22 / 29
Saito>>>>Sei Side 5
①「二年になって、動画配信サイトの取材を受ける」
しおりを挟む
[彩人➤➤➤成 Side 5]
「はーい、今日はココ、県内有数の進学校でありスポーツ強豪校でもある私立創礎学園高等部の、フェンシング部にお邪魔していまーす!」
高いテンションでその女性アナウンサーは身を翻し、体育館の隅でカメラを前にユニフォーム姿でスタンバイしていた二人の部員にマイクを向けた。
今年から地元新聞社が動画配信サイトで始めた『輝く青春☆応援チャンネル』は、様々な分野で活躍する県内の高校生にスポットライトを中て、応援と注目を集めるのを狙いにしているという。
以前から創礎高校フェンシング部を贔屓にして追いかけてくれている例のスポーツ部記者が社内会議で勧めでもしてくれたのか、チャンネルが始まって早々の今日四月頭に、マイナースポーツながら創礎学園フェンシング部に取材の為の小さな撮影クルーがやって来たのだった。
「まずは! 現キャプテンで昨年のインターハイ団体戦3位!そしてつい先日行われた春の選抜大会では5位入賞のメンバー、三年生の相馬奏也選手です! こんにちはぁー、今日はよろしくお願いしまぁーす」
「こんにちは、こちらこそよろしくお願いします」
「そしてこちらが二年生の副キャプテン、三渓徹平選手でぇす。三渓くんは団体戦に加えて、インターハイではフルーレでベスト16入り、選抜大会でも全国大会に出場しましたよね~」
「え!? あっ、ハイッ! まだそれほど良い結果は出せていませんが、貴重な体験をさせてもらっています!!」
「十分素晴らしい結果だと思いますよお♡ 三渓くんはとっても責任感があってチーム思いだと聞きました。二年生で副キャプテンということは、来年は相馬くんからバトンを引き継いで、キャプテンを任されるのでしょうネっ!」
「キャプテ……ええっ!? そ、それは分かりませ……ええっ!?」
「何でそんなに驚いているのかな、もちろん俺も監督もそのつもりでお前を下に付けてるんだよ」
「えっ!? そん……ええええっ!?」
落ち着き払ってインタビューに答える奏也先輩の横で、ガチガチに緊張した徹平が可哀想なくらい狼狽えて叫んでいる。
その光景を、俺と成は笑いを堪えながら、体育館の対岸から見守っている。
「やばい、徹平がそろそろ過呼吸になりそう」
「中学時代から変わらず、三渓君は試合以外の平場で前に出るのは苦手そうだね」
「俺もああならないように気をつけよーっと」
「彩人は大丈夫だよ。場慣れ度が違うでしょ」
奏也先輩と徹平への取材が終わり、女性アナウンサーとカメラマンは次に練習場の中央付近で新一年生たち相手に攻撃戦法の指導をしている紘都のもとに近づく。
「はーい、こんにちはー! こちらはインターハイ・個人サーブル種目でベスト8、選抜大会でも5位に入賞を果たした、二年生の森嶋紘都選手です! 練習中にお邪魔してすみません~!」
「ああ……ハイ」
紘都の周囲から後輩が散り、彼がマスクを外した瞬間、アナウンサーは両手を合わせて嬌声を上げた。
「みなさん、見ましたか、今の! ワタクシ、年甲斐もなくときめてしまいました! 実は創礎高校フェンシング部にものすごいイケメン選手がいると小耳に挟んで来たのですがっ! 森嶋選手のことでしたねぇ~。どうですか、学校の女生徒なんかからモテモテなんじゃないでしょうかっ?」
「…………。部活に集中したいんで、そういうのはちょっと……」
「この取材配信を見た方々で森嶋くんに会いたい人は、ぜひ試合の応援に行きましょう! 真剣に、もしファンになっちゃった子から告白されたら、どうしますぅ~?」
「いや、迷惑です……」
キャッキャとはしゃぐアナウンサーを後目に、露骨に紘都の顔に苛立ちが漂い、低い小声で「聞いてた質問と違いますよね? もう練習に戻っていいですか?」と訴える。アナウンサーが「え~っ、これからですよぉ~っ」と取り繕い、その光景に慌てて徹平が「紘都、ちゃんとインタビューに答えろよお!」と間に入る。
本気で迷惑そうな表情の紘都と焦る徹平の掛け合いに、俺と成はますます腹を押さえて笑いを堪える。その隣に、練習の小休止に入った紅太がやって来た。
「なあ、“創礎フェン部にものすごいイケメン選手が”って情報、紘都で確定っておかしくね? オレかも知れねーじゃん、なあ?」
いつもの冗談口調に、俺と成は安心して返事する。
「いや、マスク脱いで『キャア』はそうそう見られねーよ。完敗だよ」
「あ、でも志賀君もラッサンブレ・サリューエの時なんかすごく格好いいよ、背高いし」
ラッサンブレ・サリューエ.は試合の時、対戦が始まる直前に競技者同士がピスト上で剣を振って挨拶を交わす動作のことである。
「……ってオイ! それマスクを被ってる時ってことじゃないかよ!」
紅太が笑いながら成の肩を小突く。成も笑いながら「うそうそ、普段も格好いいよ」と返して二人はじゃれ合う。
紅太の頭頂部は、直近4月の身体測定で184cmになっていた成より更に高い位置にある。170cmそこそこの紘都やまだ180cmに届かない俺とは違う、180台後半の恵まれた長身。黙っていれば十分モテる要素をもっていると思うのに、紅太はいつも軽口と冗談で率先して道化に徹して場を和ませる。中学時代から、男ばかり、負けられないライバルばかりでともすればギスギスしそうだった創礎フェン部を、コイツが持ち前の明るさで打ち解けさせてきてくれた。
紅太もすごくイイヤツ。……でも、ちょっと成にくっつきすぎだと思う。
目の前で肩を組んで小突き合う男二人に恨めしい視線を向ける。
「では、次はお待ちかね! 創礎高校躍進の立役者! 当新聞スポーツ面でもお馴染みのビッグエース、堂谷選手に登場していただきましょうー!」
「あ、俺の番だ」
遠くから女性アナウンサーが俺を手招きし、カメラの前へどうぞと促している。
「彩人、ちょっと待って」
踵を返そうとした俺を、成が呼び止めてくる。紅太を脇に押しやって、成は俺の前に立つ。
「彩人、落ち着いて、ね? 普段よりちょっとだけ余所行きに、自信をもって、でも謙虚に」
「うん、分かってる。お前の言う通りにやる」
成が優しく微笑んで、手早く俺の髪やユニフォームの乱れを正す。招かれた位置に向かう俺と入れ替わりに、休憩の号令のかかった同期部員が成と紅太の周りに集まる。伊緒と純が、
「何、『お前の言う通りに』って?」
「てか、何でフェン部の取材日に当然みたいに佐久間がいるんだよ」
と不思議そうに成に話し掛けているのが背中越しに聞こえた。
俺はカメラの前に立つ。アナウンサーが落ち着いた口調で先にカメラに向かって「堂谷彩人選手は一年生だった去年から全ての団体戦にレギュラー選手として出場し、昨年の国体では県代表として少年の部団体フルーレをベスト8に牽引しました。同時に、個人戦ではインターハイ・フルーレで2位、エペで3位。何より先の選抜大会ではフルーレにて全国優勝を果たしています」と説明する。その後に、「いかがですか、全国制覇を果たしたお気持ちは」とこちらにマイクが向けられる。
俺は息を吸ってユニフォーム姿の背中を伸ばし、試合の前みたいに胸の深いところに一つ気合を入れて、脚本のように丸暗記してきた科白を口にする。ト書きはこう。淀まず歯切れよく早口にならず、堂々と真っすぐにカメラを見据えて、口元には優雅な微笑みを湛えて。
「実力以上の力が発揮できたと驚いています。でもそれは、家族や学校関係者や地元の方々はじめ、支えてくれる多くの大切な方々の応援のお陰だと思います。これからも更なる高みを目指して、監督や諸先輩方のご指導の下、努力を続けていきたいと思っています」
言い終わって、一礼をする。それから、「これでよかったですか?」と小さな笑みをつくってアナウンサーに確認のアイコンタクトを送る。
レンズを覗いたカメラマンの口が感心したように「おーっ」と丸められる。アナウンサーが「素晴らしいっ」と眉を下げて拍手する。離れたところで腕組みして見守る監督が満足そうに頷いている。先輩達があれは本当に堂谷かと疑いの目で身を乗り出す。後輩達の眼差しが、尊敬と羨望を混ぜたものになっていく気がする。
その傍らで、成がこちらに向かってグッと親指を立てる。
「……おい、あれお前が考えたんだろ。インタビュー内容は事前に知らされていたもんな」
とでも言っているのか、紘都が冷めた目で成の耳元に何か囁いている。そうだ、今言ったのもこれから喋ることも立ち居振る舞いも表情筋の動かし方1mmに至るまでも全部、世間ウケを考慮した成が俺に仕込んだヤラセだ。
ヤツの狙い通りなのか、俺の前ですっかり絆された表情になったアナウンサーはさっきまでより柔らかく親しみの増した口調になって質問を続ける。こうなったら恥も外聞も掻き捨てて、とことんまで成の望み通り演じ切ってやる、と、俺も腹を括る。
「早々に高校フェンシング界を制した堂谷くんですが、ズバリ、今後の目標を伺ってもよろしいですか?」
「まずは次の大会でも良い結果を残せたらと思っています。それから、団体戦での優勝もかねてからの目標なんです」
