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第24章 全てはアルタシャのために?

第1213話 ついに天国が崩壊し

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 管理者によれば「神造者達がこの事態を乗り切る」だって? 幾ら何でもそれは無理だ。
 つい先ほどオレが確認したところでも最高神学会は機能停止していて、そもそも主神であるはずのジストルですら「過去の遺物」として廃神にされてしまっているのだからな。

「なぜですか?! あなただって事態の深刻さは分かっているのでしょう?!」
「分かっていても、この天国を可能な限り維持するのが我が使命。世界の危機はいま生きている神造者がなんとかしてくれるはず。私はそれを待つだけです」
「あなたは神造者がどういう状況にあるのか知らないのですか?」
「知っていますよ」

 管理者は躊躇なく返答する。

「今も彼らは全力で危機を乗り切ろうと努力しています。その声が今も響いています」

 いや。それはもう破綻しそうな企業で必至で働いている可哀想な声と変わりませんよ。
 そうか。何でこんなに一気に何もかも破綻してしまったのか、と思っていたが、もともと危うい均衡の元で発展を続けていたのが、いろいろな出来事が複雑に絡み合って、膨らんだ風船が一気に破裂してしまったという事か。
 元の世界で言えば、後から見れば崩壊間違いなしのバブルに大勢の人間が踊り、繁栄を謳歌していたのに近いのだろう。
 そういう場合も当事者たちの殆どは「自分はバブルに踊ってなどいない。賢明に振る舞って大きな利益をあげている」と信じていたのだ。
 その上でどいつここいつも、先達を見下して相手を貶めたり、後進に嫉妬して得るべきものを横取りしたり、いろいろとやらかしまくっていたのだ。
 それでもどうにか神造者達がアルタシャのコピーを量産して、男共がのめり込んで最高神学会が停止しなければ、天国を維持するために世界を滅ぼしかねない、という本末転倒の事態を避けられたかもしれないのか。
 しかしそんなの一時的に避けられても、いつか必ず破綻しただろう。
 この天国でいま幸せに生きている連中には気の毒だが、いつか必ず来るものがオレという形を取ってやって来ただけなのだ。
 こう言うとまるで「非道な悪役の借金取り」みたいな立ち位置だな。

『何をしておるのだ。早く吾を解放してくれ』

 じれったそうにアンブラールが文句を言ってくる。
 かつて大神になびかず「一度、見逃した女」がやってきて今度こそヤルつもりでいたのに、邪魔が入ったら苛立つ気持ちは理解出来る。

「あなたは帝国の守護神ではありませんか。ならばこの天国を揺るがすような事は辞め、本来の役目として、あなたに捧げられた崇拝の力を天国の維持に用いて下さい」

 管理者は苦言を呈しているが、やはりこの神々の列は天国の維持のために必要不可欠な存在であり、まさに動力源という事か。
 もちろんオレの力がいくら人間離れしていると言っても、ここに並ぶ帝国諸神と比べればごく小さなものでしかない。
 イロールの化身になる事を放棄したオレでは、仮にたどり着いてもどうしようも無かった筈だ。
 そしてアンブラールに以前、一度出会っていなければ仮にこの巨大な神像から話かけられても、こんな手段を実行しようとは思わなかっただろう。
 我ながら「最終的には過去の行いが全ての源になる」事をつくづく思い知らされる話だよ。

『むろん吾も信徒達の祈りを受けて、神の使命、永遠不滅なる神命を果たすのは当然の事だ』
「そうですか。分かって下さいましたか」
『そして神命故にこそ、美しき乙女を我が物とするのは最優先である!』
「な?! 何と?」

 アンブラールの宣言と共に、管理者の意識は驚愕を示す。
 オレには予想出来た――もちろんあまり嬉しくは無い――展開ではあるが、今まで何も言わず従順な神像ばかり相手にしてきたので、その相手が「神造者の定めた神話」に基づき暴走する事を考えもしなかったらしい。

『さあ来るがよい。我が乙女よ』
「分かりました!」

 こっちも既に覚悟は固めている。オレは一気にアンブラールに向けて飛びついた。

「おやめなさい! 本当に全てを台無しにするつもりですか?」

 悲鳴と共に、オレの力が一気に流れ出す。
 正直に言ってかなり苦しいが、それでも神像は砕けて中から鎧をまとった精悍な男性が姿を見せる。
 以前に見たとおりのアンブラール神の化身だ。
 これも神造者が定めた外見であると共に、連中が神話を統合した結果として「国を混乱させてでも美人を優先する女好き」になってしまった結果である。
 つくづく自業自得と言う言葉がふさわしい。

『さあ。愛しき乙女よ今こそ吾と結ばれようでは無いか』
「ここよりもふさわしい場所がありますよ!」

 オレはとにかく逃げることにした。幸いにも相手の意図は「やる」事なので、本気で攻撃したりはしてこないはずだからな。
 そして破壊はアンブラールの神像から、他の部分にも急速に広まりつつあった。

「な?! なんと言うことを!」

 天国が崩壊し始めている事を悟ったらしい管理者から嘆きの声が響く。
 そしてオレは今度こそこの天国を崩壊させるため、そして何より「自分自身の身を守る」ために全力で駆け出したのだった。
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