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キッチンで朝食の準備をしていると、寝室から夫に呼ばれる。「優香ー! 優香ー!」
はいはい、エプロンで手を拭きながら小走りで駆けつける。
「おい! 紺のスーツどうした?」
お前が脱ぎっぱなしでしわくちゃだからクリーニングに出したんだよ馬鹿。
「クリーニングだけど……」
言い終える前に夫の前蹴りが飛んできた、寝室からリビングまでふっ飛ばされる。
「痛っ」
お腹をさする、内臓破裂はしていない。咄嗟に後ろにジャンプしてダメージを減らした。
「馬鹿かテメーは。今日は大事な商談があるんだよ。決める時はあのスーツって言っただろーがブス!」
神に誓ってもいい。そんな事を言われたことはない。
「ご、ごめんね、シワだらけだったから」
「そもそもテメーはスーツくらいアイロン出来ねえのかよ! クリーニングもタダじゃねえんだぞ!」
以前、スーツとシャツはクリーニングでパリッと仕上げないとダメだ! と発言したことは忘れているだろう。そして、クリーニング代は私が出している。
「ごめんね、今日はこっちのストライプの方で我慢して」
「たっくよー! 上手くいかなかったらテメーのせいだからな」
「うん、ごめん。気をつける」
昨日の殊勝な態度はどこに消えさった? 結局3回も出しやがって。アフターピルは高いんだよクソ。
毎週、月曜日の朝は機嫌が悪い。しかもこの日は昨夜のやり過ぎで眠いのだろう。さらに酷かった。
「あー、気分わりい」
夫が目玉焼きにマヨネーズを掛けようとするが、もう中身がないのか全然出てこない。プスっ、プスっと間抜けな音が静かな食卓に響き渡る。私は笑いを堪えるのに必死だった。
『ガシャーン!!』
キレた夫は右手でテーブルに乗った朝食を全て薙ぎ払った。味噌汁は飛び散り、ご飯茶碗は壁にダイレクトにぶつかり弾けた。
その手で、箸を呆然と握る私の前髪を鷲掴みにすると、思い切り顔面をテーブルに叩きつけた。目の前に火花が散る。
「テメーは、なにニヤニヤしてやがるんだ? 死にてえのか! ああ!」
頭上から聞こえる怒鳴り声。ああ、めんどくさい。早く死ねよコイツ。
「ドン臭え女だな! マヨネーズのストックくらい常備しておけブス」
あるよ、冷蔵庫見ろ。
「ごめんね」
「もう行くわ、お前の顔見てるとイライラすっからよ」
早く逝け。
『バァン』と勢いよく閉められた扉、床に散乱した朝食。パタパタっとテーブルに落ちた鼻血を見ても全然平気。
だって、会社に行けば恒くんに逢えるから――。
はいはい、エプロンで手を拭きながら小走りで駆けつける。
「おい! 紺のスーツどうした?」
お前が脱ぎっぱなしでしわくちゃだからクリーニングに出したんだよ馬鹿。
「クリーニングだけど……」
言い終える前に夫の前蹴りが飛んできた、寝室からリビングまでふっ飛ばされる。
「痛っ」
お腹をさする、内臓破裂はしていない。咄嗟に後ろにジャンプしてダメージを減らした。
「馬鹿かテメーは。今日は大事な商談があるんだよ。決める時はあのスーツって言っただろーがブス!」
神に誓ってもいい。そんな事を言われたことはない。
「ご、ごめんね、シワだらけだったから」
「そもそもテメーはスーツくらいアイロン出来ねえのかよ! クリーニングもタダじゃねえんだぞ!」
以前、スーツとシャツはクリーニングでパリッと仕上げないとダメだ! と発言したことは忘れているだろう。そして、クリーニング代は私が出している。
「ごめんね、今日はこっちのストライプの方で我慢して」
「たっくよー! 上手くいかなかったらテメーのせいだからな」
「うん、ごめん。気をつける」
昨日の殊勝な態度はどこに消えさった? 結局3回も出しやがって。アフターピルは高いんだよクソ。
毎週、月曜日の朝は機嫌が悪い。しかもこの日は昨夜のやり過ぎで眠いのだろう。さらに酷かった。
「あー、気分わりい」
夫が目玉焼きにマヨネーズを掛けようとするが、もう中身がないのか全然出てこない。プスっ、プスっと間抜けな音が静かな食卓に響き渡る。私は笑いを堪えるのに必死だった。
『ガシャーン!!』
キレた夫は右手でテーブルに乗った朝食を全て薙ぎ払った。味噌汁は飛び散り、ご飯茶碗は壁にダイレクトにぶつかり弾けた。
その手で、箸を呆然と握る私の前髪を鷲掴みにすると、思い切り顔面をテーブルに叩きつけた。目の前に火花が散る。
「テメーは、なにニヤニヤしてやがるんだ? 死にてえのか! ああ!」
頭上から聞こえる怒鳴り声。ああ、めんどくさい。早く死ねよコイツ。
「ドン臭え女だな! マヨネーズのストックくらい常備しておけブス」
あるよ、冷蔵庫見ろ。
「ごめんね」
「もう行くわ、お前の顔見てるとイライラすっからよ」
早く逝け。
『バァン』と勢いよく閉められた扉、床に散乱した朝食。パタパタっとテーブルに落ちた鼻血を見ても全然平気。
だって、会社に行けば恒くんに逢えるから――。
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