4 / 56
4
しおりを挟む
他の女と名前を間違われるのは初めてじゃない。『あい』『のりこ』『めぐみ』
私からは指摘しない。さっきみたいにとっさに出た時は本人は気がついてない可能性もある。
ただセックスの最中に間違えた時はさすがにバツが悪かったのか「元カノなんだ、悪い」と謝ってきた。
夕飯はいらない、急に機嫌が良くなった夫、間違えられた名前。少ないヒントから答えを導き出す。
夜はえりこと食事。
たいした推理でもないけど私は確信した。
「すみません、一時間ほど早く早退したいのですが……」
「珍しいね、大丈夫だよ。もしかしてデートかな? おっとこんな事を言ったらセクハラだ」
経理部の責任者は白い歯を見せて笑った。30代後半、独身。女子社員に人気なのもうなずける二枚目だ。
「いえ、ちょっと用が」
曖昧に濁して自席に座るとパソコンで検索する。
『不倫 慰謝料』
一番分かりやすそうなサイトをクリックした。
離婚に至る不倫は三百万円。離婚しなければ百万円。時効は三年。
だめか……。
私はため息をついた。目標まではまだ七年もある。えりことの不倫がそれまで続くとは考えにくい。
まだ不倫かも分からないけど、念のため証拠は押さえておこう。
夕方の五時、いつもより早く会社を出ると急いで家に帰った。押入れの奥にある紙袋、中身は変装セット。
黒髪のカツラ、メガネ。就活で使ってた地味なリクルートスーツに着替えると、まるで入社一年目の新入社員のようだった。
急いで家を飛び出した、夫の会社の定時は七時。ギリギリだ。
ボロボロのビル、傾いた看板。その二階に夫が代表を務める会社がある。社員は二人。
下から見上げまるとまだ電気は付いている、時間は七時五分前。当然か。
私は入り口とは反対側の歩道、木の陰に隠れて様子を伺った。すでに外出しているかもしれない、そんな不安は五分で無くなる。
定時きっかりに夫は現れた、二階の電気はついているから社員はまだいるようだ。
スキップするように最寄駅に向かった。後を追う私。幸いオフィス街なのでまったく不自然じゃない。
電車に少し揺られてついた駅は銀座だった。私を口説く時にもよくこの辺で食事した。
派手な女の割合が増えたような気がしたが、その中でもいっそう目立つ、体のラインを強調したニットワンピを着た女が近づいてきた。夫は破顔して右手を軽く上げた。
凹凸のない平らな私とは真逆なエロい女。夫が不倫しようがまったく構わないがなんかムカついた。すごく。
私からは指摘しない。さっきみたいにとっさに出た時は本人は気がついてない可能性もある。
ただセックスの最中に間違えた時はさすがにバツが悪かったのか「元カノなんだ、悪い」と謝ってきた。
夕飯はいらない、急に機嫌が良くなった夫、間違えられた名前。少ないヒントから答えを導き出す。
夜はえりこと食事。
たいした推理でもないけど私は確信した。
「すみません、一時間ほど早く早退したいのですが……」
「珍しいね、大丈夫だよ。もしかしてデートかな? おっとこんな事を言ったらセクハラだ」
経理部の責任者は白い歯を見せて笑った。30代後半、独身。女子社員に人気なのもうなずける二枚目だ。
「いえ、ちょっと用が」
曖昧に濁して自席に座るとパソコンで検索する。
『不倫 慰謝料』
一番分かりやすそうなサイトをクリックした。
離婚に至る不倫は三百万円。離婚しなければ百万円。時効は三年。
だめか……。
私はため息をついた。目標まではまだ七年もある。えりことの不倫がそれまで続くとは考えにくい。
まだ不倫かも分からないけど、念のため証拠は押さえておこう。
夕方の五時、いつもより早く会社を出ると急いで家に帰った。押入れの奥にある紙袋、中身は変装セット。
黒髪のカツラ、メガネ。就活で使ってた地味なリクルートスーツに着替えると、まるで入社一年目の新入社員のようだった。
急いで家を飛び出した、夫の会社の定時は七時。ギリギリだ。
ボロボロのビル、傾いた看板。その二階に夫が代表を務める会社がある。社員は二人。
下から見上げまるとまだ電気は付いている、時間は七時五分前。当然か。
私は入り口とは反対側の歩道、木の陰に隠れて様子を伺った。すでに外出しているかもしれない、そんな不安は五分で無くなる。
定時きっかりに夫は現れた、二階の電気はついているから社員はまだいるようだ。
スキップするように最寄駅に向かった。後を追う私。幸いオフィス街なのでまったく不自然じゃない。
電車に少し揺られてついた駅は銀座だった。私を口説く時にもよくこの辺で食事した。
派手な女の割合が増えたような気がしたが、その中でもいっそう目立つ、体のラインを強調したニットワンピを着た女が近づいてきた。夫は破顔して右手を軽く上げた。
凹凸のない平らな私とは真逆なエロい女。夫が不倫しようがまったく構わないがなんかムカついた。すごく。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/essay.png?id=5ada788558fa89228aea)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
人生を共にしてほしい、そう言った最愛の人は不倫をしました。
松茸
恋愛
どうか僕と人生を共にしてほしい。
そう言われてのぼせ上った私は、侯爵令息の彼との結婚に踏み切る。
しかし結婚して一年、彼は私を愛さず、別の女性と不倫をした。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる