モラハラ夫との離婚計画 10年

桐谷 碧

文字の大きさ
上 下
3 / 56

しおりを挟む
『ベッドは一つでいいだろ、夫婦は二人で寝るもんだ』

 まさかシングルベッドで二人とは考えが及ばなかった。しかも独身時代に使用していた夫のパイプベッド。

 ど真ん中でいびきをかいて眠る夫を見ても何も感じなくなった。毛布を持ってリビングのソファで丸くなって眠った。

 夫よりも遅く寝て、夫よりも早く起きてお弁当と朝食の準備をする。

 不機嫌そうに寝室から出てきた夫はダイニングテーブルにならんだ朝食、スクランブルエッグにトースト、サラダと珈琲を見て一言。

「味噌汁飲みてえ」

 それだけ言って風呂場に向かった。珍しいことじゃ無いから私は慌てない。

 すぐに冷凍してある鮭をグリルに入れる。お湯を沸かして出汁を素早くとると、賽の目にカットした豆腐と刻んだネギ、生ゴミを絞って出た液体を入れた。ふふふ、隠し味。

 味付けのりにキムチ、冷凍ご飯をチンすればあっという間に和定食。

「おっ! いいね、いいね。朝はやっぱ米だよな」

 濡れた頭を拭きながらどっかりと座る、味噌汁を飲んで「うまいっ!」。とても満足そうだ。

 自分の言いなりになる従順な妻、それが喜びなのだろう。令和にもなって夫の頭の中は昭和で止まっていた。

「そんじゃあ行ってくる、帰りは遅くなるから飯はいいや、いや、分かんないな、連絡するわ」

 なるべく早く連絡しろ、こっちも働いてるんだよ馬鹿。思うだけでもちろん口には出さない。

 夫を見送るとやっと自分の準備に入る、幸い時間は十分に間に合う。

 ダイニングテーブルに置きっぱなしの腕時計を見てため息が出た。戻ってくるだろうか。

『ガチャガチャ!』

 慌ただしく玄関の鍵が開いた。

「えりこー! 時計とってくれー!」

「はーい」

 バタバタと小走りで玄関に向かい時計を手渡した。

「サンキュー!」

 夫は機嫌よく私の頬にキスをすると鼻歌混じりに出て行った。

「誰だよ、えりこ……」

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

人生を共にしてほしい、そう言った最愛の人は不倫をしました。

松茸
恋愛
どうか僕と人生を共にしてほしい。 そう言われてのぼせ上った私は、侯爵令息の彼との結婚に踏み切る。 しかし結婚して一年、彼は私を愛さず、別の女性と不倫をした。

職場のパートのおばさん

Rollman
恋愛
職場のパートのおばさんと…

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

処理中です...