「なんと! フルーレ、エペ、団体と3種目制覇の宣言ですね!」
「そんなに易しいものではないと分かっていますが……今期の創礎は全員が実力者だし、何よりチームワークが最高なので、みんなで一つになって頂点をとりたいというのが自分の一番の望みなんです。あっ、あとこれは大分先の夢ですが……」
「なんでしょう?」
「いつかオリンピックの舞台に立ちたいです!」
「堂谷くんなら絶対に立てますよぉーっ♡ それまで当新聞社が全力をあげて応援しますからねーっ!♡」
「あははっ、ありがとうございます!」
俺史上最高に爽やかに笑って返したのを、もう、同期のみんなが頭と腹を抱えて蹲って聞いている。その真ん中で自信満々に仁王立ちした成だけが、両手で親指を立てていた。
* * * * *
部員インタビューが終わり、撮影クルーが監督に取材をしている間、俺はみんなに遅れて休憩をとらせてもらって成を無人の部室に引きずり込んだ。
「なあ! あれで良かったのか!? 3種目制覇とか団体優勝とか、世間様に調子に乗ってるって思われないよな!? それにオリンピックとか……」
「大丈夫、大丈夫。常勝の天才がものすごく謙虚で他者思いで、でも無邪気な中に隠しきれない情熱と強かな野望を潜めている感じがよく表れていて、控えめに言って、最高だったよ」
「ほんとかよ……」
項垂れる俺を成が腕の中に抱き寄せて、「お疲れ様」と労ってくれる。あれがどんな風に編集されて配信されるのか分からないが、本音ではお蔵入りになって欲しいけど、演出した張本人の成が大丈夫と太鼓判を押すのだから、信じて成り行きに任すしかない。
「知ってる? 応援チャンネルの登録者って多いんだよ。ああ、あんなに格好良くて自信に溢れた高校生チャンピオンの姿が視聴者たちの胸をたちどころに射止めて、ここにもファンが押し寄せて俺が彩人に近づけなくなったらどうしよう?」
「マイナー競技のフェンシング選手がそんなことになるわけないじゃん……」
「なるわけないって、俺がならすんだから安心して? とりあえず配信までにチャンネルの登録者数を2割増までもっていって、各所でもおススメしまくっておくから」
「そのアテがあるならもう俺じゃなくお前がそのスキルで有名になるべきだろ……」
「彩人が出るから増える余地があるに決まってるだろ!? あのアナウンサーも最初は森嶋くんが物凄いイケメンとかときめいたとか……彩人だろ訂正してよって割って入るところだったけど、最後は彩人の魅力にちゃんと理解が追い付いたみたいだから許したよね。やっぱり分かるんだね、たくさんの人に取材していると凡夫と彩人との違いが」
「ああーっ、もう分かったから黙って!」
耐えきれなくて悶える俺に、成が「心配性だなあ、彩人は」と的外れな感想を言って頬擦りする。心配性とかではなく、ひたすら自分の行く末とコイツとの温度差への危惧なのだが? と思うが、そんなことはお構いなしに成は俺の背を抱く両手に力を篭める。
「大丈夫だよ。どんなに有名になって、近づけないくらいファンが増えたって、俺は彩人とずっと一緒にいるから」
微笑みまじりに言われることばが確信に満ちていて、俺は胡散臭さとこそばゆさと、でもその奥から込み上げてくる昔っからのコイツ独特の全肯定に対する嬉しさに葛藤させられ、やっぱり、後者の感情に押し流される。
「あああ成、それ以上言うのもくっつくのもやめろ」
「……なんで?」
「……………………勃つから」
小声の自己申告に全然慌ててない声で「それは困ったね」と言いながら、成が離れるどころか顔を近づけてくる。
「オイ、だめだって……ッ!」
抗議の声は唇を塞がれて敢えなく消える。僅かな隙間を逃さずに成が舌を挿し込んでくる。俺の舌先を舐めとり、くっついて立つ俺の両足の間に自分の右足を割り入れて、太ももで俺の下半身をぐりぐりと擦る。ソコと、抱かれた背中の手の平のあたりにじわりと痺れた快感が湧いて、ここは部室だという俺の理性をなし崩しに奪っていく。口の中に這う舌のクチュクチュという湿った音のいやらしさも相乗して、俺もしだいに、成の動きに応えてしまう。
と突然、部室の閉じた扉の方からバンッと大きな音がした。
俺と成はぎょっと顔を上げる。扉は閉じたままだ。たぶん、部室の外から誰かが拳を扉に叩きつけた音。
「――おいお前ら、いつまで休憩してる? 彩人、集合がかかってる、早く出て来い」
「さ、彩人~? 佐久間~? 取材クルーが帰るから挨拶するよ~?」
