えたスマートフォンからのメッセージ、夫だ。貴様がすき焼きを食いたいと言ったから材料を用意したのにムカつく……。
とはならない。いなくてラッキー。
「お母さん、すき焼きにするからお父さんも呼んであげなよ」
寝起きの母は嬉しそうに父に電話した。正真正銘の家族。ここに他人はいない。いらない。
二人が食事を終えて帰った後、優菜をあやしていると本当のパパからラインが入る。
「優菜ちゃーん、パパですよー」
何のことか分からずに優菜はキャッキャとはしゃいでいる。
『来週の会社のバーベキューに優香も参加してくれないかな🙇』
どうしたんだろ。そんな疑問が湧いたけど断る理由もないので了承した。それが大きな間違いだとも気がつかずに。
夫を見送った後に洗濯物を干して食器を洗う。掃除機をかけていると優菜が泣いているのでオムツを代えた。
『ピンポーン』
決まった時間に母は来る。それだけ娘に会うのを楽しみにしてくれているのだろう。私としてもすごく助かる。
「お母さんありがとうね、じゃあちょっと行ってくる」
「車に気をつけなさいよ」
「うん」
母は胸に抱いた優菜を見ながら娘を心配する素振りを見せた。意識は孫に集中している。それで良い。
キャップを被りマスクをする。背中には四角いバックを背負い自転車にまたがった。飲食店が多い駅前を目指す。
スマートフォンのアプリを起動させて配達の準備に入るとすぐに依頼の通知が鳴った。一件目はマクドナルドだ。
駅前にあるマックに自転車を止めて用意してある注文品を受け取った。傾かないようバックにしまって再び背負う。
配達開始をタップすると配達先が表示される、約一キロ先のマンション。十分くらいだろう。ペダルを漕ぎ出した。
このバイトのメリットはいつでも好きな時間に始められて、好きな時間にやめられる事。優菜に何かあってもすぐに駆けつける事ができた。もっとも母が見ているので今のところ何のトラブルもないが。
さらに普通のママチャリを漕ぐのは有酸素運動になり、みるみる体型は元に戻っていった。意外な副産物だ。
「ウーバーです、お待たせしました」
「はーい」
インターホン越しに女性の声が聞こえてオートロックが開かれた。ほとんどの人は置き配なので顔を合わせることは無い。
一件運ぶと平均で三百円、一日の目標は十五件だから四千五百円。月金でやれば回数ボーナスをいれて三万円くらいになる。月に十二万円。十分だ。
夕方の四時か五時には大抵目標達成する。それからスーパーで買い物をして家に帰る。
「ただいまぁ」
ネギの飛び出た買い物袋をテーブルに置くと、母は優菜の横でうたた寝していた。二人とも幸せそうな寝顔だ。
『飯いらねえ』
震えたスマートフォンからのメッセージ、夫だ。貴様がすき焼きを食いたいと言ったから材料を用意したのにムカつく……。
とはならない。いなくてラッキー。
「お母さん、すき焼きにするからお父さんも呼んであげなよ」
寝起きの母は嬉しそうに父に電話した。正真正銘の家族。ここに他人はいない。いらない。
二人が食事を終えて帰った後、優菜をあやしていると本当のパパからラインが入る。
「優菜ちゃーん、パパですよー」
何のことか分からずに優菜はキャッキャとはしゃいでいる。
『来週の会社のバーベキューに優香も参加してくれないかな🙇』
どうしたんだろ。そんな疑問が湧いたけど断る理由もないので了承した。それが大きな間違いだとも気がつかずに。
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