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第五話 勝利
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「では、本日の大勝利にかんぱーい」
幸四郎の掛け声に合わせて莉菜は三人とグラスを合わせた、佐藤の優勝を見届けた後、当たった舟券をどうしたら良いか分からずにウロウロしていると、マークシートの書き方を丁寧に教えてくれた幸四郎が声を掛けてきて払い戻しの方法を教えてくれた。
「今日の勝利は莉菜ちゃんのおかげですよ」
幸四郎はそう言いながら深々と頭を下げた。
「えー、私は何も、むしろありがとうございます」
幸四郎がいなければ買い方も分からなかったのだ、払い戻しが終わった後に「この後、一緒に飲みに行きませんか?」と声を掛けられた、三人は佐藤の同級生でこの後、彼も合流するのだと言う。今日逢えるとは思っていなかった莉菜は喜んでオッケーした。
前回鉄板焼を食べに行ってから一度も誘われる事はなかった、今まで莉菜を口説いてくる男は毎日のように連絡をよこしてはデートの誘いをしてきたので、素っ気ない態度が逆に気になった。
「寿木也とはどこで知り合ったの、こんな可愛い子と仲が良いなんて聞いてないよなあ」
向かいに座る慎二が言うと二人はウンウンと頷いている、嘘を付いても仕方ないので正直にキャバクラで知り合った事を告げた。
「えっ、エイジアの子なの、俺たちもたまに行くよ」
エイジアとは莉菜が働く店の名前だ、どこかで会ったようない気がしたと思ったが客だったとは迂闊だった、しかし自分が付いたわけでもない客を全員覚えているのは不可能だろう。
「でも今日はなんでまた一人で」
なぜだろうか自分でも不思議な感情だった、ただ仕事を休んでまで応援に来たと悟られたくはない。
「えっと、一度やってみたくて……」
「ふーん、寿木也に会いに来たわけだ」
誠が言うと耳まで真っ赤になるのが鏡を見なくても分かったが、辛うじて首を横に振って否定した。
「良いなあ、こんな可愛い子に応援されて、俺も今からボートレーサー目指すかぁ」
唐揚げを次々に食べながらビールで流し込んでいる幸四郎は背は高くないが体格がよく、ラクビー選手のような体型をしていた。
「お前の体重じゃ艇が沈むよ」
逆に背が高くてほっそりとした体型の誠は、整った顔をしていてモデルのような出で立ちだ、もう一人の慎二は寿木也と同じ様なバランスの良い体型だった。
「こんにちはー、生一つお願いしまーす」
ガチャンという扉が開く音と共に知っている声が聞こえてきた、莉菜は意味もなく姿勢を正した。
「えっ、あれっ、莉菜ちゃん」
初めて見るスーツにネクタイ姿の彼を見てドキドキしてしまった、先日はラフな若者らしい格好だった。
「こんにちは」
心の中を悟られないように目も合わさずに挨拶する、前回会った時にはこんなに緊張しなかったのにどうしてだろうか。
「なんでなんで、なんで莉菜ちゃんがお前らといるんだよ」
ネクタイを緩めながら慎二を押しのけて莉菜の前に腰掛けた、その仕草がセクシーで莉菜は胸がキュンとした。
「競艇場で彷徨ってたから攫ってきたんだよ、それよりお前に聞きたい事がある」
幸四郎が少し声のボリュームを落として質問した。
「優勝戦の三号艇に乗るように予選で調整しただろ」
「えっ、うそ、なんで分かった」
「大会前に莉菜ちゃんに捲り差しで優勝するってラインしてたらしいじゃねーかよ、まだ優勝戦に出れるかも、何号艇になるかも分からないのに、一号艇からじゃ捲り差しできないだろーが」
佐藤は照れたように頭を掻きながら生ビールを一気に全部飲み干すと、すぐにおかわりを頼んだ。
「いやー、途中までトップ通過しそうだったからさ、予選の最終レースでわざと五着になったんだよね、だとしても準決勝で前の二人が勝たないと三号艇取れなかったから運も良かったよ」
専門用語が並びあまり話の内容が分からなかったが、要約すると莉菜との約束を守る為に佐藤が無理をしくれたらしい、思わず顔がニヤけた。
「普通に優勝するで良かったじゃねーかよ、なんで捲り差しなんだよ」
「かっこいいから」
「えっ」
「捲り差しの方が格好良いじゃん!」
「あ、ああ。そうだな」