外から鬼みたいな紘都と遠慮がちな徹平の声がして、俺はここが部室で取材途中だったことを急激に思い出し、慌てて互いを離しあった。それから、いきなり扉を開けられなかったことに二人で安堵の息を漏らし、目くばせのあと、苦笑し合った。たぶん、紘都にはバレているのだろうけど、だから徹平が扉を開けるより先に俺たちに合図を送り、声を掛けてくれたのだろう。
「ごめんごめん、取材の反省会をしてた。彩人もすぐ来るから」
先に部室を出た成が紘都と徹平にそう釈明してくれている。俺も深呼吸と意識のスイッチングで無理矢理に自分を鎮め、僅かに遅れて部室を飛び出した。体育館の入り口付近にはすでに部員達と監督が並び、紅太や伊緒、純が「早くしろ」と手招きしている列に、俺も何事もなかった顔で合流したのだった。
この日の取材は、徹平のテンパり具合とか紘都の暴言とかはきれいにカットされ、練習風景や部員のオフショットを加えて、プロ達の手によって良い感じの字幕と効果音とBGMで完璧なまでに“名門伝統校でフェンシングに青春を賭ける熱きスポーツ男子生徒たちの記録”に演出され編集されて、『輝く青春☆応援チャンネル』で配信された。
この多方向から何重にも捏造された青春動画は県内外の視聴者の様々なニーズに刺さり、多くの創礎学園フェンシング部のファンを生み、彼らの躍進に役立ててくれと例年を遥かに凌ぐ寄付金を集めたという。
そして俺のインタビューもコメント欄で叩かれることなく、むしろ「連覇を応援したい!」「我が県の希望の星!」「若いのにしっかりしてて、でも普段はヤンチャそうなところがちょっと可愛い♡」などと擁護されて、成の狙い通り各層に新たなファンを得ることに繋がったのであった。
めでたしめでたし。
……と、なるはずだったのだが。
事態は俺どころか成も予想していなかった方向へと、転がることになるのだった。
「はーい、今日はココ、県内有数の進学校でありスポーツ強豪校でもある私立創礎学園高等部の、フェンシング部にお邪魔していまーす!」
高いテンションでその女性アナウンサーは身を翻し、体育館の隅でカメラを前にユニフォーム姿でスタンバイしていた二人の部員にマイクを向けた。
今年から地元新聞社が動画配信サイトで始めた『輝く青春☆応援チャンネル』は、様々な分野で活躍する県内の高校生にスポットライトを中て、応援と注目を集めるのを狙いにしているという。
以前から創礎高校フェンシング部を贔屓にして追いかけてくれている例のスポーツ部記者が社内会議で勧めでもしてくれたのか、チャンネルが始まって早々の今日四月頭に、マイナースポーツながら創礎学園フェンシング部に取材の為の小さな撮影クルーがやって来たのだった。
「まずは! 現キャプテンで昨年のインターハイ団体戦3位!そしてつい先日行われた春の選抜大会では5位入賞のメンバー、三年生の相馬奏也選手です! こんにちはぁー、今日はよろしくお願いしまぁーす」
「こんにちは、こちらこそよろしくお願いします」
「そしてこちらが二年生の副キャプテン、三渓徹平選手でぇす。三渓くんは団体戦に加えて、インターハイではフルーレでベスト16入り、選抜大会でも全国大会に出場しましたよね~」
「え!? あっ、ハイッ! まだそれほど良い結果は出せていませんが、貴重な体験をさせてもらっています!!」
「十分素晴らしい結果だと思いますよお♡ 三渓くんはとっても責任感があってチーム思いだと聞きました。二年生で副キャプテンということは、来年は相馬くんからバトンを引き継いで、キャプテンを任されるのでしょうネっ!」
「キャプテ……ええっ!? そ、それは分かりませ……ええっ!?」
「何でそんなに驚いているのかな、もちろん俺も監督もそのつもりでお前を下に付けてるんだよ」
「えっ!? そん……ええええっ!?」
落ち着き払ってインタビューに答える奏也先輩の横で、ガチガチに緊張した徹平が可哀想なくらい狼狽えて叫んでいる。
その光景を、俺と成は笑いを堪えながら、体育館の対岸から見守っている。
「やばい、徹平がそろそろ過呼吸になりそう」
「中学時代から変わらず、三渓君は試合以外の平場で前に出るのは苦手そうだね」
「俺もああならないように気をつけよーっと」
「彩人は大丈夫だよ。場慣れ度が違うでしょ」
奏也先輩と徹平への取材が終わり、女性アナウンサーとカメラマンは次に練習場の中央付近で新一年生たち相手に攻撃戦法の指導をしている紘都のもとに近づく。
「はーい、こんにちはー! こちらはインターハイ・個人サーブル種目でベスト8、選抜大会でも5位に入賞を果たした、二年生の森嶋紘都選手です! 練習中にお邪魔してすみません~!」
