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「妻」の誕生 そして……
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結婚式は町の住民全てが参列して行われ、華々しいとまではいかないまでも心のこもったものだった。
わたしはこの女の身になってから初めて実際に会った夫と共に、晴れやかな気持ちで皆の祝福の声を受け取った。
近くで改めて見ても夫の年齢は30歳には届かないとはいえ、それでもわたしより10歳ほど年上だ。
それぐらいの年の差はこの町では大した問題ではない。
夫は着飾ったわたしを見て、一瞬息をのみ次には誇らしげにほほ笑んだ。それを見るのはわたしも嬉しかった。
そしてわたしは教えられた通り、純白のドレスにその身を沈ませつつ。頭を下げて服従を示した。
おそらく夫にとっても、この瞬間はわたし同様に生涯忘れられない幸せな思い出となるだろう。
誰もが同じ表情で異口同音に新しい夫婦の門出を祝ってくれている。
この光景に少し前だったら、やはり違和感を抱いただろうと理性の声が脳裏に響く。
だがそれも結婚の幸せの前にあっという間に塗りつぶされていった。
ああ。本当に幸せな気持ちでいっぱいです。
この町の夫婦に新婚旅行は無く、新居にて二人で新婚生活を過ごすのが決まりと聞いている。
そして夫はわたしの容姿や体のラインを見て、その目にこれまでにない色が宿っていた。
もちろんこの体に魅了され、初夜をいまかいまかと待ち望んでいるのだ。
その願望はわたしにも痛いほど伝わってくる。
そんな「男の気持ち」が分かる女が、従順に尽くしてくれるとあれば、間違いなく「男の夢」そのものだろう。
わたしだけでなく、この町の妻は誰もが自らの美しさと、夫に尽くす理想の妻たることを喜んで誇りにしているのだ。
結婚式が終わると、夫はこの身を「お姫様だっこ」して抱え上げた。
「さあ行こうか。われわれの新たな生活に」
「はい。あなた」
わたしは喜びと共に、二人の新居へと運ばれていった。
そしてその晩、もう待ちきれないとばかりに夫はわたしを寝台に運んで服を脱がしていった。
「ああ……本当に綺麗だよ……まるで夢のような気分だ」
夫の感嘆の声が耳に響く。
ほんの僅か「これが引き返す最後の機会」という意識があったのだが、それも胸をまさぐる夫の手の感触にかき消される。
「お前を妻に出来た事は俺の誇りだよ」
「あなたの妻になれた事がわたしの誇りです」
わたしは赤面しつつ答えた。
夫は女の扱いには長けている様子で、わたしの滑らかな体を巧みにまさぐって、気持ちを高ぶらせていく。
一方でわたしは、他の「妻たち」から「やり方」は教わっていたが、自分のつたなさに夫には申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
しかし夫はそんなわたしをやさしくリードしてくれた。
そしてしばらく後、わたしの体の中の処女の証は破られ、体の中に夫の一部が入り込んできた。
その感覚はもう信じられないものだった。
わたしの全てが今貫かれている部分を感じるだけで、他の感覚は全く遮断されているかのようだ。
「ああ! もっともっとあなたを下さい! もっともっとわたしの体をめちゃくちゃにかきまわして!」
わたしの心に残っていた最後の『男としての欠片』がこのとき砕け散った事を悟った。
もう二度とわたしは男に戻ろうとは思わないだろう。
わたしは快感に圧倒されていた。
そしてわたしの股間からは、いろいろなものがあふれ出てくる。そして全身を満たした喜びはもう何ものにも代えがたい。
生まれて初めての女性としてのオルガスムは輝かしかった。
もう完全にわたしの「男性の意識」は消滅し、この驚くべき、新しい感覚に魅了されてもっと多くの快感を欲した。
これから毎日、これを感じられるのであれば、これまでの人生の全ては何の意味も無いだろう。
受験勉強などというくだらないものに必死で取り組み、大学を出て社会の歯車になる。
ほんの僅か前まで、何も疑わなかった男としての人生の在り方が、本当に無意味で空虚な時間の浪費だったと痛感する。
もうわたしは完全に満足し、大いなる喜びとともに、この女の体と従順な妻の立場を受け入れた。
この瀬渡町に来てよかった、本当に女になってよかった、そう心の底から思った。
疑う余地もなく、わたしたちはお互いに完璧な夫婦となった。
オシドリ夫婦という言葉があるが、むしろオシドリにわたしの幸せを見せつけてやりたい気分だった。
それからわたしは昼は夫に尽くし、夜は愛し合う事だけを考えて日々を過ごした。
しばらくすればわたしの胎内には新しい命が宿るだろう。
その命を愛し育むのが、夫に尽くす事と並ぶ、わたしの使命であり天性なのだ。
それを想像するだけで、わたしの心は浮足立ち、体が熱くなってくる。
わたしは何の疑問もなく、それを受け入れた。
ああ。少し前の愚かな男はもうどこにもいない。
幸せな妻にしてひとりの女をここに残して、きれいさっぱり消え去ったのだ――永久に。
そして過去のこと、男のころの思い出はもうわたしにとっては何の意味もない、小さなことになった。もう記憶の中にはあっても思い返すこともないだろう。
