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第24章 全てはアルタシャのために?
第1271話 「世界の意志」とは凡庸なものである
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この世界の意志がオレをここに呼び込んだ、という話は真偽はどうあれ理解はできる。
しかし元の男子高校生のままだったら、間違い無く「アルタシャ」のような業績を上げる事など出来なかったはず。
騙されて性転換させられ、絶世の美少女になってしまったからこその成果だというのは、オレ自身認めざるを得ない。
もしも平凡な男子だったら、国王や皇帝、それに神々がオレの言葉にどこまで真剣に耳を傾けただろうか?
実際、自分自身でもそう思うよ。
世の中、見た目が全てではないにしても、大部分なのは何度も思い知らされてきたことだ。
だけどそうなるとオレが聖女教会によって女にされてしまうところまで、最初から全部仕組まれていたとでも言うのか?
それとも世界の意志にすれば、オレは無数にいる捨て駒の一つであって、たまたま色々な要素が組み合わさって「アルタシャ」という特別な駒になったとのか?
『言いたい事は分かる。アルタシャが幾度も危機を乗り越えてこられたのも、全ては無数の人間による世界に調和をもたらし、危機を避けたいという意志が力を与えたのだろう』
これもよくある話だと言ってしまえばそこまでなんですけど、何か肝心なところを誤魔化していませんかね。
本当に覚えがないのか、それとも身に覚えがあるからこそ、話をそらしているのかどっちだ?
正直、オレ自身も都合が悪いときれい事で逃げたのは幾度も身に覚えがあるからな。
『アルタシャは多くの人々に希望を与え、その期待に応えて世界を救いました。これは永遠に語り継がれる偉業と言ってよいでしょう』
「そういうのは墓碑に刻まれる話であって、当人を前に言われても嬉しくはありませんよ」
今まで受けた賞賛の数々と比較すれば、大した事のないむしろありふれた内容だ。世界の意志の癖になんで、そんなに平凡な事しか言えないんだ。
『確かにね……こちらは世界の人々の意志の表れだから、内容が最大公約数的な凡庸なものになるのは勘弁してもらいたい』
「異世界から呼びつけるのも凡庸な手段なんですか?」
『もちろんだとも』
即答された?!
『アルタシャのいた元の世界でも、そういう話は掃いて捨てるほどあったのではないのかな? 君もそういう話を多数知っているはずだ』
確かにその通りだし、正直なところ初っ端はそれで喜んだよ。本当にごくごく初めのうち、男でいられた間だけどな。
『恐らくはそちらの世界における、人々の意志が他の世界を救うべき人間を送り出すことにつながっているのではないかな?』
そんなはずがない。仮に他の世界に行っても帰って来れるなら、戻って来て自慢する人間もいるだろう。
逆に帰って来れないなら、奇妙な行方不明者が続出するはずだ。
いや。冷静に考えると誰かが「実は異世界を救ってきた」なんて言い出したら、周囲から頭がおかしくなったと思われるだけだ。
もちろん異世界転移に憧れていたオレだって、信じはしなかっただろう。せいぜい「怪しい勧誘」と思うぐらいだな。
チート能力が異世界に行っただけで身につくとしても、それを元の世界に持ち帰れるのはおかしいだろう。
仮にオレが元の世界に戻っても、やっぱり誰も信じないだろうから黙っていることを選ぶに違いない。
なるほど。少し考えればそういうことは十分にありうるな。
世界を救った英雄が、しばらくすると「平凡な毎日を送っている」オチはしばしばあったな。
当人は「それで満足している」場合と「平和に日常に失望している」ちょっとバッドな展開――場合によっては再度の呼び出しがあって嬉々として出向く――の両方に記憶がある。
『そしてこの世界では、神界や精霊界など異世界から魔術師や司祭が助けを呼ぶことは珍しくも無い事は幾度も体験しているだろう』
「つまり二つの世界の意図が合致していると言いたいのですか?」
『恐らくはそうだろう。いや。もしかしたら意図が合致した世界同士で繋がりが生まれて、そこで何らかの交換が行われるのかもしれない』
「人間同士が貿易をするみたいにですか?」
確かに世界そのものに意志があるなら、別の世界との間で意志疎通が行われ、利害が一致した結果として人間その他の入れ替えがあっても不思議では無い。
『そのような感じだろうな』
「しかしそれだけの事が出来るなら、自分の意志で世界そのものを変えてもいいのではないのですか?」
実際、チート魔力を含めてもオレが出来る事など、大したものではなかった。少なくとも異世界から人間を呼んでこれるなら、世界自体がどうにかする方がよほど手っ取り早いだろう。
『そうもいかないのだ。当人がこれではマズイと思っていても、止める事が出来ないものは、世の中に無数にあるだろう?』
それって要するに頭では健康に悪いと分かっていても、酒やタバコにのめり込むのと同じ心理なわけ?
