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第24章 全てはアルタシャのために?
第1128話 ようやく見つけたルートが実は……
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マルキウスが向かった霊廟はツタに覆われていて、とっくの昔に見捨てられた存在なのは明らかだった。
霊体を見るオレの『霊視』でも特に何も見当たらない。
つまり外から見る限りでは、ここには何もいないのだ。
もっとも内部には何かが秘められている可能性は当然ありうる。
ひとまず周囲の様子を改めて見回し、オレ達をつけている相手がいないかどうか確認するが本当にいないようだな。
その霊廟の場所からは、宮城の裏手である後宮の建物が見えている。
つまり距離的には宮城からさほど遠いわけではないのだ。だがこちらは裏手なので、まだまだ復興の手は伸びていないという事になる。
秘密の通路と言っても、地中を掘り進むのは難しいからそれほど距離があるわけでは無いのはむしろ当然なのだけどな。
「ここに秘密の通路があるのですね?」
「まあそのはずじゃ……」
なんだよ。その不安げな発言は?
こっちが心配になってくるだろう。
「おい! 爺さん。ここまで来ておいて、確信がないのか?」
テセルが容赦なく突っ込みを入れる。
「仕方なかろう。ワシとて知識として聞いた事があるだけで、本当に使った事など一度もないのじゃ」
秘密の出入り口が普段から使われているはずもないからな。
しかし今さら引き返すわけにはいかない。
「そもそもさっきから何をしているのだい? アルタシャが誰かに会いたいというなら、どこにいてもこの僕が連れて行ってあげるよ」
もちろんイオに頼めば、どこだろうと行けるだろう。
だがイオは文字通りオレにとって『最後の切り札』であり、可能な限り使う事を避けねばなるまい。
「とにかく今はマルキウスさんを信じるだけです。先に進みましょう」
「申し訳無い……改めて頼むが力を貸してくれ」
扉をあけて中に入ると、カビ臭い空気が漂う。
石造りの墓標が立ち並び、正直に言えば見るだけで気が滅入る光景だな。
そしてその一つにマルキウスは近づいて、その墓碑銘を確認している様子だ。
「これじゃな。これをどかしてくれんか?」
「分かった」
「ちょっと待ちなさい!」
イオが身を乗り出すが慌てて止める。
ドラゴン人間体の力がどれほどのものかは知らないが、普通のファンタジーの基準なら墓標をどかせるどころか粉々にしてしまいかねない。
そんな事になれば破片が飛び散って危ないし、いくらさびれた墓所と言っても、死人が飛び起きるほどの轟音が鳴り響き、周囲の注意を引いてしまいかねない。
イオが人間相手に力を振るうのは釘を刺していたけど、物品を相手にするのも慎重にせねばならないな。
「あの墓標はテセルとミツリーンさんで動かして下さい」
オレも自分の身に『筋力増強』をかければ、並みの男以上の力が出せるけど、今はイオが迂闊な事をしないようにするのが先決だ。
「分かりました」
「なんでエリート神造者の僕が……アルタシャが頼りたいというなら仕方ないか」
なんだかんだ言いながら二人は墓標をつかんで力を込める――逆方向に。
いったいなんのコントだ。
「おい。なぜお前が私の邪魔をする」
「そっちこそ僕の邪魔をするな」
「やめて下さい! 今は争っている場合ではないでしょう!」
この二人の仲が悪いのは今更の事だけど、イオの面倒まで見ているこっちがたまったものではない。
「とにかくこの墓碑をどうすればいいのですか?」
冷静に考えればそれをまずマルキウスに聞くべきだったろう。
だが――
「すまん。そのところもよく知らんのじゃ。何しろ代々、口伝で伝えられたものじゃから、細かい所は欠落しておってのう」
やっぱりマルキウスは肝心なところで役に立たないな。
文句を言っても仕方ないので、この墓碑でいろいろと試してみよう。
まさか『開けゴマ』とか特別な合言葉が必要なわけではないはずだ。
だがいくら押しても引いても回しても墓碑はうんともすんとも言わない。
もちろん魔力も無いし、霊体が姿を見せる事もない。
もしかすると本当にマルキウスの知識が間違っていて、ここには何もないのか?
そんな不安な空気が漂う中、テセルはじっと墓碑銘を見ている。
「爺さん。本当にこの墓に手掛かりがあるのか?」
「当たり前じゃ。いくら老いぼれでもそこまでもうろくはしておらん」
「それなら推測だが、この墓碑に刻まれているのはあくまでも手掛かりじゃないか?」
「どういうことじゃ?」
マルキウスが怪訝な表情を浮かべたところで、テセルは墓碑を手でぬぐう。
「ここにはマニリア帝国の過去の皇帝を称える聖句が刻まれている。そしてその歩みに従えとあるんだ」
「どういうことですか?」
「こんなところに複雑な暗号が仕込まれているとは思えないから、皇帝の代位の数だけ墓碑を進めというところじゃないかな。ここには『武烈帝』とあるが何代目だい?」
この国は当代の皇帝には名が無く、死去したら贈り名されると言う事だった。
ウァリウスも名も本来は幼名であって、オレが特別にそれで呼ぶことを認められたのだった。
「それなら十二代皇帝じゃ。武力で蛮族共を征服し、帝国を大いに拡大した偉大な皇帝じゃぞ」
「ああそうかい」
テセルは美辞麗句には何の興味もない様子で、入り口からさらに十二個目の墓碑にまで歩いていく。
「たぶんこれだろう。最近、動かした跡があるぞ」
そういってテセルが力を込めると、墓碑は鈍い音と共にゆっくりと動いた。
待てよ。もしかしてこのルートは――
「マルキウスさん。これが繋がっているのは後宮ですか?」
「もちろんじゃ。そもそもワシは後宮の長官だったのじゃからな」
やっぱりそうか。このルートの出口は、オレがファーストキスをウァリウスに奪われた因縁の場所じゃないか!