しかしそれから遠からぬ日に、その幸せに思わぬヒビが入ることになると、わたしは夢にも思っていなかった。
わたしはこの女の身になってから初めて実際に会った夫と共に、晴れやかな気持ちで皆の祝福の声を受け取った。
近くで改めて見ても夫の年齢は30歳には届かないとはいえ、それでもわたしより10歳ほど年上だ。
それぐらいの年の差はこの町では大した問題ではない。
夫は着飾ったわたしを見て、一瞬息をのみ次には誇らしげにほほ笑んだ。それを見るのはわたしも嬉しかった。
そしてわたしは教えられた通り、純白のドレスにその身を沈ませつつ。頭を下げて服従を示した。
おそらく夫にとっても、この瞬間はわたし同様に生涯忘れられない幸せな思い出となるだろう。
誰もが同じ表情で異口同音に新しい夫婦の門出を祝ってくれている。
この光景に少し前だったら、やはり違和感を抱いただろうと理性の声が脳裏に響く。
だがそれも結婚の幸せの前にあっという間に塗りつぶされていった。
ああ。本当に幸せな気持ちでいっぱいです。
この町の夫婦に新婚旅行は無く、新居にて二人で新婚生活を過ごすのが決まりと聞いている。
そして夫はわたしの容姿や体のラインを見て、その目にこれまでにない色が宿っていた。
もちろんこの体に魅了され、初夜をいまかいまかと待ち望んでいるのだ。
その願望はわたしにも痛いほど伝わってくる。
そんな「男の気持ち」が分かる女が、従順に尽くしてくれるとあれば、間違いなく「男の夢」そのものだろう。
わたしだけでなく、この町の妻は誰もが自らの美しさと、夫に尽くす理想の妻たることを喜んで誇りにしているのだ。
結婚式が終わると、夫はこの身を「お姫様だっこ」して抱え上げた。
「さあ行こうか。われわれの新たな生活に」
「はい。あなた」
わたしは喜びと共に、二人の新居へと運ばれていった。
そしてその晩、もう待ちきれないとばかりに夫はわたしを寝台に運んで服を脱がしていった。
「ああ……本当に綺麗だよ……まるで夢のような気分だ」
夫の感嘆の声が耳に響く。
ほんの僅か「これが引き返す最後の機会」という意識があったのだが、それも胸をまさぐる夫の手の感触にかき消される。
「お前を妻に出来た事は俺の誇りだよ」
「あなたの妻になれた事がわたしの誇りです」
わたしは赤面しつつ答えた。
夫は女の扱いには長けている様子で、わたしの滑らかな体を巧みにまさぐって、気持ちを高ぶらせていく。
一方でわたしは、他の「妻たち」から「やり方」は教わっていたが、自分のつたなさに夫には申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
しかし夫はそんなわたしをやさしくリードしてくれた。
そしてしばらく後、わたしの体の中の処女の証は破られ、体の中に夫の一部が入り込んできた。
その感覚はもう信じられないものだった。
わたしの全てが今貫かれている部分を感じるだけで、他の感覚は全く遮断されているかのようだ。
「ああ! もっともっとあなたを下さい! もっともっとわたしの体をめちゃくちゃにかきまわして!」
わたしの心に残っていた最後の『男としての欠片』がこのとき砕け散った事を悟った。
もう二度とわたしは男に戻ろうとは思わないだろう。
わたしは快感に圧倒されていた。
そしてわたしの股間からは、いろいろなものがあふれ出てくる。そして全身を満たした喜びはもう何ものにも代えがたい。
生まれて初めての女性としてのオルガスムは輝かしかった。
もう完全にわたしの「男性の意識」は消滅し、この驚くべき、新しい感覚に魅了されてもっと多くの快感を欲した。
これから毎日、これを感じられるのであれば、これまでの人生の全ては何の意味も無いだろう。
受験勉強などというくだらないものに必死で取り組み、大学を出て社会の歯車になる。
ほんの僅か前まで、何も疑わなかった男としての人生の在り方が、本当に無意味で空虚な時間の浪費だったと痛感する。
もうわたしは完全に満足し、大いなる喜びとともに、この女の体と従順な妻の立場を受け入れた。
この瀬渡町に来てよかった、本当に女になってよかった、そう心の底から思った。
疑う余地もなく、わたしたちはお互いに完璧な夫婦となった。
オシドリ夫婦という言葉があるが、むしろオシドリにわたしの幸せを見せつけてやりたい気分だった。
それからわたしは昼は夫に尽くし、夜は愛し合う事だけを考えて日々を過ごした。
しばらくすればわたしの胎内には新しい命が宿るだろう。
その命を愛し育むのが、夫に尽くす事と並ぶ、わたしの使命であり天性なのだ。
それを想像するだけで、わたしの心は浮足立ち、体が熱くなってくる。
わたしは何の疑問もなく、それを受け入れた。
ああ。少し前の愚かな男はもうどこにもいない。
幸せな妻にしてひとりの女をここに残して、きれいさっぱり消え去ったのだ――永久に。
そして過去のこと、男のころの思い出はもうわたしにとっては何の意味もない、小さなことになった。もう記憶の中にはあっても思い返すこともないだろう。
しかしそれから遠からぬ日に、その幸せに思わぬヒビが入ることになると、わたしは夢にも思っていなかった。
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