「ああ……ハイ」
紘都の周囲から後輩が散り、彼がマスクを外した瞬間、アナウンサーは両手を合わせて嬌声を上げた。
「みなさん、見ましたか、今の! ワタクシ、年甲斐もなくときめてしまいました! 実は創礎高校フェンシング部にものすごいイケメン選手がいると小耳に挟んで来たのですがっ! 森嶋選手のことでしたねぇ~。どうですか、学校の女生徒なんかからモテモテなんじゃないでしょうかっ?」
「…………。部活に集中したいんで、そういうのはちょっと……」
「この取材配信を見た方々で森嶋くんに会いたい人は、ぜひ試合の応援に行きましょう! 真剣に、もしファンになっちゃった子から告白されたら、どうしますぅ~?」
「いや、迷惑です……」
キャッキャとはしゃぐアナウンサーを後目に、露骨に紘都の顔に苛立ちが漂い、低い小声で「聞いてた質問と違いますよね? もう練習に戻っていいですか?」と訴える。アナウンサーが「え~っ、これからですよぉ~っ」と取り繕い、その光景に慌てて徹平が「紘都、ちゃんとインタビューに答えろよお!」と間に入る。
本気で迷惑そうな表情の紘都と焦る徹平の掛け合いに、俺と成はますます腹を押さえて笑いを堪える。その隣に、練習の小休止に入った紅太がやって来た。
「なあ、“創礎フェン部にものすごいイケメン選手が”って情報、紘都で確定っておかしくね? オレかも知れねーじゃん、なあ?」
いつもの冗談口調に、俺と成は安心して返事する。
「いや、マスク脱いで『キャア』はそうそう見られねーよ。完敗だよ」
「あ、でも志賀君もラッサンブレ・サリューエの時なんかすごく格好いいよ、背高いし」
ラッサンブレ・サリューエ.は試合の時、対戦が始まる直前に競技者同士がピスト上で剣を振って挨拶を交わす動作のことである。
「……ってオイ! それマスクを被ってる時ってことじゃないかよ!」
紅太が笑いながら成の肩を小突く。成も笑いながら「うそうそ、普段も格好いいよ」と返して二人はじゃれ合う。
紅太の頭頂部は、直近4月の身体測定で184cmになっていた成より更に高い位置にある。170cmそこそこの紘都やまだ180cmに届かない俺とは違う、180台後半の恵まれた長身。黙っていれば十分モテる要素をもっていると思うのに、紅太はいつも軽口と冗談で率先して道化に徹して場を和ませる。中学時代から、男ばかり、負けられないライバルばかりでともすればギスギスしそうだった創礎フェン部を、コイツが持ち前の明るさで打ち解けさせてきてくれた。
紅太もすごくイイヤツ。……でも、ちょっと成にくっつきすぎだと思う。
目の前で肩を組んで小突き合う男二人に恨めしい視線を向ける。
「では、次はお待ちかね! 創礎高校躍進の立役者! 当新聞スポーツ面でもお馴染みのビッグエース、堂谷選手に登場していただきましょうー!」
「あ、俺の番だ」
遠くから女性アナウンサーが俺を手招きし、カメラの前へどうぞと促している。
「彩人、ちょっと待って」
踵を返そうとした俺を、成が呼び止めてくる。紅太を脇に押しやって、成は俺の前に立つ。
「彩人、落ち着いて、ね? 普段よりちょっとだけ余所行きに、自信をもって、でも謙虚に」
「うん、分かってる。お前の言う通りにやる」
成が優しく微笑んで、手早く俺の髪やユニフォームの乱れを正す。招かれた位置に向かう俺と入れ替わりに、休憩の号令のかかった同期部員が成と紅太の周りに集まる。伊緒と純が、
「何、『お前の言う通りに』って?」
「てか、何でフェン部の取材日に当然みたいに佐久間がいるんだよ」
と不思議そうに成に話し掛けているのが背中越しに聞こえた。
俺はカメラの前に立つ。アナウンサーが落ち着いた口調で先にカメラに向かって「堂谷彩人選手は一年生だった去年から全ての団体戦にレギュラー選手として出場し、昨年の国体では県代表として少年の部団体フルーレをベスト8に牽引しました。同時に、個人戦ではインターハイ・フルーレで2位、エペで3位。何より先の選抜大会ではフルーレにて全国優勝を果たしています」と説明する。その後に、「いかがですか、全国制覇を果たしたお気持ちは」とこちらにマイクが向けられる。
俺は息を吸ってユニフォーム姿の背中を伸ばし、試合の前みたいに胸の深いところに一つ気合を入れて、脚本のように丸暗記してきた科白を口にする。ト書きはこう。淀まず歯切れよく早口にならず、堂々と真っすぐにカメラを見据えて、口元には優雅な微笑みを湛えて。