霊体を見るオレの『霊視』でも特に何も見当たらない。
つまり外から見る限りでは、ここには何もいないのだ。
もっとも内部には何かが秘められている可能性は当然ありうる。
ひとまず周囲の様子を改めて見回し、オレ達をつけている相手がいないかどうか確認するが本当にいないようだな。
その霊廟の場所からは、宮城の裏手である後宮の建物が見えている。
つまり距離的には宮城からさほど遠いわけではないのだ。だがこちらは裏手なので、まだまだ復興の手は伸びていないという事になる。
秘密の通路と言っても、地中を掘り進むのは難しいからそれほど距離があるわけでは無いのはむしろ当然なのだけどな。
「ここに秘密の通路があるのですね?」
「まあそのはずじゃ……」
なんだよ。その不安げな発言は?
こっちが心配になってくるだろう。
「おい! 爺さん。ここまで来ておいて、確信がないのか?」
テセルが容赦なく突っ込みを入れる。
「仕方なかろう。ワシとて知識として聞いた事があるだけで、本当に使った事など一度もないのじゃ」
秘密の出入り口が普段から使われているはずもないからな。
しかし今さら引き返すわけにはいかない。
「そもそもさっきから何をしているのだい? アルタシャが誰かに会いたいというなら、どこにいてもこの僕が連れて行ってあげるよ」
もちろんイオに頼めば、どこだろうと行けるだろう。
だがイオは文字通りオレにとって『最後の切り札』であり、可能な限り使う事を避けねばなるまい。
「とにかく今はマルキウスさんを信じるだけです。先に進みましょう」
「申し訳無い……改めて頼むが力を貸してくれ」
扉をあけて中に入ると、カビ臭い空気が漂う。
石造りの墓標が立ち並び、正直に言えば見るだけで気が滅入る光景だな。
そしてその一つにマルキウスは近づいて、その墓碑銘を確認している様子だ。
「これじゃな。これをどかしてくれんか?」
「分かった」
「ちょっと待ちなさい!」
イオが身を乗り出すが慌てて止める。
ドラゴン人間体の力がどれほどのものかは知らないが、普通のファンタジーの基準なら墓標をどかせるどころか粉々にしてしまいかねない。
そんな事になれば破片が飛び散って危ないし、いくらさびれた墓所と言っても、死人が飛び起きるほどの轟音が鳴り響き、周囲の注意を引いてしまいかねない。
イオが人間相手に力を振るうのは釘を刺していたけど、物品を相手にするのも慎重にせねばならないな。
「あの墓標はテセルとミツリーンさんで動かして下さい」
オレも自分の身に『筋力増強』をかければ、並みの男以上の力が出せるけど、今はイオが迂闊な事をしないようにするのが先決だ。
「分かりました」
「なんでエリート神造者の僕が……アルタシャが頼りたいというなら仕方ないか」
なんだかんだ言いながら二人は墓標をつかんで力を込める――逆方向に。
いったいなんのコントだ。
「おい。なぜお前が私の邪魔をする」
「そっちこそ僕の邪魔をするな」
「やめて下さい! 今は争っている場合ではないでしょう!」
この二人の仲が悪いのは今更の事だけど、イオの面倒まで見ているこっちがたまったものではない。
「とにかくこの墓碑をどうすればいいのですか?」
冷静に考えればそれをまずマルキウスに聞くべきだったろう。
だが――
「すまん。そのところもよく知らんのじゃ。何しろ代々、口伝で伝えられたものじゃから、細かい所は欠落しておってのう」
やっぱりマルキウスは肝心なところで役に立たないな。
文句を言っても仕方ないので、この墓碑でいろいろと試してみよう。
まさか『開けゴマ』とか特別な合言葉が必要なわけではないはずだ。
だがいくら押しても引いても回しても墓碑はうんともすんとも言わない。
もちろん魔力も無いし、霊体が姿を見せる事もない。
もしかすると本当にマルキウスの知識が間違っていて、ここには何もないのか?
そんな不安な空気が漂う中、テセルはじっと墓碑銘を見ている。
「爺さん。本当にこの墓に手掛かりがあるのか?」
「当たり前じゃ。いくら老いぼれでもそこまでもうろくはしておらん」
「それなら推測だが、この墓碑に刻まれているのはあくまでも手掛かりじゃないか?」
「どういうことじゃ?」
マルキウスが怪訝な表情を浮かべたところで、テセルは墓碑を手でぬぐう。
「ここにはマニリア帝国の過去の皇帝を称える聖句が刻まれている。そしてその歩みに従えとあるんだ」
「どういうことですか?」
「こんなところに複雑な暗号が仕込まれているとは思えないから、皇帝の代位の数だけ墓碑を進めというところじゃないかな。ここには『武烈帝』とあるが何代目だい?」
この国は当代の皇帝には名が無く、死去したら贈り名されると言う事だった。
ウァリウスも名も本来は幼名であって、オレが特別にそれで呼ぶことを認められたのだった。
「それなら十二代皇帝じゃ。武力で蛮族共を征服し、帝国を大いに拡大した偉大な皇帝じゃぞ」
「ああそうかい」
テセルは美辞麗句には何の興味もない様子で、入り口からさらに十二個目の墓碑にまで歩いていく。
「たぶんこれだろう。最近、動かした跡があるぞ」
そういってテセルが力を込めると、墓碑は鈍い音と共にゆっくりと動いた。
待てよ。もしかしてこのルートは――
「マルキウスさん。これが繋がっているのは後宮ですか?」
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