復讐の螺旋 

桐谷 碧

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第二章

第十四話 罠

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「雅美さんの家に行ってみたいな」

 ベッドの上で腕まくらされながら、雅美がまどろんでいると聖斗くんから声を掛けられて現実の世界に戻された。あれから週に二回は彼の家で逢瀬を重ねている。

「えっと、うちはちょっと」
「だめ?」 

 頭をフル回転させて雅美は考えてみたが、そんなに無理難題ではないような気がした、お互いに仕事が休みの平日であれば陽一郎も春華も家にはいない、何より聖斗くんのお願いを聞いてあげたかった。

「大丈夫、いいよ」  

 聖斗くんの方を向いてそう言うと彼は嬉しそうに目を細めた、見つめ合ってキスをする。彼が喜んでくれるなら何でもしてあげたい、こんなに人を愛おしいと思ったのは初めてだった、すでに雅美の中で聖斗くんの存在は家族よりも大きくなっていた。 



 その日、春華を保育園に送ると入念に部屋の掃除をしてお昼ご飯の準備をした、寝室の布団は片してあるが、念のためにシーツは洗濯して干しておいた物を用意しておく。
 陽一郎が帰宅するのが二十時くらいだから十九時までは聖斗くんとの時間がある、もう何度も彼に抱かれているのに逢う前はいつもドキドキした。

『ピンポーン』
 チャイムが鳴ると玄関を開けた、アパートとマンションの中間のような三階建ての『神谷ハイツ』にはオートロックなんて物が存在しない。

「ただいま、なんてね」
 照れた仕草で冗談を言う彼を抱きしめると玄関のドアが開いたままにも関わらず抱きしめてキスをした。こんな所を同じ階の部屋の住人に見られたら大変だ。 

「エレベーターも付いてないから三階まで上がるの大変でしょう」

 冷房の効いたリビングに案内する、二DKの間取りは玄関を入るとすぐにダイニングとキッチンがある、ダイニングと言ってもさほど広さがある訳でもないのでテーブルと椅子を置いたら殆どスペースが残されていない。
 和室と洋室が一室づつあり洋室はソファとテレビを置いてリビング代わりにしている、和室には布団を敷いて親子三人川の字になって眠っていた。

「大丈夫ですよ、普段から鍛えてますから」

 本当なのだろう、裸になった聖斗くんは思った以上に胸板があり腹筋は六つに割れていた。二十九歳で下っ腹がでている陽一郎とは雲泥の差だった。

「これお土産です」

 トートバックから何やら色々なものが出てきた、キャラクターのぬいぐるみに置き時計、スノードームのような物もある。

「今日は高校時代の友達と映画に行くって言ってあるんですよね? ならお土産くらいないとさ」

 少しでも聖斗くんと一緒にいたくて春華のお迎えを近所に住んでいる義両親に頼んでいた、パートが終わった後にどうしても観たい映画があると嘘を付いた。
 孫と一緒に過ごしたい義両親は全く疑うことなく喜んで春華を預かってくれる。 

「ごめんね、そこまで気がつかなかったよ」
「まあ映画を見てお土産買う人の方が少ないかもね」

 確かに、でも今流行っている人気アニメをリメイクして大ヒット中の映画ならグッズも沢山売れているに違いない。

「適当に飾って置きますね」

 聖斗くんはそう言うとテレビの横やソファにぬいぐるみや時計を配置していった、聖斗くんから貰う初めてのプレゼントに胸が高鳴る、どんな高級なアクセサリーを陽一郎に貰うよりも彼から貰ったぬいぐるみが愛おしい。

「お腹すいたでしょう、すぐお昼にするね」
 
 今日は暑いので素麺を茹でた、もちろん聖斗くんに素麺だけを出す訳にいかないので一緒に天麩羅を揚げる。

「めちゃくちゃ美味しい

です」

 サクッと揚がったナスの天麩羅を食べながら聖斗くんが頷いている、料理には自信があったが雅美は胸を撫で下ろした。
 食事が終わるとソファに並んで座った、聖斗くんが借りてきた映画を見ながらポップコーンを食べていると新婚夫婦のようでドキドキした。
「イマイチでしたね」

 映画の感想を求められたが殆ど集中して観ていなかったので内容が分からなかった、正確には画面は観ているのだが、ずっと聖斗くんの事を考えていたので内容が入ってこないのだ。

「う、うん、そうだね」 
「うそつき、全然集中して観てなかったくせに」
「え、そんな事ないよ、ちゃんと観てたよ」
 すると聖斗くんはいきなりスカートの中に手を入れて湿ったアソコを指で確認した。
「じゃあどうしてこんなに濡れてるんですか?」
 指を巧みに動かしながら質問してくる、それだけで雅美はすぐにイった、彼に逢うだけで濡れてしまうパブロフの犬と化している。

「ごめん、な、さい」

 雅美は我慢できずに聖斗くんのズボンのベルトを外して陰部を咥えた、あっという間に勃起した物を挿入しようと彼にまたがる。 

「ダメですよ」
「え?」
「ここは娘さんと旦那さんのお家でしょ」

 そう言いながらも聖斗くんはずっと雅美の陰部を指でいじっている。

「んっやだ、挿れたいよ聖斗くん」

 指の動きが早くなり再びイキそうになる寸前で手が止まった。

「聖斗くん、お願いやめないで」
「二人よりも僕の方が大切ですか?」
 うんうん、雅美は頷く。
「じゃあ良いですよ」
 ご主人様の許しがでて雅美は聖斗にまたがり自分で挿入すると激しく腰を動かした、すぐにイキそうになるが寸前で止められる。

「聖斗くんー、いじわるー」   

 甘えた声を出す雅美を立たせて後ろから挿入してくると激しく腰を動かしてくる、再びイキそうな所で動きを止める。

「雅美さん、イキたいですか?」
「おねがい、聖斗くん、イカせてください」
 再び腰を振るスピードが上がる、気持ちが良すぎておかしくなりそうだった。
「ん――――――――――――――」
「旦那さんと別れて僕と一緒になってくれるよね?」
 うんうんと雅美は頷く。
「じゃあ二人はもういらないって言って雅美さん」
 そう言いながら後ろから聖斗くんが激しく突いてくる、スピードが上がる。もう限界だった。


「いらない、陽一郎も春華もいらない、聖斗くんダメ――――!」

「雅美さん俺もイクよ、中で出して良い?」

「出して、お願い聖斗くん中にだしてー――――――!」
 
 

 ソファでぐったりとしていると聖斗くんはズボンを履いてシャツを羽織った。


「ごめんね雅美さん、今日はもう帰らなきゃ」
 そう言うと足早に玄関を出て去っていった。


 そして、もう二度と彼に逢うことはなかった――。
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