「実力以上の力が発揮できたと驚いています。でもそれは、家族や学校関係者や地元の方々はじめ、支えてくれる多くの大切な方々の応援のお陰だと思います。これからも更なる高みを目指して、監督や諸先輩方のご指導の下、努力を続けていきたいと思っています」
言い終わって、一礼をする。それから、「これでよかったですか?」と小さな笑みをつくってアナウンサーに確認のアイコンタクトを送る。
レンズを覗いたカメラマンの口が感心したように「おーっ」と丸められる。アナウンサーが「素晴らしいっ」と眉を下げて拍手する。離れたところで腕組みして見守る監督が満足そうに頷いている。先輩達があれは本当に堂谷かと疑いの目で身を乗り出す。後輩達の眼差しが、尊敬と羨望を混ぜたものになっていく気がする。
その傍らで、成がこちらに向かってグッと親指を立てる。
「……おい、あれお前が考えたんだろ。インタビュー内容は事前に知らされていたもんな」
とでも言っているのか、紘都が冷めた目で成の耳元に何か囁いている。そうだ、今言ったのもこれから喋ることも立ち居振る舞いも表情筋の動かし方1mmに至るまでも全部、世間ウケを考慮した成が俺に仕込んだヤラセだ。
ヤツの狙い通りなのか、俺の前ですっかり絆された表情になったアナウンサーはさっきまでより柔らかく親しみの増した口調になって質問を続ける。こうなったら恥も外聞も掻き捨てて、とことんまで成の望み通り演じ切ってやる、と、俺も腹を括る。
「早々に高校フェンシング界を制した堂谷くんですが、ズバリ、今後の目標を伺ってもよろしいですか?」
「まずは次の大会でも良い結果を残せたらと思っています。それから、団体戦での優勝もかねてからの目標なんです」
「なんと! フルーレ、エペ、団体と3種目制覇の宣言ですね!」
「そんなに易しいものではないと分かっていますが……今期の創礎は全員が実力者だし、何よりチームワークが最高なので、みんなで一つになって頂点をとりたいというのが自分の一番の望みなんです。あっ、あとこれは大分先の夢ですが……」
「なんでしょう?」
「いつかオリンピックの舞台に立ちたいです!」
「堂谷くんなら絶対に立てますよぉーっ♡ それまで当新聞社が全力をあげて応援しますからねーっ!♡」
「あははっ、ありがとうございます!」
俺史上最高に爽やかに笑って返したのを、もう、同期のみんなが頭と腹を抱えて蹲って聞いている。その真ん中で自信満々に仁王立ちした成だけが、両手で親指を立てていた。
* * * * *
部員インタビューが終わり、撮影クルーが監督に取材をしている間、俺はみんなに遅れて休憩をとらせてもらって成を無人の部室に引きずり込んだ。
「なあ! あれで良かったのか!? 3種目制覇とか団体優勝とか、世間様に調子に乗ってるって思われないよな!? それにオリンピックとか……」
「大丈夫、大丈夫。常勝の天才がものすごく謙虚で他者思いで、でも無邪気な中に隠しきれない情熱と強かな野望を潜めている感じがよく表れていて、控えめに言って、最高だったよ」
「ほんとかよ……」
項垂れる俺を成が腕の中に抱き寄せて、「お疲れ様」と労ってくれる。あれがどんな風に編集されて配信されるのか分からないが、本音ではお蔵入りになって欲しいけど、演出した張本人の成が大丈夫と太鼓判を押すのだから、信じて成り行きに任すしかない。
「知ってる? 応援チャンネルの登録者って多いんだよ。ああ、あんなに格好良くて自信に溢れた高校生チャンピオンの姿が視聴者たちの胸をたちどころに射止めて、ここにもファンが押し寄せて俺が彩人に近づけなくなったらどうしよう?」
「マイナー競技のフェンシング選手がそんなことになるわけないじゃん……」
「なるわけないって、俺がならすんだから安心して? とりあえず配信までにチャンネルの登録者数を2割増までもっていって、各所でもおススメしまくっておくから」
「そのアテがあるならもう俺じゃなくお前がそのスキルで有名になるべきだろ……」
「彩人が出るから増える余地があるに決まってるだろ!? あのアナウンサーも最初は森嶋くんが物凄いイケメンとかときめいたとか……彩人だろ訂正してよって割って入るところだったけど、最後は彩人の魅力にちゃんと理解が追い付いたみたいだから許したよね。やっぱり分かるんだね、たくさんの人に取材していると凡夫と彩人との違いが」
「ああーっ、もう分かったから黙って!」