彼が子供の様に言い放つと誰も佐藤に突っ込む人はいない、少年みたいな言動が莉菜にはとても心地よかった。
幸四郎の掛け声に合わせて莉菜は三人とグラスを合わせた、佐藤の優勝を見届けた後、当たった舟券をどうしたら良いか分からずにウロウロしていると、マークシートの書き方を丁寧に教えてくれた幸四郎が声を掛けてきて払い戻しの方法を教えてくれた。
「今日の勝利は莉菜ちゃんのおかげですよ」
幸四郎はそう言いながら深々と頭を下げた。
「えー、私は何も、むしろありがとうございます」
幸四郎がいなければ買い方も分からなかったのだ、払い戻しが終わった後に「この後、一緒に飲みに行きませんか?」と声を掛けられた、三人は佐藤の同級生でこの後、彼も合流するのだと言う。今日逢えるとは思っていなかった莉菜は喜んでオッケーした。
前回鉄板焼を食べに行ってから一度も誘われる事はなかった、今まで莉菜を口説いてくる男は毎日のように連絡をよこしてはデートの誘いをしてきたので、素っ気ない態度が逆に気になった。
「寿木也とはどこで知り合ったの、こんな可愛い子と仲が良いなんて聞いてないよなあ」
向かいに座る慎二が言うと二人はウンウンと頷いている、嘘を付いても仕方ないので正直にキャバクラで知り合った事を告げた。
「えっ、エイジアの子なの、俺たちもたまに行くよ」
エイジアとは莉菜が働く店の名前だ、どこかで会ったようない気がしたと思ったが客だったとは迂闊だった、しかし自分が付いたわけでもない客を全員覚えているのは不可能だろう。
「でも今日はなんでまた一人で」
なぜだろうか自分でも不思議な感情だった、ただ仕事を休んでまで応援に来たと悟られたくはない。
「えっと、一度やってみたくて……」
「ふーん、寿木也に会いに来たわけだ」
誠が言うと耳まで真っ赤になるのが鏡を見なくても分かったが、辛うじて首を横に振って否定した。
「良いなあ、こんな可愛い子に応援されて、俺も今からボートレーサー目指すかぁ」
唐揚げを次々に食べながらビールで流し込んでいる幸四郎は背は高くないが体格がよく、ラクビー選手のような体型をしていた。
「お前の体重じゃ艇が沈むよ」
逆に背が高くてほっそりとした体型の誠は、整った顔をしていてモデルのような出で立ちだ、もう一人の慎二は寿木也と同じ様なバランスの良い体型だった。
「こんにちはー、生一つお願いしまーす」
ガチャンという扉が開く音と共に知っている声が聞こえてきた、莉菜は意味もなく姿勢を正した。
「えっ、あれっ、莉菜ちゃん」
初めて見るスーツにネクタイ姿の彼を見てドキドキしてしまった、先日はラフな若者らしい格好だった。
「こんにちは」
心の中を悟られないように目も合わさずに挨拶する、前回会った時にはこんなに緊張しなかったのにどうしてだろうか。
「なんでなんで、なんで莉菜ちゃんがお前らといるんだよ」
ネクタイを緩めながら慎二を押しのけて莉菜の前に腰掛けた、その仕草がセクシーで莉菜は胸がキュンとした。
「競艇場で彷徨ってたから攫ってきたんだよ、それよりお前に聞きたい事がある」
幸四郎が少し声のボリュームを落として質問した。
「優勝戦の三号艇に乗るように予選で調整しただろ」
「えっ、うそ、なんで分かった」
「大会前に莉菜ちゃんに捲り差しで優勝するってラインしてたらしいじゃねーかよ、まだ優勝戦に出れるかも、何号艇になるかも分からないのに、一号艇からじゃ捲り差しできないだろーが」
佐藤は照れたように頭を掻きながら生ビールを一気に全部飲み干すと、すぐにおかわりを頼んだ。
「いやー、途中までトップ通過しそうだったからさ、予選の最終レースでわざと五着になったんだよね、だとしても準決勝で前の二人が勝たないと三号艇取れなかったから運も良かったよ」
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「普通に優勝するで良かったじゃねーかよ、なんで捲り差しなんだよ」
「かっこいいから」
「えっ」
「捲り差しの方が格好良いじゃん!」
「あ、ああ。そうだな」
彼が子供の様に言い放つと誰も佐藤に突っ込む人はいない、少年みたいな言動が莉菜にはとても心地よかった。
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