世界の意志が、その世界の住民の意志の集合体だとすれば、住民達自身が望んでもどうしようもないことがたくさんあると言うことなのか。
しかし元の男子高校生のままだったら、間違い無く「アルタシャ」のような業績を上げる事など出来なかったはず。
騙されて性転換させられ、絶世の美少女になってしまったからこその成果だというのは、オレ自身認めざるを得ない。
もしも平凡な男子だったら、国王や皇帝、それに神々がオレの言葉にどこまで真剣に耳を傾けただろうか?
実際、自分自身でもそう思うよ。
世の中、見た目が全てではないにしても、大部分なのは何度も思い知らされてきたことだ。
だけどそうなるとオレが聖女教会によって女にされてしまうところまで、最初から全部仕組まれていたとでも言うのか?
それとも世界の意志にすれば、オレは無数にいる捨て駒の一つであって、たまたま色々な要素が組み合わさって「アルタシャ」という特別な駒になったとのか?
『言いたい事は分かる。アルタシャが幾度も危機を乗り越えてこられたのも、全ては無数の人間による世界に調和をもたらし、危機を避けたいという意志が力を与えたのだろう』
これもよくある話だと言ってしまえばそこまでなんですけど、何か肝心なところを誤魔化していませんかね。
本当に覚えがないのか、それとも身に覚えがあるからこそ、話をそらしているのかどっちだ?
正直、オレ自身も都合が悪いときれい事で逃げたのは幾度も身に覚えがあるからな。
『アルタシャは多くの人々に希望を与え、その期待に応えて世界を救いました。これは永遠に語り継がれる偉業と言ってよいでしょう』
「そういうのは墓碑に刻まれる話であって、当人を前に言われても嬉しくはありませんよ」
今まで受けた賞賛の数々と比較すれば、大した事のないむしろありふれた内容だ。世界の意志の癖になんで、そんなに平凡な事しか言えないんだ。
『確かにね……こちらは世界の人々の意志の表れだから、内容が最大公約数的な凡庸なものになるのは勘弁してもらいたい』
「異世界から呼びつけるのも凡庸な手段なんですか?」
『もちろんだとも』
即答された?!
『アルタシャのいた元の世界でも、そういう話は掃いて捨てるほどあったのではないのかな? 君もそういう話を多数知っているはずだ』
確かにその通りだし、正直なところ初っ端はそれで喜んだよ。本当にごくごく初めのうち、男でいられた間だけどな。
『恐らくはそちらの世界における、人々の意志が他の世界を救うべき人間を送り出すことにつながっているのではないかな?』
そんなはずがない。仮に他の世界に行っても帰って来れるなら、戻って来て自慢する人間もいるだろう。
逆に帰って来れないなら、奇妙な行方不明者が続出するはずだ。
いや。冷静に考えると誰かが「実は異世界を救ってきた」なんて言い出したら、周囲から頭がおかしくなったと思われるだけだ。
もちろん異世界転移に憧れていたオレだって、信じはしなかっただろう。せいぜい「怪しい勧誘」と思うぐらいだな。
チート能力が異世界に行っただけで身につくとしても、それを元の世界に持ち帰れるのはおかしいだろう。
仮にオレが元の世界に戻っても、やっぱり誰も信じないだろうから黙っていることを選ぶに違いない。
なるほど。少し考えればそういうことは十分にありうるな。
世界を救った英雄が、しばらくすると「平凡な毎日を送っている」オチはしばしばあったな。
当人は「それで満足している」場合と「平和に日常に失望している」ちょっとバッドな展開――場合によっては再度の呼び出しがあって嬉々として出向く――の両方に記憶がある。
『そしてこの世界では、神界や精霊界など異世界から魔術師や司祭が助けを呼ぶことは珍しくも無い事は幾度も体験しているだろう』
「つまり二つの世界の意図が合致していると言いたいのですか?」
『恐らくはそうだろう。いや。もしかしたら意図が合致した世界同士で繋がりが生まれて、そこで何らかの交換が行われるのかもしれない』
「人間同士が貿易をするみたいにですか?」
確かに世界そのものに意志があるなら、別の世界との間で意志疎通が行われ、利害が一致した結果として人間その他の入れ替えがあっても不思議では無い。
『そのような感じだろうな』
「しかしそれだけの事が出来るなら、自分の意志で世界そのものを変えてもいいのではないのですか?」
実際、チート魔力を含めてもオレが出来る事など、大したものではなかった。少なくとも異世界から人間を呼んでこれるなら、世界自体がどうにかする方がよほど手っ取り早いだろう。
『そうもいかないのだ。当人がこれではマズイと思っていても、止める事が出来ないものは、世の中に無数にあるだろう?』
それって要するに頭では健康に悪いと分かっていても、酒やタバコにのめり込むのと同じ心理なわけ?
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