耐えきれなくて悶える俺に、成が「心配性だなあ、彩人は」と的外れな感想を言って頬擦りする。心配性とかではなく、ひたすら自分の行く末とコイツとの温度差への危惧なのだが? と思うが、そんなことはお構いなしに成は俺の背を抱く両手に力を篭める。
「大丈夫だよ。どんなに有名になって、近づけないくらいファンが増えたって、俺は彩人とずっと一緒にいるから」
微笑みまじりに言われることばが確信に満ちていて、俺は胡散臭さとこそばゆさと、でもその奥から込み上げてくる昔っからのコイツ独特の全肯定に対する嬉しさに葛藤させられ、やっぱり、後者の感情に押し流される。
「あああ成、それ以上言うのもくっつくのもやめろ」
「……なんで?」
「……………………勃つから」
小声の自己申告に全然慌ててない声で「それは困ったね」と言いながら、成が離れるどころか顔を近づけてくる。
「オイ、だめだって……ッ!」
抗議の声は唇を塞がれて敢えなく消える。僅かな隙間を逃さずに成が舌を挿し込んでくる。俺の舌先を舐めとり、くっついて立つ俺の両足の間に自分の右足を割り入れて、太ももで俺の下半身をぐりぐりと擦る。ソコと、抱かれた背中の手の平のあたりにじわりと痺れた快感が湧いて、ここは部室だという俺の理性をなし崩しに奪っていく。口の中に這う舌のクチュクチュという湿った音のいやらしさも相乗して、俺もしだいに、成の動きに応えてしまう。
と突然、部室の閉じた扉の方からバンッと大きな音がした。
俺と成はぎょっと顔を上げる。扉は閉じたままだ。たぶん、部室の外から誰かが拳を扉に叩きつけた音。
「――おいお前ら、いつまで休憩してる? 彩人、集合がかかってる、早く出て来い」
「さ、彩人~? 佐久間~? 取材クルーが帰るから挨拶するよ~?」
外から鬼みたいな紘都と遠慮がちな徹平の声がして、俺はここが部室で取材途中だったことを急激に思い出し、慌てて互いを離しあった。それから、いきなり扉を開けられなかったことに二人で安堵の息を漏らし、目くばせのあと、苦笑し合った。たぶん、紘都にはバレているのだろうけど、だから徹平が扉を開けるより先に俺たちに合図を送り、声を掛けてくれたのだろう。
「ごめんごめん、取材の反省会をしてた。彩人もすぐ来るから」
先に部室を出た成が紘都と徹平にそう釈明してくれている。俺も深呼吸と意識のスイッチングで無理矢理に自分を鎮め、僅かに遅れて部室を飛び出した。体育館の入り口付近にはすでに部員達と監督が並び、紅太や伊緒、純が「早くしろ」と手招きしている列に、俺も何事もなかった顔で合流したのだった。
この日の取材は、徹平のテンパり具合とか紘都の暴言とかはきれいにカットされ、練習風景や部員のオフショットを加えて、プロ達の手によって良い感じの字幕と効果音とBGMで完璧なまでに“名門伝統校でフェンシングに青春を賭ける熱きスポーツ男子生徒たちの記録”に演出され編集されて、『輝く青春☆応援チャンネル』で配信された。
この多方向から何重にも捏造された青春動画は県内外の視聴者の様々なニーズに刺さり、多くの創礎学園フェンシング部のファンを生み、彼らの躍進に役立ててくれと例年を遥かに凌ぐ寄付金を集めたという。
そして俺のインタビューもコメント欄で叩かれることなく、むしろ「連覇を応援したい!」「我が県の希望の星!」「若いのにしっかりしてて、でも普段はヤンチャそうなところがちょっと可愛い♡」などと擁護されて、成の狙い通り各層に新たなファンを得ることに繋がったのであった。
めでたしめでたし。
……と、なるはずだったのだが。
事態は俺どころか成も予想していなかった方向へと、転がることになるのだった。
1
お気に入りに追加
21
あなたにおすすめの小説
モテる兄貴を持つと……(三人称改訂版)
夏目碧央
BL
兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。
ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?
マネージャー~お前を甲子園に連れて行ったら……野球部のエース♥マネージャー
夏目碧央
BL
強豪校の野球部に入った相沢瀬那は、ベンチ入りを目指し、とにかくガッツを認めてもらおうと、グランド整備やボール磨きを頑張った。しかし、その結果は「マネージャーにならないか?」という監督からの言葉。瀬那は葛藤の末、マネージャーに転身する。
一方、才能溢れるピッチャーの戸田遼悠。瀬那は遼悠の才能を羨ましく思っていたが、マネージャーとして関わる内に、遼悠が文字通り血のにじむような努力をしている事を知る。
目が覚めたら、カノジョの兄に迫られていた件
水野七緒
BL
ワケあってクラスメイトの女子と交際中の青野 行春(あおの ゆきはる)。そんな彼が、ある日あわや貞操の危機に。彼を襲ったのは星井夏樹(ほしい なつき)──まさかの、交際中のカノジョの「お兄さん」。だが、どうも様子がおかしくて──
※「目が覚めたら、妹の彼氏とつきあうことになっていた件」の続編(サイドストーリー)です。
※前作を読まなくてもわかるように執筆するつもりですが、前作も読んでいただけると有り難いです。
※エンドは1種類の予定ですが、2種類になるかもしれません。
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
有能社長秘書のマンションでテレワークすることになった平社員の俺
高菜あやめ
BL
【マイペース美形社長秘書×平凡新人営業マン】会社の方針で社員全員リモートワークを義務付けられたが、中途入社二年目の営業・野宮は困っていた。なぜならアパートのインターネットは遅すぎて仕事にならないから。なんとか出社を許可して欲しいと上司に直談判したら、社長の呼び出しをくらってしまい、なりゆきで社長秘書・入江のマンションに居候することに。少し冷たそうでマイペースな入江と、ちょっとビビりな野宮はうまく同居できるだろうか? のんびりほのぼのテレワークしてるリーマンのラブコメディです
陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
まったり書いていきます。
2024.05.14
閲覧ありがとうございます。
午後4時に更新します。
よろしくお願いします。
栞、お気に入り嬉しいです。
いつもありがとうございます。
2024.05.29
閲覧ありがとうございます。
m(_ _)m
明日のおまけで完結します。
反応ありがとうございます。
とても嬉しいです。
明後日より新作が始まります。
良かったら覗いてみてください。
(^O^)
人気アイドルが義理の兄になりまして
雨田やよい
BL
柚木(ゆずき)雪都(ゆきと)はごくごく普通の高校一年生。ある日、人気アイドル『Shiny Boys』のリーダー・碧(あおい)と義理の兄弟となり……?
実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは
竹井ゴールド
ライト文芸
日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。
その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。
青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。
その後がよろしくない。
青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。
妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。
長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。
次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。
三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。
四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。
この5人とも青夜は家族となり、
・・・何これ? 少し想定外なんだけど。
【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】
【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】
【2023/6/5、お気に入り数2130突破】
【アルファポリスのみの投稿です】
【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】
【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】
【未完】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる